お料理がーる・いぐにっしょん!!
どうぞ頭をからっぽにしてお楽しみください!ヾ(*゜▽゜)ノ
※今回のお話は、本編《ロケットガール・いぐにっしょん!~突撃!お宅のロケットガール!~》第八話の外伝となっております。
本編をお読みいただけると、より楽しめる仕様となっております。
それではよろしくお願いいたします!(*゜▽゜)
「――――やれやれ、ねーちゃんもひな子も、いい加減にして欲しいなぁ……」
あぁ、さらば俺の癒しの聖域よ
カケルは嵐の入浴を終え、風呂から上がると髪を乾かすのもそこそこに、夕食の準備に取り掛かる。
普段華ばーちゃんに任せっきりだから、こういうときは困ったもんだなー。
毎日の食事を作ってくれる祖母の食事と比べるべくも無いが、そもそも料理などカケルは精々、趣味程度にしかやったことが無い。
それでもこうして『完璧超人(THE・パーフェクト)』の呼び名を欲しいままにする瑞姫を差し置いて、カケルが台所に率先して立つのは理由がある。
たしかカケルが六歳のころであったか――――
今日と同じく何かの理由で家族の不在の折に、
――じゃぁ今日はおねーちゃんが、カケルにおいしいものを食べさせてあげるねっ。
と、瑞姫が張り切ったことがあった。
いつも優しく、カケルのわがままを何でも聞いてくれる姉が自分にご飯を作ってくれる。
無邪気で幼い弟は、その姉の言葉を素直に喜んだ。
しかし美しい姉弟愛とは裏腹に、現実にはかくも残酷な結末を迎える。
瑞姫の料理を、おいしー!初めて食べる味だね!と。
残さず食べたカケルが、病院に緊急搬送されるいう大惨事が起きてしまう。
『天ノ原の才媛』と呼び名高い瑞姫は、大抵のことを如才なくやりこなすのだが、どうにも料理に関しては才覚を与えられなかったらしい。
泣きじゃくる瑞姫。
連絡を受けた家族が慌てて病院に駆けつけ、朦朧とするカケルの意識の向こう側。
――カケルっ! しっかりしなさい! 大丈夫よ、まだ致死量には程遠いわ!――
うんうんと唸ることしかできない幼い息子の手を握り、母は必死の励まし。
カケルはそのショッキングな内容を病院のベットの上で聞かされる羽目となった。
それ以来、家族不在の際にはカケルが料理を担当することとなった。
あの諸々一連の流れを考えると、正直身震いがする。
――さすがにもう、目玉焼きを食べたくらいで病院送りにされるのはちょっと……それにあの時のねーちゃんの様子は……
今では思い出話くらいになっているエピソードだが。
瑞姫の狼狽振りは、病院送りにされてしまったカケルから見ても、気の毒になるほどであった。
しばらくの間は自室でふさぎ込み、それ以来、自分からは決して台所に立とうとしなくなった――――
――まぁ、できないことがあるくらいの方が、人間臭くっていいよね。
そんなことを考えていると、遠くのほうからどうやら二人が風呂から上がったらしい、ドライヤーで髪を乾かす音が聞こえてくる。
ま、二人とも髪は長いし、しばらくは居間にこないだろ。
「さて今のうちに……っと」
カケルは一人呟き、がちゃり、と冷蔵庫のドアを開け、整然と行儀よく並んでいる食材たちの吟味を始める。
「うーん、ほんと有り合わせになっちゃうな……」
結局、ひな子のスリッパを買う事がメインとなってしまい、学生の身分ではまだまだ心もとないお財布の中身。
その予算と相談した結果、捻出された食材たちで今日の献立を見繕う事となったのだが……
野菜室には、買ってきた人参、たまねぎ、ピーマン、見切れ品の鍋用なのかサラダ用なのかわからない水菜、チルドにはタイムセールの鶏肉五百グラム、あとは辛いものが好きな覚次郎のために、祖母の華が常備してある鷹の爪や香辛料が数種類、それと昨日の野菜の煮物の残りが少々、玉子が何個か、あ、そういや自分がとっといた秘蔵のプリン、まだ食べてなかったな、などとetcetc……
非常食用に離れの納戸には食糧の備蓄があるのだが、さすがに缶詰や保存食じゃ『新しい家族』を迎えるにふさわしいメニューとは言えないだろう。
