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猫守紀行  作者: ミスター
96/141

これからの振り分け

書きあがったから、ゲリラ投稿!


一南side


「ご馳走さん。美味かったよ」

まさにプロ級の腕前だ。

白やテン達の飯まで作れるとは思わなかった。


「み~…」

「ぴー…」

「……」

いくら美味かったといっても食い過ぎだお前等。

白とテンは仰向けになって丸いお腹を晒していた。


「はい、お粗末様。……オウマくん達、戻って来なかったね」

食器を片づけながら、すっかり冷めた三人分の食事を見て悲しそうな顔をするカートス。


「無事だと良いのですが…」

入口を心配そうに見るソルファ。


「ハチカファが見に行ったのじゃ。何かあれば知らせに戻るじゃろ」

まあ、忘れがちだがシェルパの暗部だからなアイツ。


噂をすれば、なんとやらだ。

白のフカフカの腹をつついていたら、ハチカファが戻ってきた。


「は~い~。戻りました~」

王真くん達も無事生還か。

チビ勇者だけは泥んこってのが似合いそうな格好だが。


「お疲れ。結局アレはなんだったんだ?」

「サマールとそれを退治に来た、シーバンガの冒険者だったよ」

サマールって何?モンスターか?それとも人の名前か?

それと何故、シーバンガが出てくるんだよ。


その疑問を口にする前に、王真くんが気になる事を言った。


「討伐の手伝いをした代わりにシーバンガの情報を貰ったんだけど、貴族達の動きが妖しいらしい。それが、教会の教皇に補佐が付いた頃からだって言うから、少し気になって。その補佐の名前はバルク・ガンズィーナで、それ以前の経緯が無名都市にいた、賞金首らしい…「あのアホウが?」…え?鬼いさん知ってるのかい?」


名前くらいは皆知ってるんじゃないかね?有名らしいし。

王真くんは50年こっちにいなかったから知らないかもしれんが。


「『空声』が、教皇の補佐を?一体どうやって賞金首がそこまでの地位を…?」

カートスも驚いているようだ。


「……教皇はエロいからのう。無名都市の娼館関係で籠絡したんじゃろう。エロいが権力だけは有るからの、賞金を消す事も出来るじゃろ」

滅茶苦茶だな教皇って。


「…つうことは、俺から逃げた時にはもう、籠絡済みだったって事か?……ん?なんだよ?」

全員が俺に視線を向けていた。


「イチナさんから、逃げた!?」

「おい、ソルファそんなに驚く事じゃねぇだろ?あんときはワクバランも居て、結構大変だったんだぞ?」

ワクバランって確か剣将じゃ…。と呟くソルファ。

うん、そうらしいねぇ。

カートスの師匠でもある。


「鬼さんから…。どんな怪物ですか!?…そんなのが、女王陛下の処に…。ぼ、僕シーバンガに戻ります!」

このチビ勇者は俺をなんだと思ってるのか。

いや、文字通りだろうが、それはそれで納得いかねぇ。


「よし、頑張れ。シーバンガはお前に任せた。「えぇっ!?」…さて、俺等もこれからどうするか決めなきゃねぇ」

もちろん冗談だ、半分は。

シーバンガはなぁ、俺が行ったら状況が悪くなりそうだしねぇ。

貴族の動きが妖しいとか、尚更俺は行かないほうがいいと思う。


それ以外にもアリーナンやアルス、ついでに魔王なんて問題もある。

正直やってられん。


「なら、班分けっすね!ここを拠点にして、動けばいいっすから!俺はオウマ師匠と別の班でいいっすよ!」

ニコニコだな、マキサック。

そんなに氣の修行が嫌か…。


…しかたない、短期間で身に付く方法で仕上げてやろう。

少し加減が効かなかったり、死にかけたり、爆散するかもしれんが、そんなに嫌なら仕方ないなぁ。

今のマキサックならきっと大丈夫だろ?


「駄目だよ!マキサック!そんなことしたら鬼いさんが師匠になるよ!?」

「嘘っす。オウマ師匠最高っす!」

「……この野郎共が」

お前等にはデコピン(フルパワー)をプレゼントだ!


