38
トモエ隊長の胸の中で、安心感を得続けていたが、顔を上げてふいに質問する。
「トモエ隊長」
「なんだ、クルト」
「100の嗜み、あと99個やるんですか?」
「ふむ、あれはもういいだろ。やはり自分で考えたり、経験しないと意味がないと思うしな」
「そうですか」
「やりたいのか?」
「そういうわけではありません。ただ、気になったので」
99個何があるのか気になったけど、体力と精神力が持たないと思ったため、素直に断った。
あ、そういえばテレーズさんに言われたことを忘れていた。
トモエ隊長から離れようとしたが、その瞬間、今までよりも強く抱きしめられてしまった。
当然、トモエ隊長の大きな胸に顔全体を押し付ける状態になる。
「ふぉもえふぁいふぉう~!」
「却下だ」
「・・・・・・・・・・・ぷは!」
「却下だ」
「肩揉みします」
「了承だ」
起き上がり、ベッドの上に座る。
僕はトモエ隊長の後ろに周り、肩に手を置く。
「力まないでくださいね」
「あぁ」
掴んでみて分かったが、すごく肩が細い。
強く握ったら折れてしまいそうなくらい。
・・・この肩のどこに、僕が意識を失うまでボコボコにする力があるんだろう。
「・・・・・・・・・」
「ん、気持ち良いな」
「すごく・・・凝ってますね」
テレーズさんと比べて、すごく凝っていた。
テレーズさんがコリコリだとすると、トモエ隊長はゴリゴリだった。
「あ、ん、ん、胸に大きな重りが付いているからな、ん」
「それに隊長としての、責任などありますし」
「ん、は、労ってくれるのか?ん、あぁ」
「尊敬のしるしです」
「ほん、と、に、気持ち良いぞ、ん」
トモエ隊長は本当に気持ち良いのか、僕に身を任せてくれる。
少し色っぽい声とかに、反応してしまいそうになるが、ぐっとこらえる。
しばらくして、肩揉みを終えた。
「ありがとう、クルト、だいぶ楽になった」
「それは良かったです、すごく凝っていましたよ」
「お前の手つき、なんだか素人ではないみたいだったぞ」
「なんででしょうね」
「お前の性格だな。名マッサージ師が3番隊に誕生だ」
「そんな大げさな・・・」
トモエ隊長はすごく嬉しそうな声で、言ってくれた。
でも表情はパッと見は普通だけど、僕には喜んでくれているのが分かった。
「次は、胸揉みだな」
「・・・え?」
「胸も凝っているんだ」
「胸は凝りません」
「なぜ分かる?」
「え?・・・いや、なんとなく」
トモエ隊長は僕の目を、真剣に見つめてくる。
やらなければどうなるか分かっているんだろうな、という目だ。
やっちゃいけないでしょ、と返した僕の目も、いいからやれ、というトモエ隊長の目に負けた。
「いや、やりませんよ」
「構わん、やれ」
「・・・もう肩揉みしてあげませんよ?」
「構わん、やめろ。だが」
するっと、トモエ隊長の手が僕の背中に回される。
胸に埋める抱擁ではなく、普通の抱きしめだった。
僕の肩に、トモエ隊長の顎が乗っている。
「困らせてすまない、私なりに肩揉みのお礼がしたかっただけだ」
「えぇ」
「お礼が抱きしめるだけっていうのも、芸がないな」
「そんなことありません」
僕はまたトモエ隊長がびっくり発言をしないように、トモエ隊長を抱きしめ返した。
「ん、まぁ、良いか」
「えぇ、いいんです」
「あぁ、明日からの訓練のこと、言い忘れていたな」
「・・・」
「明日からの夕方から、剣の技術の訓練になる。そろそろいい頃合だと判断した」
「ほんとですか?」
「うむ。これからもより一層の努力を期待している」
「はい、がんばります!」
心から嬉しかった。
やった、これでまた一歩進むことができる。
「がんばれよ」とトモエ隊長は、僕の頭を撫でてくれた。
僕はそれに身を任せ、目を閉じ、喜びに浸った。
しばらくして、トモエ隊長の部屋を出て、自分の部屋に戻った。
僕は明日からの剣の技術訓練に期待を膨らませたが、同時にジェシカさんのことも思い出した。
今日、作戦会議室で僕を見ていた目。
あの目が何を意味していたのか。
気になった。
だが、テレーズさんやトモエ隊長や、僕を理解してくれている人は、少しだけどいるんだ。
その人たちのために、やらなければいけないんだ。
絶望しそうになったときに救ってくれた、テレーズさんには感謝だ。
もしかしたら、今、僕はこの城からいないかもしれなかったんだから。
ありがとう。