――さすがは華ばーちゃん。無駄がない。
天ノ原家の家事の一切を取り仕切るのは、祖母の『華』だ。
ご近所では『お華さん』などと呼ばれ、六十歳という齢をまったく感じさせない若々しい姿で愛想を振りまく様子は、もはや何かの妖術ではないかともっぱらの噂である。
おそらく華のことを覚次郎の妻であると信じていない、もしくは『あの爺、年甲斐も無く……』と思う人も少なくないのかもしれない。
唯一、年齢を感じさせるところといえば、目が不自由な事くらいだが、それも毎日甲斐甲斐しく家の世話をしている華を見れば、そうと感じることはないだろう。
また、天ノ原家が村八分にならないのも、華の外交手腕によるところが大きい。
ほとんど顔を見せることが無い両親、孫意外には無愛想な覚次郎、おまけに不明な客人がしょっちゅう出入りする、謎の家である。
華の力なくして天野原の平和無し。
これが家族一同の華に対する評価であった。
そんな祖母に感謝しつつ、天ノ原家は今日も後顧に憂いなく、日々の幸福を謳歌させてもらっているのであった。
――――うーん……
考えようによってはこの冷蔵庫の中身、出かける華を見送ったカケルへの信頼の証かもしれない。
基本的に物を大切に、綺麗に扱う華の主義であろう。
台所回りなどは特にいつもピカピカ、きれいだった。
とはいえ、だ。
さすがにひな子という『新しい家族』の登場を想定しておらず、当然華もそんな事に対応できるまでは準備までしてくれていないだろう。
この局面、カケルは独力での解決を図るしかなかった。
「ま、料理の『苦手』なねーちゃんを台所に立たせるわけにはいかないからな。二人が来てややこしくなる前にちゃちゃっと片付けるか!」
そういってガス式の、一昔前のコンロに火を入れる
まずは誰が作っても間違いのない『カケル特製チャーハン』で一品目。
電気では実現し得ない火力は偉大で、存外パラっとおいしそうにできた。
多少、隠し味に使ったしょうゆが焦げたりしたが、そこはご愛嬌だ。
続いて冷蔵庫に残っていた卵を使い、インスタントの中華スープに溶き込んで『ふわとろとき玉スープ』で二品目。
卵の黄金色と乾燥わかめの緑が見た目もよく、出来合いの割にはなかなかいける。
カケルは味見をしながら、いざここまで作ってみるとだんだん楽しくなってきた。
メインは……そうだな、鶏の野菜餡かけにしよう。
たまねぎ、ピーマン、にんじん、欲を言えばきくらげやタケノコも欲しかったが、無いものは仕方ない。
これらの野菜を食べやすく、餡に絡むよう短冊切り、甘辛く味を仕立てた餡と混ぜ合わせ、こんがり塩で焼き目をつけた鶏に絡め、水菜をさっと湯同士して灰汁を切り、申し訳程度の葉物の緑で彩る。
料理名は思いつきで作ったため、鶏の野菜餡かけという代物かどうかは、カケルにもよくわからない。
飯なんて腹を壊さず、食べられりゃいいんだ。
自分に言い訳をしつつ三品目が完成する。
即興で用意した割にはまぁまぁか。
カケルはやりきった満足感に浸る。
「さてと、あとは二人が来る前に食卓に並べて……」
二人はおいしいと言ってくれるだろうか?
少しだけ主夫の気持ちを理解しつつ、それぞれの食器に料理を盛り付け、食卓に並べていると、
――パタパタパタ――
こちらに向かってかけてくるスリッパの音。
料理のにおいが立ち込める平和な風景の居間に、湯上り姉妹が姿を見せた。
「あら、カケルの料理も久しぶりね」
タオルを頭に巻き、上気した顔で、カケルはやめろと言っているのだがこれが楽だといって聞かない、いつもの薄衣の寝巻きの上に、湯冷め防止の上着を羽織った瑞姫が言う。
「いーにおいです! ようやく『おゆーはん』ですね。わたしは待ちくたびれましたよ!」
こちらは姉のお古のうさぎかねずみかわからない、着ぐるみパジャマ姿で現れたひな子。
その見事な着こなしはさすがというべきか、似合いすぎてむしろお前何歳??
