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王位継承  作者: るーく
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次の日。


食材はかなり多めに買ってきたので、しばらくは3食自分で作って食べられるはずだ。


簡単に朝食を作る。


ご飯の炊き方は水加減が難しいし、玉子焼きは殻が入っていると悲しくなるし。


まだまだ勉強が必要だった。











昼。


自分の部屋に戻ってきて、料理。


麺類は比較的簡単だな。


でも、コスト面では少し悪い。










夕方。


一日のメインイベントとなっている、トモエ隊長との手合わせ。



「覇気の無い面をしているな。それではまたいつも通りに、私にやられるだけだぞ」


「・・・」


「来い。その身を持って、剣の何たるかを覚えるのだな」



今日は手加減をしてくれたのだろうか。


何度かトモエ隊長の剣撃を受け止めることができた。




「ほう、少しは目がついてこれるようになったみたいだな」


「・・・」


「何も私だって好き好んでお前を叩きのめしている訳ではない。こうやって、少しずつでも成長しているのが分かると、嬉しくなる」



うまくいきすぎている。


こんなに、トモエ隊長の攻撃を受けられる訳が無い。


絶対に、手を抜いている。


悔しかった。













今日のトモエ隊長は、叩きのめす剣ではなく、僕を鍛えようとする剣だった。


切り返しの仕方や、受け止め方。


剣の振り方など、いわば技術に関しての訓練だった。












「む、中々良いぞ。その調子だ」


「・・・はい」


「あらゆる場面、状況を予測するのだ。同じ攻撃がいつまでも当たると思うなよ」



違和感。












「よし、今日はここまでだ。みんな上がれ」


初めてだろうか。


僕は立ったまま、意識を保ったまま、トモエ隊長の号令を聞いていた。












廊下


とりあえず自分の部屋に帰り、風呂と料理を済ませてからミーティングに出ようと移動していたところで、後ろからトモエ隊長に声をかけられた。



「クルト、ちょっといいか」


「・・・はい」


「ミーティングのあと、私の部屋に来い」


「・・・なぜですか?」


僕は素直に、はいとは言わなかった。


その僕に対して、トモエ隊長の表情が少し変わる。



「理由が、必要か?」


「・・・はい」


「これからのお前の訓練について話し合うためだ、これでいいか?」


「・・・わかりました」


僕はトモエ隊長に背を向け、また歩き始める。


なぜ自分があんな態度を取ったのか、自分でも分からなかった。


なんか嫌だった。











少し歩いたところで、僕の足が止まる。


後ろからトモエ隊長に抱きつかれたためだ。



「・・・誰かに見られたらどうするんですか」


「構うものか。騎士団内での恋愛は禁止されていない。よって、私がクルトに抱きついて勘違いする人間がいたとしても、問題はない」


「・・・隊長としての威厳が保てませんよ?」


「男に抱きついた女隊長に着いていけない、などという人間は愚かだ。私の実力は、こんなことでは崩れない」


「・・・どうしてこんなことするんですか?」


「質問ばかりだな。私がしたいたからしただけだ」



トモエ隊長の顔は、僕の肩付近にある。


だが僕は、前を見たままトモエ隊長の方は向いていない。




「・・・からかうのはやめてください」


「からかってなどいない。テレーズにばかり良い格好されるのが嫌なだけだ」


「・・・テレーズさん?」


「後でたっぷりと教えてやろう」



トモエ隊長は僕の体から離れると、手を振りながら去っていった。


僕は、徐々に下がっていくトモエ隊長と触れていた部分の温度を、寂しく感じた。












作戦会議室



ミーティング。


いつも通り、問題なく終わった。


問題がない、ってことが一番良いことなのに。


退屈だ、と少し思ってしまう自分が情けなかった。



「今日もご苦労だったな」


といういつものトモエ隊長の声を聞き、みんな席を立ち始める。


僕は最後に出ようと座ったまま、ノートをまとめる振りをしていた。











「・・・」


視線を感じて、目だけそちらに向けると、ジェシカさんがいた。


僕の方を見ている表情は、真剣だった。


だが、テレーズさんとベアさんに話しかけられると、いつもの表情にすぐ戻った。


どうでもいい。












あの3人がなぜか残っていたので、僕は席を立ち、作戦会議室を出た。


そのままトモエ隊長の部屋に向かう。


トモエ隊長は早くに会議室を出て行ったから、もう戻っているだろう。















トモエ隊長の部屋



ノックをして、中に入る。



「とりあえず、座れ」


「・・・はい」



僕がトモエ隊長とは反対側のソファに腰掛けると、トモエ隊長は立ち上がり、僕の横に座りなおした。












「お前とジェシカのことは、テレーズから聞いた」


「・・・そうですか」


「隊長として、ということだけではない。私個人がお前のことを知りたかったから、テレーズから聞いたんだ」


「・・・」


「王子だろうと無かろうと、そんなことは私には関係ない。お前を気にするきっかけになったのは、お前が王子だったときであったが。今は騎士団に入り、私の部下で、王子ではない。お前が王子だからといって、私がこうやって部屋に呼んでいるということではないことを、覚えておいてほしい」


