第6話 修行
魔族領アランニア地方。
メルによって洗脳から開放された魔族たちが密かに作り上げた街ピオハが存在する。
人里からは遠く離れ、霧の中に存在するその街は幻の街とも言えるべく神聖な雰囲気を纏う。
「タケルーご飯できたよー。」
メルの家の庭で一心不乱に素振りをしていた。
「998、999、1000…ふぅ」
朝食前に必ず1000回の素振りを行なうのが日課になっている。
そして、メルは終わりそうな時を見計らって呼びにくる。
「お疲れさま。はいっ」
メルがタオルを渡してくれる。
汗を拭きながら、家に入りカレンダーを見ると、一ヶ月が経つのかとメルに連れてこられた時のことを思い出した。
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アビス・デ・スコトス峡谷を飛び立ち、メルの魔力がつきかける度、献血(吸血)をくりかえし、俺が真っ青な顔になると、メルの瞳は真っ赤になり、俺の血の気が戻るとメルの瞳は真っ青になる。
メルの瞳は魔力メーターの様なものであり、魔力が充分であれば赤、反対に魔力枯渇に伴い青に変わる。
無論、少女の時のメルの瞳は青だった。
瞳を青にしたメルが迫ってくるのだが、
これがまた刺激的だったと特筆しておこう。
上気した顔で「はぁ…はぁ…タケル(血を)頂戴っ」
などと扇情的に迫られるのだ。
ただし、その数分後には生死をさ迷うことになるのだが……。
まぁそんなこんなで、赤青を攻守交代しながら2日かけて、ピオハ に到着した。メルが開放した魔族達は友好的だった。
最初こそ警戒心を露にしたものの。
最近は街で会えば、
「メル様との生活はどうだい?」ニヤニヤと尋ねてくる。
「料理はうまいよ。」などと返すと。
「料理上手は床じょ…『 言わせねぇからなっ?』」とどこぞの漫才をする仲だ。
ちなみにメルは種族柄言わずもがな……である。
サキュバスである彼女は、必ずと言っていいほど寝込みを襲ってくるのだ。
最初の方は、騙くなに断っていたものの。
血気盛んなイチ高校生男子にその誘惑は耐え難かった。
背景、母上様俺は大人の階段を登ってしまいました…。
アビス・デ・スコトス峡谷からメルが好意を寄せてくれていたことには気付いていたが。2週間が経ったその日、ついに青色の瞳を血走らせ寝込みを襲われ、無理やり奪われてしまった。
我が純潔は花と散るらむ……。
特に断る理由もなく諦めたのと、欲望に勝てなかったのが、特に後者が原因なのだが。最初こそメルの強引さに押されたものの、今では相思相愛である。と自負している。
イチャイチャするのは魔力補給の為。
昼間のメルはスパルタだ。
「タケル!!回避2秒遅い!!」
「魔力込めるのが速すぎる!!」
などと流石は年の功、的確なアドバイスをくれる。本人に言えばベットで搾取必死なので言わないが。え?何を搾取されるかって?それはご想像にお任せする。
メルの年齢はどうやら400ピー歳らしい。
本物のロリバb……おっと口が滑りそうになってしまった。
口に出していいのだが、メルが睨んでいるのでこの辺にしておこう。
「タケル…昼からは実戦訓練ね!」
「ぶふぉぉ」
どうやら考えがバレたらしい。思わず口に入れたスープを吹き出す。
実戦訓練とは、勝った方が負けた方を好きにできる(主に夜の主導権を)ルール付きの訓練だ。
ちなみに勝率は4割。
最終的に勝っても負けても、結局は(ベッドの上で)負けるのだが……。
そんな俺だが、メルには勝てないもののステータスは飛躍的に伸びた。
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職業 剣士 level 20
種族 人
体力 1000
魔力 5000
攻撃力 15000
魔法攻撃力 1000
防御力 2000
魔法防御力 1500
技能: 残刃 瞬身 魔力増強
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level15で突如ステータスに現れた技能。
残刃…剣を振るった後に遅れて追撃の刃を繰り出せる。タイミングは任意、同時に繰り出すことで、間合いを伸ばすことも可。
瞬身…身のこなしを早くする技能。残像を残すことが可能。
魔力増強…これは恐らくメルに血を吸われることによって得た技能だろう。自分の魔力を一段階飛躍させることができる。これにより楽に上級魔術を使えるようになった。そしてメルの魔力回復速度をあげた。
ちなみにメルのステータスはというと
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職業 御子 level 50
種族 魔
体力 1000
魔力 15000
攻撃力 3000
魔法攻撃力 15000
防御力 1500
魔法防御力 5000
技能:魅了 誘惑 再生 魔力吸収 先読み 飛行
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魅了、誘惑…サキュバスの固有技能だろう。
再生、魔力吸収…これらについても吸血鬼の固有技能だ。
飛行…これも同じく種族特性だ。
先読みは職の技能であると思われる。メルは野性的なカンが鋭いと思っていたのはこの先読みのせいだったらしい。
物理攻撃特化してる俺と、魔法特化したメル、二人で組めば対敵に対しては相性は良いのだが。
訓練となると相性は最悪なのだ。
「降参したい…」
ヤル前から早くも、憂鬱だった。
そんな俺を尻目に
「んっ…何か言った?」
と嬉々とした表情のメルであった。
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その夜、なんとかメルに勝ち勝率を5割にしたものの、結局はベットで負けたタケル。
「そろそろだと思うの…。」
「ん?説得か?」
「いや、今のままじゃアイツに辿りつくことはできないと思うの。確かに強くはなったのだけれど、まだ足りない。だからね、迷宮に潜らない?」
「そう…だな。」
迷宮かぁ。RPG定番のレベル上げだよな。
魔物相手に戦っておかなくてはと思ってたとこだけど。
「私自身もう一歩強くなれたらと思うんだ。」
これ以上強くなるんすかメルさんや…
「そうだな、それが1番の近道なのかもしれないな。」
しばしの沈黙……
メルの目が爛々と輝きだしたのだが。
「…メル…さん?その…もしかして…」
「…タケルのせいだからねっ、責任とってもらわなきゃ」
メルは妖艶に舌舐りした。
「……イヤアアアアアアアア…」
その日、俺は2度目の強制魔力補給をさせられた。
体力がもたぬぅぅぅ…
次回より迷宮編です。