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王位継承  作者: るーく
42/60

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訓練場



ジェシカさんと仲直りできた翌日。


訓練も順調に進んで、トモエ隊長との技術訓練の時間になった。




「よし、では今日は新しい訓練をするぞ」


「はい」


「・・・と思っていたのだが、女王とリムリア姫がクルトを呼んでいるとのことだ。早急に向かえ」


「・・・え?」


「私も先ほどいきなり通達されたのでな。仕方ないことだ、行って来い」


「わ、わかりました」



母上とリムが僕を呼んでいる?


いったい何だろう?


僕はトモエ隊長に背を向けて、歩き出そうとした。




「クルト、今日の夜のミーティングが終わったら私の部屋へ来れるか?」


「あ、わかりました」


「うむ、ではな」



トモエ隊長の部屋へ呼ばれる。


それもまた、なんだか嬉しいと感じてきている僕だった。











食堂


ドアを開けると、既に母上とリムはテーブルについていた。



「遅くなりました」


「兄上!久しぶりじゃのう!」


「クルト、忙しいところ悪いわね」


「いえ、二人ともお久しぶりです」




二人は笑顔で僕を受け入れてくれた。


僕の顔は、自然と笑みを浮かべているのが自分でも分かった。











「クルト、ちょっと見ない間にたくましくなったわね」


「本当なのじゃ!わらわが一度会いに行ったときより、数倍かっこよくなっているのじゃ!」


「あはは・・・ありがとう」


「突然呼び出してごめんなさいね、とりあえずお茶でも飲みなさいな」


「お菓子ももあるのじゃ!」


「では、いただきます」



少し、訓練をサボッている感覚があり、なんだか後ろめたかった。


もしかして、トモエ隊長はそのことを言うために僕を夜呼び出したんじゃ・・・


いや、もしかすると、この遅れを取り戻すために訓練するんじゃ・・・


うーん・・・


考えてもしょうがないか。











「クルト、あなたを突然呼び出したのには、理由があるの。プリンセスガードについてのことよ」


「はい・・・」


「あなたが18歳前に城を出て行くって話は、クイーンガード入隊でうまく揉み消せたわ。でも、やっぱり協議会の老人たちは、プリンセスガードについて言及してきたの」


「プリンセスガードになるための試験を、かなり厳しくする意見ばっかりだったのじゃ!」


「・・・」



やっぱり、か。


僕のことなんて、プリンセスガードくらいしかないよね。


ただ、会いたいって気持ちだけじゃ会えないんだから。


普通の家族とは、違うんだから。


でも、母上もリムも真剣に考えてくれてるんだから。


余計な感情は、捨てよう。






「トモエちゃんの報告だと、クルトはかなりイイ線いってるみたいだから、このまま努力してくれれば、武力は問題ないだろうって。だけど、知力試験もあるのよね」


「これがまた・・・あの協議会のせいで、かなりいじわるなことに難しくなりそうなのじゃ」


「知力・・・」


「クルトには一般教養ぐらいしか与えられていないから、これからは知力の勉強もしてもらわなければいけなくなりそうなの・・・ごめんね」


「いえ、いいんです。これまで武力も知力も努力していなかったわけですから」


「兄上には本当に苦労をかけてしまうのじゃ・・・わらわや母上はそのことに何も力を貸せないのじゃ・・・」



知力、か。


でも、いつものあの訓練のあとに勉強するってなると、かなり厳しいんじゃないか。


訓練が終わって、警備任務と護衛任務についたら尚更だろう。



だが、本当に協議会ってものは、女王制にしがみついているんだな。





「でね、知力の勉強に関しては、トモエちゃんにお願いしておいたから」


「え?」


「トモエはすごいのじゃ!父上の次に剣も強いと噂され、知力も相当なものなのじゃ!」


「私としても、よく知っている相手が講師になる方がいいと思っているし、トモエちゃんなら安心して任せられるかなって」


「トモエ隊長に・・・」



この展開は予想できなかった。


でも、トモエ隊長にならって思ってしまう自分もいる。


でも、また努力する科目が増えてしまった。











ここまでして、さらにまたして、それほどしがみついていなければならない場所なのか?ここは?












