ファグス - 禁断の創造魔法 -
書き上げたんでちゃっちゃと投稿。
腐敗勇者side
「はあっ!」
私は多分聖槍である槍で敵を貫く。
…この感触には絶対に慣れないと思う今日この頃。
敵を貫くたびにテンションが下がって、吐き気を催すのは如何にかして欲しいんだけど?
多分というのは、王家の人が明言しなかったからです。
名前も知りません。
アイちゃんも知らないって言うしさ。
「背中ががら空きです!背後にも注意を配ってください!」
そう言いながら、私の後ろから近付いていた魔族兵を両断するソルファちゃん。
強いなぁこっちの人は…。
私もこう『なっちゃう』のかなぁ?
アイちゃんもハチカちゃんの援護を受けて魔法使いらしく戦ってるし、マッキーはパー子ちゃんを肩車して敵陣に突っ込んで行った。
偶に魔族やモンスターが宙を舞ってるから無事だと思う。
というよりマッキーの加護を考えたら敵が可哀想で…。
あ、ファルっちはお届け物の為に別行動ね。
あとね、シーバンガの王女陛下に貰った神具は加護2ランク強化する物だった。
それぞれ形が違って、私のはピアス型だったよ。
ハチカちゃんとパー子ちゃんは、加護が不明だったから別の物を貰ってたけどね。
ハチカちゃんは教えてくれなかったけど、パー子ちゃんは『ハイドハンカチーフ』っていう広げて座ると存在が分からなくなるっていう物だった。
今頃どこかで座ってると思う。
一番ヤバいのがマッキー。
神具で強化された再生の加護は、もうギャグ補正の域だよ。
本人が分かってないけど、とんでもないから。
瞬きを一コマと捉えたギャグ漫画って言うのが私の考えかな。
もう、老衰か跡形も無く消されでもしない限り、マッキーは死なないと思うんだ。
それと、王女陛下に無理言ってもう一つ貰っておいたんだよね、…俺様王子の分。
アイちゃんがここに来てるかもって言ってたし、早く会えないかなぁ…。
それはそれとして、私は私の道を行くぞー!!
「ソルファちゃん!時間稼ぎお願い!おっきいの使うから!」
「創造魔法ですか?……アレだけじゃダメなんですか?」
ソルファちゃんは、護衛に出したガチ兄貴の方を見てそう呟いた。
両脇に筋肉質の魔族兵を抱え、茂みに消えるガチ兄貴。
消えたガチ兄貴の代わりに直ぐに分身体が私の隣に出現する仕様となっている。
これぞ護衛用創造魔法『ガチ兄貴・エンドレス』よ!
「……さあ、やるよ!!フィーバータイムだ!!」
「問答無用ですか。仕方ないです、ね!」
押し寄せる魔族兵やモンスターを叩き伏せながらそう言うソルファちゃんはかっこよかった。
詠唱は都合により省略させて頂きます♡
だって、ほら、触手だよ?18禁ワード満載の詠唱なんて駄目でしょ?
「『産地直送・触手フィーバー』!!」
さあ、強化された創造の加護を見よ!!
「……触手ですか、ローパーを思い出します。あの時は……あれ?なんで助かったんでしたっけ?」
詠唱に顔を赤くしてそんな事を呟き、敵を斬りながら頭を捻るソルファちゃん。
なにか俺様王子との思い出があるんだろうか?
私と会う前かな?間違いなく戦闘の事だろうけど、禁呪でも完全に消せない記憶を残せる俺様王子……凄いなぁ。
次の瞬間、空に魔法陣が描かれ球体が出現。
轟音と共に落下した……あれ?大きすぎたかな?いや、太さは一般的だと思うよ?
でも、数が多すぎた、とんでも無い数の触手が纏まって落ちて来たもんだから、なんか山みたいになってる。
触手ものってあんまり読まなかったから今一想像しづらかったんだよね。
取り敢えず、これは言っとかなきゃ。
「大きいです…」
「ア、アンナさん。なんかばらけてますけど…!?ああ、味方が!ひぃ!?あ、ああ…、なんてモノを出してるんですか!!見境なしですよ、アレ!?」
何を言ってるんだい、ソルファちゃん。
「ちゃんと認識してるよ、イケメンとショタだけが対象だから!でもこれで一つ勉強した」
「何をですか!?」
ソルファちゃんは向かって来るモンスターの対処をしながら、私へのツッコミもこなすなんて…。
凄いスペックだよ!
