25 勇者かどうかは他人が決める
「まあ、そのときの勇者の言うことを尊重するっていうのはどの世代でも暗黙の了解みたいなところがあるからな。付き合ってやらんこともないぞ」
「わあ!よかった!ウタキ、ティタニアさん仲間になってくれるって!」
「紅薔薇様とダンジョン調査隊の隊員だよ?もう俺いらないんじゃないの?」
「いらないだろうが、ホウキっていうのはゴミがあって初めて存在意義ができるものだぞ」
「ほらすごい遠回しなようで直接的にゴミ扱いされてる俺」
困ったような顔で女騎士さんはそういった。優しいようなこと言ってるけど端的に俺のことゴミ扱いだからね?こんなんでもこの人俺のルートなんじゃないの?ヤンデレならヤンデレっぽくもうちょっと俺のこと大切にしてくれてもよくない?
「そういえばきちんとした自己紹介はしてなかったな。私はティタニア、王室の騎士団の騎士団長をしている。クラスはセイバー、属性は火。得意分野は特にないができないこともあまりない。今の目標は言わずもがなお前を殺し、私の手で貴様の存在を永遠にすることだ」
そんなすごくいい笑顔で言わないでほしかったな、と思う。思うだけにしておこう。
「失礼するっす!王様!王様は居ますっすか!」
「んあ?おお、リト!どうしたぁ?」
「緊急事態っす!あれっウタキさんとエレーナさん!?ちょうどいいからもうみんな事務局まで来てくださいっす!国の一大事なんっすよおおぉ!」
半泣きで飛び込んできたのはもうすでに懐かしいかな、事務局のリトロスだった。
◆
事務局に来たのはこの世界に来たとき以来だから随分と久しぶりな気がする。
あのときだってみんなてんやわんやと忙しそうにはしていたけれどこんなに張り詰めた空気じゃなかった。なにか起きてるんだって、俺でもわかる。リトは泣きながら中二階のような高さの椅子に腰かけた男に声をかけた。
「アマレア局長っ、王様とウタキさんお連れしましたっす!どうなったっすか!」
「すまないな、リト、王様こちらへ!」
カンカンカン、と真剣に早足で王様は局長さんの席へ登って行った。目でこっちを見てきた、ってことは俺も来いってことだよな。
ついていくと局長さんは俺にも丁寧に頭を下げてくれる。
「ウタキさん、局長のアマレアです。いいですか、この大画面の中心の青い部分が王都、それ以外も色分けして
それぞれの街を表しています。北のあの黄色いところ、そのもっと上の部分に赤い丸が見えますね?」
早口ながらにアマレアさんは丁寧に説明してくれる。その間も王様は眉間にしわを寄せて画面を凝視していた。
「あの赤い丸の集団は簡単に言えば魔王軍の一端です、そしてあの黄色い部分は町。あの街はカルセルムといいます」
魔王軍。ああ、攻められてるのか、という漠然とした理解でしかなかったその説明はアマレアさんの一言で氷点下になったんじゃないかと思う。
俺が柵から乗り出すように画面を見つめたことに二人は、階下に居た人たちも驚いたように俺を見た。
「今、カルセルムって言いましたよね?」
「え、ええ、もう地理を覚えたのですか?」
「いや、全然。王都の道すらわかんねえ」
「ではどうして・・・」
『あそこには医者がいないので』
「なあ、あの軍隊、町についたら何をするんですか」
「略奪や破壊行為でしょうね、殺人は、わかりません。今代の魔王と歴代の魔王ではやり方も何もかも違うので・・・」
「王様、人が死ぬことってあるのか」
「ある。事故じゃなく、魔王軍に殺されることだってあるさ」
『今は、カルセルム…北のほうの町にいます』
あの二人はいとおしそうに言っていた。
自分の父親が大切なんだって、見てわかるくらいに。
「クレアとクレオの親父さんが危ない」




