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猫守紀行  作者: ミスター
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ファグス - あと一人 -

チビーズリュックside


「み~?…み!!」

……私はこの仔達の移動時に使われるリュックサックだ。

爪とぎは止めて欲しい、破れてしまう。


揺れるリュックの中で爆睡するテンとベット代わりになっているチビスラ。

一南に失礼のないようにと言われ大人しくしていた結果だ。


「み~…」

この白い子猫は、暇なのだ。

何時もの遊び相手が寝てしまっているから。


「…み!」

取り敢えず、リュックの中で色々変身してみる白。

この仔が、暇なときにやる鍛錬である。

クルクルと変身を繰り返し鎧白になった処でリュックが一際大きく揺れた。

鎧を付けて立つので精一杯の白に、突然の横揺れ。


「み!?」

倒れない方がおかしかった。

白的に重い鎧を纏ったまま、テンの上にダイブする。

これは酷い。


「ぴ!?ぴぴー…ぴ……」

「……!!??」

「み!?みー!みー!?」

突然の衝撃で気を失うテン。

一緒に潰されピクピクしているチビスラ。

鎧を解いて、ぺちぺちと猫パンチで起こそうとする白。


何時もは白が先に寝てテンがちょっかいを出すという流れだが、私の中は平穏だった。

※特に意志を持ったリュックという訳ではありません。


Sideout




王真side


なんかディニアが抱えているリュックの中がバタついてるけど、こっちはそれどころじゃない。


「王真!右です!」

「分かってるよ!」

僕はディニアの指示に従って馬上から、聖なる魔力を纏わせたシャムシールを振るう。

近づくにつれ、激しくなる触手の猛攻。

明らかに僕を狙っていた。


捕らえられたが最後、あの『触手山』に連れられて行き、多分人として終わる。

アレを創造できる勇者……会いたくないな。

アレは聖なる魔力を使った創造魔法だ、どんな想像を込めたのか知りたくもないが、魔力に見合ってない創造の力だから中身がない。


神気を使うにしてもここはファグスの兵が多い。

それに、神気は元々持っていなかった力だし、貰ってからあまり使ってない。

首輪に流した程度だ、細かい調整や練度が圧倒的に足りない。

どんな被害が出るか…。

どうしても、躊躇してしまう。


ディニアの神気は攻撃には向かない。

それでも何とかなっているのは、鬼いさんが付けてくれた道案内……サウスのおかげだ。

このブレードウルフ?のおかげで僕とディニアはまだ馬に乗って駆けていられる。

それでも…。


「しつこい!!」

「よほど好かれたようですね。…降りて囮なんてどうでしょうか?」

嫌だよ!?……こういう状況好きだもんねディニア。

相乗りしているディニアから「ほほほ、冗談ですよ」と聞こえ、鞭の風切音と共に触手が弾けた。


「ガウッ!」

僕に向かって来る触手を斬りながらサウスが吼えた。

あれは!?


「ラリアーットっす!!」

…プロレスラー?

太い腕をまるで斧のように魔族へと叩きつける男の姿があった。

っ!危ない!?

背後から切り掛かる魔族に気づいていない!


「……えい」

え?

急に魔族が倒れた?

よく見ると首筋に吹き矢の矢が刺さっている。

一体どこから?……くっ!?こっちもこんな事している場合じゃなかった!触手が迫ってる!?


「うわあ!?」

「王真!!」

足を取られた!?鈍ってるな…、あっちに帰ってからは剣を握って無かったし、当然か…。

僕はそのまま逆さに引き上げられ……ヤバい!殺到してきた!?

正面からの牽制、そして、背後からの……本命。

僕は男として危機を感じ、咄嗟に神気を開放し身に纏う。

……最初からこうしていればよかった。


でも、これなら地面に居る兵達は気にしなくても良い!

足に纏わりついていた触手は神気によって消え失せ、僕は空中で殺到してくる触手に剣を振るう。

空中なら被害も無い筈だ!


「…吹き飛べ!!」

僕はシャムシールに神気を集め、触手山目掛けて振り抜いた。

振るった剣から出たのは、白い砲撃……いわゆるレーザービーム?え?なんで?

しかも、触手山の大半を消し飛ばすほどの威力なんて…。

確かに吹き飛んだ。けど、こんな力はいらない!こんなの、望んでない…!