「・・・はい」


「お前に誤解されたくはない。こうして会っていたって、特別に剣の訓練をしている訳ではないし、贔屓でもなんでもないはずだ・・・誰に言い訳しているのだろうな」


トモエ隊長の気持ちが、分からないわけではなかった。


ただ、隊長と隊員が密会しているってだけで、別に贔屓はない。


昼間はボコボコにされ続けているから、特訓しているわけでもない。


そして、プライベートな時間に上司から呼び出されるなんて、普通の人なら嫌ことだから、問題はないはず。


そういうこと。












「・・・分かってます」


「だが、お前が少しでも迷惑に感じているなら、私はお前との接触を少し考えようと思っている。上司と部下じゃ、お前の方が気を使うのは目にみえているからな」


「・・・迷惑ではありません」


「クルトがそういうなら、これからも今まで通りにする。本当にいいのか?」


「・・・はい。トモエ隊長にはすごく良くしてもらっていますから」


「そうか、ありがとう」



トモエ隊長は言いながら、僕の首に手を回し、抱きしめてきた。


トモエ隊長の感触。


柔らかさ、暖かさ、匂い、全て心地良かった。










「なぁ、クルト。私の部屋で会うときは、私のことを隊長と呼ぶのは止めにしないか?」


「・・・ですが」


「メリハリをつけよう。プライベートでは、ただの男と女だ」


「・・・」


「だめか?」


いつもの無表情だが、トモエ隊長の目は期待している目だということが分かった。


美人に名前を呼んでくれ、と言われて断れる男なんていない。


僕は、自分も男なんだなという当たり前のことを再確認した。












「・・・トモエ姉」


「弟みたいだな。血の繋がらない弟というのも、背徳的な感覚がスリリングだ」


「・・・トモエちゃん」


「呼ぶ人によってだな。死を覚悟した方が良い人間が多くなるな」


「・・・トモエ」


「年甲斐もなく、少し動揺してしまった。夫婦のような、恋人の立場のような。お前は私を、自分の女にするのだな。」


「・・・トモエさん、にします」


「なぜ、トモエと呼び捨てにしない?」


「・・・尊敬する人であり、年上ですから」


「仕方ないな、それで手を打とう。だが呼び捨てにされる日も遠くはないであろう」



むす、っとした雰囲気だが無表情のトモエ隊長は、ある意味すごいと思った。


そういった細かい表情の違いが分かってきた僕も、なんだか嬉しく感じた。














「よし、ではちょっと着いて来い」


「はぁ・・・」


トモエ隊長に腕を引っ張られて立ち上がり、そのまま歩きだしたので着いていく。


向かっている先は、寝室?