「触手は多すぎるとエロくない!」
「そんな結論いりませんよ!?」
でも、敵は減るから頑張ろうか。
だって、イケメンとショタ以外は残るからね、混乱してる今がチャンスだよ!
一般的には地獄絵図ともいえる空間で私は槍を振り続ける。
私的にご褒美といえるかというと微妙だしね。
やっぱ、イケメン×イケメンか、ショタ×イケもしくはイケ×ショタが良いわ~。
……ガチムキも捨てがたいけどね?
Sideout
ファルナークside
我は強くなった加護の感触を確かめながら、途中味方の兵に聞き王都の防壁沿いに中央へと向かっておった。。
そして見つけた、王都の門の近くで泣きながらリリスと戦う勇者の姿をのう。
勇者は中央配備のはずじゃが、押されて来たようじゃの。
別の大きい魔力も近づいて来るようじゃし、勇者もこのままではいかんの。
「助太刀するぞ!」
マリアに乗ったまま、二人の間に入りリリスのバットを大剣で受ける。
「!時姫!?なんでテメエがここに居やがるんだ!?」
「口が悪いのう。お淑やかにせねば殿方にモテんぞ?」
「テメエに言われたくねえよ!…それに、好かれたいのはアル様だけですー☆」
本当に、相変わらずじゃのう…、どちらにしてもお淑やかとは言えんがの。
リリスのバットを弾き、マリアから跳び降りる。
さて…。
「勇者殿、女王陛下からのお届け物じゃ。我がコヤツの相手をしとる間に付けて来い」
フリーナからのお届け物を勇者殿に投げ渡す。
「は、はい!女神様!」
はい?我は神では無いぞ?……聞き間違いじゃろ。
「あの、行ってきます。戻ってきたら、お名前教えてくださいね?」
モジモジとそんな事をいってから離れていく勇者殿であった。
…ふむ、我も罪な女よのう。
「なに?あんなのが趣味なんですか☆ヘンターイ☆」
「違うわいっ!我は、我は?……むう、なんか引っかかるのう」
それに何故ここで神敵の顔が浮かぶのじゃ?[気にするな]
まあ、気にしとっても仕方ない。
「やるかの……今度は逃がさんぞ?」
「ハッ!以前のあたいと思うなよ!…愛の力でぶち殺しです☆」
互いに得物を構え睨みあう。
「いっくよー☆『ディスジェミリナ』!」
バットから『一瞬』で双剣に形を変えた『ディスジェミリナ』を持ち、無詠唱で『スピードブースト』を自分に掛け突撃して来るリリス。
ふむ、形態変化のスピードが格段にあがっとるし、無詠唱か、腕を上げたようじゃのう。
じゃがのう…。
「我は時の加護持ちじゃぞ?」
敗れた相手の加護じゃぞ?自分でゆうとったじゃろ『時姫』と、学習せん奴じゃのう…。
まあ、神具によってレベルの上がった時の加護じゃ。
操れる時間も2秒と伸びた。
なによりも、有難いのは操れる幅が広くなったことじゃ。
我も前と同じではないのじゃよ?
その加護を使って、リリスの動きを遅くし、大剣を奔らせる。
「チェストォオオオ!!」
「なんじゃ!?」
横を向くと30メートル先に鬼の形相で剣を振り下ろす魔族の姿があった。
「…これは拙い、の!」
本能に従いバックステップで後ろに下がる。
次の瞬間、魔力を纏った斬撃が我の居た場所を通過して王都の門を斬りつけていた。
「なんちゅう剣撃じゃ…」
あ、2秒たつのう。
「アル様!助けに来てくれるなんてリリス感激です☆」
「ぬうぅ、これが愛の力という奴か。侮れんのう」
おかしいの、我もおった筈なんじゃが愛しい者が…。
[歳を取り過ぎた]むう、歳のせいで忘れた?…いや、それだけは認められんの。
誰じゃったかのう…。
「ファルナーク・サリスなぜ貴様が此処にいる。ザッカイス・ウォルターはどうした?」
いかん、考え事が過ぎたか。
リリスはアル様とやらに抱き着こうとして顔面を抑え込まれている。
「我が来た時にはもう居らんかったがの「ザッカイス師匠は殺されました!その子が連れて来た人に!」…勇者殿」
そうか、英雄は散ったか…。
しかし……似合わんのう。
神具の『フルアップマント』と『ゼクの衣』じゃったか?
