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猫守紀行  作者: ミスター
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外道と老将

ゴールデンウィークなんてなかった。

取り敢えず出来たから、ぬるりと投稿。

バルクside


「あー、おう分かった。バルク、俺はサウス達のとこに行ってくるから。転移方陣を破壊されるようなへまはするんじゃねぇぞ?」

「みー?」


「ちょっと待った!!…何この理不尽。本気で行っちゃうの?……うわ、振り返りもしないし。報告であった鬼の意味がよく分かったよ。はあ、やるしかないみたいだね」

あー、捨て駒が全滅してれば良いなあ、そうすればどうとでも言い訳出来るし。

アイツ等ペラペラ喋りそうだしね…。


まあ、白守くんに手札を見られない事がせめてもの救いかな?

……この後、白守くんともやらなきゃいけないかも知れないし、出来るだけ体力は温存しておきたいね。


さ、切り替えて行こうか。

相手はバリバリの武人タイプ、やりやすい相手では有るね。ここは僕のフィールドだし?


「ようやくその気になったか。では、始めようか」

ワクバランに漲る剣気と殺気……うーん、流石『剣将』とんでもないね。


「その前にエンチャントくらいかけさせて欲しいかな?投げられて出て来たから何の準備もしてなくてさ」

嘘だけど。

ワクバランが来た時点で準備は終えている、当然僕が戦う可能性も有る訳だしね。

物理軽減の鎧、魔法軽減のコート、何時もより高級な装備をしているし、付けてる指輪も特別製で様々な能力アップの加護を付けた金属を組み合わせたものだ。

ま、全部強奪品なんだけどね?


「それほどの装備をしておいて、準備をしていないというか。随分と慎重だな『空声』よ」

そう言いながら剣を抜くワクバラン。

ばれてるし……おかしいな、ばれないように傷をつけたり色を変えたり、色々と細工はしてるんだけどな。

ああ、装備品の魔力が漏れてるのかな?改良しなきゃね。


「そりゃ、古き将……しかも『剣将』が相手だからね、慎重にもなるよ」

そう言いながら、右腕に刻んだ強化魔法の魔法紋を発動させる。

対象はワクバランだけどね。


「む?俺にだと?…ぬっ!がぁ!?こ、これは!?」

「エンチャントだよ?聴力強化のね?よく聞こえるでしょ。何て言ったって大金叩いて買った『改造術式』だからね?いやー、手に入れるの苦労したよ。使える『手』とコネを全て使って前魔王に依頼しただけあって、10キロ範囲の『音』が聞こえるからね」

「黙れ…」

おや、まだ返事が出来る気力が残ってるのか。

この魔法は『カオスイヤー』元の魔法がなにか分からない程に改造された術式だ。

僕は魔法紋にして使ってるけどね?

効力は純粋な聴力の強化、そう10キロ範囲の全ての音を聞く事が出来る程のね。

そんなものを喰らったらどうなるか、常人なら一瞬で気絶するし、戦闘になんかならないんだけど…。

ま、老将が常人の訳がないよね?


「あれ?専用の補助術式持ってないの?いやー、それじゃ悪い事したね。アレが無いととんでもなく魔力を喰うだけの騒音魔法だから、補助術式があれば、望んだ情報だけ抜き出せる便利魔法なんだけど。ま、慣れは必要だけどね?って、聞こえてないか。さて…」

ちなみに、右手に『カオスイヤー』、左手に補助術式とそれぞれ魔法紋として組み込んである。

王都に潜入してこれを使うだけで情報が手に入る優れものさ。

魔軍でも使ってるみたいだけど、暗将とかがね。


下を向いて項垂れるワクバランに僕は剣を抜いて近づく。

「さよならだね『剣将』ワクバラン・ソイル。君とはまともにやり合いたかったよ……なんちゃって」

僕は上段に構えた剣を振り下ろす。

その瞬間、僕はピンキールージュとは別の娼館の扉を壊しながら店内へと吹き飛ばされていた。


「……ゲホッ。痛ったいなー。…何が起きたんだよ」

そっと鎧を撫でてみるとぱっくりと斬られた跡があった……中は薄皮一枚って処かな?

うはあ、こっちの鎧じゃ無かったら死んでたね…。

油断してたなー、流石剣将、まともにやったら勝てないね。


ガシャン、ガシャンと足音が響く。

あれ?なんかしっかりした足取りだね、カオスイヤーは効いてないの?


