第2話 異世界での能力
早朝。
「タケル起きて。…起きなさい」
なにやら殺気めいた澪の声がするが気のせいだろう。
「……」
バシン
痛快な音が響くと共に俺の頬に衝撃が走る。
「っ痛。なにしやがんだこの暴力女!!!!……はっ」
「誰が暴力女ですってぇ……」
恐ろしい形相、幻覚だろう角が見える…
「起こしていただきありがとうございます!」
「よろしい。さっさと起きなさいよ。みんなもう集まり始めてるんだから、アンタ1人遅刻するわよ。」
着替えて、昨日の食堂(大広間)に向かう。
既に全員着席している様子を見ると遅刻らしい。
ヴィックが立ち上がり話し始める。
「これで皆様揃いましたな。ではこれよりこの世界のシステムについてお話し致しましょう。まずは皆様手を出してください。そして”我汝と共にあり”と口に出してみてくだされ。」
次の瞬間手から何やらディスプレイが飛び出した。これが異世における身分証らしい。
なんとも便利な世界である。
ちなみに俺のステータスは
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職業 剣士 level 1
種族 人
体力 200
魔力 500
攻撃力 200
魔法攻撃力 300
防御力 200
魔法防御力 150
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この世界の一般兵士のステータスが150であることに比べるとかなりのハイスペックぶりである。
「おおっ!!!!これは勇者様!!!やはりいらっしゃいましたか!!!」
なにやらヴィックが驚いている。
勇者それは光ヶ崎英雄だった。
ちなみにステータスは以下
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職業 勇者 level1
種族 人
体力 500
魔力 500
攻撃力 500
魔法攻撃力 500
防御力 500
魔法防御力 500
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ぶっ飛んだステータスである。
さすが”英雄”だな。などと感心していると。
「さすが英雄くん!!!!私は英雄くんなら世界を救えると思う。」
「英雄くんなら当然ね」
英雄取り巻きの女の子、森永恭子と花野桜である。ちなみに彼女らの職業は、火術師、巫女だ。
魔法に回復を備えた勇者パーティーが完成していた。
ちなみに澪はというと……
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職業 狂戦士 level1
種族 人
体力 300
魔力 150
攻撃力 500
魔法攻撃力 100
防御力 300
魔法防御力 300
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狂戦士……バーサーカーだった。。
予想通りなのだが、本人がすごく落ち込んでいるので、肩をぽんぽんとたたくと目に涙を溜めて恨めしそうに睨まれた。
「私、女の子よ……バーサーカーって、なによ……」
などと、呟いているが何も言えずに苦笑いで返す。
「さて皆様、ステータスについては確認できましたので、これより王都での戦闘訓練を行って頂きます。王都までは馬車で半日程度の道のりですので、準備が整い次第出発です。」
一時解散となった大広間にはステータスを出して、自分の職業の自慢やら、他と比べて落ち込む者。ファンタジーな世界にウキウキとしているもの。
このステータス1回出してしまうと次からは呪文なしで念じれば出てくるらしい。なんとも便利な機能である。
ステータスを出しながらぼーっと眺めていると
「タケルどうだった?」
「俺は剣士だな。傑は拳闘士だっけ?」
「おうよ!この身一つで戦えるぜ!」
なんとも勇敢な御仁である。
「私は予言者でしたわ。」
「荻原は非戦闘員だよな。サポート系の職種でよかったな!」
「ええ。私、暴力はちょっと……」
「悪かったわね、狂戦士で。」
「澪さんにはぴったりですわ。」
澪と桜花がバチバチとやりあっているのを尻目に傑との会話に戻る。
「しかし、拳一つって言ったって武器や防具は必要だろ?」
「言ってなかったか?俺空手やってんだ。」
「初耳だな。まぁ徒手空拳であるのはうらやましいよ、俺は剣がないと魔物相手じゃ速攻ゲームオーバーに成りかねない。」
そう、魔物。
この世界には魔物が存在する。
魔力を持つ獣を魔物と分類するが姿形は獣に限らず、ドラゴンからスライムまで多種多様に存在する様だ。
「皆様、準備が整いましたので、こちらへ」
ヴィックから声がかかり揃って外に出る。
「わぁ~~~」
「おおっ!」
感嘆の声を上げているがその理由は、雄大な自然に、映画なんかでしかお目にかからない馬車。
ここが異世界だと実感させられる風景が広がっていた。
馬車は4台用意され4人に1台で乗り合わせる。
当然のように澪、傑、桜花と乗り合わせる。
「馬車なんて初めて。ちょっとドキドキするね。」
珍しく澪がはしゃいでいる。
「私は、イギリスの別荘では馬車を愛用しておりますわ。」
「「「さすがお嬢様!!!!!」」」
敢えて車ではなく馬車を愛用するあたり、本物なのだろう。荻原財閥恐るべし。
道中他愛もない話をしながら夕暮れ時に無事、馬車は王都に到着した。
到着して間もなく謁見の間に通される。
勇者がいることを聞いた王が一目見たいとのことらしい。
「よくぞ参られた。吾輩はリーンハルト・ブロイック・フレデリックである。」
玉座には金髪碧眼、白い口髭を携えた王が鎮座していた。
ああ、ほんとに異世界なんだな。
「して、そなたが勇者か。名をなんと申す。」
「お初お目にかかります。光ヶ崎英雄です。」
「英雄か。名の通りそなたが人類にとって英雄であることを切に望む。」
「ご期待に添える様努力させて頂きます。」
リーンハルト王は頷いた。
一応それぞれ自己紹介をし謁見の間を後にする。
王都に滞在し、剣や魔法、戦い方を王国騎士から教わる。その後、勇者英雄を筆頭にし各地の内戦状態の鎮圧ということだ。
ヴィックの所と同様に王都に居る間も各個人に部屋が与えられるらしい。
ちなみにヴィックは王国御用達の魔法使いだったらしい。離れたところにいる理由は定かではないが、王ではなく神に信望している様子を見ると、怪しいものである。
謁見の後、晩餐会が開かれた。
王の側近や、女王、王子、王女にも挨拶し、なんだか気疲れしてしまい料理の味などわからないまま晩餐会を終えた。