さらさらの髪をフードの横からちょろんとたらし、その両端を姉のお気に入りのヘアゴムで結わえている。
おそらく瑞姫に髪を乾かしてもらったのだろう。
「男の手料理だ。うまいかどうかなんて保証はないからな。」
ひな子の勢いに思わず念のための保険をかけつつ、カケルは二人を迎える。
先ほどまで料理の匂いに包まれていた居間は、姉妹が纏うお風呂上りの香りとまざり、なんともいえない家庭らしい匂いに変わる。
「まぁ、情けないこといわないの。今は男が主夫でもおかしくない時代よ? そんな古臭い考えじゃ貰い手がないわ」
「余計なお世話だ。」
てか俺、婿養子確定なの?
「そんな調子じゃおねーちゃん心配だわ。やはり私がいないとカケルはだめなのかしらね……」
そうはいいつつも何やら嬉しそうな様子で、そそくさといつもの席に着く瑞姫。
それに習うように、カケルが促す席にひな子もつく。
両手にお箸をもって、はっやっくっ!×2 とカケルをせかし、決しておとなしくしていたわけではないことを付け加えておこう。
「行儀が悪いぞ、ひなこ」
カケルはたしなめながら、料理を運び終わり。
「それでは」
と、本日の料理長が両手を合わせると、皆もそれに習い。
「いただきます」
「いただきまーす!」
三人の、新しい家族を迎えた食事が始まった。
……――――。
「カケル、やっぱり昼間のアレの方がおいしーです」
「あれはお菓子だって言ってるだろ。……飯、あんまりおいしくないか?」
若干料理人としてのプライドが痛みながらも、カケルはひな子に尋ねる。
「いいえ、おいしーですよ? しかしアレは別格です!」
うーん、ひな子は普通と味覚とか違うのかなー?てか、普段はどんな食生活なんだろ。
カケルは今更ながらの不安を覚える。
人間と同じ食べ物で大丈夫だと、事前にひな子から聞いてはいるが、ひな子は『ロケット』である。
美味しそうに食べてくれるのはうれしいが、普通の食材で本当に良かったんだろうか。
そんな事を考えていると、今度はなにやらカケルの不安がうつったような、複雑な顔をしている瑞姫が目に入る。
「どーしたねーちゃん? 口に合わなかったか?」
「そんな事は無いわ。えぇ、そうね、とても美味しいわ。ありがとうカケル」
若干言葉をにごらせつつも、カケルの労を瑞姫はねぎらう。
しかしそれとは裏腹に、決して美味しいものを食べている表情ではない。
もしかするとねーちゃん、ひな子の飯の事で何か気づいたんじゃ?
「それならいいんだけど……なんか気になる事があるなら遠慮なく言ってくれな」
何かヒントを得られるかもと、カケルは瑞姫に訊ねる。
「いえ、カケルの料理に不満があるわけではないわ。ただ……」
「ただ?」
「どうして……この程度のことが私にできないのか……」
「え?」
瑞姫が最後の言葉をうつむきながら呟いた為、声が聞き取れず尋ね返すカケル。
「科学的見地から見ても、タンパク質や繊維質、これらを加熱することで変移させ、アミノ酸や糖質を効率よく摂取、吸収、変換させる料理という行程……」
「ねーちゃん……?」
なにやら深刻そうにつぶやき続ける瑞姫。
「この程度の事、LHC高エネルギー衝突実験のほうが、よほど難易度は高いはずなのに……」
「おーい、もしもーし?」
完全に自分の世界で自問自答を始めてしまった。
「おーいねーちゃん。一体どうしたんだ? ご飯は楽しくたべないか?」
「やはり……納得がいかない。この私がこの程度の事で躓いているなんて……」
顎に当てた手の、親指の爪を噛んでいる。
瑞姫が何かに葛藤を感じているとき、よくする仕草だ。
うーん、急にどうしたねーちゃん。
改めて瑞姫に声をかけるべく、瑞姫の肩に手を伸ばそうとした、その時。
「カケル!」
「はい!」
勢いよく立ち上がる瑞姫に、カケルは自分の言葉を飲み込み、思わず敬語で返事をする。
「私は誰かしら!」
「え、誰って俺のねーちゃん、だろ……?」
「そう、あなたのおねーちゃんよ!」
右手に茶碗、左手に愛用のお箸を握り締め、熱弁する。
