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「兄上は王位継承権もないくせに…わらわに指図する気か!?」
「…」
「何のために生まれてきたか分からない人間に、とやかく言われとうないわ!」
ここ、アイネリア王国は女王制の国である。
つまり王家の人間でも、女性で無ければ王位は継ぐことができない。
僕の名前は、クルト。
アイネリア王家に生まれ育った16歳。
王位継承権は、生まれる前からない。
「殿下、おはようございます」
「王子、こんにちは」
「…けっ、王位継承権もないくせに何が王子だ」
ひがみ妬み嫉み。
子供の頃から付きまとってきたものだ。
殿下や王子などと呼ばれようが、王位に就けない人間にはどこか冷たい。
最初の、僕に暴言を吐いていたのは妹のリムリアだ。
二歳年下の妹。
美人の母親から生まれ、例外なくその遺伝子を受け継いでいる。
ちなみに母親は女王だ。
僕は王子だから、継承権がない。
妹は姫だから、継承権がある。
妹も小さい頃はお兄ちゃん子で、いつも僕の側にいて離れなかった。
可愛いリム。
今はもう、顔を合わせれば僕に悪態をついてくるリム。
王家としてのプライドが、次期女王としてのプライドがそうさせているのだろう。
僕は、何なんだろう。
何ができるのだろう。
何で生きているのだろう。
今日もまた、考え込む一日が始まる。