魔王と二匹の鬼
書き上がり!
一南side
「さて、そろそろ出発しようか。お互い無事でな?」
俺の言葉に皆それぞれ頷きを返してくれる。
カートスによると転移方陣の目印はシーバンガ、ウォルガイ共に無事らしい。
カートスの言っていた魔具『戻り水晶』も、無事に人数分見つかった。
何の飾り気も無い、革紐と丸い小さな水晶で出来た首飾りだ。
これを探すのが一番手間だったな…。
ちなみに今日の朝は、白が顔を舐め、テンが耳元で鳴き、チビスラが腹の上で跳ねる。
というフルコースで起きた。
起きた瞬間、目の前に慌てたルナの顔が目に入って来たのが驚きだった。
すぐに離れていったが…。
チビ共が暴れ出さなければ、何をする気だったのか、是非、教えて欲しい。
まあ、教えてはくれんだろうが。
今も顔を逸らしっぱなしだしな。
…まあ、仕方ない。
俺は、チビ勇者が白達にお別れのいじりをされている間にカートスに声を掛ける。
「カートス」
「うん。こっちは任せて」
…おう、頼んだわ。
特に文句は無いが、なんだこの阿吽の呼吸的なやり取りは?
ソルファが羨ましそうに見ているんだが…。
さて…。
「な、なんじゃ?我も…あれじゃ。フリーナを倒したらそっちに向かうからの」
…いや、倒すなよ。
ルナに視線を合わせると声を掛けるまでも無く話しだした。
「…助けたら、だろうが。そもそも、偵察だって言ったよな?朝の事にどんだけ動揺してんだよ」
「む、むぅ…」
(本当は寝顔を見に行っただけじゃったんじゃが…。我じゃって乙女じゃもん。暴走くらいするわい。それが未遂に終わったから恥ずかしいんじゃ)
「偵察たって、現状出来るのは情報収集と女王陛下から話を聞くくらいだろうけどねぇ」
取り敢えず、俺さえ居なけりゃ捕まるって事もないだろうし。
それだけの事に人数裂きすぎだとか言うな。
俺の手の届かない処でなにかあっても、どうしようもねぇんだ。
…心配なんだよ。
「う、む。そうじゃの。今まで貴族共を抑え、従えてきたフリーナじゃ。そう簡単に潰れるとも思えんが、空声のバルクが教会で何をしようとしているのかが気になるのじゃよ。その事も調べてみたいから、合流は遅くなるやも知れん…」
…経験から言わせてもらおうか。
「絶対面倒事になるぞ、それ」
相手がバルクってのが致命的だ。
あのアホウはハチカファみたいなのを飼ってるからな。
俺が会った奴は三流だったが、そんなのばっかりでもねぇだろうし。
「まあ、そうなる前に『戻り水晶』でホームに戻るからの。それよりもイチナこそ、無茶してはいかんぞ?」
…なんとも、約束しかねるな。
「まあ、自重するよ。……場合によりけりだがね?」
こっちもアリーナン捜索をメインにすると言っても、なにが起こるかは分からない。
魔国はモンスターが強いらしいからなぁ。
「むう…。心配じゃが、仕方あるまい。ソルファ!ちゃんと見張っとくんじゃぞ!」
「ハハハ…。見張るだけですよ?僕じゃ止めれませんから」
そう言ってルナ待ちの連中に合流して転移していった。
「…そんじゃ、俺等も行くかねぇ」
俺、ソルファ、王真くん、ばあさん、マキサック、腐敗勇者、アニマルズ。
思い思いに転移方陣に立つ。
「皆さん、行ってらっしゃい。無事に、帰ってきてくださいね」
「行~ってらっしゃ~い」
アイリンとハチカファに見送られ俺達はウォルガイのギルドへと転移した。
「…ここが、ウォルガイ。か?」
「…ええ、そうですよ。見る影もないですけどね」
そう寂しそうに、ばあさんが呟いた。
一応ギルドの建物は形だけは残っているようでその中に転移した俺達は、中から外を覗き見る。
廃墟。
そう呼ぶのが相応しい。
いや、それだけじゃない。
見えたのは魔軍の旗印…!
