63 Dive To Medic
『この日記を見つけてその意味を解明しようとしているのであれば、君はおそらくWOMOの職員だろう。
私は長年WOMOでIR部門の人材開発課にいた。最も外にその記録はないだろう。
私の存在はある日を境に抹消された。WOMOからも、社会からも。家族はいないので良かったが。』
書き出しはこうだった。このWOMOって組織は会社みたいなもんなのか、IR部門ってのが何を指すかわからないのが痛い。とはいえ人材開発、なんて書き方してるから俺みたいに「異世界」から来てる人の書いたものには間違いない。続きはこうだ。
『IRにおいては外部からの干渉に限界があるというのが現時点での上の見解だ。まったく無茶なことをいう。
医学の進歩なんて語っておきながら機械化には程遠いと言っているようなものだ。
私の部下も何人かここに来ているが、彼らも帰ることは叶わないかもしれない。それを望んでいるがね。
精神科医には精神科医が必要な現状はいまだ変わらない。人とはそういうものだ。』
医療関係者。たぶんそうだ、この人は外部から来た医療関係者だろう。とはいえそれならタカミツ医師と交流があったってよさそうなものだけど、こんな日記書く必要あるか?なんだ、この人はなんで…いや、望んでる?ってことは自分の意志でこの世界に来てるのか?だったら帰る方法もわかるかもしれない。
『ここに記すのは、この世界では血の零時事件と呼称される、マツリカについてのIRである。』
「血の、零時事件」
「マツリカさんについての、なにかってことっすよね」
「なんだ、なんか見つけたのか?」
「あ、ティタニアさんも、これ見て」
四人で日記を囲むように目線を落とす。恐る恐る次のページをめくるとびっしりと事件の記録が書いてあるっぽい。時間や、家系図?家の間取りのようなものまで様々だ。すごく丁寧に書いてあるけれどなにせ食人鬼の記録だからあちこちに不穏な単語が多い。
『コードネーム:マツリカ 検体番号:5532765600 分類:赤 本名:オガワ マサト』
「コードネーム?」
「みょうじ、とやらがありますね。マツリカさんも異世界からいらしたのでしょうか」
おかしい。マツリカさんはアシュタルさんの弟だっていってたはずだ。それがなんでこんな記録が残ってる?この世界の人間じゃないなんてことあるのかよ?だって異世界転移って文字通り違う場所に移動することなのに…転移?いや、転生だったら?マツリカさんが異世界転生してマツリカって名前で生きてただけ、前世とか自分の世界のことを知ったうえで黙ってただけだったら?
それにこの検体番号って、なんだ、どっかで似たような番号を見た?いや、聞いたか?不規則な数字にしか見えないけどなんかひっかかって
「この検体番号、識別ナンバーとケタが一緒っすねぇ」
「…なんて?」
「最初に事務局でウタキさんにも言ったじゃないっすか、識別ナンバー。まあ覚えとく必要ないっすけどねーあれは」
「なあ、あれ、あの数字どうやって決めてるんだ?」
「転移転生者識別システムってのがあって、それに情報打ち込むとランダムではじきだされるっす。だから俺たちが決めてるんじゃなくてシステムが勝手に計算するんっすよ」
こんな偶然あるのか?転移してきた、しかも多分自分の意志で来た人の日記、血の零時事件、マツリカさんの情報、ケタが同じ番号?10桁だぞ、そんなことあるのかよ。
ぞわっと背中が寒くなる。もしかして今、とんでもないこと知ろうとしてるんじゃないの俺たち。
おかしいなギャグを書いてたつもりだったのに