「「えっ?」」

バゴンッ!と悲鳴すら上がらず、首が抜けたんじゃないかと思うくらい綺麗に入った。


「ん?……ばあさん。頼んだ。なんか、王真くんがヤベェ」

ぶっ倒れた王真くんにチビーズが群がり、止めを刺しに行く。

チビスラが顔に乗ったからそう見えただけで、実際はつついたり猫パンチしたりと平和なもんだ。

さっきまで腹いっぱいで動けなかったのに、元気だなぁコイツ等。


しかし、おかしいねぇ…。

フルパワーと言っても王真くんを仕留められるほどの威力は無い筈だが…。

ああ、戦闘から戻ってきたばかりだったな、そういえば。

まあ、ばあさんに任せときゃ大丈夫だろ。


「えっ?……王真!王真!しっかりしなさい!!」

ちなみにマキサックはすぐに回復し、痛いっす!と抗議してくる。


「……ま、まあ。取りあえず、タカヒラ殿とマキサックはセットじゃな。しかし、本当に分けるのかの?確かにフリーナは心配じゃが、相手は貴族と教会じゃろ?軽く様子を見に行くくらいがちょうどいいじゃないかの?」

ああ、女王陛下と友達だったけか?そりゃ心配だわな。


「そうだなぁ…。「謝罪!謝罪を求めるっす!」…マキサック、静かにしてろ。沈めるぞ」

「り、理不尽っす…」

王真くんはちゃんと静かにしてるだろ?ばあさんが何故か必死だが。


俺としてはアルスだが、何処にいるか分からない処がネックだ。

アリーナンは、アリーナンだから放置できんし。

魔王?俺の中での重要度は、もうそんなに高くない。


シーバンガの問題は、貴族の動きが冒険者にまで広がる程、表面化してる処だ。

水面下なら気にしなくてもよかったのに、面倒くせぇ。


「ふう…。いくら慣れない技を使って、消耗しているとはいえ。王真は防御の勇者なのですが…。デコピンで死にかけるなんて…。甘坂さん、手加減してくださいな」

…本当に死にかけてたのか。


「いや、まあ。悪かったな、王真くん」

「ハ、ハハ…。僕も油断してたし…。でも、帰って来られて良かったよ、ディニアのおかげだね。お迎えが『神薙』のお歴々だったから、絶対に逝きたくなかったんだ。皆イイ笑顔でコッチに来いって言うんだよ……威圧感が凄いんだ。違った、酷いんだ」


体中を這いずるチビーズを無視して、五一のお爺さんが、沢山いるみたいだった。と語る王真くん。


…スゲェ豪華なお迎えじゃねぇか。

爺さんが沢山いるとか考えたくもないが。


王真くんは、しきりにばあさんに礼を言っていた。

悪かったよ、トラウマ刻んじまったかもしれんな。

ばあさん、王真くんは任せた。




「…取り敢えず、決めちまうか」

王真くんから視線を外すとマキサックから、俺も謝罪が欲しいっすと目で訴えかけてくる。

笑顔を返しておいた。


「カートス、ここの転移方陣はすぐに使えるのか?」

「もちろん。元々この遺跡にあったもので、特殊なんだ。他の転移方陣と違って、魔力をどこかから引いてるみたいでね。あと、一方通行でね?帰りはここにあった魔具で……残ってるかなアレ。あ、でも、目印を刻んだ出口は各王都や街の『ギルド』だから…」

…賞金首の俺は使っちゃ駄目って事ね。


「それと『ウォルガイ』のギルドの目印が残っていたら、すぐ飛べるはず。魔国への侵入は簡単になるし、イチナくんも使えるよ」


どちらにしろ、俺のシーバンガ行きはなしだな。

転移方陣から出て、戦闘から始まるなんぞ終わりが見えん。

その時は…。一人で行って、国を終わらせるくらいの覚悟がいる。


「えと、元魔王さんも、魔族でしたし。アリーナンさんも魔族に連れ去られてますから、魔国に行くのは良いと思います。それに、イチナさんは、あの…。私の護衛という任務が…」

……護衛?