「おいおい…!魔族がいるじゃねぇか…。いや当然か?最前線だしな、ここ。取り返される訳にはいかねぇか。しかし、それにしちゃ数が多すぎやしねぇか?」
「…あの旗は、魔王直属軍!…ガイナス!!」
俺の言葉に真っ先に応えたのは王真くんだった。
今にも飛び出しそうな、というか飛び出しかけた処で、後ろから鈍器の一撃。
「落ち着きなさい」
「ぐはっ!?」
その場にひれ伏す王真くん。
「ばあさん…。やり過ぎじゃないか?…まあ、今のが避けられない程に冷静じゃないってのは、よろしくないがね」
「いえ、普通は、味方の背後からの攻撃は避けれませんよ?」
ソルファのツッコミはスルーする。
流石に復讐の火が消えてないか…。
まあ、消せとは言わんがね。
「王真一人ならまだしも、こちらには安奈さんもいるのです。見つかったら、しつこく狙われますよ?」
まあ、ばあさんの言う事も一理ある。
王真くんの場合一人で放り出した方がいいかもしれんが…。
「そうっすね…。でも、結局突っ込む事になると思うのは俺だけっすか?」
「そだね、王真っちもいるし……い、一…俺様王子もいるし?」
おい、マキサック。なんで俺を見てその台詞を吐いた?
腐敗勇者お前もだ。
「別に名前呼びでいいぞ?」
「恥ずかしくて、そのまま呼べないのさ!ここが私の限界なの!…あたっ」
顔を赤くし、変に開き直っている腐敗勇者を軽く小突き、外を注視する。
隊列を組んで、明らかに駐在軍の量じゃない。
相変わらず兵よりモンスターの方が多いが、どこかに攻め入る積りか?
ウォルガイの中に直接転移してくるって事は考えてないんだろうな。
軍の警戒が薄い、モンスターも鼻の良いウルフ系は今は近くにはいない。
だが、それだけだ。
勝手に別の廃墟の建物へ侵入していくモンスターも多い。
まったく、統率がなってないねぇ…。
…ここでじっとしていても、見つかるな。
王真くんが見ていた方向へ目を凝らす。
…ガイナスは、いた。
梟の仮面を被った3人の男を背後に控えさせ、何かの魔具であろう機械の前に立っていた。
ふむ、なにも気にせずに、神気を使えるチャンスではあるな…。
なにせすでに廃墟だ、敵も魔軍のみ……。
「イチナさん。口元が吊り上ってます。…ホームに戻る事も出来ますよ?」
苦笑しながら、俺にそう告げてくるソルファ。
確かにホームに戻るのも手だな…。
「…そこは緩んでるとかじゃないのか?」
自分で口元を触る……考えが顔に出たか?
ん?ガイナスに動きがあったな…。
「…何を始める気だ?」
そろりそろりと外へと移動するチビーズを捕獲しながら、注意深く外の様子を窺うのだった。
決して、しかける隙を窺ってる訳じゃないぞ?
……さぁて、王真くんをそろそろ起こそうか。
Sideout
ガイナスside
城の宝物庫で眠っていた、巨大通信宣伝用魔具『レビァーニャ』
捕捉した都市に一方的に巨大スクリーンを写しだすという、かつての魔王達が愛用した宣伝用の魔具だ。
「さあ、始めましょう。世界支配を…」
愚かなタカヒラが離反したというのは、すでに報告を受けている。
しかし、タカヒラの帰還の方法。
『ウォルガイの巫女』は私の手中にあるのよ。
なにより、新たな力も得た。
神の力、神気。
アルケイドが仕事をしてくれたおかげで、あのお方が蘇った。
そして、優れた魔王の私が力を授かったのよ!
そう、この力さえあれば全ては私の物になる。
タカヒラさえもこの力の前には無力!
