灰色マタニティライフ
幸せな日常エッセイのはずなのにこのタイトルはどうなの。
このエッセイを読んでいる方で妊娠経験のある方はどれくらいいるのでしょうか?
妊娠って女性だけが経験する特別で大切なお仕事ですよね。私は昔から子どもが好きで早く大人になって結婚して妊娠して子どもが生みたいと高校生くらいから思っていました。もういっそできちゃった婚でもいいじゃん! くらいのノリです。
※ダメです。望まない妊娠をしないためにきちんと避妊しましょう。
そんな私が念願の第一子をお腹に宿したのは結婚式を翌年三月に控えた秋の事でした。
籍だけは三月に入れていたのでできちゃった婚ではありません。セーフ!
一年間お金を溜めて、そのお金で翌年三月に結婚式と披露宴をしようと考えていたのです。当時ウエディング関係のお仕事をしながら自分たちの結婚式はなるべく手作りでしたいと奮闘していた最中でした。(結局妊娠八ヶ月で結婚式をしました)
妊娠発覚した時、ドラマの様に「うっ!」となることはなかったです。ただなんとなく遅れている気がして検査したらうっすら陽性反応があり、旦那にそれをキラキラした目で訴えましたが「薄いし間違いじゃない?」と言われて凹みました。
ともかく次の日に病院へ。「まだ着床したばかりで赤ちゃんは見えませんが、妊娠してますよ」と先生に言われて泣きそうになりました。嬉しくて嬉しくて仕方なかったです。
旦那にもすぐに連絡しました。子ども好きな旦那は「え!? 本当に!?」と驚きながらも喜んでくれました。
旦那との関係も、仕事も、順調で何もかもが上手くいくようなそんな感じでした。まさにバラ色のマタニティライフが待っているんだわ! と思ってました。大きなおなかをさすりながら可愛い赤ちゃん服を選びに行くのが楽しみで仕方なかったです。
ですが、マタニティライフは決してバラ色ではなかったです。
中にはバラ色の方もいるでしょうが、私は完全に灰色でした。
まず、ホルモンバランスの変化。
職場で何を言われても(ただの指示)涙が出て、何にショックを受けているのかわからなくて情緒不安定になりました。怒られているわけじゃないのに責められているような、もっと仕事ができたはずなのに上手くいかない、よくわからないけど泣ける。
仕事中はなるべく泣かないようにしてましたが、仕事が終わった後すごく涙がでてもう自分ではどうしていいかわからず、社会人としてはいけないことなのですがすぐに仕事を辞めました。本当なら一か月後とか自分の後釜を見つけてから辞めたかったのですが、本当に職場の方々にはご迷惑をおかけました。
自分は母親になるのに何て弱い人間なんだ。なんてダメな母親なんだ。こんな私の所に来てくれたお腹の子に申し訳ない。
こんなお母さんでごめんね。お母さん失格だね。
なんて、思ってました。軽鬱というか、自分が思っていたマタニティライフとは違いました。
そしてつわり。これが酷かった!
まず布団から起きれないくらいの気持ち悪さ。気持ち悪くて何にも食べれないのにお腹が空くという地獄。
料理はもちろん、お米は炊けないし洗い物すら無理。ミカンとトマト(冷凍)だけが友達でした。お米はダメでした。お腹がすいて食べると後でとんでもなく後悔しました。
私は気持ち悪くても吐けないタイプでした。トイレまで行っても吐けず、ずっと気持ち悪いまま。水は飲めたのでご飯食べなくてもなんとかなりましたが、吐けないから点滴も打てないんですよね。点滴は水分すら取れない人がするんです。(たぶん)
当時の私が食べれたものはミカン、トマト。しばらくしてそうめん、焼き芋、えびせんべいが追加されました。朝から晩までひたすら布団で気持ち悪さと空腹と戦い続けました。体重があっという間に減ったので体重計に乗るのがすごく嬉しかったのを覚えています。
食べたいのに食べれないって本当に辛いです。
旦那は私が食事を作れないので毎日惣菜を買って来て自分でご飯食べてました。食事の匂いもダメなので傍には寄れませんでした。
ある日、旦那がファミチキを食べていました。久しく食べていないお肉に目が奪われて気持ち悪くなると思いつつ(匂いですでに気持ち悪かったのですが)どうしても一口食べたいと泣きました。
「ファミチキ食べたいいいいいい」
と号泣する嫁に引く旦那。
旦那は「食べたら気持ち悪くなるだろ?」と私を心配して一口もくれません。私は「食べたいのに~~! つらいのに~! なんで自分だけファミチキ食べてるの~! ずるいよ! ずるいー!」と本気で泣きながら訴えました。
それをみた旦那は爆笑。おいコラこっちは本気なんだぞ。なんで笑ってんの? よろしい。ならば決闘だ!
決闘はしませんでしたがファミチキは食べれませんでした。旦那勝利。
食べても後で絶対後悔するんですけどね! わかってるんです! わかっていても食べたかったんです!