『フルアップマント』は常時全ブースト系の魔法が掛かるらしい。
『ゼクの衣』一見ただの布の服じゃが、奇跡を起こすと言われとる訳の分からん神具じゃ。
背丈が小さいから『ゼクの衣』は裾がダボダボじゃし、ピンクのマントっちゅうのものう……引きずっとるし。
完全にフリーナの趣味じゃなかろうか…。
「ごめんなさいアル様、行かせちゃいました」
ほしを付けんとは本当に謝っておるようじゃの。
む?一体誰の事じゃ?
「構わん。お前に捕まっていたこと自体、予想外だ。だが、この場にいないという事は、ディニア・クライスカラーの元に向かったのだろう。それに目の前でお前を殺させる訳にはいかん」
「アル様~♡」
お堅い奴かと思っとったが、言うのうアル様。
…我がアル様というのも変じゃし名前知りたいんじゃがの。
ま、そんな事を言ってる場合ではなさそうじゃの。
魔軍の部隊がモンスターを引き連れ突出してきておる。
…まずいのう。
「…俺の部隊が来た。中央で遊ぶ分には問題なかったが、門前で突入の邪魔をさせる訳にはいかない」
そう言って剣を構えるアル様、どっかで見たような剣じゃの…。
…そうか、神敵か。
あやつは速度重視の抜き打ちじゃったが、こやつの構えは反撃を考えておらん。
一撃に全てを賭ける気かの?…あの形の剣を持つ者は、癖が強いのう。
むう、このままでは囲まれてしまうというに…。
参ったのう、我とこの勇者殿の二人でどうにかなる戦力差ではないか…。
我だけなら逃げる事も出来るが、勇者殿を放って置く訳にものう。
構えからして振り下ろし。
加護を使えば問題ないかのう?
「アルケイド将軍。何をしてるんですか、こんな所で。ああ、リリス様が中央から移動してたんですね?それを探し回ってた訳ですか…。「副長、私語は慎め」はい、すいません。我々はこのまま突っ込みます。…『楔』の件も有りますし。敵中央はほぼ総崩れ、気になるのは左翼と右翼が予想外のダメージを受けている事ですが、ここまで来れば問題ないでしょう」
「分かった、行け。俺はコイツを片付けてから……フフッ来たか」
「来た?なにがですか?…っ!?」
アルケイドがそう呟いて我に背を向けた。
死にたいのかの?
そう思い剣を構えた処で動けなくなった……なんじゃこの殺気は!?
「…斬り散らしに来たぜ?アルケイド・ガンマ」
「断ち斬られに来たか、甘坂一南!…副長、行け」
黄助に乗って囲いを斬り散らしながら、神敵が我らの前に姿を現したのじゃった。
副長と呼ばれた男は、最低限の囲いの出来る数だけ残して王都の門へと向かった。
この殺気は、神敵から漏れ出しておる殺気か?
そう思っただけで不思議と恐怖が消えてゆく…。
しかし、これだけの殺気を出せるとは、流石は我の…?我の何じゃ?
「僕様もいるんだけど…。まあいいかイチナくん楽しそうだしね。…僕様は王都の門を守ろうかな、行こうクロハ」
「ブルルッ」
何故ここにおるんじゃカートス!?
…はて、我は先ほど何を考えておったかの?
…イカン、イカンぞ我はまだボケてはおらん筈じゃ!!
Sideout
一南side
…見つけた!アルケイド!
「っ!ルナ!?なんで此処にいやがる!?」
つうか、ルナと対峙してやがる!
