67 ヘタレ勇者と愉快(というにはちょっとアレ)な仲間たち
「ずぇええりゃあっ!」
「うまいうまい、大分いいです、よぉっ!」
「はー、くっそロスくん汗一つかいてねえ!」
「そりゃあ戦闘キャリアが違いますからね」
あれからしばらく、王都から出てあっちこっちの町で被害が出そうなところを見張っては雑魚を倒すみたいなことを繰り返して、とはいえ魔法だよりだと困ることも多いからってことできちんと体術もやりはじめた。ティタニアさんとは絶対組手とかしないけどね、殺されそうだから。
WOMOとかいう組織のことは相変わらずわからずじまいだけど、実験施設とか研究施設とかなんかそんな感じがする。検体番号みたいなもんだろう。となると俺自身もその検体で記憶をいじられてる可能性がある。何一つとして思い出せないから本当にわかんないけどな。だって俺本読んでたら電柱にぶつかったんだし。あれから変な声も聞こえないし。
みんな忘れてるかもしれないけど俺はエロサイト見るのやめた結果、異世界に来たんだからな。トラックなんかに轢かれなくても異世界転生は可能です。
「ウタキさん、フロッカの東に魔物が出たらしいっす」
「行くか。そろそろ魔王の城目指しても行けんじゃない?」
「いや、ロスくんにも勝てないくせに死にたいんすか?」
「リト、最近俺に当たりきつくなったよね」
唯一好意的だったリトが最近反抗期らしい。そろそろ俺勇者やめていいかなあ、本当に心折れるよマジで。
さて、フロッカは目の前の川を一本挟んだ隣の町なんだけど、おかしい。橋がない。
「・・・ここ、橋かかってたよな?」
「ああ、心もとないが新しい橋があったはずだ。流されたのか?」
「でもぉ、水位はそんなに高くないよねえ?ここ数日そんなざばあっと雨降ってないしい」
困った。開始5分でもう困った。まあほら勇者だからさ、困難はあってこそなんだけどさ、こういう地味なハプニングが一番困るよね対処法ないから。このあたりは町からも離れているせいで渡し船もないし、かといって泳いで渡るにはちょっとハードルがたかい。なんでかっていうと見える距離に滝があるから。
「エレーナ橋作れる?」
「うーん、どうかしら、あの、あの辺ね、多分妨害の結界が張ってあるのよ。だから橋掛けた瞬間に壊れちゃったりするかもしれないわ」
「結界?なんで?フロッカには魔法使いも魔導士もそんなにいないはずだろ」
「うーん、でもあるのよ。フィーちゃん見える?」
「わかるよお、あの木のとこでしょお?」
フィーアが眉間にしわを寄せながら対岸を見ている。ふいに何を思ったのか火の玉を連射した。・・・・・・火の玉?
「うおおおおおい!?フィー!?なにしてんの!?燃えるよ!?」
「え、ごめーん、燃えても良いと思ったのお」
「なんで!?」
「アレ、見つけちゃったから殺しちゃおー☆と思って」
「アレ?」
フィーアがなんてことないように対岸を指さす。さっきまで生えていた大きな木がすっかり消えて、変わりに黒焦げになった何かが転がっている。なんだあれ、木じゃないよな。目をこらしてみてみるとモソッとにぶくうごめいて「けほっ」という咳とともに黒い煙を吐きだした。
「こりゃ!わちきをころしゅきか!」
「あー、なんか見覚えあると思ったらお前かあ」
ギリィ、とフィーアが対岸をにらんだ。まって、初登場のときより敵っぽい顔してるよ。
お久しぶりです。きちんとした公募用の作品を書くにあたってこちらを休載しております。なんかでも毎日アクセスあって嬉しい。ありがとうこんなアホみたいな話読んでくれて。
そういえば、個人的にこのタイトルを「ヤンハレ」って略してます。なんか良い略し方あったら教えてください。