「兄上?難しい顔をしているのじゃ・・・確かにまた兄上に負担が増えるのは分かっておるのじゃ・・・だが、これを乗り越えられれば、わらわは兄上に幸せになってもらおうと思っているのじゃ」


「そう、プリンセスガードにさえなってしまえば、後はもう、クルトは何も心配しなくていいの。私たちにもいつでも会えるようにするし、クイーンガードでの仲間にもこれまで通り会えるように・・・王子だってことが足枷にならない、そういった規律にする準備ができているの」


「母上・・・リム・・・」




全ては僕次第。


これからの王族に関しても、今の僕に関しても。



ため息をつきそうになるのを、ぐっとこらえる。





「・・・分かりました。トモエ隊長に知力の講師をしてもらい、武力の方も努力していきます」


「クルト、ありがとう。そう言うと思って、トモエちゃんには既に伝えてあるからね」


「は、はぁ・・・」


「母上は何でもお見通しなのじゃ!わらわもそうなりたいのじゃ!」


「うふふ、リムもそのうちなれるわよ。私の娘なんですから」




母上はさすが女王と言ったところか。


でも、僕が城に残るために頑張ってるって分かってれば、そうなると思うのが自然だ。


なんだか、母上やリムに踊らされているのでは、という感覚を持った。


・・・ずっと離れていた家族だから、少し他人のように思ってしまうのも無理はない、のかな・・・










リムは勉学の続きをすると言って、食堂を出て行った。


母上と二人きりになった。




「クルト、辛い?」


「正直に言いますと、辛いです」


「そうよね。何もしてあげられないのが、すごくもどかしいわ」


「でも、充実してるというのも事実です。今までとは違って、変化がありますから」


「うふふ、トモエちゃんからの報告だと、人間関係も良好みたいだから、安心したわ」


「一度、壊れかけましたが・・・」


「でも、立ち直ってる。私はジェシカちゃんの一件のとき、もうダメかなって思っちゃった。実の母親なのにごめんね」


「そこまで知っていたんですね・・・」


「ごめんね、どうしても息子の状況が知りたくなっちゃって・・・トモエちゃんに定期的に報告してもらってるの」


「そうですか・・・」


「あ、でも、一般的なことに関してはリムもお父さんも知っているけど、プライベート的な内容は私だけにしか報告されていないからね」


「はい・・・」


「あと、トモエちゃんは何も悪くないからね。報告させているのは私だから。誤解、しないでね」


「わかりました」



監視されている、わけではないんだろうな。


トモエ隊長も女王から言われれば、素直に全部言わなければならないだろうし・・・


でも、母上ってどこまで知っているんだろう・・・










「トモエちゃんの胸、柔らかかったでしょ?」


「え!?」


「私も一度だけお願いして触らせてもらったことあるけど、あの感触はもう凶器よねぇ」


「・・・!」


「押し倒して、押し倒されて、よく我慢できたわね、クルト」


「・・・母上には敵いません」


「ふふ、別にやめろとかそういうことじゃないのよ。色んな人と触れ合っているのが、私は嬉しいの。今まで世間知らずだった分、クルトは素直だから、みんなにモテちゃうのかなぁ」


「・・・・・・」


「人間関係、難しいとは思うけど、色々考えて、がんばりなさい。必ず、これからのクルトのためになるから。でも、我慢できないほど辛くなったら、辛いって言いに来なさい。私は、クルトを絶対に拒んだりはしないからね」