ああ!忘れてたよ。そういや、そんな名目で出て来たんだっけかなぁ。

それに、アリーナンに関してもぬけてたわ。

そうだよなぁ魔族に攫われてんだから魔国にいるよなぁ。


「アイリン、よく覚えてたなぁ。偉いぞ」

そう言いながらアイリンの頭を撫でてやる。

はわはわ言って顔を赤らめ俯いてしまった。


「わ、我も覚えとったぞ!」

おい、ルナ。頭を突きだすな……撫でろって事か?

お、サラサラだな髪の毛、ずっと触ってても飽きないなこれは…。


「クフフ、気にいって貰えたようじゃの?」

ぐっ…、本当の事だからちょっと悔しい!

俺は、惜しみながらルナの髪から手を放す。


「…あ。じゃあ、私もー!」

じゃあってなんだ、じゃあって。

腐敗勇者、お前は明らかに便乗してるだけだろうが。

撫でんぞ、絶対。


「あ…。乗り遅れた…」

いや、落ち込む事じゃないだろ、ソルファ。


「えっと。僕様もやった方がいいのかな?」

「ヤメロ。腐敗勇者のネタになるだけだ。取り敢えず、重要度は魔国の方が高いのは分かった。シーバンガはどうする?放置か?」

俺はそれでもいいと思う。

会ったことの無い女王陛下には悪いが、問題が起きてからの方が気兼ねなく潰せる。


「……僕は、シーバンガに行きたいです。女王陛下は、こっちの世界に来て、不安な僕に親身になってくれて…。一緒にご飯を食べたり、一緒に寝てくれたり、お母さんみたいな人なんです」

…ん?一緒に寝る必要はあるのか?


「おい、ルナよぅ」

「聞くな。フリーナはそういう趣味じゃ。王族じゃからな。子供を作るための結婚と性癖は別なのじゃよ。シェルパの王族はそこが分かっとらん」

なんて説得力のある言葉なのか。


しかし、こっちの世界に来て親身になってくれた相手か…。

俺の場合は、バ・ゴブになるのか? ※『ぷろろーぐ』参照



「つってもなぁ…。チビ勇者一人で行かせる訳にもいかんしねぇ…」

「えっ?でも、さっきは任せたって…?」

まあ、言ったな。


「半分冗談だ。人を斬る事をためらうチビ勇者に、人の相手を任せる程鬼畜じゃねぇよ」

「でも…。それじゃ、どうすれば!?」

「まあ、ちいと待て。考えるから」


魔国に行くなら、戦力は分けたくないんだがねぇ。

…シーバンガは、ルナの言う通りに偵察で済ますか。


貴族や教会相手に大立ち回りって訳にもいかんだろうし。

女王陛下にゃ悪いが、なにか起こってからの方が動きやすい。


さて、このチビ勇者と一緒に誰を行かせるか…。


このチビ勇者は一人でやるにはちいとばかし、危なっかしい。

…俺や王真くんみたいに、ちいとばかしいかれた一族でもない限り、人を斬り続けるのは難しい。


特にこのチビ勇者は、普通だ。

腐敗勇者のようにゲームに置き換えて考えられる訳でもない。

人を斬る感触に慣れれば、チビ勇者の『普通』なんぞ簡単に壊れちまう。

そう、普通の奴ほど簡単に『堕ちる』


今は、王真くんが『目的』になっている。

その目的がある限りは、『言い訳』が出来る。

師がいる場合も然りだ、その『言い訳』を覚悟に昇華させる方法を教えてくれるのも師だが…。

その師は昇華の方法を教える前に王真くんが斬っちまった訳だ。


王真くんも、自分の目的を果たしたらチビ勇者に斬られても良いと思っている節がある。


なんとかならんもんかねぇ…。




「……迷った時は…あーみーだーくーじー…だぜ」

「私も~、手伝いました~!」

さっきから会話に入って来ないと思ったら、そんなもん作ってたのか。


「マキサックさんは~、オウマさんと、一緒なので~書かないでいいですよ~。他には~、使徒様と~、イチナさん、コウキちゃん、アニマルズの皆は書かないでくださいね~?」


俺は魔国決定、チビ勇者はシーバンガ決定。

ばあさんは王真くんとコンビ。マキサックも同様。

それと、アニマルズはどうやって書けと?


