57 閑話・???のこと
「脈拍、呼吸ともに数値安定しています」
「映像の出力はまだできてないのか!早くしないと取り返しがつかなくなるぞ」
「それが、どうにも本人からブロックをかけられたみたいで・・・」
「ブロック?無意識なのにか」
「無意識下で行われたものかと思われます。脳内インパルスの伝達速度数値が一瞬変動しまして」
「ふむ、自分では知りたくないことを抑制しているわけだな」
「おそらく」
「しかし映像出力ができないとなると治療に支障が出る。彼は被検体じゃないんだ、早い完治が望まれる」
「トストリアで邂逅はしているようです、こちらの映像で確認できます」
「勇者か。なるほどな、よくこんなになるまで・・・」
「ご家族に連絡しますか?」
「私たちは国の犬か?否、探求者であり善であろうと志すものの集まりだ。彼の家族に連絡したところで、治療の隠蔽はどうすると言われて終わりだろう」
「・・・」
「人間一人生かすのにこれだけの設備が必要な世界なんてどうかしてると思わないか。科学の進歩?医療の発達?そういうのはね、重病人が増えて、なぞのウイルスが発生して、パンデミックが想定される世界なんだよ。」
「私は、この装置が革新的だと信じています」
「革新的には違いないとも。だがね、その善悪を決められるのは神だけだよ。私たちは結局道具に頼っているだけだからね」
「! 所長、映像へのアクセス成功しました!」
「彼は何をしている」
「王都にいるようですね、これは・・・アシュタル?」
「まさか・・・ロータスたちのルートに傾いているのか?あそこはまだ未完成のはずだ」
「そんなこと言われても」
「はやく、なんとかするんだ!彼の精神が本当に死んでしまってはなんの意味もない!」
「は、はい!」
「歌生くん・・・きみはどこまで・・・」