「この程度のことができずに何が『姉』か!」
いや、ねーちゃん。とりあえずご飯をテーブルに戻そう。
茶碗の中身がこぼれないかを心配するカケル。
どうやら瑞姫の表情の理由は、カケルのご飯がまずいわけでも、ひな子の事でもなさそうだ。
なさそうだが……
「そもそも私らしくないのよ」
「はぁ……」
なんだか変な風向きになってきたぞ……
カケルはいやな前兆を感じ始めた。
「複雑になってしまった物事を解決するには、問題をいかにシンプルに分解するか。そうよね、カケル?」
「そうだね、ねーちゃん」
瑞姫の真意は見えないままだが、とりあえずの返事をするカケル。
――物事を最少単位に腑分けし、根元を掘り当て、自分が理解、実行可能なレベルに難度を落とし、
あとは自身が行動するかしないか、Y/N(はい/いいえ)で判断する――
姉の持論でもありカケルも頼りにしている考え方である。
ふと、カケルは思い当たる。
もしかして『病院搬送事件(あの時)』の事を気にしてる?
カケルは、そうであるのならば瑞姫の事を気の毒に思った。
確かに苦しい思いをした。
正直二度と同じ目に遭いたくないのが本音ではある。
が、それは、弟に少しでも美味しいものを食べさせたいという、姉の心からの行動である。
感謝こそすれ、憎く思う道理はない。
「ねーちゃん。俺はもうあのこと、本当に気にしてないから」
カケルはなんとなく見当をつけた心当たりに対して、瑞姫に言う。
「俺さ、料理するの嫌いじゃないぜ? そりゃ毎日って言われたら自信が無いけど……ねーちゃんが美味しいって言ってくれるの嬉しいし。あの時のねーちゃんも、俺のために料理をつくってくれただろ? 結果はまぁ……あれだったかもしれないけどさ!」
カケルの精一杯の気遣いを、両手をふさいだまま黙って聞いている瑞姫。
「だからさ、料理は俺に任せてねーちゃんは俺の他の至らないところを……」
「いつか……」
粘り強く慰めるカケルの言葉をさえぎって、ようやく瑞姫が口を開く。
「いつかあなたが、この人だと思う誰かを連れてくることも、あるでしょうね」
少し遠い目をして、物憂げに、トーンダウンしながら言う瑞姫。
「……うん?」
ひな子のことを言っているのか……?
ふと見ると、カケルのメインディッシュを狙ってひな子が箸を伸ばしている。
それをなんとか迎撃しながら、瑞姫の言葉の次をまっていると、
「そんな時、こんなおねーちゃんじゃ、困らない……?」
先ほどまでとはうってかわって、その表情は申し訳ないような、泣きそうな、昔の『あの時』の顔だ。
それを見たカケルはなるべく堂々と、瑞姫の気持ちを労わる様に、
「そんな事はないさ、ねーちゃんは俺の自慢の姉だ。料理ができないくらいなんだよ」
そんな事で自分の姉を恥じたりしない、と伝える。
「そうね、カケルは優しいわ。きっとそう言ってくれると思ったわ」
表情をいつもに戻し、カケルの言葉にうなずく瑞姫。
あれ……?
もう少しで見えそうな気がした姉の考えは、さらに別の意図がありそうだ。
カケルは今しばし、黙って耳を傾ける。
「でもね」
うん。
「わたしが問題にしているのは『そこ』じゃないの。」
うんうん。
「わたしは『料理』ができないわけじゃない。作った『料理』がちょっと不具合を起こす可能性があるだけ。そうよね?」
うーん、まぁ……物は言い様だなねーちゃん。
「――ま、そんな人間が現れでもしたら『お見舞』してやればいい、それだけの事……」
美しい赤い瞳の奥に、ちろりと薄暗い炎を灯しながら、聞こえるか聞こえないくらいかの声で瑞姫はぼそっという。
それだけは阻止します。
カケルは一つの未来の可能性を、忘れぬよう心に刻む。
私を倒せるくらいじゃないとカケルは渡せないわね、などとさらに不安になる言葉を付け加えながら――
「問題は!」
だんっ!と、瑞姫は箸をテーブルにたたきつける。
「カケルが将来、そういう相手を見つけられなかった場合の話なの!」
……はい?
