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アイネリア王国は女王制。
その関係で、王族でも男が生まれると、そのまま国に残れるとは限らない。
・・・最も、才能がすごいとか国が必要とする人間であれば、国に残れるらしいが。
どうやら、僕は残れないらしい。
僕が今のリムと同じ年のとき、両親の部屋に呼び出され、伝えられた。
母親は泣いていた。
父親は真剣な目だった。
「それでいいのか」と最後に父親から言われたけど、僕は「それでいいです」とだけ伝え、部屋から出て行った。
決めるのは両親だけじゃない。
側近だの何だのを集めて、審議会を開いて決めるのだ。
そこで僕は国に必要ないとされたのだ。
別に珍しいことじゃない。
過去に、他にも何人も出て行ってるのだから。
「・・・よく知ってるね」
「有名な話じゃない・・・今まで中々聞けなかったけどさ」
「・・・そっか」
「ねぇ・・・クルトだったら私の家族もみんなよく知ってるし、それに・・・」
「・・・ナルは優しいね。でも、いいんだ」
「クルト・・・」
「・・・そんな悲しそうな顔はナルに似合わないよ。僕はいつも勝気で強気な笑顔のナルが好きなんだから」
「・・・ばか!もう知らない!!」
ナルはバッと立ち上がると、駆け出していった。
気を使わせてしまった。
僕は何をやっているんだろう。
「また来るからね!」
ナルは、少し離れたところで振り向き、最後には笑顔だった。
輝いていた。
僕は手を振って見送った。
廊下
その夜。
廊下を歩いていると、目の前からリムが一人で歩いてきた。
お風呂あがりかな。
寝巻きに着替えているみたいだし。
もちろん、無視しても話しかけても悪態をつかれる。
「やぁ、リム。お風呂にいってたのかな?」
「・・・」
「・・・湯冷めしないようにね」
リムは僕にキッと鋭い視線を向けたが、何も言ってこなかった。
罵声でもリムの声が聞けないのは寂しかったが、リムを刺激してストレスを与えるのも良くない。
僕はそのまま横を通り過ぎようとした。
「・・・そこの出来損ないの兄上」
「・・・なんだい、リム」
「・・・今日、ナルが来ていたであろう。そのときにナルが言っていたのだが・・・出来損ないの兄上が18になったら、ウチの国で引き取っても良いか?などと」
「・・・」
「・・・出来損ないの兄上もナルと話したであろう?この話についてどう考えておるのだ?」
「・・・さすがリム、鋭いな・・・」
「ふん・・・私としては出来損ないの兄をナルの国に渡すなど、我がアイネリア王国の恥だと思っておるのだが」
リムは腕を組みながら、僕を見上げながら話してきた。
その目は、軽蔑するような見下すような嘲笑を含んでいた。
僕は悲しくなる気持ちを抑えた。
リム・・・
「・・・リム。心配しなくても僕はナルの国に行く気はないよ。もちろん、城やこの国に残る気もない」
「当たり前であろう!・・・どこへでも行って、のたれ死ぬのが似合いじゃ!!」
今度は、はっきりとした憎しみを持った目をしていた。
・・・いいんだ、別に。
いつまでも仲良し兄妹でなんかいられないんだから。
それにリムだって次期女王の重圧からかなりストレスがあるはずだ。
僕を罵ることで少しでも発散できていたらとも思うし・・・
「この・・・人間のクズが!!」
「・・・」
「言い返す度胸もないのか!!・・・もういい!!」
リムはそのまま自分の部屋に入っていった。
リム・・・出来損ないの兄でごめんな。
僕は、このとき決意した。
18歳までなんて待たなくてもいいのではないか、と。
前々から考えていた、計画を。