僕は着地しながら、半分になった触手山を見ていた。


でも、今の一撃で味方の兵から恐怖の対象として見られ始めたようだった。

…周りの兵の顔には、純粋な恐怖が浮かんでいる。

この目は見たことがある、かつてのウォルガイの王様が僕を見る時の目だ。


「いやー、凄い威力っすね!それに魔族やモンスターの動きも鈍ってるっす!さ、もう一発いくっすよ!フードさん!!……あれ?サウスじゃないっすか!?逃げて来たっすか?」

否定するように、うなるサウスに首を捻る筋肉男。


「いや、確かにフード被ってるけど…、君は怖くないのかい?」

いきすぎた力を持つ僕が。


「はっはっはっ!『神敵』さんに無手で突っ込む恐怖に比べたら、大したことないっす!」

……うん、そうだね。凄く納得してしまったよ。


「あなた、甘坂さんにあった事があるのね?」

血だらけのメイデンメイスと血の付いた歯を掴んだままのペンチを手にこちらに歩いてくるディニア。

リュックは背中に背負っていた。


「……馬はどうしたの?」

持っている物については聞きたくなかったため、馬について聞いてみた。


「え?…王真が連れて行かれてから直ぐに槍で…。せっかく王真が選んできた馬だったからつい、カッとなってしまって。大丈夫、私も丸くなったのよ?治癒は使ってないわ」

僕の油断が原因でディニアの被害者が増えてしまった…。

この場合の治癒は、治して壊すはしてないよという意味だ。

歳をとってもディニアはディニアだった…。


「そんな事よりも、あなた、アイリンとハチカファという子を知っているかしら?」

ディニアは、ペンチで掴んでいた歯を無造作に投げ捨て、笑顔で目の前の筋肉男に問うていた。


「ウ、ウッス。お、同じパーティーにいるっすよ…。俺等は突出して来たんでこの先にいると思うっす」

「俺『等』?」

どう見ても一人しかいないんだけど?


「ウッス、パークファって子が一緒に来てたっす。肩車から降ろしてから何処に行ったか分からないんすけどね。その子を探さないと戻るに戻れないっす」

そう言いながらモンスターを殴り飛ばすプロレスラーだった。

そんな…!こんな戦場で行方不明だなんて!?


「ガウゥ…、ガウッ!?」

サウスが悲しげに鳴いたかと思うと驚きの声をあげた。

なにがあったの!?


「……モフります…サウラーだから」

サウスの右半身に飛び付くようにしがみ付き、顔を埋める少女……僕が気づかなかった?

地面にはまるで何かを引きずって来たかのような跡と、汚れれたハンカチが落ちていた。

あのハンカチ、気配を消すタイプの神具か?…お尻に敷きながら移動してたのかな?


「あ、そんな所にいたっすか。こっちの敵も大分減ったし戻るっすよ」

あ、この子なんだ。


「……サウスミンが枯渇してる…充電に時間が掛かる」

そう言いながら手を伸ばし汚れたハンカチを懐にしまう少女。

しがみ付いたまま、もぞもぞと背中に移動していた。

どうやら離れる気は無いようだ、ぐりぐりと顔をサウスに擦り付けている。


「……王真、この子たちが甘坂さんの仲間よ。この子たちから『呪』を感じられる。解呪するわ」

「うん、分かった」

流石は治癒の巫女。

僕には、呪なんて感じられない。


ディニアが左手に解呪の神気を宿すと、プロレスラーと少女……パークファだったかな?の反応が変わった。


「!それは駄目っす!なんか分からないけど駄目って囁いてるっす!やるなら反撃も辞さないっすよ!」

「……駄目…駄目だけど…動けないサウスの魅力」

構えをとるプロレスラーに対して、サウスがディニアに近づくだけで済んだパークファちゃん。


「……あーれー……おお、そういえば…なんか忘れてると思った…鬼が居ない」

「…仲間にも鬼って思われているんだ」

解呪がすんで思い出したのに、全く変わらないなこの子。

それよりも、こっちの武闘派の方が問題だ。

どうにかしないと、…ディニアが動く前に。


「やれるもんならやって見ろっす!!」

何も言ってないのに、警戒を強くする筋肉……名前が知りたいな。


「フフフ、元気な子ね。それだけ元気があれば四肢を砕いても大丈夫よね?大丈夫治してあげるから…」

止めて!?鬼いさんに殺される!


