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ラスボスは幼馴染!?  作者: 駄々っ子
第ニ章 獣族編
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第17話 捕虜

大森林の中、木か木へと飛び移る物体が5つ。

ひとつは狒々。

もう4つはタケル達を運ぶために籠の様なものを担いだ猿人だ。

2人ずつ籠に乗せ2人の猿人族が担いでいる。

捕虜として大森林の奥へ、猿人族の村からこうして連行されている。


数時間後、森の奥へと到着したようだ。

籠の中からチラりと見える風景から地面に降り立ったことがわかる。


「おぇぇぇぇぇぇ…」

澪と傑は籠を降りるとすぐに草むらへと駆け込み嘔吐してしまった。

かなりの速度で木から木へと飛び移り籠の中はそれはもうひどい揺れだった為だ。

なぜ桜花は平気なのだろうかと、桜花を見やると。


「淑女の嗜みですわ。」


と言っているが、顔色はかなり悪い。

大方、殿方の前で醜態をさらせないというお嬢イズムなのだろう。


ちなみにメルが籠の中を無重力状態にしくれたおかげで俺は平気だ。


「ズルイわ…そんなことできるなら別れて乗ってくれてもよかったじゃない。」

青白い顔をしながら澪が訴えてくる。


「こんな移動だとは思ってなかったから仕方ないだろ…」


「まだ気持ち悪いわ…」


そして狒々を先頭に歩く。

澪達はフラフラしている。

あまりにもつらそうなため、途中で休憩しながらだ。

そのたびに草むらに消える。


フォーとスーに関してももともと白い顔から血の気が失せている。

何度か付き添いでタケルとメルが介抱に向かうのだった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「そろそろ奥地に入るぞ。悪いが手枷をハメさせてもらう。

武器も預からせてもらうぞ。」


狒々に各々武器を渡す。

そして、何やら文字の刻まれた手枷をハメられた一同。


この手枷"封呪の枷"と呼ばれるもので、どうやら魔力を封じるものである。

ハンナが作ったもので、この手枷をされていれば上級魔術までの魔法を封じることができる。

それをまだ7人は知らない。


程なく歩くと木々の開けた場所に到着する。

ここがスヴェートヴァルト(光の森)と呼ばれる狸人族の縄張りで、

この地は代々の族長のトップが治める土地となっている。


今はまだ村の手前である。

遠目に見える風景を眺めている。


「昔の日本みたいな風景ね。」


「ええ、和風な建物だらけですわ。」


シュバルツと似た風景だった。

唯一違うのは村の中央にある巨木。


「なんで幹から葉っぱが生えてるの?」


「あれは複数の木の集合体なの。」

スーが答える。


「妙な幹だなとは思ったのよ。」


「ここからでもかなりの大きさであることがわかりますわね。」


「そろそろ縄張りに入る。」


そうして、7人は狸人族の縄張りへと連行されるのだった。


スヴェートヴァルト(光の森)