パー子やハチカファも省いてありそうなモンだが…。

まあ、迷ってたし有難い。


「鬼いさん!僕はガイナスを!奴を倒したいんだ!」

「…そこで、殺すって言葉がでねぇ時点で甘い。さっさとあみだに名前を書け。んで、祈れ。魔国行きになりますようにってな」


分かったよ…。と引き下がる王真くん。

押しが弱い。もっとこう、食い下がれよ!

まあ、運に身を任せるってのも有りか?


「み!」

…こら白、邪魔になるから、あみだくじの上で遊ぶな。




結果こうなった。


魔国組

俺、腐敗勇者、+アニマルズ。


シーバンガ組

他のメンツ。


「……偏り過ぎじゃねぇか?」

「……そうじゃの。流石にの」

名前の空白が異常に多いと思ったらこんな結果に…。

下手したら俺とアニマルズだけで魔国って事も有りえた。

素敵なあみだくじだな。公平さゼロだ。


「……もっかい…作る?」

そうだな、そうしようか。



「なあ、パー子。なんでさっきより名前の空欄が多くなってんだよ?人数分で良いだろうが。公平さを求める気はゼロか!」

「……おーう…いぇーあ」

うっわぁ、ムカつくなぁ、おい。


「はぁ…。王真くんは魔国、「鬼いさん、ありがとう…」はいはい。ばあさんもこっち。パー子はシーバンガ「……ほわい」遊び過ぎだ。そもそも、あみだでシーバンガだったんだから問題ねぇだろ?」


「……神は…死んだ」

そんな事をのたまい、項垂れるパー子をスルーしながら、決めていく。

さっさとこうしてりゃよかった。




ちなみに結果は、こうなった。


魔国組

俺、王真くん、ばあさん、マキサック、腐敗勇者、ソルファ。

それと甘坂アニマルズ。

魔国に入るだけで攻め込むつもりは無い。

アリーナンの探索をメインにするつもりだ。


もし敵に見つかったり、アリーナンが魔王の城とかにいた場合。

取り敢えずなんとか出来る、俺と王真くん。

それと生半可な事じゃ死ななくなったマキサックと魔法がヤバい腐敗勇者。

ソルファは、アリーナンの事を一番心配しているから外す訳にはいかない。


ばあさんも転移先である『ウォルガイ』が故郷だし、連れて行けと脅された。

だから王真くんがこっちになった訳じゃないぞ?本当だからな?


問題は、合流するまで王真くんが、大人しくしてるかどうかだが…。

…大丈夫だ、攻め込む布陣じゃない。だよな?




