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02 ゲームでいうところのチュートリアルその1


「えーと、お姉さんどちら様でしょうか」

「あら、ごめんなさい。王室付きダンジョン調査隊のエレーナよ。属性は水」


 待ってなにこの電波少女。

 王室付きとかどこの中世ヨーロッパの話ですかとか聞こうと思ったら、属性水とかわけわかんないこといいだした。ポケットに入れるモンスターか君は。

 いや待てよ、でもさっき看板に。


 ちらりと振り返る。やっぱりそこは草とせせらぎと風と森の中に丈夫そうで素朴な木の看板があって「王都:北に約300m」と変わらぬ異彩を放っている。いや森にコンクリートの棒が生えてたほうがおかしいか。この場合むしろこっちのが自然だわ。


「あなた見かけない顔ね。もしかして王都に住んでる人じゃないのかしら?」

「この辺どころか気づいたらここにいたんだけど……」

「あっ、じゃあいつものやつね! 他の世界から来たって人結構多いのよ。日常茶飯事なの」


 日常茶飯事で異世界転移に説明ついちゃう世界なんかがあってたまるか。正直なところなんかのビックリ企画なんじゃないのかと疑うくらい軽い。大事なことだからもう一度言う。すごく軽い。

 大体、思ってみた俺が一番納得していない。異世界転生・転移って流行りのファンタジージャンルだろ。VRMMORPGだったり死んだり様々あるけども!


 「髪が黒いし、腕輪もつけてないからきっとそうね。異世界人の対応してくれる事務局があるから案内してあげるわ」

 「待って待って待って消化できない!!」


 いきなりそんなにベラベラ話されてもついていけない。自慢じゃないけど、あいにく俺は頭がよくないからいっぺんにいろんなことが消化できないのだ。

 髪が黒いとか腕輪がどうとか、なんかその辺がなにがしかの基準なんだとしても知識もない俺になんの説明もなくついてこいとかそれは無理ってもんだろ。

 いくら可愛い女の子でも電波系の逆ナンはさすがに怖いよ俺だって。

 いやらしいことを期待してないと言えばそれは嘘だけどね!!


「なんにもわかんないって顔ね……」

「なんにもわかんないんですけど!?」

「簡単に言えば、腕輪は身分証よ。ここに入ってるマークはクラスで私はガンナー。髪色は属性色で私はさっき言ったように〝水〟だから」


 ほら、と腕輪を見せられる。バングル? っていうんだっけこういうの。弾丸の絵と恐らく個人ナンバーが彫ってあった。なるほどわかりやすい。


「この世界に住んでる人ならみんな持ってるはずなの。詳しいことは事務局で対応してくれるわ。ね? 行きましょう」

「すいません……」

「謝らないでよー、これも私の仕事のうちだもの」


 看板が指している方へと歩き出すエレーナはにこにこしながら俺を手招いた。

 ゲームみたいな小難しい単語が出てこなかったのが救いだ。俺はソシャゲ程度のチュートリアルにものすごく時間がかかるタイプだし。

 なんでかって? 話を聞かねえからだよ。


「そういえばあなたの名前聞いてないわね。なんていうの?」

「え、おれ? 俺は……」


 こういうときって本名名乗っていいのか? 異世界転生系って役職で呼ばれてるイメージあるんだけどみんなどうしてるんだ?


「エレーナたちって名前のあとに名字言うの?」

「たまに聞かれるけど名字ってものがそもそもないわね」


 名字がない。農民の世界か。あいにく俺の貧相な脳みそから絞り出せる感想はそんなもんだった。


「あなたにもその名字っていうのがあるのね」

「あるけど、言ったところでって感じ……?」

「事務局では聞かれると思うわ」


 まあ、どうせ下の名前で呼ばれるんだろうから下の名前だけ教えればとりあえず彼女は困らないんだろうけど。


 「俺はウタキ。ミズガキ ウタキだ。」


漢字表記だと 瑞垣 歌生 となります。

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