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異世界転生してハーレムルートなのにヤンデレしか選択肢がないんだが?  作者: 沢瀉 妃
勇者と魔王とぐだぐだ編

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42 知ることで後悔してもしらないよ


「さあて、なにから話したもんかしらねえ」



カウンターの中でマスターはこちらを見つつティーカップを拭いている。あの人はここ数年でこっちに来てる人のようだからタカミツ先生よりは現代社会に詳しいだろう。5年前っていうと、俺は中学か高校くらいだもんな。なにがあったかも思い出してみないと。


ひっかかることはいくつかある。この陣取りをはじめとしてルート、役職はもちろんなんだけど、転移転生のランダム具合だ。


うっかり魔物と遭遇して死んじゃいましたってのは事故だなとしか言いようがないけど、タカミツ先生みたいに長くとどまる人もいればすぐいなくなる人もいる。ここ最近現れた人もいる。なんでそんなにばらつきがあるんだろう。年齢や性別は関係ない。いや、女の人のが多いとは言ってたか。しかも見た目や国籍になんら共通点なんてないのに。



「さっきも言ったけれど、意味があっての陣取りじゃあないわ」


「なぜそう言い切れるんです?」


「事実だからよ」



事実。ここではこの事実ってものにカラダがある。「なぜかは知らない。そう決まっている」

みんなが口を揃えていうそれは間違いなく事実が存在することそのものを指している。

事実っていうのは大切なものだ。事実なくして歴史は語れないし、浮気調査の依頼は来ないし、論文だって書けやしないし、履歴書にだって反映できない。

それはそれとしてここでは「だってそういうものだから」という認識と言葉にあまりに権力がありすぎる。だって事実に権力なんて必要ないのに。



『―――――――の―――イ――方式―――――が―――――』



「なんだ・・・」



『――さえ―――――――も―行――――』



「なんだよこれ・・・っ」


「どうしたの、坊や」


「ウタキくん、顔が真っ青です、横になりなさい」



頭が割れそうに痛い。今、なんか聞こえただろ。なんだ今の。

知るなってことか、何が正解で何が違和感かわかっちゃいけないってことかよ。なんだよ、そういうところまできちんと勇者っぽいことしてくれやがって。

ここで本当のことを知るには、まだ何もかもが足りないってことかよ。戦えって?抗えって?倒せって?んなもん俺に関係ない。俺は・・・



「俺、なんで勇者になったんだろうな」


「へぇっ?なんっすか急に」


「だって今までのやつは適正ありそうです!みたいなのばっかりだったんだろ。ロッタさん、あなたのときもそうでしょ?」


「先代勇者?ええそうね、たしかカズキっていったけど、もうすこし勇者然としてたわよ」



ま、わたしが勝ったけど!と彼女は鼻息荒くそう言った。



「その人は?」


「さあ、勝負が終わって代替わりして・・・気づいたらもうログがなかったそうだけど」



ログがないってことはこの世界で死んだわけじゃなく、この世界から出ていったってことだ。けど、負けたとはいえ勇者だったのにでていく理由なんかがその背景にあるんだろうか。

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