第3話 魔物討伐
異世界へと召喚され1週間経った。
王国騎士からのしごきを受け、学校でのテストより真剣に魔術を勉強したのだった。
そして俺と澪は現在、演習場で模擬戦中だ。
カキンっ
剣が弾き飛ばされた。
「また私の勝ちね!」
「くっそーずるいぞ澪、力任せに弾きやがって。」
「タケルが弱いのが悪いのよ。おーほっほっほ」
もともと剣道をしていた為、剣術には自信があったのだが、扱い慣れない形の剣が使いづらくて仕方ない。
「日本刀があればなぁ。」
「負け惜しみね!私なんか剣なんか持ったこともないんだからね。」
空手に2本の短剣をもつスタイル。
なんであんなに器用なんだアイツ。
「おっ、今日もやってんなぁ」
「あ、傑くんおはよー!」
「おはよう澪ちゃん、タケルまた負けたのか」
傑がカラカラと笑う。
「うるせぇ」
「あ、ちょっとタケル待ちなさいよ。このあと魔術の訓練だからねー!」
ひらひらと手を振りながら城内へ向かう。
くそぉ。澪に負けるなんてなぁ。
「タケル、剣で澪ちゃんに負けるのがよほど悔しいんだろうな。」
「私が勝ってるのは剣術ではないけどね、だいたい2本使ってる時点でハンデみたいなものだし。」
「それでも女の子に負けるのは悔しいんだぜ?まぁタケルならそのうち強くなるだろうけどな。」
「え、なに?なんか秘策があるの?」
「んー澪ちゃんには秘密」
「気になるじゃない。」
「ま、そのうちわかるって、ほらオレらもそろそろ行かなきゃ遅れちまうぜ」
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この世界に存在する魔法の系統について
火
水
風
土
雷
特殊系統
光、闇
基本5系統に特殊2系統の魔術それぞれに
初級
中級
上級
魔級
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俺達全員は中級までは取得することに成功した。
魔術中級と剣術を取得できたので、実践訓練の為、王都から1日かけ隣の街ファリダットへ来ている。
ファリダットは王都やや東に位置する。
拓けてはいるが魔族の領域が近く、奥まで踏み入れることができない。
城壁が築かれているため街中に魔物が入り込むことはまず無いが、定期的に討伐隊が組まれ森に入る為、安全な街らしい。
「君たちにはここに滞在し、魔物討伐をしてもらう。とはいえ、百パーセント安全は保証できない。だが、君たちなら出来る、その力は持っているはずだ。」
城門から森へ出る。
ほどなくして遠目に魔物の姿を捉えた。
体長2メートル程の熊だった。
ただし、爪と牙を除いて、爪や牙は50センチほどの長さがあり殺傷能力はやばそうだ。デッドベアーと言う名の魔物らしい。
「よし、英雄行ってみろ」
「はい。恭子は援護魔法を、桜は下がっててくれ。」
「わかったわ、水球を飛ばすわ。」
「了解」
3人が駆け出すと、デッドベアーも気付いたようで、四足歩行で駆け出す。
「くっ…速い…」
「ウガァァァア」
デッドベアーの爪が英雄の剣と競り合っている。
力は拮抗といったところだが、所詮は魔物。
数回切り結んだ後、英雄に袈裟斬りにされた。
「さすが英雄くんね!」
「私たちの出番なしかぁ。」
「英雄よくやった。他の者も次は戦ってもらう。」
数時間後。
クラス一同は、デッドベアーを狩ることに成功する。デッドベアー自体は下級の魔物らしい。
そろそろ日が落ちて帰ろうかと歩いていた。
ガサッ…ガサガサ
「ウオォォォン」
なにかが草むらから飛び出してきた。
夕闇に光る赤い目の狼のような魔物が前方から2匹。
