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王位継承  作者: るーく
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訓練は、リイム隊長とトモエ隊長の指導でいつもより倍近く良いものになったと思う。


トモエ隊長との技術訓練も、途中からリイム隊長と手合わせすることになったり。


・・・思いっきり力の差があったけど。


トモエ隊長とも違う、また違った剣でかなり刺激された。


扱う人によって違う。


それが剣なんだ。














謁見の間



玉座には女王・・・母上。


隣にはリム。



幾分か距離を開けて、僕とリイム隊長。





「あらあら、リイムちゃんがお話があるって言ってたから来てみたら、クルトもいるのね」


「すみません、女王。私の話にはクルト王子が関係するもので」


「クルトに関係すること・・・何の話だか楽しみだわぁ」



母上はいつもの感じに見えた。


リムは黙ったままだ。


なんか、雰囲気を感じるな。

リムも立派に成長しているんだな。ぐっと大人っぽいよ。


なんて兄バカか。












「まず、女王陛下。こんな夜更けに謁見の場を設けて頂けたことを感謝します」


「いいのよぉ。知らない仲じゃないし、遠くからせっかく来てくれたんですもの」


「ありがとうございます。では、さっそくなのですが。クルト王子が軍に参加している件についてお聞かせ願いたいのですが」


「んんー、それはちょっとまだ言えない、かな」


「そうですか。では、質問を変えます」



プリンセスガードのこと、言わないんだ。


そうだよね、まだ本決まりの規律ではないし。


法律や何やら色々関わってくることだから、決まっていないことに対して、親交が深い国の人にすら言えないよね。



でも、問いたださないところを見ると、半分諦めていた質問だったってことなのかな・・・





「クルト王子には許婚に値する相手などは、存在しているのでしょうか?」


「え!?」


「な、ななな」


な、を連発したのはリム。


今までダンマリだったのに、いきなり狼狽している。



何かリムにあったのかと心配していた僕だが、そのリムを見て少し安心した。




「いないわね」


「い、いるわけなかろう!」


「そうですか、安心しました。では、私はエルフの国、王女としてクルト王子に結婚を申し出ます」



ちょっと待って。


エルフの国の王女?


リイム隊長が・・・王女?




「あらあら」


「あ、あああ、兄上と結婚、じゃと!?」


「・・・」


「・・・女王陛下もご存知の通り、エルフの国は何年か前から人間との共存、共生をする計画を進めています。私なりに考えて国でも協議したのですが、王族である私が人間と婚姻を結ぶことが、何よりも国民やその他の理解を得るのが早いと思い、クルト王子と婚姻を結びたいと考えています」