シーバンガ組

チビ勇者、カートス、ルナ、パー子。

少ないが、偵察だからこの人数でも大丈夫だと思う…。


禁呪に関しても一度掛けられているから、最大の警戒をするようになってるし。

次やられたら、多分『教会』をたたっ斬るのは間違いない。

もう賞金首だし、神敵だし、我慢する気はさらさら無ねぇからな。

笑顔で乗り込んでいく自信だけは有る。


一応、武力でも礼儀でも貴族や教会相手に仕掛けられても、なんとかなる連中を入れたつもりだ。

…パー子とチビ勇者以外はな。


それに、ルナは女王の友達だから外せない。

カートスにはチビ勇者の事を頼もうと思っているし。




アイリンとハチカファは連絡役としてホームに残って貰う。

カートス曰く、シーバンガはギルドの裏手のデッドスペースに出るらしく、馬と馬車は今回留守番だ。


ウォルガイにしても、あっちがどういう状況か分からないため、クロハとソルファのジャスティは置いて行くことになった。

状況が確認でき次第、クロハ達バトルホースを迎えに来るつもりだ。


バトルホースの世話役としてもだが、ハチカファの神具が連絡用で、いわゆる通信機的なものだったものある。


石でも何でも、無機物と契約し『子機』を作り、通信を可能にする便利なものだ。

戻り水晶を子機として使えるように契約して、使えるかどうかのテストも終えた。


子機から子機へは連絡できず、ハチカファの持つ『親機』にしか連絡が出来ない。

誰でも使えるなら預かって、参加してもらうんだが。

親機は『見識の加護』を持つ者じゃないと使えないらしい。


この時、ハチカファの加護は見識だったんだと初めて知った。


親機の着信に結構な音が鳴るから、教会に潜入させる訳にもいかんし。

なにより親機の形状が黒電話で、設置したら動かせんのだ…。



「待てい!せっかく会えたっちゅうのに、もうお別れか!?我、寂しいんじゃが!」

言ってる事が、えらく子供っぽくなってんな。


「いや、転移方陣もちゃんと動くかも分からねぇし、シーバンガの方も手を出すとヤバそうだからな。偵察で済ませて後は魔国の入り口で合流だ。そう言う事で、ゆっくり休んでから、転移方陣を調べて、ホームで使えそうなものを漁ってから動く」


ならなんで今決めたとかいうな。

そもそも、ウォルガイの転移方陣が作動してないと魔国には普通に行かなきゃいかんのだが、そうなると面倒だから考えない事にした。


ここでメンバーを決めたのは、チビ勇者を納得させるためでもある。

ここで決めておけば、一人で出て行くって事は回避できる、性格的にな。


良くも悪くも、イイ子ちゃんだ。

吹っ切れば王真くんのような剣士には成れるかもしれん。

その前に壊れるかもしれんが…。


「偵察、のう…。我が言ったんじゃし、分かった…」

今一、納得してねぇって感じだな?まあ、仕方ねぇが。

ポンポンと子供をあやすように頭を撫でてやり、席を立つ。



「そうだ、カートス。ちいと話がある」

「なにかな?」

聞き耳を立てるルナ達は置いとくとして。

チビ勇者はパー子とマキサックと話しているようだった。


本人に聞かれて困る事でもねぇし、別に場所を移さなくてもいいか。



「チビ勇者の事だがな。お前さんに頼みたい。ルナが剣の師匠をやってるのは知ってるが、俺と同じで向いてないと思うんだよねぇ。感覚派だからなルナは。で、お前にも頼みたいんだが…」

感覚で教える人間が心構えを教えると色々とはしょる事があるからねぇ。


ルナは腐敗勇者もソルファも教えているが…。

腐敗勇者は意外と勘が良いし、ソルファとは擬音で通じる師弟関係だ。


そもそも、人を殺すという概念が違うこの世界の人間が、俺達の世界の人間に覚悟を問うのは難しい。

教えるのは、しっかりと命の重みを『理解』している人間か、俺達の世界の人間…。


王真くんは適任なんだけどねぇ、流石に無理だろ。

俺はそもそも、むいてないし。


「…確かに、少し危ういね、あの子。教えるのは人を斬る為の心構えで良いんだよね?剣の方は基礎は出来ているから、そのままファルナークの大剣術や僕様と試合をして磨いた方がいいかもしれない」


…遠回しどころか、まだ頼みの内容を言ってねぇんだが?伝わってビックリだよ。

まあ、それだけカートスも気にしていたって事だろう。


「…おう。頼んでもいいか?連れて来ちまった手前、勝手に野たれ死ねって訳にもいかんしな。それに、この世界にいる限り、殺さずに済むなんて甘い事言ってられんだろうしなぁ」


せめて、元の世界に帰った時に、罪悪感を引きずるなんて事は無いようにしてやりたい。見た目が幼いからか、どうも同情的になっちまうな。


もし引きずるようだったら、腐敗勇者が帰るときにでも、甘坂の家に放り込んでもらおう。

……王真くんの事は、まだどうなるか分からんしな。


「僕様もイチナくんと行きたかったけど、偵察だけならすぐに合流できそうだし。そういう事なら任せてよ!僕様も、ワク爺ちゃんから心の切り替え方を教わったからね。それも教えてみるよ」


「ありがとな」

よし、これで用事はすんだな。


皆を見渡すと、それぞれ部屋を探しに動き出した処だった。


「…白、テン、チビスラ。部屋いくぞ。カートス適当に使うからな?」

「み~!」

「ぴー!」

「……!」

頷くカートスに軽く後ろ手に手を振り。

俺はそのまま部屋を選びに、通路の奥へと向かった。

そしてその夜、テンションの高いチビーズ達の遊びに夜遅くまで付き合わされる事となる。

次回こそ、投稿予告が出来ますように!


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