「もし、カケルが将来結婚できなければ、可能性としてはこの家で一生を過ごすこともあるでしょう」
いや、できればそんな未来は想像したくないのだが……
「そうなったとき、ご飯を作ってくれるお婆様はもしかしたらいないかもしれない。お母様はあの調子だから期待はできないわ。そうなれば……」
そうなれば?
「やはり私が……」
「ストップ、やめてくれねーちゃん。心配されるまでもなく、おれはちゃんと将来恋人を作って、結婚して、慎ましやかな生活を送るつもりだ」
突然何を言い出すのか、この姉は……
どうやら姉はなぜかカケルの将来像を思い描き、考え事に耽っていたようだ。
そのあまりにも未来で、突拍子もない発言に、カケルは呆れながらも瑞姫に待ったをかける。
しかし、対する瑞姫は真剣そのものだ。
いつものように腕組みをし、空いた片手をあごに当て、
「……恋人?」
カケルの発言を問い正す。
「いや、作るだろ。恋人くらい」
そもそも自分が言い出したんじゃないか。
カケルは反論するも、瑞姫の美しい赤をたたえた瞳の色はさらに熾火を燃え盛らせる。
「それは当然、私よりも優れた人間なのでしょうね?」
「ちょっとねーちゃん何言って……?」
「認めないわ!」
どんっ、と再びテーブルが悲鳴を上げる。
「カケルは私の可愛い弟! それを私から奪っていこうというの……? いい覚悟だわ……」
瑞姫は再び一人でブツブツ。
僕はもうあなたの真意と琴線がどこにあるのか検討もつきません……
半ばあきらめつつもカケルが思案に暮れていると、
「ふぁいふぁーい! じゃぁわたしがカケルのお嫁さんになってあげまーす!」
いつの間にかカケルの皿からメインディッシュが消えている。
ひな子がチャレンジャーよろしく、鶏肉を咥えたままで元気よく手を上げて、訳のわからない立候補する。
「お前もこれ以上ややこしくすんな。絶対お嫁さんの意味わかってないだろ。あと俺の鶏肉返せ!」
鶏肉を取り返そうと、ひな子の両方のほっぺたひねるカケル。
「ん?……そうね。ひなならば、いいかもね」
「え、なんで?」
ひな子に気を取られ、不意に声をかけられたカケルは無意識で瑞姫に返す。
「だって妹だもの」
「意味がわからん。日本は家族との結婚を認めていない。」
まぁ正確には妹じゃないし、ロケットだし、まぁ……たしかに可愛いのは認めるけども。
びよーんと、どこまでも伸びそうな柔らかいほっぺたをひっぱりながら、長いまつげに星空を吸い込んだような瞳と目があった気がして、カケルは慌てて目をそらす。
「とにかく!」
瑞姫の声で我に返るカケル
「私を超えられない限り! 恋人、いや結婚なんてわたしは許さない!」
「なんなんだ、一体……」
加速度的にヒートアップしていく瑞姫を、成すすべも無くカケルが眺めていると、
「じゃぁ、姫ねーさまを超えればいいんですね――?」
火に油を注ぎ、空を飛ぶことを宿命づけられたロケットが、ここにいた。
読了ありがとうございます。
今回のお話、いかがでしたでしょうか?
本編の息抜きがてらのつもりが、思わぬ長編になりつつありまs
瑞姫の迷走はどこへ向かうのか?
ひな子の自信は一体どこから来るのか。
何より本編ほったらかしで作者はやる気があるのか!
待て!次回!!('A`)
※2月は繁忙期の為、更新ペースが落ちるかとおもいますが必ずあいるびーばっく!
少しだけまっててねー(*゜▽゜)ノ詳しくはこちら『@shinji_ponde』
2015/01/31
ぽんじ・フレデリック・空太郎Jr
@無軌道無計画な短編でs