僕は・・・何も考えられなかった。


リムは口を開けたまま微動だにしない。

女の子なんだから、そういった姿はあまりしないよう、あとで言っておこう。


話す機会があれば、だけど。





「そ、それは兄上を国の策略に使うということか!?政略結婚も甚だしいわ!!」


「リム、口を慎みなさい」


「じゃが、黙ってはおれぬ!」


「ふぅ、しょうがない子ね。で、リイムちゃんはどうしてクルトを選んだの?王族で手ごろな男だったら、協力国の中で他にも人がいるでしょう?」



リムはプンスカという表現が似合うほど、怒りを露にしていた。


ちょっと嬉しかったりする僕がいたり・・・


母上は冷静だった。


ていうか母上がうろたえたりしたら、僕やリムがびっくりしちゃうけどね・・・





「政略結婚に思われても仕方がないことですが、アイネリアは女王制の国。クルト王子は18歳になれば、国と縁を切って城から出て行かなければならないのでしょう?」


「国から捨てられる王子を、ちょうどいいから拾ってあげるってこと?」



母上が少し、いつもより真剣実のある声になった。


だけど、捨てられるっていう表現は嫌だった。


・・・本当のことだけど、嫌だった。




「表面上はそう取られても仕方がないと思います。ですが、私も婿を選ぶのに時期的に自由になる王族だからという理由で、結婚はしたくありません」


「あらあら。じゃあ、クルトのこと、好きなの?」


「な、なんじゃと!?」



リムがリアクション担当になってしまっている。


3人しかいないからしょうがないことだけど。


あれ、そういえば父上はいないんだ。


今・・・気づいちゃった。


これも女王制のしがらみ、なのかなぁ・・・




「はい、愛しております」


「「な、なんだってーーー!!!」」


「あらあら、兄妹揃って仲がいいわねぇ」


「・・・アイネリアを批判する訳ではありませんが、私は何度かこの城に来て、紹介もされない王子のことがいつも気になっておりました。たまたま見かけることがあっても、クルト王子はとても悲しい目をして、生きる意味も持たず、王族なのに王族として扱われないことに対して、すごく懸念していました」


「・・・それで?」


「何度か姿を見かけているうちに・・・気になって仕方がなくなってきて・・・いつの間にかクルト王子のことばかり考えている自分がいました」


「・・・あらあら」


「そして私自身も、ただの飾りの王女ではいけないと思い、剣術を始めました。運が良かったことに才能が多少あったため、5年で国の軍隊を仕切ることができました。クルト王子を自信を持って迎えに行くため、国から去ることになっても私が守ってあげられる力を持つため、努力をしました」


「・・・」


「今日、何年かぶりに城を訪れ、クルト王子が軍隊に参加していることに多少の驚きは隠せませんでしたが、クルト王子の剣術もこれからに期待できるものでした。それに、あの悲しい目をしていなかったことが、さらに私の心を揺さぶりました」


「だってさ、クルト、リイムちゃんの告白を受けてどう思った?」



そんなことがあるわけない、ただ単純にそう思ってしまった。


何もない自分が他人から認められるなんて・・・


城から出て孤独に生きて死ぬだけ、そう思っていた時期の自分を好いてくれてただなんて・・・


信じられなかった。




「・・・信じられません」


「クルト王子・・・」


「僕にはリイム隊長・・・いや、リイム王女の期待に応えられる人間ではありません。何もありませんから・・・きっと同情心からきた錯覚ではないかと思うのですが」


「く、クルト王子・・・なぜそんな悲しいことを言うのだ・・・私の気持ちは嘘偽りのないものなのに・・・表面上は政略結婚に見えるだろうが・・・私は私の選んだ男としか結婚したくはないのだ・・・」


「クルト、女心の勉強が足りないわねぇ」


「え?」


「兄上・・・」



あ、あれ?


なんだか僕が悪いみたいな流れになっているような・・・


いや、ひどいことを言ったっていうか、ただ事実を言っただけなんだけど・・・


え、本当にリイム王女は僕のことを・・・?










「話は聞かせてもらった」


「あなた」


「父上!」



突然、後ろから声が響き渡った。


父上が登場した。


とう!、という声とともに跳躍した父上は、母上が座っている玉座のリムと反対側に着地した。



なんだ、この登場の仕方は。





「リイム王女、久しぶりだな。それにしても綺麗になったなぁ・・・今年で20歳だっけ?」


「国王・・・久しぶりです。はい、成人いたしました」


「剣の腕もだいぶ上達したと聞いている。一度、手合わせ願いたいものだな」


「いえ、まだまだです。『地上に敵は無し』と言われているクイーンガード隊長と手合わせなど、勿体無いお言葉です」


「おうおう、可愛いねぇ。こんな可愛くて綺麗で金髪のチャンネーに求婚されてるってのに、クルトは全くふがいな・・・いてぇ!!」



父上が急にうずくまった。


きっと母上が何かしたのだろう。


うん、そうに違いない。


だが、やっぱり父上もリイム王女のこと知ってたんだな・・・


そりゃ国王だもんな・・・



なんだか、やっぱり自分だけ疎外感を感じてしまう。



でも、20歳で国の軍隊の隊長・・・


5年でなったというから、15歳で剣を始めたってことだよな・・・


すごいな・・・リイム王女・・・


王女なのに・・・




「おー、いてて・・・手加減無しだもんなぁ・・・」


「されるようなこと言うからでしょ」


「すまんすまん、だがオレにいい考えがあるんだが、ちょっと聞いてくれないか?」


「ふぅん、まぁいいけど。・・・クルト、ちょっとお父さんと話があるから席を外すけど、すぐ戻ってくるからリイムちゃんと仲良く待っててね。あ、リムも私と一緒に来なさい」