「母上・・・」



人間関係が増えたおかげで、自分が以前と変わってきているというのも実感できる。


一番最初に明るい性格になろう、としたのが良かったのかもしれないけど。



母上は優しく微笑んでいた。





「でも、堅物だと思っていたトモエちゃんがクルトにお熱になるなんて、ちょっと私は予想外だったかなぁ。最近のトモエちゃんは表情が出てきて、さらに綺麗になったから」


「お、お熱?」


「ふふ、クルトにはまだ分からないか。でも、それでいいのよ。自分の感じるままに、進みなさい」


「は、はぁ・・・」




そろそろ時間だから、と席を立った母上に合わせて僕も席を立つ。



「最後に、いい?」


「はい・・・っと!?」


「うふふ・・・クルト、筋肉もだいぶついてきて、男らしくなってきてる」



母上は急に僕を抱きしめてきた。


実の母親なのに、ずっと離れて暮らしてきたせいか、嫌悪感はない。




「クルトを抱きしめられるうちに、いっぱい抱きしめておかないと、誰かに取られちゃうからねぇ」


「取られるって・・・」


「ずっとこうしたかった・・・リムと同じように、こうしてあげたかったの・・・」


「母上・・・・」


「ありがとう、クルト。そして、がんばってね!」




一層強くギューっとしたあと、母上は僕から離れて、歩き始めた。


食堂の扉を開けるまで、母上は僕と手を繋いでくれていた。












トモエの部屋



食堂を出た後、訓練終了まで時間があったため、僕は訓練場に戻り、少しだけ剣を振った。


途中、離れていたところにいたトモエ隊長と目が合ったが、時間も時間だったため、訓練は無かった。



その後、夕食とミーティングを済まして、トモエ隊長の部屋まできた。


ノックをして、了解を得てから入室する。




「来たか、まぁ座れ」


「はい」



やっぱりというか、トモエ隊長はソファに腰掛けてワインを飲んでいた。


バスローブ姿っていうのが、一番の気になるポイントだったが。


下着・・・つけていないんじゃないのか。


そう思ってしまう僕は、きっと若いって証拠なんだろうと思う。



ほんと、入隊してから変わったよなぁ・・・僕。





「いきなりで悪いが、女王から話は聞いたと思う」


「はい、知力のことですね」


「そうだ。そして、お前が入隊した理由・・・プリンセスガードのことも女王から聞かされた」


「はい・・・」


「武力と知力の両立は難しいと思うが、私も勉学の講師を任された以上、責任を持ってクルトに教えていきたいと思っているが、どうだ?」


「えぇ、僕にはやる以外、選択肢はありませんから。努力しますので、これからよろしくお願いします」


「分かった。それと、な。女王から言ってもいいと言われたのだが、クルトの状況を女王に定期的に報告していたのだ」


「あ、その件についても母上から聞いています。僕としても、問題は・・・ありません」


「そうか。なんだかクルトに後ろめたくてな、すまない。スパイ活動のような感じもしないでもなかった」


「大げさですよ・・・」


「だが、もし監視されているとクルトが認識してしまうと、これからの活動に影響があるだろう?」


「王子だからしょうがないって思うのと、母上の気持ちも分からないでもない、って思います」


「そうか・・・」



トモエ隊長はまだプライベートモードではないみたいだ。


でも、正直に僕のことを母上に報告していることを話してくれたところが、なんだか嬉しかったな。


嘘をつけない人間なんだろう。


僕も、きっと似たような人間だな、って思った。





「ふむ、堅苦しい話は終わりにしないと、せっかくのクルトとの二人きりの時間がすぐに終わってしまう」


「あ、あはは」


「ジェシカと仲直りしたらしいな」


「知っていたんですか・・・」


「今日のジェシカの態度を見れば分かることだ」


「ですよねー・・・」



今日のジェシカさんは、いつになくハイテンションだった。


ことあるごとに僕に話しかけてきて、隙あらば体のどこかを触れ合わせてスキンシップしてきた。


その度にテレーズさんが現れて怒って、ベアさんがやってきて「やれやれ」って状況になった。


そう、ジェシカさんとああなる前のときのように。




「私とクルトも一度喧嘩をした方が、より親密になれるのだろうか」


「え?」


「お互いがお互いを知るためには、お互いの腹の中を全て言い合わないと分からない。それも、お互い正直に、だ。だが、クルトは素直だし、私も隠すことなど何もないからな」