「各王都、捕捉しました」
これはただの宣言。
誰がこの世界の王なのか、それを知らしめる為の。
「聞け!愚劣な人間どもよ!…」
Sideout
シェルパ王side
突如、空中に現れた巨大スクリーンに民は混乱しておる。
それが、魔王(自称)の言葉だと言うのだからなおの事だ。
先先代の魔王が使った魔具がこのような効果を持っていたと聞く。
もしそうなら全ての王都、都市でこのスクリーンが確認されているはずだ。
話しの内容はこうだ。
私が真なる魔王だ。
世界は私のものだ。
人間は奴隷として生きる事を許そう。
そして、無残といえる、ウォルガイの巫女と神官を檻に入れた映像まで流してくれた。
まさに、堂々たる宣戦布告。
「……シャーニス。バスハール。街の状況はどうだ?」
私はスクリーンを睨みつけながら息子達に問う。
「混乱していますね…。ヘリーナさんが心配です。城下に行ってもいいでしょうか?」
ヘリーナとは花屋のご老体の事だ。
「あ、俺も!マルニちゃんが心配!」
こっちは宿屋の娘、確か10歳だったはずだ。
この息子共は…。
なぜこんな特殊な性癖ばかり目覚めるのか…。
もう一人の息子は人形師になると言って動き出したばかりだしな。
「却下だ。それよりも……なに!?」
「え?」
「うわ…」
演説も終わろうかという時、魔王が白い閃光に飲み込まれた。
魔力色が、勇者の銀では無い、神の白だと?!
…魔王はすでに、この世にいないのではないか?
まさに暴君の演説だった内容とは一変、足音だけが響いてくる。
…なんだ、このこちらにも伝わる緊張感は。
先程まで聞こえた城下の喧騒すら止んでいるではないか…。
次の瞬間、心臓を鷲掴みにするほどのイイ笑顔の『アマサカ殿』アップが映り。
徐々に画面が引き、アマサカ殿ともう一人の剣士…。
剣士の方は面を被ったように表情が無い。
そんな、対照的な二人が並ぶ姿が映り込む。
二匹の鬼。
そう連想してしまう映像だ。
その足音すらも死を連想させる。
二人が剣の柄に手を置いた瞬間、スクリーンは掻き消えた…。
恐らく、映像を送っていた魔具が壊されたのだろうな…。
しかし、……これは酷い。
民の心のケアが必要かもしれん。
何故そこにいるのかなど、可愛い質問はかき消される程の『笑顔』だった。
もう一人の剣士も、その美しい顔とは程遠い雰囲気を醸し出していた。
スクリーン越しで殺気が伝わらなかった事だけが、幸いといってもいいだろう。
そして、ウォルガイから一番離れたこのシェルパだけスクリーンが現れたという事も有るまい…。
シェルパだけなら、なんとかなるのだがな…。
「…アマサカ殿は、民にトラウマを刻むためにあそこにいたのだろうか?…胃が痛くなってきた、休んでも良いだろうか?」
「父上、逃げては駄目ですよ。イチナさんがいるのですし、我が国の勇者もあの場にいる筈です。こちらからは黒金隊を出して様子を確認させましょう、結果がどうあれ、着くころには終わっているでしょうが…」
シャーニスは冷静だな、代わってくれないだろうか王様を。
…いや、まだ、玉座を降りるには早いか。
相手は魔王だ、こちらからも軍を出さねばなるまい…。
生死の確認をするためにも、な。
…今の映像を見る限り、生きているとは思えないが。
そもそも、あの二人の鬼を相手に生き残れる者は居るのだろうか…?
はぁ、胃が痛い…。
足の速さからいって黒金隊が一番か。
「ガナクス・グレームを呼べ!」
黒金隊ならば、アマサカ殿との面識もある。
即時、敵として見られることも無いだろう。
「…『世界の敵』って、また教会の嫌がらせの類かと思ってたけど、なんか納得しちゃったよ。流石イッチーナ」
…言うな、バスハール。
魔王が死んでいた場合、同程度の脅威として魔王討伐がアマサカ討伐に変わるかもしれんのだぞ?
