表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王位継承  作者: るーく
36/60

36

次の日。


前日かなり傷を負ってしまったが、テレーズさんの手当てのおかげで、普通には動ける程度に回復していた。


痣だらけだから、触られると痛いんだけどね。



あ、そういえば一ヶ月飯抜きだった・・・


ベッドから起き上がって、その事実に気づいた僕は固まってしまった。










コンコン、と扉をノックされる。


「・・・はい」


「私だよ~、入っていい~?」


「・・・どうぞ」



テレーズさんだった。


入ってきて挨拶を交わしたあと、テレーズさんは僕のために朝食を作ってくれた。


僕は昨日のこともあり、なんだか気まずい気持ちを持ってしまった。











「はい、出来たよ~。私も一緒に食べるけど~、食堂の方には言ってあるから気にしないでね~」


「・・・いただきます」


テレーズさんが作ってくれた朝ごはんは、おいしかった。


泣きそうになる。











「・・・テレーズさん、僕この機会に料理を覚えようと思います」


「クルちゃんさえ良ければ~、毎日毎食でも作ってあげるよ~?」


「・・・テレーズさんにはすごく良くしてもらってますから、負担になりたくないんです。それに、良い経験になると思いますから」


「負担なんて~、でも挑戦することは良いことだね~。最初のうちは私が教えてあげるよ~」


「・・・ありがとうございます」


とりあえず今日のお昼の分は、テレーズさんがお弁当を作ってくれた。


笑顔で渡されたとき、すごく嬉しくて恥ずかしい気持ちを抱いた。


「愛妻弁当だからね~、残さず食べてね~」と言ったテレーズさんの顔は、少し桜色に染まっていて、綺麗だった。












午前中は筋トレをしていたら、すぐに終わった。


みんなが食堂に行ったあと、僕は自分の部屋に戻り、テレーズさんから貰ったお弁当を食べた。


食べ終わって、お弁当を洗い、部屋を出る。












城門


とりあえず、食材と必要な器具を買いに行こう。


昼休みはあと30分ぐらいだ。


急がなくては。











雑貨屋、食材屋などを周り、必要だと思われるものを集めていく。


初めてもらった給料は手をつけていなかったため、余裕で買い揃えることができた。


これなら一ヶ月、なんとかなりそうだ。



部屋に戻って買ったものを置き、急いで訓練場まで戻った。












訓練場


夕方。


今日も始まるトモエ隊長との手合わせ。


進歩しないのは、努力していないからだ。




「クルト、今日も逃げずによく来たな」


「・・・よろしくお願いします」


「昨日みたいに情けないことを言ったら、今日は本気で殺しにかかるからな」


努力している人間は評価してくれる人だ。


弱くても、やる気を出してさえいれば、手加減はしてくれる。



僕もやられっぱなしは嫌だし、早くトモエ隊長の動きについていけるようになりたいと思ってる。


向上心は、少しはあるようだ。











少し良い感じかも、と思ったときにはもう地面と仲良くしていた。


何度立ち上がろうとも、僕に動きを読ませない、多彩な攻撃により、倒れる。


意識を失う。


そして、一日が終わる。


いつものパターンだ。












意識が戻り、目を覚ます。


昨日より、幾分か体は楽だった。


口答えもしなかったし、剣さばきもいつもより良かったと思う。


全身ボロボロなのは変わらないけど、やっぱり頑張っていればそれなりな傷で許してくれるみたいだ。


ふらつきながら立ち上がり、時間を確認してみると、ミーティングの時間っぽかった。


そのまま作戦会議室に向かう。












作戦会議室


ちょうどミーティングが始まるところだった。


なんとか辿り着いた僕は、近くの椅子に座る。


ジェシカさん、テレーズさん、ベアさんは一緒にいた。


なんだかんだいって、やっぱりすぐ仲直りするんだな。


そりゃ、そうだよな。付き合ってる時間が違う。



「全員揃ったな、それではミーティングを始める」











昨日、僕がミーティングをサボった罰は、次の非番の日に、居住区の全ての掃除だった。


しょうがないよな。


みんなからボコボコにされる、とかだったら考え物だったし。


やるしかないよ。












ミーティングが終わってから、自分の部屋に戻った。


風呂に入り、体の手当てをしてから、キッチンに立つ。


今までは食べる側だったが、今度は作る側だ。


とりあえず、昼に買った料理の本を読んで、なんとなく理解できたと思う。


よし、やるか。













コンコン、と部屋の扉がノックされる。



「・・・はい」


「クルちゃん~、私だよ~、入っていい~?」


「・・・いいですよ」


やっぱりテレーズさんだった。