母上は父上とリムと3人で、奥の間に入っていった。


・・・僕は除け者ですか。


なんて卑屈な考えをしてしまう。


僕の人生を左右するようなことを、また決めてくるんじゃ・・・




はぁ、疑っちゃうな。


なんだかそんな自分が少し嫌だ。














「・・・」


「・・・二人きりになってしまったな、クルト王子」


「・・・えぇ」


「私の嘘偽りない気持ち・・・試してみるか?」


「・・・え?」



ぼーっと思考のループに入っていた僕は、リイム王女の言葉によって引き戻された。


だが、その言葉はあまりにも誘惑じみていた。




それが当たり前であるかのように、僕を抱きしめてきて。


それが当たり前であるかのように、耳元で囁く。




「クルト王子、好きだ」


「・・・!」


「好きなんだ、どうしようもなく」




耳元で囁くのは卑怯だと思う。


少しこそばゆい感じと、甘美な言葉。


僕の心を揺さぶるのに、それは簡単なことだった。





「年上の女は、嫌いか?」


「いえ・・・」


「耳の長い女は、嫌いか?」


「いえ・・・」


「剣を振る女は、嫌いか?」


「いえ・・・」


「そうか、安心した」



ギューっと強く抱きしめられる。


抱きしめ返してないから、なすがままだ。


だけど、この感触と匂いはやばい。



だんだんと、気持ちよくなってきている。




「はいはい、そこまでね」


「は、母上!」


「女王・・・失礼いたしました」



リイム王女を抱きしめ返そうとする手が中空をさまよい始めた頃、母上たちが戻ってきた。


リムはあからさまに敵意をリイム隊長に向け、父上は「オレと変われ!」という顔をしていた。


もちろん、父上は母上に足を踏まれた。












「待たせちゃってごめんなさいね」


「いえ」


「じゃあまず、クルトが軍隊に参加していることから説明しましょうか」



母上は玉座に座ると、すぐに話始めた。


一体、何を相談していたのだろうか。













僕が軍隊に入った理由、プリンセスガードのことを母上は説明した。


最後に、まだ本決まりのことではないことを付け加えて。


他言無用って、ね。




だけど。


なんでその説明をしたんだ?





「ってことで、プリンセスガードになるためにクルトは軍隊で訓練を受けているのだけど、最終的には国からの試験を受けなければいけないの」


「で、だ。これはオレの提案なんだが、プリンセスガードの試験には実技と知力の試験がある。その実技の試験、リイム王女と手合わせするってことにしたらいいんじゃないか、とな」


「はぁ・・・」


「クルト王子と、手合わせ?」


「つまり、クルトが勝てばプリンセスガード、リイム王女が勝てば婚約交渉してクルトが承諾すれば、エルフの国に婿入りってことだな。リイム王女はエルフの国の軍隊長レベルの腕前ってことなら協議会も納得するだろうし」



そういうことか。


勝っても負けても、路頭に迷うことが無い選択だ。


でも、負けたら・・・





「お言葉ですが母上、父上。僕がリイム王女に負けたとして、一般人以下で国に出入りできない身分になりますが、それでもリイム王女と婚約したとして、協議会は黙っているのですか?」


「他の国の王族になることによって、反乱などを企てないかってことでしょ?」


「はい」


「そこら辺はうまいことやるから☆クルトにしてあげられることはしてあげようって思ってるの☆」


「は、はぁ・・・」


「リイム王女にも悪い条件じゃないと思うんだがな。クルトが勝ったとしても、婚約交渉ができない訳じゃないしな。クルトをうまく落とせたら、自分だけのプリンセスガードとしてエルフの国に婿入りさせることだって可能だ」