既に各国の民の心に刻まれてしまった『世界の敵』の姿。
本当に魔王が死んでいた場合、教会が黙っていないであろうな…。
このシェルパの教会だけなら突っぱねる事も出来るのだがな…。
うぅ、シャーニスに後を任せて隠居したい…。
Sideout
シーバンガ組side
シーバンガギルドの裏手に気づかれない程度の魔法光が発生する。
シーバンガ組、転移完了である。
「さて、着いたのはいいが。……すぐに城に向かうかの?それともギルドに寄って情報を集めてみるか?」
バルクの情報を集めるならギルド。
女王の様子を探るなら登城。
どちらにしても益は有るはずじゃ。
「あ、あの!まずは王女陛下に…!僕心配で…。お願いします!」
「では、リーダーに従おうかの」
ええ!?僕ですか!?と声をあげるチビ助じゃった。
コヤツも勇者の端くれじゃし、経験を積んでおいても損は無かろう。
「あ、勇者君がリーダーなんだ。勇者君、何事も経験だよ。フォローはするから、頑張ろう」
「……リーダーの役目…それは殲滅…殺気はデフォルト」
違うぞパークファよ、それはイチナの場合だけじゃ。
「そんな事言われたら、来世になってもリーダーなんてできませんよ!?」
リーダーの資格がイチナ級の殺気であるなら、誰もリーダーと名乗れんわい。
〔聞け!愚劣な人間どもよ!…〕
「なんじゃ?」
頭の上から女の声が響く。
えらく挑発的な語り口じゃの。
「ギルドの前に広場がある。そこに出てみよう。ここからじゃよく見えない。リーダー、いいかな?」
カートスがチビ助に許可を求めておる…。
これもまた変な話じゃの。言い出したのは我じゃが。
「えっ、あ、はい。行きましょう」
(…まさか、カートスさんとファルナークさんは……僕に鬼さんになる事を求めている!?いくら女神様のいう事でもそれだけは…!)
…なんか、変な事を考えとりそうな顔じゃが、取り敢えず動くかの。
我等はギルドの裏手から正面に回り、広場にでる。
既に人でごった返しておった…。
なんじゃ?冒険者の視線が我とカートスに向いておる。
…何かしたかの?
※教会対罰者を粉砕した事は、すでに頭にないファルナークである。
「…これは、先先代の魔王が使っとった魔具じゃの。よく引っ張り出してきたもんじゃ」
ガイナスめ。半端な魔王の癖にやる事は、一番魔王らしいではないか。
「そんな呑気な事言ってる場合ですか!?こんな宣戦布告みたいな事…」
「リーダー。みたいな事、じゃなくて。まさに宣戦布告だよ。あっちは軍勢もそろえてるみたいだしね。ファグスを落とされてしまった今、狙われるのはこのシーバンガだろうし。これで、登城は出来なくなったかもしれない」
そうじゃの、フリーナも対応に追われとるじゃろうし。
行っても門前払いか、戦力に組み込まれるかじゃろうしな。
もちろん助けるのには文句は無い。
しかし、必ず合流すると約束したのじゃ、反故にしたくは無い。
「…あれは、ウォルガイの巫女、かな?」
「オウマ殿への牽制を込めて…じゃろうが。アレを見せられ大人しく従う奴などおらんよ。しかし…、魔王より魔王しとるのぅ」
まさに世界の敵。
倒すべき相手じゃの。
「……あ」
画面を見上げ何の反応も示さなかったパークファが声をあげる。
……次の瞬間、世界の敵は『白い光』に飲み込まれてしもうた。
「あんなひどい事、どうして出来る……え?」
そして、チビ助も画面に釘付けとなった。
「……僕様、あの白い光に見覚えが有るよ」
「…奇遇じゃの。我もじゃ」
そして映る、鬼の貌。
静かに歩く二匹の鬼がそこにおった。
「ひぃ!?鬼さん!?鬼さんが出た!!??」
「……おうふ…とらうまものだぜ」
そこいら中で悲鳴が上がる…。
むぅ、そこまで酷い顔ではないぞ?むしろ良い男ではないか。
あの場におったら、殺気でそんな事も言っとれんじゃろうが。
あ、魔具が壊されたんじゃな、画面が消えた。
「…ああ、考えないようにしてたけど、やっぱりあそこはウォルガイだったんだね…。少し拙いんじゃない?僕様達も行った方が良いかもしれないね。…これ、討伐隊とか組まれないかな?」
むう……討伐隊か、可能性は高いの。