しかも囲まれ始めてるか……やらせる訳にはいかねぇな。
「黄助ぇ!!」
「グガァ!」
俺を乗せ空転びを使う黄助。
一瞬で囲いの薄い場所を判断し突撃を掛ける。
俺は殺気をアルケイドに叩きつけながらルナへの注意をこちらに向ける。
邪魔なものは斬り伏せて、アルケイドに挨拶しようか。
「…斬り散らしに来たぜ?アルケイド・ガンマ」
「断ち斬られに来たか、甘坂一南!…副長、行け」
チッ、囲いは残して門に向かうか。
ん?…カートスがクロハと共に追っていった、大丈夫か?ちと心配だ…。
「黄助、行ってくれねぇか?危なそうなら首根っ子掴んででも連れ帰れ。知らねぇ国よりダチの方が大切だ」
俺は黄助から降りながらそう言って、バックルに魔石を叩き込んだ。
こんな事言ってると、ファグスからも睨まれるんだろうけどねぇ。
ま、事実だから仕方ねぇよな。
その言葉に頷いた黄助は囲いを軽々と突破しカートス達の向かった王都の門へと向かった。
「…さて、やろうか大将」
「ああ、貴様と戦うために将として残ったのだからな。互いに全力で、な」
いやぁ、通じ合っているようで、何よりだ。
互いの殺気と剣気がぶつかり、俺もアルケイドも笑顔になる。
それはもうイイ笑顔だ、他人が見たら悪鬼羅刹と褒め称える程の。
「クハッ!イイ顔で笑うじゃねぇか、打ち合うのはこれからだろうよ!」
「フフッ、貴様ほどでは無い!」
流派も種族も違うが、コイツと俺は本質が同じだと思う。
『強く有りたい』ただそれだけ。
俺の場合はそれに『神よりも』が付く。
アルケイドは『誰よりも』かもしれんがね。
まずは互いに様子見の『乱撃』。
「…シッ!」
「チェエィッ!」
アルケイドは示現流の鍛錬で行なう立木打ちを。
俺は迎撃に刻波を奔らせる。
「くはっ!くはははっ!!」
「フフッ、フハハハ!!」
共に笑いながら体を温める。
そう、ただの準備運動だ、本番はこの後。
「アル様が怖い…」
テメェも魔軍の将だろ、ちったぁ見習え。
「無理です、攻撃力云々で勝てる相手じゃないですよ……何ですかアレ」
失礼な少年だな。まず、お前が誰だ。
そして、その格好はなんだ?戦えないだろそれじゃ。
「…なんじゃろうな、この殺気の中であまり恐怖を感じん。…分からぬ、何者じゃ神敵よ」
お前さんの婿殿だよ。
終わったら、無理やりにでも治癒の使徒のとこに連れてくからな?覚悟しとけよ。
そして、剣撃の音が止み、一度距離を取る。
「…さて、本番行こうか」
「…ああ、全力でな」
互いに構え直し、力を溜める。
一撃、必殺。
それで決まる、それこそが全力であり至高となる。
俺とアルケイドは間合いをじりじりと詰め始める。
その時、王都の門が『王都側』から轟音がし破壊されたのだ。
「なんだぁ!?」
「なに!?」
…なんかスゲェ嫌な気配だ。
さっき感じた嫌なものはこれか?
しばらくするとカートスを乗せたクロハと殿の黄助。
この気配を察知した黄助が俺の命令通りカートスを連れ帰ったのだろう。
「無事か、良かったが……なんか来やがる」
「ああ、そのようだ…!?副長!?」
嫌な気配の元は黒衣の男。
宙を浮きながら、門へと向かった魔族兵達を引き連れこちらに向かって来る。
引き連れられている魔族の中にアルケイドの副長も混ざっているようだった。
「…ほう、初めて純粋な『人間』に有ったな」
現れたそいつは俺と少年を見ながらそう言ったのだった。
Sideout
???side
少し前、王城の宝物庫では…。
「早く詰めろ!金貨や値打ち物だけでいい!」
そう言いながら、せっせと金貨を加護付きの袋に詰めるエセ熱血漢。
立派な鎧に身を包んだ若い男である。
「しかし、本当にいいんですか?見張りの兵まで殺してしまって、完全に泥棒じゃないですか…。まあ、あんな化け物が居る戦場に戻りたくないですし、もう終わったも同然ですからね。見限るのは早いほうがいいです。まあ、あの化け物の情報は対罰者に渡してきましたから討ち取られているかもしれませんけど…。僕たちは、パレサート辺りにでも逃げましょうか?」
あそこには叔父上がいますから。そう言いながら貴金属を適当に詰めていくインテリ眼鏡。
服装は修道服、教会の人間のようだ。
「値打ち物といってもな…。私は古物商じゃないのだから、分からないのだが」
彼等はこのファグスを見限った男たち。
上から中堅貴族の三男坊ジョリス、その友達で教会の成りたて司祭マイーン、三男坊の護衛の騎士ホークとなっている。
