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異世界転生してハーレムルートなのにヤンデレしか選択肢がないんだが?  作者: 沢瀉 妃
勇者と魔王とぐだぐだ編

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31 人間が勝てるけど戦いたくないもの



「住人は全員町の南側に移動してるみたいっす。隣町はトストリアっていうっすけどそっちでも避難体制ととのったみたいっすよ」



リトがいつぞやの茶色いルービックキューブかちゃかちゃしながらそういった。やっぱりあの謎の立方体、パソコンとかスマホみたいな使い方してんだな。いやわかんないけど、そんな感じする。動力とかはわかんないからきかない。聞く気もない。



「魔王軍の詳細とかはわかったのか?」


「数は多分300くらい。そんなに大きな部隊じゃないっす。魔力放出の強いのが一体いるんでたぶんこいつが指令役だと思うっす」


「300か」



大教室の抗議にきっかり全員いるくらい、って認識でいいかな。多いような少ないような。

一応、騎士団の偵察部隊はもう向かってくれてるらしいし、北部の国境隊とカルセルム自警団みたいな人たちは協力してくれるらしい。こっちの数は90人程度。かなり不利だ。



「ウタキ」


「うん?」


「自覚はないかと思うがイメージしたものを目の前に思い描けば実像化できるぞ。アリアが面白半分で魔導適正投げつけたから大体のことはできるじゃろうな」


「チートじゃん俺」


「使いすぎるとぶっ倒れるぞ、注意しろ」


「おっけー、メイス使うよりちょっとだけなんとかなりそう」



ほんとにちょっとだけだけど。

俺はまあいいとして、問題はエレーナだ。リトが余分な魔力を吸い出すって言って、地面に魔法陣みたいなのを描いてそのうえでおろおろしてる。

リトはリトでなんかやってるしそばにはティタニアさんもいるから大丈夫なんだろうけど。



「ウタキ様、ウタキ様がさっきから言ってる「ちいと」っていうのはなんですか?」


「え、うーん、ずるいって意味かなぁ、不正な強い力のゲットの仕方してるよね、っていうか」


「なるほど、「ちいと」というんですね。そういうことでしたらウタキ様のそれは「ちいと」には相当しないでしょう」


「なんでですか?」



相変わらずにこにこしたこのお兄さんの髪は綺麗な紺色だ。濡れ羽色みたいにつやつや光ってる。バングルはランサー。属性はどうやら闇らしい。

闇属性なのにこんな人当りよさそうなの?っていうか闇属性ってどういう身体能力なにかいまいちわかりにくいよな。



「この世界でズルはご法度です。法律とかではなくて自然の力でエラーがおきるようにできてます。現にエレーナさんのはエラーですから」


「俺はなるべくしてなってる、ってこと?」


「きっとそういうルートなんだと思いますよ」


「・・・お兄さん、名前は?」


「俺ですか?オーグレスっていいます。あ、足音がしますね、そろそろ来ますよ」



随分と耳がいい。俺にはなにも聞こえない。

ここはすこし小高い場所だから国境付近がよく見える。すっと目を凝らすと、一か所だけ黒い線になっている部分があった。どうやらあの辺に魔王群がいるらしい。



「もうそろそろ、自警団もこっちくると思いますし、戦闘ですね。いやあ久々すぎてわくわくするなあ」



楽しそうにしてる。経験者かなちょっとうらやましい。



「どうやって串刺しにしてやろうかな、あははっ」



前言撤回。だれだにこにこしたお兄さんとか言ってたやつ。

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