魔王の生死を確認するために軍も出すじゃろうし。
…イチナは賞金首じゃからのう、これで危険度が高いと思われれば充分有りうる。
「戻り水晶は全員持っとるんじゃ、危なくなったらホームに帰る筈じゃよ。我等は登城するぞ!意地でもフリーナに会わねばならんからの。討伐隊なんぞ組ませて溜まるか!」
カートス達が我の言葉に頷いて、いざ行かん!と思った矢先。
「そうはいきません。『賞金首』を王女陛下に会わせる訳にはいきませんので」
そう声を掛けてきたのは、この国の貴族。
上等な鎧を着て、上等な剣を持った男。
後ろには大勢の兵を連れて来ておった。
一人の兵士が案内ご苦労と冒険者に金を渡していた。
「…賞金首とはどういう事じゃ?我はどちらかと言うと狩る側なんじゃがの。そもそも、おぬしはどこのボンボンじゃ?」
「おや、これは失礼を。アツタール・ハイネ・バットネン『侯爵』です。『国王陛下』のお世話と『復帰』の為に尽力しているしがない貴族ですよ」
よりにもよって国王派とはの…。
国王自体は我がフリーナと協力して引きずり下ろした、無能で無害なおっさんじゃ。
この国王、非常に流されやすい。
それを利用するために近づく奴等を我は国王派と呼んどるんじゃ。
悪政万歳、贅沢万歳な奴等じゃ、今まで上手い事フリーナが抑えとったんじゃがなぁ。
ここまで、おおっぴらに復帰と言うてくるとは…。
教皇がこの地に入ったせいもあるかも知れんが、『空声』のバルクがなにかしら動いとるんじゃろうなぁ。
「ファルナーク・サリスならびにカートス・マリゲーラ貴方達は賞金首として手配されました。大人しく捕まってくれるならならよし。もしそうでないなら…」
武力行使かの?この程度の兵士、いくらおっても問題ないがのう…。
街中で暴れたくは無いのう。
「…ファルナーク。教会からも人が来たみたいだ。対罰者も混じってる」
後ろはギルド、前には貴族、周りを囲むのは教会と兵士か……強行突破しても良い事ない布陣じゃのぅ。
「たかが4人に大人気ないの、おぬし等」
「いえいえ、ランクAが二人ですから妥当かと思いますよ?」
「ファ、ファルナークさん~!?もむごっ!?むー!むー!?」
なんじゃチビ助……なにしとるんじゃ!?
教会の服を着た者たちがチビ助を囲み、口を塞いで、連れ去って行く。
その動きは修道士でも対罰者でもない……バルクの部下か?
「え?なんで…」
どうやらカートスの知り合いのようじゃの…。
対罰者の一人が声を張り上げる。
「勇者様は解放された!崇高なる勇者の使命を邪魔した者に天罰を!!」
「「「「「天罰を!!」」」」」
「…全く、これだから教会は。冒険者諸君!ファルナーク・サリスは生かして捕らえよ!カートス・マリゲーラは死んでも構わない!事を成した者には賞金の倍出そう!さあ、兵士諸君、逃がさないよう頼んだよ」
「…リーダーを攫って行ったのは武神のレイドメンバーだ。顔は全員覚えているから間違いないよ」
「なんじゃと!?バルクに雇われでもしたかの…。パー子、おぬしはホームに戻って……って、おらんし。どこ行ったんじゃ?」
ああ、ハイドハンカチーフに座っとるんか?なら心配いらんかの。
一番最初に近づいて来た、対罰者をカートスと二人で殴り飛ばしながらそんな事を話しておった。
その躊躇の無さに逆に敵の方が引いていたが気にしないのじゃよ。
剣は抜いておらんよ?憩いの場の広場を血で汚す訳にはいかんじゃろ?
カートスも剣は抜かず、拳だけで撃退していく。
足技を使わないのは、隙が出来るからじゃろうな。
カートスはちゃんと剣術を習っとるし、その歩法を変えたくないというのもあろうが。
我?我はほぼ我流じゃぞ。
こう、スパーンと移動してドン!と踏み込むだけじゃからな!
…しかし、おかしいのう。情報収集して、フリーナに話をつけるだけの簡単なお仕事じゃったはずなんじゃが。
あのチビ助、放置して帰ったらイチナに怒られるかのう…。
欲に目が眩んだ冒険者の股間に全力で蹴りを入れ。
シンボルを潰し、5メートル程蹴り飛ばしながらそんな事を考えていた我じゃった。
Sideout
これが、出落ちと言うやつか…。