「ディニア!!僕が動きを止めるからその間に、ね?」

渋々、うん、本当に渋々頷くディニア…。

戦場の空気に当てられて、まるで昔に戻ったみたいだった。

よくザッカイスさんにからかわれるたびに、こうなって僕が必死に止めたっけ…。

…ザッカイスさん。


「王真?頬の傷が痛むの?」

「ん、ごめん。なんでもないよ」

気づかない内に、ザッカイスさんに斬られた傷を指でなぞっていたようだ。


今は彼の動きを封じる事だけを考えよう。

斬るのは論外、なら無手か……無手は得意じゃないんだけどな。


僕は聖なる魔力を足の裏から噴射し、ブースターにして一気に間合いを詰めて彼の鳩尾に拳を突きたてた…。


「ぐふう!…あれ?あんま痛くないっすね?…例素羅は体が基本っす!!この程度じゃ倒れないっすよ!!」

ええ!?魔力での防御もしてないのに、なんで倒れないの!?

むしろ、めり込んでたよね?それなのになんで弾かれそうになってるの!?


なら少し危ないけど、後ろから…。

僕は彼の後ろに回り手刀を…。


「違うっす!そこは裸締めの出番っすよ!「え、こ、こうかな?」ああ、締め方が弱いっす。ちゃんと鍛えてるっすか?そう、そうっす。この角度で入ったら逃げられないっすよ。…ああ、そういえばタッグ戦だったすか」

最初警戒してたのはディニアの方だったよね?夢中になると周りが見えなくなるタイプかな?

何故か締め方講座になり、ディニアの接近にも気づかない筋肉さん。

触れられてようやく気付いたようだった。


いや、裸締めのやり方くらい知ってるよ?

そして、かなりきつく締めてたよ?どうなってるのこの人の体…。


「……お、俺、チナさんに向かって拳を振るったっすか?俺ちゃんと生きてるっすか!?あ、今になって震えがきたっす…」

酷く狼狽える筋肉さんをなんとか落ち着かせ、自己紹介をして他の仲間がいる場所へと共に向かう事となった。


ちなみに、マキサックさんが狼狽えている間、敵の処理はサウスがパークファちゃんを乗せたまま淡々と行っていた。

凄いよサウス。

そして、鬼いさんの仲間はクセが強すぎるよ…。


Sideout





腐敗勇者side


この殺伐とした戦場での、唯一の清涼剤が吹き飛んだ。


「そんな!?合法オープンエロスが!!」

「合法じゃないですし、見ていて辛いだけですよ!…でも、今の攻撃は一体?」

分かんないよ、白いレーザーがズビー!っと『産地直送・触手フィーバー』を貫いて吹き飛ばしていったんだから…。


「うおおおおお!!息子の仇!!」

ええ!?味方の兵士さんですか!?

味方だから油断して槍の間合いの中に入られた!私は慌てて槍の柄で剣を受け止めた。


「お前があの化け物を造ったんだろ!?返せ!息子はあの中に!!」

「くっ!生きてるよ。捕らえた人は、下の方でチョメチョメしてるだけだから!ちょっとお尻で気持ち良くなって返って来るから!!」

問題ないじゃん!新しい扉を開くだけだよ!


「生きているなら普通に返せよ!?男として終わっているだろ!」

そう言いながら剣を押す力を強める、ガッチリとした50代のパパ兵士。

むしろ男としての新境地だと思うよ?


助けを求めてソルファちゃんを見ると、10人くらいの魔族、人族混同のパパ兵士軍団を一人で止めていた。

あれっ?これってピンチ?