「・・・私だけのプリンセスガード」


「リ、リイム王女!プリンセスガードは兄上がこの国、この城に残るために作るってことを忘れてはならぬぞ!もしもってことじゃぞ!」



こんな展開は予想していなかったな。


でも、エルフの国、か。


人間に相手にされなかったから、エルフの国に行くっていう手もあるのかな。


・・・いじめられないかな。人間くせえええとか言われて・・・



それよりも、選択肢が増えたなぁ。


これも両親の配慮なのかな。


リイム王女に負けて、婚約したくなかったら、そのまま城を出て行っていいってことだし。


可能性、か。






「クルトに少しでも良い条件を揃えてあげたい、ってのが親心なの・・・どう、クルト?」


「・・・」


「兄上にはどういった形であれ、幸せになって欲しいのじゃ。もちろん、この国で幸せになってもらえれば、それはそれは嬉しいことなのじゃ」


「・・・」


「今までほったらかしにしてた分、まだまだプリンセスガード以外にも案を出していかないとな。せっかく剣も訓練しているんだし」


「・・・」


「クルト王子・・・」


「・・・それでいい、と思います」



僕には否定することはできない。


そんな考えもない。


エルフの国に婿入りってのも、悪くないだろうし。



でも、トモエ隊長、ジェシカさん、テレーズさん、ベアさんたちには、プリンセスガードにならなければもう、一生会うことはないんだろうな・・・











「クルトもリイム王女も、条件は飲み込んでくれるってことでいいか?」


「・・・はい」


「・・・私には願ってもないチャンスを頂き、ありがとうございます」


「ふふ、我が子が求婚される姿ってのも良いものね。お母さん、嬉しいわ」


「わらわは何かもやもやするものを感じるが、兄上のためじゃ!これからももっともっと、良い案を出せるよう心がけるのじゃ」



「ありがとう、みんな」



僕は心から、そう言った。













「ところでクルト王子、良ければ私の国に一度来ないか?」


「え?」


「私のことをもっと知ってもらいたいというのもあるが、見たこともない国に婿入りするというのもアレだろう?もし、すぐにでも気に入ってくれたのなら、永住できるよう交渉するが」


「あらあら、リイムちゃんは過激ね。そうね、違う国を見てくるのも良い経験になるかもね。クルトが良ければ行って来てもいいわよ」


「・・・母上」


「わ、わらわも行くのじゃ!わらわたちがいないところでリイム王女が何をするやもわからん!見張りも必要なのじゃ!」


「リムはダメ」


「なんでなのじゃー!」



リムが駄々をこねる姿というのも、兄の視点から見れば可愛いものだ。


あぁ、リムにわがまま言われたい・・・


しょうがないなぁって頭を撫でてあげると、笑顔でえへへって言ってくるリムを見たいなぁ・・・


は、兄バカがまた出てしまった。




「王女が違う国に行くってなると、色々と面倒なのよ。だからクルトが身分を隠して、軍隊の相互研修のためってことにしておけば問題ナッシング☆」


「む~~~~!!」


「そうだな、違う国の軍隊ってのもその国独自のものがあったりするから、見てくるだけでも為になるだろう」


「・・・父上」


「相互研修か・・・なるほど。どうだ、クルト王子」



また外の世界が見れる。


それも違う国。


ましてやエルフの国。



行くしか、ないんだよね。





「分かりました」


「そうか!ありがとう!クルト王子!」


「わっ、と!」



僕が了承した途端、リイム王女は僕に抱きついてきた。


それも飛び掛ってくる感じで。


受け止めてそのまま倒れないように必死になった。





「では、私が国に帰るときに一緒に行こう!」


「は、はい」


「お国には先に書状を送っておくから、リイムちゃんもクルトも安心して行きなさい。事情を説明すれば、王も納得してくれるでしょう。なんてったって、未来の婿候補だもんね☆」


「ありがとうございます!」


「良かったな、クルト」


「兄上~、たぶらかされてはならぬぞ~」



これから、どうなっていくのか。



楽しみでもあり、怖くもあり。



でも、自分のためにって考えると悪い話ばかりじゃない。




軍隊に入ってから本当、色々なことが起こるなぁ。

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