「レッドアイウルフ…だと…?」
王国騎士が動揺している。
「こいつらもオレ達がやってやる、行くぞ」
英雄、恭子、桜が駆け出した。
レッドアイウルフは英雄に飛びかかった。
飛びかかってきたレッドアイウルフにカウンターで吹っ飛ばす。
すると、もう一匹も追うように森の奥へ消えた。
「このまま、追撃します。」
「まてっ!!!英雄!!!」
忠告も聞かず英雄達は森へと消える。
騎士達の話によると、レッドアイウルフは中級の魔物で本来なら討伐隊総出でかかるはずの魔物だ。その理由は奴らは群れをなして狩りをするからだそうで、調子に乗りやがったな英雄のやつめ。
ガサッ…
ガササッ……
よく見ると四方に赤く光る目が12個、6匹のレッドアイウルフ…
「ちっ囲まれたか。みんな、俺達から離れるんじゃないぞ」
同行してきた騎士は5人、彼らは一人一匹を相手取り苦戦を強いられている。
残りの一匹はこちらの様子を伺っているのか、赤く光る目だけをこちらに覗かせている。姿は未だ確認出来ない。
王国騎士たちが苦戦を強いられ俺達も助太刀に向かうが、一人の騎士が傷を負わされてしまう。
陣形が崩れた穴をつき一匹のレッドアイウルフが飛び出してきた。
そいつは全長3メートルはあろうかというでかさで、先程相手どっていたやつはせいぜい1メートル、明らかにリーダー格の魔物だった。
「まずいっ」
王国騎士が、呪文を詠唱する。
「我、汝を拒む、聖なる壁よ、我らを守りたまえ」
瞬間、光の壁が出現し、間一髪攻撃を防いだ。
が、しかし次の瞬間。
パリンっ
「なん…だと…」
光の壁は脆くも一撃で崩れ去った。
「みんな下がるんだっ!!!」
そんな怒号が飛ぶが、しかしレッドアイウルフが同時に飛びかかり、前足で強烈な一撃を繰り出した。
俺はとっさに剣を構える。
風切り音と剣と爪の衝撃音が響く。
「澪っ無事か?」
隣にいたはずの澪から返事がない。
「澪っっっ!!!!!!」
澪は先の衝撃をいなせず、後方に吹っ飛ばされ頭から血を流し気を失っていた。
「てめぇ、殺す。殺してやる。」
「タケルやめろっ撤退だ。」
騎士と生徒達により5匹のレッドアイウルフは屠られていた。
「いや、こいつはオレが殺る。」
挑発するように
「ヴォォォォン」と吠えるとレッドアイウルフは森の奥へと駆け出した。
「タケルっ戻るんだっ」
傑の声がしたが
「殺す、殺す、殺す、殺す。」
やつは絶対に屠ってやる。
澪に傷を負わせたヤツを殺してやる。
しばらく走ると、レッドアイウルフが立ち止まっていた。まるでかかって来いとでも言わんばかりの立ち振る舞いである。
「いいだろう、サシでやりあおうってか。」
レッドアイウルフの腕を切りつける。が、しかし剣はたやすく弾かれる。
「かってぇ…」
レッドアイウルフが爪を振るう。
間一髪回避する。
バキバキバキバキバキ……ドォン
「……くらったらヤバイな」
衝撃波で当たりの木々は倒されていた。
「こんだけ木吹っ飛ばしてくれりゃ火事にはならねぇかな。」
「……炎よ、我が力となり剣に宿りたまえ、炎剣っ!!!!!」
「こいつならどうかな」
タケルがレッドアイウルフに切りかかる。
「ガァァァァァァ」
ダメージは通っている。
炎剣……
対澪のとっておきだった技、魔術を組み合わせ剣に炎を纏わせる。実践で使うのは初めてだがどうやら有効なようだ。
「殺してやるよ。」
森の奥、谷付近にレッドアイウルフを追い詰めた。
「もう逃げられないぜ。死ねっ」一撃を繰り出す。
レッドアイウルフを両断した。
その時両断したはずのレッドアイウルフの片足が
「うそだろ……」
俺は最後の攻撃を食らい暗い谷底へと落とされた。