味方の兵士だからガチ兄貴も作動しなかったし。

そんな時だ、ハチカちゃんの声が聞こえたのは。


「は~い~。馬車が通りますよ~」

「ハチカファ!止まって!?轢いてます、轢いてますから!」

ソルファちゃんが相手をしていた10人に、ダイレクトアタックを仕掛けるうちの馬車。

そして、一緒に乗ってるアイちゃんの悲痛な叫び。

うわ、酷い。


うちの馬車馬はバトルホース、人を轢いたくらいじゃ止まらない。

そしてうちの旅馬車、とても重い。

よって、目の前には私に憤怒の形相で剣を押し込めるパパ兵士と、轢き飛ばされ描写出来ないパパ兵士ズが転がっていた。


目の前のパパ兵士も『ガチ兄貴・エンドレス』が背後から捕らえ、茂みへと…。

私に剣を向けたから、味方の兵士でも敵と認識されたようだ。


「ふう…。助かった」

味方の兵士が一連の流れを見て、距離を置いたし、魔族兵も近寄って来なくなった。

相手にすべきはモンスターだけなんだけど、真面目な兵士さん達が相手をしている。

有難いよね。

そうそう、連れて行かれるパパ兵士の顔には絶望が浮かんでいた。


「…新境地を開いた父と連れて行かれた息子との共演……ヤバい、本作らなきゃ!」

「止めてください。目が腐り落ちます。それよりいい加減にアレを消してください」

酷いなソルファちゃん、大丈夫かなり美化して書くから!

それにアレのおかげでかなり楽になったでしょ?


「そ~ですね~。流石にお目汚しにしかなりませんし~」

「ああ、治療しないとハチカファも手伝って!アンナさんは、皆さんを開放してあげてください」

アイちゃんはハチカちゃんに声を掛け轢き飛ばしたパパ兵士達の応急処置に入る。


皆に言われて仕方なく消そうと、『産地直送・触手フィーバー』の方を見ると。

あれ?残った触手が一か所に集中してる?……はっ!?イケメン!かなりレベルの高いイケメンが居るんだね!!

……でも、こっちに向かって来てない?


「…ねえ、ソルファちゃん」

「分かってます。あの攻撃をした者かもしれません。あの量の触手をどうにかしながらこっちに来るなんて尋常じゃない」

もしかして、俺様王子?け、消そう今すぐに!俺様王子は攻めが良いと最近妄想の中で確定したから。


私の魔法が光となって消えていく、幻想的な風景だが後に残ったのは私の妄想の材料となる男達だけだった。


「……いいね!」

「いいね、じゃないですよ!?どうするんですかこれ!?あっちの世界に旅立ってますよ!?」

二次元でしか晒さない顔を見せる男達。そこが良い、それが良い。


っと、こんな事ばっかりやってるから、俺様王子に敬遠されるんだった…。

自重しなければ…、もう遅い感があるけど。


「もう~。遊んでないで~、警戒してください~!来ちゃいますよ~?」

ハチカちゃんがアイちゃんの手伝いをしながらそう言った。

あ、なんか来た。


「…危なかった。もう少しで…」

「はっはっはっ!ナイス囮っぷりだったすよ!王真くん、才能あるっす!」

あれ?マッキーも一緒だ。


「むしろ、王真しか狙っていなかったように思えます。あれを斬り抜けるとは、流石は王真ですね」

「……充電中」

アイアンメイデンと見慣れたリュックを背負ったお婆ちゃんに、パー子ちゃん。

それに…、サウスっち!じゃあ、お婆ちゃんの背負ってるリュックの中身は白ちゃんズ!?

それも驚きだけど何より目を引くのが…。


「……イケメンキターーー!!」

「ひっ!?」

思わず叫んでしまう程のイケメンだった。

顔立ちも日本人みたいだし、もしかして異世界人!

正統派の主人公だ!ハーレムタイプの主人公だ!ヒロインの窮地を救って惚れられるタイプの主人公だ!

でもなんか覇気がない……私が叫んだ時ビクついたし。

…受けだね、間違いないよ。


私が妄想に耽っていると、マッキーから衝撃の一言が飛び出した。


「チナさんが中央で暴れてるらしいっす。援護に行かないっすか?」

「マ、マッキー。き、記憶が戻ったの!?」

「えっ!?本当ですか!?」

「あら~、そう言えば。そちらは治癒の使徒様なのですね~。生きていらっしゃって本当に良かったです~」

治癒の使徒、このお婆ちゃんが…。

こっちのイケメンは誰?