中央にそびえ立つ複数の木の集合体。

大小様々な木が入り乱れている。

獣族は古来よりこの木々を生活の為に利用してきた。

様々な木の種類が存在し様々な実をつける。

またその木から切り出された材は朽ちにくく、獣族の住む家の材料となっている。

そして獣族からは"グナーデ"と呼ばれ樹齢はかなりのものであるが未だ成長中である。


地上20メートルといったところだろうか。

幹の部分の一部に外付けでなにやらとりつけられている箇所がある。

どうやらそこが目的地らしい。


「どうやってあそこまで行くのよ?空なんか飛べないわよ?」


「問題ねぇ。内部を歩けば到達できる場所だ。」


「…内部?」


そう言うと狒々はグナーデに向かって歩いていく。

幹にやおら手をかざす。


次の瞬間、ぽっかりと入口が現れる。


現れた入り口からグナーデ内部へと入る。

内部を歩きながら澪はフォーに尋ねる。


「え?どういうことなの?」


「…不認識魔法。結界の一種。」


「不認識?ということは本来入り口はここにあるということですか?」


「そう。でも見えないし感知できない。」


「では狒々さんはどうやって入り口を開いたんですか?」


「…あれ」

スーが狒々の腕を指差す。


「なにあれ?腕輪?」


「ただの腕輪じゃないの。魔法が込められてるの。」


「魔道具ってこと?」


「魔道具ではないの。あれは魔力具なの。」


「どうちがうの?」


「魔道具は魔力を込めることによって発動する。魔力具はその名の通り魔力を内包している。」


「魔力がないと扱えないのが魔道具で魔力が無くても扱えるのが魔力具ということでいいのですか?」


「…んっ桜花正解。」


「発動はどうやってするのよ?」


「術者の動作や発言によって発動する。」


「便利いいのねぇ。」


「本来なら希少なの。」


「本来なら?…ですか?」


「ハンナは作り出せる。」


「魔力具を?」


「そう。」


グナーデ内を歩きながら彼らは狒々の行動に不信感を抱く。

狒々は協力するというにも関わらず武器を取り上げ、手枷をハメた。

これではハンナと戦闘になった時には何もできない。


「狒々!!アンタ私達に協力する気あるの?」


「ああ?昨日言っただろうが、お前ぇ達がハンナを倒せたらだ。

だいたい捕虜にしてくれってたのはそっちの嬢ちゃんの提案だろ?」


「…そうだけど。」


「心配ないですわ。なんとかなります。」

桜花の言葉はどこか自信ありといったところだ。


「桜花ちゃんなんでそんなに落ち着いてるの?」

「何を根拠に…」


「まぁまぁお二人ともきっと大丈夫ですから!虎穴に入らずんばですわ。」


「…虎じゃなくて狸だけどね。」


「あら、うまいことをおっしゃいますのね。」


「どっちでもいいわよ。なにか策があるのね、桜花?」


「いえ、なにも。でも大丈夫ですわ。」


「「…」」



グテーナ内部。

木々が密集して作られたにも関わらず内部は比較的空間があった。

そして、最奥には階段があった。

内部は数層の階層に分けられており、ハンナがいるのはその最上階。


「止まりな。」

狒々はなにやら階段の前でぶつぶつ言っている。

呪文?のようだが聞き取れない。


「いくぞ。」


そして、階段を登る。

階段は螺旋状になっている。果てしなく上まで続いているのかとおもいきや。

少し登ると豪華絢爛な扉が現れる。

赤を基調として金色の唐草模様の装飾が所々にあしらわれた扉だ。


「着いたぞ。」


「え?」

どういう原理だ?一同は思いながらも狒々は扉を開く。


扉を開け目に飛び込んできた部屋。

それは本当に木の内部なのかということを疑うほどに人為的であった。

部屋は長方形をしており、木目の美しい板張りの床、奥には襖を思わせる扉が存在していた。

壁には簾がかけられており、その奥が怪しく光っている。

例えるなら江戸時代の大奥をそのまま移植した様な異様な空間だった。


突如奥の扉は襖式に横へとスライドする。

最奥は簾がかかっておりよく見えない。

香が焚かれているようで、妖艶な雰囲気を醸し出す。


簾の前に連れ出され7人はひざまつかされる。


「ハンナ様。追放しましたクヨウとそれに与する人族を捕えましたので、連行致しました。」


「御苦労。」


扉と同じような赤を基調とした金色の唐草模様の着物。

首から肩にかけてを露出し、帯は前についている花魁スタイル。

黒い髪に狸耳。そして三又の尻尾を持った妖艶さを纏った女が簾の奥から現れた。


「これはクヨウ。ずいぶんと久しぶりじゃな。

何をしに参った?よもやその姿で妾に復讐を果たすのかえ?」


「…そう。」


「あっはははは。これは笑い草じゃ。その姿ではお主の力は発揮できいまいに。

もしやその人族を従えて妾を討つ気じゃったか?」


クヨウは答えない。


「…まぁよい。狒々!こやつらを地下牢にでも入れておくのじゃ。」


「地下牢ですか?」


「うむ。今そやつらにかまっておる時間はない。

人族との争いも佳境での。妾も出る。」


「ハンナ様自らですか?」

「おおおお」

狒々と猿人族が声を上げる。


「こやつらは戦後処理に使う。人族でも"異世界から召喚された人族"ならば価値があるじゃろ?

捕えられておる獣族の奴隷解放のカードとしてはまずまずじゃ。」


そう言うとハンナは身を翻し簾の奥へと消える。


7人は地下牢へと入れられてしまった。


「ちょっとほんとにどうすんのよ!?これじゃ何もできないじゃない。」


「…そうだな武器は取り上げられちまったし、何より手枷もはめられたままだし。」


「もういいわ、こうなったら魔法でこの牢ごと吹き飛ばしてやる。」


「…無駄。」


「そんなのやってみなきゃわかんないでしょ!」


澪は呪文を詠唱する。

「…爆水流」

詠唱がおわるが魔術が発動しない。


「どういうこと!?」


「だから無駄だと言った。」

「この手枷はハンナ特製なの。この手枷をしている限り魔法は使えない。」


「だったら力技で壊すまでだ(よ)。」

そうして手枷を地面にたたきつけ始める澪と傑。


数分後。


「はぁはぁはぁ…なんなのよこれびくともしないじゃない。」


「…対物理攻撃に対しても強い。」


「知ってんなら先に言ってくれ!!」


「桜花!アンタなんとかなるって言ってたわよね?」


「まぁまぁお二人とも落ち着いてくださいな。」

桜花は落ち着き払っている。


「いいですか?まず私達には利用価値があり殺されることはありません。

でも、私達がここに来たのは争いを止める為です。どうやら狒々さんはあの様子だと

"敵"として認識、対処する必要があります。フォーちゃん、スーちゃんは大丈夫ですか?」


「…小賢しい猿に情けは無用。」

「私達を手土産にしようなんて1000年早いの。思い知らせてやるの。」


「では今より狒々及び猿人族を敵と考え行動します。」


「それはいいけど、この先どうすんのよ?!」

澪はかなり不機嫌だ。

地下牢に入れられた上、手枷を壊せなかったことが余計イライラに拍車をかけているらしい。


「そうですわね。もし私達がハンナを倒せたとして狒々が協力するかどうかも怪しいですわね。

そうなると獣族の説得が…」


「あ!いいことを思いつきましたわ。ハンナの策を利用しましょう。」


「桜花ちゃんどいうこと?」


「獣族としては人族に奴隷にされている仲間の解放というのは第一の目的だと思いますの。

それが理由にハンナも私達を交渉のカードとして使おうとしてましたし。」


「うん、それで?」


「ですから、実際に交渉のカードになればいいのです。

獣族の奴隷を解放してさしあげれば休戦に持ち込めるかもしれませんわ。」


「確かにそれなら説得は必要ないわ。ハンナを倒せさせすればね!

ただこの状況からどうやってハンナを倒すのよ?」


「ちゃーんと考えてありますわ。まぁそのうちわかりますよ。」

桜花がほほ笑む。



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