つわり期間は本当にしんどかったです。お腹はまだ膨らんでないし妊婦の自覚も薄いしなんでこんなに辛い思いをしなければならないんだと泣きまくりました。
「私、つわりで死ぬ最初の妊婦になる」
真面目な顔で言ったら「大丈夫、つわりで死んだ妊婦はいないから」と旦那に笑われました。
でもつわりって本当に死ぬかもって思うほど辛いんです。つわりの辛さは個人差があるので一概には言えませんが、私はそう思いました。でもいつかは終わりがくるはず! そう思って毎日毎日必死に耐えました。
つわりが落ち着くと今まで食べれなかったのが嘘のようにご飯を食べ始めました。反動が大きかったようで、みるみる体重は増えていき体重計が怖くなりました。ファミチキもやっと食べれました。
これからが本当のバラ色マタニティライフ! と意気込んでいましたが甘かった。
次にやってきたのは腰痛です。
お腹がすくすくと大きくなり、早い段階で性別もわかりました。私は人よりお腹が大きくなりやすいらしく(ただの食べ過ぎ)妊娠中期からすでに臨月のようなお腹になってました。どこにいっても「もうすぐ生まれそうね~」とおば様方に声をかけられて「そう、ですねぇ~」と苦笑いしました。
立派なお腹で仰向けは無理です。横に向いて寝るのですが、寝返りを打つのも腰がピキッと痛んで一苦労。立ち上がるのも座るのも腰が痛むんです。大きなスイカをかかえているようなもんですからね。よっこいせ、というのが口癖になりました。
念願だった赤ちゃん服選びも腰が痛くて歩くのが辛い。幸せな時間になるはずが腰痛のせいで苦痛の時間に。
いつバラ色のマタニティライフは訪れるの?
この頃から疑問に思い始めました。赤ちゃんがお腹にいるという幸せは日々感じていましたが、それ以上に辛いことが多すぎる。なんか自分が思っていたマタニティライフと違う。妊婦さんっていつみても幸せそうで、ニコニコしていて『幸せの象徴』みたいなものだと思っていたのに。なんだこれ苦行か。
妊娠後期には腰痛悪化+頻尿。
夜まとめて寝られなくなりました。トイレに何度も何度も起きて熟睡できずに毎日寝不足です。赤ちゃんが生まれてくるための準備だと聞いたけど、生まれたら頑張るからもう少し寝かせてくれ~と思ってました。
お腹も頻繁に張っていたし、大丈夫かなと心配になって何度も病院に電話しました。実際に病院に行って検査もしましたが、全部異常なしでした。今なら過敏になりすぎていたな、と思いますが当時は初めての妊娠に戸惑い「何にもなければそれでいいんだから」と旦那が言ってくれたので些細なことで病院にいってました。
臨月に入るとやってきたのは前駆陣痛。
陣痛のような痛みが毎晩毎晩私を悩ませました。二週間続きました。陣痛かと思って夜間に病院にいった回数は三回。陣痛の練習なんていいから本番の陣痛来いよ! とどこにもぶつけられない苛立ちが涙となって出てきました。
『早く赤ちゃんに会いたい』という気持ちと『早くこの辛いマタニティライフを終えたい』という気持ちが行ったり来たり。
本当に大変なのは生んでからだと知るのはもう少し先でした。
ここまで『妊娠辛い!』しか書いてきませんでしたが、妊娠自体は本当に嬉しかったし幸せでした。ただ、こんなに辛いと思ってなかっただけで。
普通にご飯が食べれて
普通に睡眠が出来て
普通に歩けて
普通に買い物ができて
普通の生活ができる
それが本当に幸せなことなんだと妊娠したからこそ気づきました。お腹の赤ちゃんが教えてくれたのかもしれません。
どんなに辛くても、耐えてこれたのは隣で優しく支えてくれた旦那とお腹を元気に蹴とばしてくれた赤ちゃんのおかげです。元気すぎて、赤ちゃんのキックであばら骨がパキッとなったことがありましたが。(折れたかと思った)
病院のエコーで赤ちゃんを見るたびに今まで味わったことのないような幸福が胸を満たしてくれました。これは妊婦さんにしかわからないと思います。あのエコーの機械が我が家に欲しいとさえ思いました。あれを買えばいつでも赤ちゃん見れる! 私天才! とかね。どんだけ高いと思ってるんだバカって話ですよね。知ってる。
もしこのエッセイを読んでいる方の中に妊婦さんがいらっしゃったら(私の話に共感できるかできないかは置いといて)どうか無理をなさらず、ゆっくり過ごして下さいと言いたいです。今、貴女は赤ちゃんをお腹で育てるという、誰にもできない大切なお仕事をしているのですから。貴女の代わりには誰もなれません。お腹の赤ちゃんを育てられるのは貴女だけです。どうかご自愛をなさってください。
奥さんが妊娠中の旦那さんはどうか奥さんの話を聞いてあげて下さい。何を求めているのか、どうしてほしいのか(中にはほっといてほしいという人もいます)奥さんの気持ちを第一に接してあげて下さい。妊娠したから俺が仕事頑張って稼がなきゃ!とお仕事を頑張るよりも(それも大切ですが)奥さんの傍にいてあげて下さい。洗い物が無理ならしてあげてください。洗濯も掃除もしてあげてください。家事は奥さんの仕事だからと思ってもせめて妊娠中はお腹で二人の赤ちゃんを育てるという仕事をしている奥さんの代わりに少しお手伝いをしてあげてください。
あ、でも奥さんに「あなたがすると余計散らかるからやめて! 私がしたほうが早い!」と言われたら「……ウィッス」と引き下がりましょう。名前を呼んで頭を撫でて「ありがとう」と「愛してるよ」を伝えてあげたら喜ぶと思います。私は喜びます。
妊娠、出産に関して俺(旦那)は何にもできないと思わないで下さい。貴方の支えがあるからこそ奥さんは辛い妊娠生活も乗り越えられるのです。
以上はすべて私個人の考えなので、違うと思う方もいらっしゃると思います。私のマタニティライフはバラ色でしたよ! とか。何かご意見やご感想などありましたらお願いいたします。
次は出産、育児について書こうかなと思ってます。
毎日更新ではありませんが気ままに書いて行こうと思っていますので、またよろしくお願いいたします。