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とっさに思いついたのは、ナルに対してとった行動だった。
耳元で囁くように・・・
「・・・子供は、何人くらい欲しいですか?」
「偶数人だな。男1、女1、がベストだ。女が姉がいいな」
「・・・」
「なんだ、クルト。ただの快楽を得るための行為をするのではないのか?子作りがしたかったのか?」
「・・・」
効かない。
攻撃が効かない。
これじゃあいつものボコボコ地獄と一緒だ。
でも、恥じらうトモエ隊長ってのも想像できなかったから、良かったといえば良かったのだろうか・・・
「クルト、私はな。物心ついたときから、剣をやっていた。来る日も来る日も、剣を振っているか、勉学を嗜んでいるかだった。それは今も変わらない。異性というものも、お前が騎士団に入ってくるまで意識していなかったことだ。必要の無かったことだから」
トモエ隊長は、無言でいる僕の頭を優しく撫で、話を続けた。
「お前のことは、小さい頃からの悲しい目をしていたときから知っている。あの悲しい目をしていた王子が、入隊の日には輝きを灯し始めた目になっていて。私は、お前に対する感情が少し変わった。姉のような感情から、クルトは男なんだと思う感情に変わっていったんだ」
「・・・」
「さきほどの風呂やリビングのことだってそうだ。いや、それ以前に今日、私の部屋に泊まれと言ったところからかもしれないな。私は、お前が思っている以上に、お前を意識していると思うのだが。やはり、普通、とは言い難いのだろうか」
「トモエ隊長」
僕は、トモエ隊長を抱きしめた。
覆いかぶさる状態での抱きしめるのは、ちょっと手のやり場とか困ったが。
「お前を困らせてしまったな。でも、これが私なんだ。できれば、嫌わないでくれるとありがたい」
「嫌いません。そして、謝るのは僕の方です」
「ふふ、お互いどちらが謝るという問題でもあるまい。では、試しに子作りの練習でもするか?」
「・・・しません」
「とりあえず脱げばいいのか?そのあとは、さきほどから腹部に当たっているお前のものを、どうすればよいのだ?」
これじゃ、堂々巡りだ。
なんとかうやむやにならないのだろうか・・・
ここで僕が子作りの行為なんてしたら・・・それこそ、おかしいことになりかねない。
・・・したことないし。当たり前だけど。
「今日はもう、寝ましょう」
「お前がそういうなら私は何もしないが。いいのか?こういったことは男の方が収まらないのではないか?」
「何も性行為だけが、男女を繋ぎとめるわけではないと思いますので・・・」
「すまんな、クルト。私はお前の上司であり、人生の先輩であるというのに、お前を困らせてばかりいる」
「それも、トモエ隊長の魅力の一つだと思います」
「魅力、か。今の言葉は少し嬉しかったぞ」
ぎゅう、と僕の首に両腕を回し、抱きしめられた。
僕の顔は、トモエ隊長の首あたりに固定されてしまう。
「横向きにならないか?ん、この方が抱きしめやすいな」
「・・・」
「私の胸に顔を埋めているクルト。なんだろう、この感情は。どうしようもなく、暖かい」
「このまま眠ってもいいですか」
「あぁ、構わない。私はお前を抱きしめているだけで、今のところは満足だからな。人より大きい胸だが、お前の顔を見ていると、胸が大きくて良かったと思える。なぜだろうな」
「・・・これからの課題ですね」
僕はもう、トモエ隊長の胸の感触に身を任せることにした。
この胸は、凶器だ。甘い凶器だ。
手で触ったりなんだり、そういったことも許されそうなこの状況だが、今はこのままでも僕は安らぎを得ていた。
「おやすみ、クルト。今日も頑張ったな」
「おやすみなさい」
僕もトモエ隊長も、お互いを抱きしめあって、眠りについた。