「え?アレを作ったのはこの子?…モデルの高松安奈じゃないか、誰か嘘だと言ってくれ」

イケメンは聞こえなかったけど、何かを呟いて天を仰いでいた。


「そう、甘坂さんの言うアイリンとは、アイナクリン王女だったのね。初めまして、ディニア・クライスカラーです。こっちは…」

(王真の事は、今は伏せておいた方がいいかしら?この子たちと敵対関係に有ったのだし、ウォルガイの勇者が魔族に加担していたという話は此処でするべきじゃないわね。事情は後で話す事にしましょう)


「…異世界人の高平王真です。少し事情がありまして、後でお話します。甘坂さんにお仲間に掛かった禁呪の解呪を頼まれました。この仔達を見せれば信じて貰えると渡されましたわ」


「あ、はい。ありがとうございます」

そう言ってわっさわっさと動くリュックをアイちゃんに手渡した。


アイちゃんと一緒にリュックの中を覗きこむ。

「み、み~…」

「ぴぴー!」

「……?」

…白ちゃんがテンにつつかれていた。

アイちゃんが、3匹を優しく取り出し抱きしめていた。

むぎゅりとチビスラが形を変えるのが面白かったです。


「フフ、それで、解呪が必要な人は…」

此処にいる人ではソルファちゃんだけだね。


「…そう、あなたなのね」

伝える前に気づいたみたいだ。

というよりも…。


「何してんの、ソルファちゃん!?」

使徒様に向かって武器を構えるなんて!

あ、これも禁呪の刷り込みか!


「…分かりません!分かりませんけど、あなたは近づかないでください!!」

「あら、ずいぶんと深くやられているわね。禁呪に抗っているの?強い子ね。王真、お願いね」

そう言うとイケメンが前にでる。


「うん。…結構強いね、この子。……流石にマキサックさん程の耐久力は無いよね?」

あれ?この構えって、俺様王子と同じ?

左手で右の手刀を包むように構えた姿は、俺様王子と被って見えた。


そこからは一瞬だった。

いつの間にかソルファちゃんの前に立っていて、武器を持つ両手を手刀で打ち。

鳩尾に拳を添えただけでソルファちゃんは、崩れ落ちた。


「なに今の…」

「王真のオリジナルスキルの『氣』ですよ。元々保有量が少ないようで、魔力の方が使いやすいと言っていたわね、久しぶりに見たわ」

氣って、俺様王子の理不尽ぱぅわーじゃん!

でも、俺様王子は、ガンガン使ってたよ?

一緒にいた時はモンスターに使って「あ、加減間違えちまった」って爆散させてたし。


「ディニア、あとよろしく」

「ええ早く解呪してあげましょう。モンスターはお願いしますね」

そう言われ、私は『ガチ兄貴・エンドレス』を増やして、警戒に当たる。

ほら、人数を増やした方が効率がいいでしょ?出したガチ兄貴達は、イケメンの尻を凝視してるけど。


「…おかしいな、後ろからの方が危機を感じる」

大丈夫だ、問題ない。

お?解呪が終わったみたい、ソルファちゃんがゆっくりと立ち上がった。


「……謝らないと」

んん?


「イチナさんに謝らないと。忘れたことも当然ですけど。もっとしっかりしていれば、イチナさんが賞金首になる事は無かったんですから…。それを神敵だって斬りつけて…、僕は、僕は!」

うっわあ、ネガティブソルファちゃんだ。


「俺様王子の事だから気にしてないと思うけどな、そんな事気にしてたら、あんな生き方とてもじゃないけど出来ないと思う。…でも、謝らないと気が済まないなら、会いに行こう!マッキーが言うには中央で暴れてるらしいしさ」

私も早く会って神具を渡したいしね。


「…そうですね、分かりました。行きましょう!」

「よし!皆の者!出陣じゃー!使徒様にはファルっちの解呪をするまで付き合ってもらうよ!!」

「出陣って、もう戦場っすけどね」

マッキーうるさい。


「みー!」

「ぴー!」

「……!」

白ちゃんズも仲直りしたみたいだ。

馬車の席の上で小っちゃいタワーを形成している。


「頑張りましょう、皆さん!」

「馬車と姫様は~、任せてください~」

アイちゃんも皆が記憶を無くしてから落ち込んでたけど、元気でたみたい。

あ、応急処置は終わったみたい。


「……サウスは…お任せ」

「ガウゥ…」

サウスがんば!


「王真、私達も行きましょうか。私は馬車に乗せてもらうわ」

「うん、まだ終わって無いからね……馬、確保して来るよ」

こうして各々馬車や馬に乗り、中央を目指してひた走るのだった。

チビーズリュックは意志を持たないリュックです。


byミスター

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