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王位継承  作者: るーく
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勉強、武道など一通りは教育を受けた。


だが、妹のリムに比べると、レベルは明らかに違う。




一般教養レベル、護身術レベル。


未来がない人間に、ちゃんとした教育なんて受けさせるわけがない。





リムは、必死に勉強をしていた。


みんなに対する口癖や態度は、余裕であり当たり前のように振舞っていたが、僕には分かる。


いつも必死だった。


いつも結果を出していた。


次期女王としての、背負うものがある人間に相応しく。








中庭



僕はやることがないときは、城の中庭でいつも昼寝をしていた。


そんな僕を見て、他の人たちは


「王子はのんきだな」


「王位継承権が無くて当たり前だ」


と聞こえるように口々言う。



寝れる訳が無い。


昼寝をする素振りをしつつ、僕はいつも起きていた。


出生を呪うとか、なんで男に生まれたんだ、なんて感情は何年か前に諦めた。










「クールト!」


「・・・」


「こら!無視しないでよ!」



僕が思考のスパイラルに陥っていると、元気の良い女の子の声が上から降ってきた。


もちろん、知ってる声だった。




「・・・ナル姫、こんにちは」


「こんにちは・・・って寝たまま挨拶するな!失礼だぞ!」


「・・・どうも失礼しました・・・どっこいしょ」


「全く・・・だからクルトはぶつぶつ」




ナル姫は隣国のバーンライル王国の姫だ。


金髪ツインテールでプライドが高くて、リムと同い年。


背丈は150センチくらいで、細身。

足がすらっとしていて、将来に期待が持てる。

高貴な女性らしく、つり目がちな目に力がある。


何かに付けてはリムをライバル視しているんだけど、二人はとても仲が良い。


王族って中々、同い年の友達ってのはできないからね。

自由に外に出れる訳じゃないし、学校に通っている訳でもないからね。


二人ともそれを分かっているんだ。

そして、二人で切磋琢磨している。


年上の僕より、人間として良く出来ている。




とまぁ、そんな関係もあり、ナル姫は良く城に遊びにくる。


今日もそんな感じだろう。










「・・・ご機嫌いかかですか、ナル姫」


「はぁ・・・別に普通よ、あと姫ってのやめてよね。今は大丈夫でしょ」


「・・・はい」


「ちょっと、他に言うことないの!?」


「・・・いつもお綺麗ですね」


「ふふん、分かっているじゃない」




腰に手を当てて、胸を張っている。


見栄見栄のお世辞なのに、それが当たり前になっている。


じゃないと落ち着かないのかな。


・・・まぁリムに負けず劣らずの容姿だし。


二人並んでいるのを見ると、かなり目の保養になるしな。



いや、別に妹に欲情しているとか、そういうのじゃないよ。





「聞いてよクルト!リムリアったらね・・・」


「・・・うん」





ナル姫はマシンガントークで僕に話しかけてくる。


僕とリムと三人で会うことは、もう何年も無い。


リムが僕を罵るようになってからだ。


・・・ナル姫は気を使っているのか、そのことについては触れてこない。

だからいつも、僕とリムには個人的に会ってる。










「ねぇ・・・クルト」


「・・・なんだい」


「最近ね、父上が見合いばっかりさせるの・・・まだ14歳なのにさ」


「・・・次期王女なんだから仕方ないよね。親としては早めに世継ぎを決めたいと思ってるだろうし」


「でもさ・・・好きでもない男となんか結婚したくないじゃない?・・・自分の身分とか考えると、そんな我侭が通用しないのも分かってるけどさ・・・」


「・・・そうだね、王族の辛いところだよね」





ナル姫は俯いてしまった。


よくよく見てみると、いつもよりあまり元気が無かった。


疲れているんだろうな。





「・・・後悔しないためにも、良く人を見ていかなくちゃね」


「そんなこと分かってるわよ!・・・でも、なんだか疲れちゃった」





ナル姫はそのまま、バフッっと芝生に仰向けに寝転がった。


無邪気だな。

こういうところが、まだ14歳なんだなと思える。






「・・・ドレスが汚れちゃうよ」


「いいのー!どうせ今日はもう用事ないしー」


「・・・だめだよ、姫なんだから」



僕はナル姫を抱きかかえて、起こした。


「な、ななな何をするの!?」とか言ってたけど、気にしない。


そのまま座らせると、ドレスについた草などを払った。



だってさ、リムと会ったあとは綺麗だったのに、僕と会ったあと汚したとなると、また何を言われるか分かったもんじゃないからね。




「・・・ちょっとドキっとしたじゃない」


「・・・ごめんね。でも僕も、周りからとやかく言われるのは慣れているけど・・・やっぱりね」


「うん・・・ごめんなさい」


「・・・謝ることは無いよ。まぁこうやってナルに触れられるってだけでも、役得なんだから」


「ふふ・・・他の男だったら往復ビンタに牢獄30年に国外追放よ!」




良かった。


子供の頃から知ってるってだけでさ。


何にもない僕なのに。










「・・・婚姻相手を探している時期に僕なんかと話したりしたら、まずいんじゃない?」


「何を今更言っているのよ。クルトは私にとって・・・お兄ちゃんみたいなものなんだから、大丈夫よ!」



一瞬、言い淀ん気がするけど、気にしないでおく。


期待するだけ、無駄なんだから。




「・・・周りがそう納得してくれればいいけどね」


「納得しなくても、納得させる!・・・私が心許して話せる相手なんて家族以外には、リムとクルトだけなんだから」


「・・・ナルはすごいな」



僕は無意識にナル姫の頭を撫でていた。




「ち、ちょっと・・・子供扱いしないでよね!」


「・・・あ、ごめん」


「あ、そ、その、もうちょっとぐらいしてくれても良いじゃない!」


「・・・え?」


「そうそう・・・か、勘違いしないでよね!別にクルトの手が思っていたより大きくて暖かくて安心するなんて思ってないんだからね!」


「・・・はいはい」




ナル姫は嫌がっているのか、嫌がっていないのか分からなかった。


周囲には誰もいないのが分かっていたから、僕も油断していたな。


子供扱いしないでと言っておきながら、頭を撫でていると、ナル姫は次第に僕に体を預けてきた。




「・・・クルトさえ良ければ」


「・・・ん?」


「・・・私の国に・・・来ても良いんだよ?」


「・・・ナル」



ナル姫は僕を座椅子変わりにしながら、際どいことを言ってきた。


彼女の後頭部しか見えないから、どんな表情をしているかは分からない。




「・・・危険な言葉は避けようね」


「周りには誰もいないじゃない・・・クルトもそれ分かってて私の頭撫でてきたくせに・・・」



バレてら。

さすが時期王女ともなると違うね。




「・・・ん・・・ごめん。でも、リムを残していく訳には行かないよ」


「でも・・・18歳になったら・・・この国を出て行かなくちゃいけないんでしょ・・・?」

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