27 あと30分
「あと30分くらいで到着します」
「まだ町はなんともないんすよね?」
「ええ、避難勧告もでてますし魔王軍もまだあと20キロほどの距離にいるようですので」
「ウタキさん、まじで勇者みたいっす…」
「一応ちゃんと勇者だよ俺は!」
さらっとリトが失礼なことを言う。実感無いし思ってもないけど俺は勇者だよ。っていうかお前が最初にそう言ってたんだろ。
「で、パキラ、お前1時間半がっつり寝やがって」
「わーかったわかった水晶水のことじゃろ」
気まぐれでするすると動くのは猫のようなくせに、顔はキツネめいていて、かと思うとめんどくさがりで定年後のおっさんかこいつは。
食い物の匂いのときとかばっかり起きてくるし、いや水晶水の話どこいったんだよ。
「まずヴァニキソスっていうわしらの種族はあと数百しか個体がおらん」
「絶滅危惧種ってこと?」
「簡単に言うとな、わしらの尻尾や牙には値段がつく、知能も他の獣族と比べたら高いから奴隷にしたがるのも多い」
アリアさん、ヴァニキソスと話すのは楽しいってことを言っていたけど、そもそも数が少ないからパキラの固有名詞がでてきてたのか。
てことは、パキラはペットじゃなくてリトと同等というかギブアンドテイクとかそんな感じになるのかな。
「獣族の鼻はよくきく。特定の地質で作られる水晶は魔力を吸収しないしそのにおいを嗅ぎとるのも人型の種族には無理じゃ」
「アリアさんにも?」
「あいつ二足歩行じゃろ」
なんでかはしらん、そういうふうにできとるんじゃ。
パキラはそういった。「そういうふうにできてる」これも何回も聞いた話だ。
人族に限らず、自分たちの生態すらよくわかってない生き物がこの世界には多いらしい。もちろん奇跡の生還!なんてニュースもあるにはあるが、魔導適正とか異能力とかそういう説明がつかないものへの設定ががばがばなんだよな。
「エレーナとかティタニアさんは?」
「私は魔導適正がないから魔法のことはなにもわかんないわ」
「わたしの祖母は耳長族だから私は魔力のあるなし程度なら感知できるが」
「そういうのを全部嗅ぎ分けるのが知能指数の高い獣族なんじゃよ」
「質問だ。ヴァニキソスの生態はいまだ謎が多いと聞くんだが」
「人間の理解の範疇を超えとるちゅうだけじゃろうな わしらに変わった力なんぞない」
けろっと言い放つパキラはずっと真顔だし、リトにいたってはこっくりこっくり船をこいでいた。緊張感ねえなこいつ。
そういや魔王族とパキラたちみたいな獣族の境目もよくわかんないな、あとで聞いてみないと。
「で、ヴァニキソスと水晶水にはどんな関係があんだよ」
「せっかちな男は褥で嫌われるぞ」
「うるせえな!自慢じゃねえけど俺は清らかな体だよ!」
清らかな体っていうと聞こえがいいかなと思って。