「『カオス・イヤー』…フルクスの坊主も使っていたな。相手を殺すなら、長々と話すものでは無い。その間に対策を取らせてもらった、至極単純な物だがな。む、まだ響くな…」

対策?……うわっ、とんでもない魔力で耳栓を作ってるし!

『カオスイヤー』を喰らって、魔力の固形化なんて集中力のいる作業なんて出来るんですか?


「やっぱりとんでもないね。でも、ここは僕の街なんだよ」

そう言って指を鳴らすと、ぞろぞろと娼館の女たちや奴隷、その子供達が震えながら『武器』を持って集まってくる。


「魔軍の老将ワクバラン。落とした街での略奪は許さず、人族の戦災孤児を独り立ちできるまで鍛え上げる程のお人好し。あの『ぼっち(武神)』のカートスもワクバラン印だったかな?僕もワクバランさんと一緒でさ?お人好しなんだよ。さ、お前たち、分かってるね?…逝け」

「あ、あ、う、うわあああ!!」

最初に動いたのは娼婦の息子で下働きをやってる子だったかな?流石男の子だね!


「くっ!外道が!!」

ワクバランは持っている剣で少年のナイフを叩き落とし、そのままバックステップで距離を取る。


「流石お人好し。この手の相手には弱いか。情報通りでよかったよ、じゃなきゃ全滅だった。ごめんね皆、危険な役を押し付けてさ」

娼婦は大事な商品だからね。

でもまあ、ここにいるのは集まって来た賞金首やならず者相手の娼婦だから死んでも痛くないけど。


「ごめんねついでに、あの魔族追い出しちゃおうか?大丈夫、あの魔族は『優しい』から」

このザトゥの娼婦は皆、僕に恩がある。

戦争や襲われた村から拾って来た子ばかりだからね、元手ゼロから商品に仕上げるのは楽しいんだよね。

ま、貴族相手をするような上級娼婦の卵…、綺麗な子供がいる村は、人を雇ってその村を襲わせたりもしたけどね?

そして雇った盗賊の口封じも兼ねて皆殺しにして颯爽と現れる僕。

そうして手に入れた原石を磨いて作った商品に群がる貴族様、素晴らしい商売だよね!


怯えながらもジリジリとワクバランを包囲していく女と子供、頑張れー。


「ちっ!」

ワクバランは舌打ちして、店の外へと出て行った。


「他の店にも伝令送って、この町から追い出すんだ。僕じゃ斬られちゃうからね。君たちが頼みなんだよ」

「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」

うん、店から追い出せた事で自信が付いたかな?

予想外すぎるお客さんのせいで、予定が大分狂っちゃったし…。

問題はこの後だね、どうしようかな?


Sideout




一南side


「あっち行ったよ!」

「走るのが速くて追い付けないの!どうすればいいかバルク様に聞いてきて!」

ええー、何これ?

娼婦達が松明を持って、髪を振り乱し全力疾走、ポロリでもしそうな勢いでなにかを追っている。

いやまあ、ワクバランを追ってるんだろうが……なんでだよ?

どういう状況だよ、これ?


「あのお爺ちゃん飴玉くれたー!」

俺に気づいた1人の能天気そうな女の子がナイフ片手に飴玉を自慢してきた。

…こんな子供まで駆り出されてんのか?

俺はクロハを引く手を休め、目線を合わせる。


「……ああ、うん。よかったねぇ。「うん!」ちいと悪いけど、何でこんな事になってんのか聞かせてくれねぇか?」

「…鬼ごっこ?」

夜にナイフ持ってか?駄目だな、聞く相手を間違えた。


「そのじいさん、何処に行ったかわかるか?」

「駄目!飴玉貰ったから内緒にしないといけないの!あ、ワンちゃん可愛いね!」

へえ、白よりサウスか……じゃねぇ、危うくまったりするところだった。

この子から無理やり聞き出す、なんて事は流石になぁ?


「こりゃ、ワクバランを探すよりバルクの処に先に行ったほうがいいか?サウス、バルクの匂い、覚えてるか?「ガウッ!」OKんじゃ、行きますか……嬢ちゃん、そろそろサウスから離れてくれると助かるんだが?」

大きな体のサウスを両手で撫でている女の子に声を掛ける、ナイフは地面に放り捨てられていた。

体毛を逆撫でるのは止めてやれな?


…なんだろう、マルニを思い出す子だな。


「わかったー!またねー、ワンちゃん!」

そのままナイフを放置して駆けだす女の子。取り敢えず拾っとこうか、危ねぇし。

ごく普通のナイフ、というより果物ナイフだ。

これを持たせてワクバランをどうしようというのか……謎だ。


「マルニみたいな子だったな」

《マルニとは誰だ?嫁か?》

ガトゥーネよ、俺は犯罪者じゃねぇ!