ちょっと嬉しくなってしまうのは、昨日のせいなのかな。











「あ~、さっそく料理してたんだ~」


「・・・えぇ」


「へぇ~、これ作ってるんだ~。簡単にコツ教えてあげるよ~」


テレーズさんは僕が作りかけているものを見て、何を作っているかすぐに分かったみたいだった。


さすがだ。


そして、テレーズさんに教えてもらいながら、初料理は進んでいった。










「フライパンの使い方はね~、こうだよ~」


テレーズさんは僕の後ろから、僕の手を握り、まるで人形のように操って教えてくれた。


でも、背中にくっつかれると、別の問題が発生する。


分かりやすいけど、ドキドキしてしまった。



「・・・テレーズさん、背中が気持ちいいです」


「え~、気持ち悪いよりいいじゃない~。この方が分かりやすいでしょ~」


「・・・そうですね」


「そうそう~、気にしない気にしない~」



フライパンだけでなく、包丁の使い方も教えてもらった。


同じ方法に。












初料理が完成した。


食べてみる。


・・・こんな、もんかな。


初めてだったし・・・




「どう~、クルちゃん~?」


「・・・なんとか普通だと思います」


「料理も剣も一緒で~、何回も練習を重ねることが大事だからね~。クルちゃんは器用そうだから~、きっとうまくなるよ~」



僕の目の前に座っているテレーズさんは、とても優しい表情だった。



全て食べ終えたあと、僕は食器を洗い、片付けた。


テレーズさんはまだ僕の部屋にいる。


足の低いテーブルの前に座り、両肘をテーブルの上に乗せ、手のひらに顎を乗せて、僕のことを見ている。


その表情は、ニコニコしていた。












片づけが終わったあと、テレーズさんに教えてもらったお茶を淹れて、少し話をした。



「クルちゃんさえ良ければ~、毎日料理教えてあげるよ~?」


「・・・いえ、そんな」


「いいの~、私が教えたいだけだから~。それで~、少しご褒美がもらえらば~」


「・・・ご褒美?」


「教えたあとは~、ギュってして欲しいなぁ~」


恥ずかしそうに言ったテレーズさんは、正直可愛いかった。


男の部屋に躊躇無く入り、用が終わってもこうして付き合ってくれてる。


年が離れているから、安全だと思っているのだろう。


・・・卑屈な考えだな。











僕は立ち上がり、テレーズさんの後ろに回る。


そのまま腕を前に回し、人間座椅子スタイルだ。



「え、え~?クルちゃん~・・・積極的だね~」


「・・・嫌なら止めます」


「止めちゃだめ~。えへへ~、嬉しいな~、あったかいな~」



僕の方からはテレーズさんの顔は見えない。


テレーズさんの体は柔らかくて、ちょうど目の間に後頭部があるが、とても良い匂いがした。


僕はギュッと抱きしめる力を強め、テレーズさんの肩に顎を乗せる。




「く、クルちゃん~・・・そんなに強く抱きしめられると~・・・私~・・・」


「・・・ごめんなさい。痛いですか?」


「ん~ん~・・・なんか~、ドキドキしちゃうの~・・・えへへ~」


「・・・」


「ねぇクルちゃん~・・・いいんだよ、触っても~・・・?」


「・・・では遠慮なく」


「え、え~!?今日のクルちゃん~、本当に積極的だね~・・・」














僕はテレーズさんの肩を揉んだ。


やっぱり、すごく肩が凝っていた。



「ん・・・ん・・・クルちゃん~、気持ちいい~、そこそこ~」


「・・・胸が大きい女性は肩こりが多いと」


「そうなの~、見た目より重たいんだよ~、あ~、効く効く~」


「・・・かなり凝ってますね」


テレーズさんは、気持ち良さそうな声を出してくれたため、僕は肩揉みを続けた。














「はぁ~、クルちゃんとっても気持ち良かったよ~」


「・・・そのセリフだけ聞いたら勘違いする人がいそうですね」


「え~、じゃあ~、本当に気持ち良いことしようか~?」


「・・・勘弁してください」


「えへへ~。もう、クルちゃんは本当に可愛いな~。」


肩揉みが終わったあと、また抱きしめ直した。


テレーズさんは、自分の肩に乗っている僕の顔に顔をスリスリしてくれる。



「本当に気持ち良かったよ~、クルちゃんの手つきが優しいから~。トモエ隊長もきっとすごく凝ってるだろうから、今度やってあげなよ~」


「・・・機会があれば」


「絶対喜ぶよ~」











しばらくして、テレーズさんは僕の部屋から出て行った。


部屋の前まで送ったとき、最後に前から抱きしめてくれた。


また明日ね、と耳元で囁かれたとき、僕は抱きしめ返したくなる衝動を覚えた。


しなかったけど。



なんとか、一日が終わった。


この調子でしばらくは続けていこう。


そして、考えるんだ。



自分に、何が出来るのかを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