寝室に入った途端、トモエ隊長にベッドに押し倒された。


仰向けに寝転がった僕の上に、トモエ隊長が覆いかぶさってくる。


トモエ隊長の両手は、僕の顔の横にある。


目の前はトモエ隊長の顔、少しでも目線を下げれば大きな胸。


シャツの襟元から見える谷間が、誘惑しすぎている。












「・・・いきなり、ですね」


「お前だってこの前、いきなり私を押し倒したじゃないか」


「・・・あれは」


「その悲しい目を変えてやろうと思ったのだ」


「・・・え?」


「またお前は以前の悲しい目に戻りつつある。それは私にはとても寂しい気持ちにさせる。だから、今のうちに輝きを取り戻しておかなければならん」


トモエ隊長の目は真剣だ。


だが、この状況だとどう考えても、男女の営みが始まる寸前だと言わざるをえない。











「男女のことについて、私は必要ないからと少しも学ばなかった。最近、城の倉庫にいって、そういった類の書物を読んで、少しは分かったつもりだ」


「・・・え?」


「この本だ。思わず借りてきてしまったよ」


トモエ隊長が手を伸ばし、ベッド脇の照明の棚に置いてあった本を取った。


そのとき、トモエ隊長の体が前に伸び、その垂れ下がった大きな胸が僕の顔を襲った。


僕は黙っていた。


言うと絶対に、何か言われる。




「ちなみに、今のお前の顔を私の胸で圧迫したのも、本に書いてあったことだ。偶然ではなく、必然だ」


「・・・え!?」


「ふふ、私を甘くみるなよ。この本だ」



トモエ隊長が僕の目の前にかざした本には、


『男を癒す女~100の嗜み~』


と書かれていた。


こんな本が、なぜ城の倉庫に保管されているのだろうと疑問に思った。




「この本は大変勉強になる。大体が女の胸を扱ったものであるため、私の無駄に大きな胸が役に立ちそうだからな」


「・・・トモエ隊長の胸は無駄ではありません」


「む。そうやって嬉しいことを言って、私に何を期待しているのだ?」


「・・・期待していません」


「すまん、素直に嬉しいとだけ言っておけば良かったな」


トモエ隊長は本を開き、読み始めた。


何かを探している風だった。


だが、僕の下腹部に腰を下ろしたのは、ちょっとやばい気がした。











「とりあえず、100個あるから、1個ずつ試していくか」


「・・・え?」


「弱、中、強と項目も別れている。弱から順に試していこう」


「・・・」


何に対して、強弱という項目が別れているのか分からない。


トモエ隊長は本を傍らに置くと、僕に顔を近づけてきた。











「ふっ・・・」


「(ビクッ!)」


トモエ隊長は、僕の耳に息を吹きかけてきた。


僕は予想もしなかったことに、体を震わせてしまった。




「ほう、中々効き目がありそうだな」


「あ、あの、」


「もう少し続けてみよう、ふっ・・・」


「あう!」


絶妙な加減で息を吹きかけられるため、分かっていてもくすぐったかった。


僕はトモエ隊長の腕を強く掴んでしまった。












それからしばらく、味をしめたトモエ隊長に、息を吹きかけられた。


僕は必死に耐えているだけだった。



「なぁ、クルト。くすぐったいのは分かるが、そんなに強く私の胸を掴まれると、なんだか変な気分になりそうなのだが」


「え!?」


冷静になって自分の手の先を見てみると、僕の右手はトモエ隊長の左胸を握っていた。


揉んでいるのではない、握っていたのだ。


大きいゆえに、掴めるだなんて・・・


いやいや、余計なことを考えてはいけない。




「少し、痛い」


「す、すいません!」


「優しく揉み解してくれないか?」


「は、はい!」


焦ってしまった僕は、トモエ隊長の言葉に疑問を抱かず、握力を弱めて、やわやわと左胸を揉んでしまった。



「ん、ん、そうだ。少しくすぐったいが、その方がいい」


「は、はい・・・」


「ん、右の方も、頼む、ん。」


「はい・・・って!!」



僕はやっと気づいた。


トモエ隊長の右胸に手を伸ばしかけたときに、状況とトモエ隊長の言葉を理解した。


とっさに、手を離す。



「なぜやめる。気持ちよかったのに」


「い、いいいや、その、すいませんでした!」


「ふふ、その焦りよう。可愛いものだ」


「すみませんすみません!」


「謝らなくても良い。だが、男を癒すはずが、女が癒されているようでは、本末転倒だな」



トモエ隊長は僕の体から身を起こすと、僕の下腹部にまた座り込んだ。


ぐりっ、とした感触を覚えた。




「ほう、これは」


「あ、ああああ!」


「元気だな、クルト」


「・・・!!!」


トモエ隊長は、知っているのか知っていないのか、腰を前後に動かし始める。


分かっててやっているんだ、絶対そうだ。


僕はこの状況はとても危険だと判断した。



「固くておもしろいな。人体の神秘だ」


「・・・」


「クルト、目がギラついているぞ」


「!?」


そんなこと言われたら・・・


そんな何も知らないという表情で言われたら・・・










僕は腹筋を使って体を起こし、そのままトモエ隊長を抱きしめる。


間髪おかずに、体をひねり、逆にトモエ隊長を押し倒した。



「見事な技であったな。反応できなかったぞ」


「・・・」


「形勢逆転だな。これから、どうするのだ?」


「どうもしません・・・」


テンションの上がり方が激しかったため、僕は急激な疲れに、トモエ隊長の体の脇に倒れ込んだ。


あぁ、良かった。あぶないことが起こる前に、未然に防いだ。



「私は間違ってしまったか?」


「間違っていません」


「そうか。私も新しい発見があり、非常に有意義であった。まさか胸を揉まれるということが、あんなにも気持ち良いと感じたのは初めてだ」


「そうですか」


「おそらく、相手がクルトだからだろうな。女を性欲でしか見てない男相手だったら、嫌悪感しかなかったであろう」


「僕だって、性欲はありますよ」


「私のクルトに対する気持ちの問題だ」



トモエ隊長は僕を抱きしめた。


あぁ、なんか最近、抱きしめ関係が多い気がする。


親愛の表現、っていえばそうなんだけど。


これに、弱いんだよなぁ。




「少し不純であったかもしれないが、クルトの目は、もう悲しみを灯していない」


「え、そうですか?」


「あぁ。色々あったが、お前を癒せるのはこの抱擁が一番なのかもしれないな」


「僕もそう思います」



トモエ隊長の胸に顔を埋め、僕は目を閉じた。


トモエ隊長は、僕の頭を優しく撫でてくれた。


人肌の温もり。


人肌の柔らかさ。


人肌の匂い。


安心、という気持ちを抱いた。

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