(シェルパで世話になった宿の娘さんだよ。10歳くらいのな)


「キューン…」

「なんだ、思い出して寂しくなっちまったか?うりうり」

一通りサウスの頭をワシワシと撫でてやってから…。


「さ、行くぞ?」

「ガウッ!」

サウスを先頭に俺はクロハを引いて、歩き出す。

ちなみに、クロハの上にはテンとチビスラ、白を乗せ。

魔石の効果が切れた黄助が纏めて相手をしている。

あの子のせいで大分戦意が削がれたが、取り敢えずはバルクだ。

この状況の説明と、探査術式の事を聞かねぇと……大人しく吐けばいいんだけどねぇ。





慌ただしい街の中を歩く事、数分。

ピンキールージュからバルクが出てくるのが見えた。

あっちも俺に気づいているらしく近づいて来る、が。

7メートル程の距離を開けて立ち止った。


「白守くん。遅いよ。今町をあげてワクバランを追い出してる所だよ?」

「女子供を使ってか?そんなもんテメェの仕事だろうよ。それにうちの仔に何の為に探査術式なんぞ付けようとした?」

それは、とバルクが口を開きかけた時だった。


「そこの外道に何を聞いても無意味よ。まともな答えなぞ返って来るはずもない!」

2階建ての建物の上から声が響く。

散々追い掛け回され鬱憤でも溜まっているのか、言葉の端々に怒気が見えるワクバランだった。

そのまま飛び降り、着地。

白に一度目をやり、こちらへと歩き出し間合いの外……7メートルの距離で止まる。


ワクバランはまだ分かるが、バルクも俺とやる気か?

腹黒そうだが短慮には見えねぇんだがな……なんか仕込みでもしてんのかねぇ?

いや、そもそも俺と戦う理由はなんだ?サウス達への仕込みがばれたから?それじゃ弱い。


「酷いなー、ちゃんと答えるよ?そうだなー…」

信用も信頼もしてないが、バルクは外面的には『いい人』を演じようとしていた。

それが言い訳もしない、か…こりゃ本気でやる気か?理由が分からんが。


「白守くんへの答えは、ワクバランさんと戦ってくれたら教えてあげるよ。ワクバランさんは、白守くんに勝ったら僕も卑怯な手を使わず、本気で相手をするよ。加護神に誓う」

(まあ、元冒険者の加護神への誓いなんて塵みたいなものだけどね)


「俺がそれに従う意味が見出せんし、義理もねぇ、ねぇんだが…」

バルクは気にいらねぇが…。

正直言おう。人間ってのは、欲求には勝てないのだと。

…たとえ相打ち狙いと分かっていても、だ。


「…俺はあんたと戦いてぇ」

《ふむ、一南を手の平で躍らせている積りか?面白い。どんなものか、お手並み拝見だな》

…ガトゥーネがなんか言ってる。

本当に嵌めるつもりがあるのなら、先に潰しておきたいんだけど?

しかし、元々ワクバランとは、戦うつもりだったとはいえ……取り敢えずバルクはシメル。


ワクバランに分かりやすく戦う意思を伝えるため、殺気を開放する。

「飼い主…。分かった、受けよう!」

(この飼い主の殺気は尋常では無い……修行、とは言ってられんかもしれんな。面白い!)


「決まりだね!暗いでしょ?明かりは僕が作って上げるよ」

バルクが詠唱を終え『ライト』と唱えると10の光源が間隔をあけ、地面から3メートルほどの高さに出来上がった。

確かに暗いっちゃくらいが、月明りでの決闘も乙なもんなんだがねぇ。


「さ、準備は出来たよ」

(光ある所に『影』は有りってね。後はタイミングだなー)


「取り敢えずは、名乗りからかね?『神敵』で元冒険者。『白守』の甘坂一南…」

居合抜刀の構えを取り名乗りを上げる俺。

「魔国の剣士、『剣将』ワクバラン・ソイル…」

異様な雰囲気を持つ剣を抜き放ち、右自然体で構えるワクバラン。


「あ、僕はね「「黙っとけ」」…ちぇ」

気分が高まってきた処にちゃちゃ入れるんじゃねぇよ!

んじゃ、改めて…。


「「参る!!」」

楽しもうかぁ!!

久しぶりに時間が0時じゃないかも。

明日も仕事さ、テンションがオカシイけど気にしない!

それでは、また次回の投稿でお会いしましょう!

ゲリラ投稿でした!


byミスター

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