「・・・トモエさんとは、喧嘩はしたくないです」



僕がそう言ったあと、トモエ隊長は僕の隣に移動して座り直した。


あれ、なんかまずいこと言ったかなと思ったときには、僕の顔はトモエ隊長の胸の中だった。





「やっと、呼んでくれたな」


「・・・え?」


「あのときからずっと待っていたのだ」


「・・・トモエさん?」



訳の分からない僕がトモエ隊長の名前を呼ぶと、抱きしめる力が強くなった。


あ、もしかして。




「もっと、呼んでくれ」


「トモエさん・・・もっと早く呼べれば良かったですね」


「いいんだ、こうして呼んでくれたのだから」


「わざわざバスローブ一枚で、クルトのことを待っていたかいがあったものだな」



やっぱり下着はつけていませんでした。


ダイレクトすぎる感触に、ちょっと思考がやばいことになりそう。


でも、あの日からずっと待っていたって知ると、なんで呼んでなかったんだろうって後悔した。




「ごめんなさい、トモエさん。これからは二人きりのときは、必ず呼びますから」


「クルトが私の名前をそう呼ぶ度に、私はとても暖かい気持ちになれるのだな。とても今、幸せな気持ちになっている」


「トモエさん・・・」


「すまんな、最近どうにも、自分の感情を抑えきれないときがある」



トモエ隊長は僕を抱きしめる手を離すと、僕の膝の上に落ちてきた。


膝枕、だ。




「謝らなくていいですよ、トモエさん。僕に甘えてくれて、とても嬉しいです」


「ん。一度甘えてしまったら、もう甘えずにはいられなくなってしまったよ」


「僕なんてプライベート以外でも・・・訓練でも甘えっぱなしですから」


「全く、お前という男は。無意識にそうやっているのだから、テレーズもジェシカも、惹かれているんだろうな」


「え?」



僕はトモエ隊長の頭を撫でていたが、反対の空いている手を掴まれ、トモエ隊長の胸元に持っていかれた。




「クルト、私の胸は嫌いか?」


「い、いや、嫌いじゃいですけど」


「いいんだぞ、手を動かしても」


「い、いやいや」



バスローブの胸元に開いている部分から、僕の手はトモエ隊長の胸に導かれた。


片手にはトモエ隊長のサラサラの髪の感触、片手には人間の肌特有の柔らかい感触。女性の胸だから尚更だ。





「膝枕をされ、頭を優しく撫でられ、胸もクルトの暖かい手で包まれている。この状況は、何にも変えがたい」


「・・・」


「胸を揉まれることが気持ちいいと、先日クルトに揉まれたときに気づいたからな。遠慮しないでいいぞ」


「いえ・・・動かせないです」


「なぜだ?」



トモエ隊長の胸を触っている方の手の平に、少し固い部分を感じる。


これはきっと・・・


いや、だめだだめだ。煩悩に支配されるな。





「んぅ!」


「あ、あっと、すみません!」


「胸の先端がクルトの手で少しこすれて、感じてしまった」


「か、かかか、感じ・・・」


「そうか、先端は刺激が強いのだな。また一つ覚えてしまった」



僕が触ったときにトモエ隊長が出した声は、少し高くて、僕の男の部分を刺激する声だった。


体がビクってなったのも・・・


うぅ・・・このままだと危険だ・・・




「クルト、我慢をしているな。また私はお前を困らせるようなことをしてしまったようだ」


「いえ、そんな・・・」


「すまない、だが、しばらくこのままでいさせてくれないか?とても落ち着くんだ」


「はい・・・」



トモエ隊長に膝枕をして、頭を撫でて、胸に手を置いている状況がしばらく続いた。


長いとも短いとも感じた、男の拷問。


・・・よく我慢できたな、僕。



もう、一時の感情に任せてトモエ隊長を押し倒すことがないように。


きっと、これも成長している証拠、なんだろうな。












たっぷりとトモエ隊長に膝枕をした後、僕は自分の部屋へ戻った。


トモエ隊長は、スッキリした表情でありがとうと言ってくれた。



・・・今度はお前の番だからな、とも最後に言われたけどね。





僕もトモエ隊長に甘えてもらって、すごく良い気持ちだった。


誰かに甘えられない、そういう人をほっておけないんだろうね。



眠りにつくまで、トモエ隊長の胸を触っていた手は、感触が抜けなかった。

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