王都ファグスが襲われ、一応前線で戦ってはいたものの、ウルフに乗った鬼に斬られかけ、恐怖を体に叩き込まれた。
そのまま兵をおいて3人で逃げ帰り、魔族への対応に追われ混乱した王城の隙を突いたのだった。
国を出る前に、魔族に奪われるくらいなら…。という浅はかな考えでバカな事をしでかした3人である。
この3人、鬼に会わなければそれなりの戦果を上げるか、殉死していたモブである。
「これとかどうだ!」
ジョリスが宝物庫の一際奥に『安置』されていた古く今にも壊れそうなほどボロボロな、螺旋を描く白い蛇の置物を持って来た。
「何ですかそれは?…白い蛇、邪神のシンボルマークですね。この国には邪神信仰が有ったという事でしょうか?不快ですね、壊しましょう。ホーク頼みます」
「私は構わないが、いいのか?」
そう言ってジョリスに許可を求めるホーク。
「もういい、他になんか探す」
ジョリスは邪神関係だと知って興味を無くし投げ捨てた。
地面に当りガラスのように砕ける置物。
そして、砕けた場所に黒い水たまりのような物が出来て、靄のようなものが溢れる。
「…これヤバいんじゃないか?」
投げ捨てた本人が、そう呟いた。
「ジョリス…。これは何処にあったのですか?」
「え…。持ち出し禁止の棚に。古そうだったしよ、国宝かと思って」
「…逃げましょう」
ホークの提案に頷く2人だった。
しかし…。
「!体が動かない!?えっ?あああ、なんだコレ!?心が、溶ける!?溶け、る……」
誰の声だったのか、動けなくなった3人に靄が絡まり、靄が引いた頃にはすでに抜け殻となった3人の姿があった。
そして、白い蛇の置物が砕けた場所の黒い水たまりから這い出るように、『人』が出て来た。
靄の中のその姿はくすんだ長めの金髪に青い瞳。
こけた頬に病的なまでに『白い』肌。
漆黒の衣に白い蛇を象った首輪をしていた。
「……『ハイネの霧』解除。『スピリチュアルレコード』再生…。ん?吸収したのは3人分の筈だが、魂が無い?『ソウルライブラリ』に追加は無しか…。…天神の作った『無魂種』共か。しかし何故天神の手のものが私を復活させた?それにここは何処だ?宝物庫のようだが…。私は天神の使徒に封印されて…!?これは、天神の使徒の気配!?奴がいて何故敵対する使徒である私の復活を見過ごした?」
天神それは創世神の古い呼び方である。
この男、杖を持ってはいない。
なにより使った魔法は、今のガファーリアに存在すらしていない。
『奴隷契約』と同じ古き魔法である。
『ハイネの霧』は心…、魂を吸収し一時保存する魔法で使用者より魔力の弱い相手にしか通用しない。
『スピリチュアルレコード』は『ハイネの霧』で吸収した魂の特性を自分に付加する特殊魔法である。
吸収した特性を保存し、使用する『ソウルライブラリ』も彼の魔法の一つである。
かつてガトゥーネに使われた『名なき術式』は彼の魔法を参考に作られたものである。
「状況が分からない。『アーカイブレコード』発動。……アハハハハッ!!あれから7000年だと!?しかも天神の作った無魂種が世界の大半とは!戦の捨て駒が偉くなったものだ!」
「我が神の作った『魔導兵』も仮初の魂を与えられ、種族として配置されているのか。人間もいるが王族か英雄だとはな。しかも王族は血が混ざり過ぎて人間よりも無魂種に近い。代を重ねるごとに弱くなるか、滑稽で愚かだな。天神め、私を封じてから我が神の体を神域に封じて世界を造り変えたか。創造神とはよく言ったものだ。神を名乗る者まで大量に造って何がしたいのだ?」
魔法『アーカイブレコード』
世界に記録された歴史を読み解く魔法である。
類似品に『見識の加護』がある。
「…意識が有るのならば、我が愛しき神の声を聴く事は出来るはずだが…。指示は無いか。取りあえずここを出るか『ジャンプ』」
古い転移魔法を唱えその場から消える男。
次に現れたのは門の前だった。
この時、黄助はクロハに合図し離脱を試みていた。
「うおっ!何者だ貴様!?」
門の前に詰めていた兵達が反応する。
「また、無魂種か…。邪魔だ『イビルブラスト』」
魔法で兵と共に門を吹き飛ばす。
「…魔導兵か!丁度いい『指示に従え』」
その言葉を聞いた魔族兵の眼から光彩が失われまるで機械のように無表情になった。
「仮初の魂を与えられても、魔導兵は魔導兵か。ん?『人』の気配…。行くぞ」
そも場で浮かび上がり、魔族を引き連れ動き出す。
そして…。
「…ほう、初めて純粋な『人間』に有ったな」
Sideout
宝物庫でやらかした三人、原因は振り切れた鬼。