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猫守紀行  作者: ミスター
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戦いの始まり

魔王が出て来たのはコロシアム、闘技都市で一番広い場所であり『戦の神』の祭壇が設置されている処でもある。


「ええい!もう押すな!自分で歩く!…全く「放て!」ん?」

リリスに押され結界迷路を出た瞬間に放たれる数えきれない程の無数の魔法。

結界迷路の出口はジャンが出て来た時に完全に封鎖されてしまっている。


「…ふん。有象無象がこの程度で俺様が傷つくと「魔王様☆リリスちゃんは無傷じゃすみませんよ?格好つけてないで迎撃☆迎撃☆このドレスに傷が付いたら魔王様の研究室焼いちゃいますから☆」…仕方あるまい!俺様の力を見せてやろう!!」

リリスの脅しに負けた魔王だった。


ジャンは魔王とリリスの寸劇を見ながらイメージ魔法で手早く小さめの魔法の軌道をずらして行く。

(詠唱している時間が無い!態々出口を開けたのはこの為か!!)


「うーむどれにするかな…コレで行こう。いけ『魔改造ダーク・シールド』」

そう言って懐から魔法球を取り出し魔力を込めて足元に転がす魔王。

瞬時に黒い障壁が展開され、全ての魔法がその障壁に阻まれた。


「フハハハ!これが『魔改造シリーズ・障壁編』のダーク・シールドだ!中々テストが出来なかった試作品を大量に持ってきたのでな。此処で魔法球のテストもさせて貰おうでわないか!む?」

障壁からビキリと音がして一筋の魔法が銀閃を伴い頬を掠め、魔王の頬を血が流れ落ちる。


「…聖なる魔力。なるほど先ほどの魔法群は目くらましか、中々練度の高いマジックアローだ。この距離で頬を掠めただけでも見事と言っておこう」

(しかしこの手を使われたとなると他の兵の生存は厳しいか…)


魔王の視線の先には各々の武器を構えた『女』勇者が『4人』それと、数多くの冒険者達が先ほど魔法を放った魔道士達を守るように前に出て来ていた。


「魔王様☆逃げて良いですか?流石のリリスちゃんでも下級と研究バカを守りながらは厳しいです☆」

「誰が研究バカかっ!まさか使うとは思わなかったが保険は有るのだよ…こんな事もあろうかと、な?」

得意げに懐から別の魔法球を取り出す魔王、その様子をジャンは冷めた目で見つめていた。


(そもそも、魔王様が一番に結界迷路に突入したから他の兵も慌てて入ったのだがな…外から攻撃するなりしていれば、結界の修復に魔力を使うのだから魔力切れを狙えたかもしれんと進言はしたが、魔王様の興味は結界迷路に行っていたからな…まあ、この規模の作戦ならばブースターもかなりの数が用意されている筈だ。魔力切れは狙えなかったと見てもいいか)


冒険者達が魔王の動きに気づき攻勢に出始める。

気勢を上げ、突撃して来る冒険者達にリリスとジャンは迎撃の姿勢を取る。


「さあ、来い。出番だぞ」

自分達と向かって来る冒険者達の丁度間程に魔力を込めた魔法球を投げる。

出現したのは転移方陣、そしてそこから出て来たのは魔族兵を引き連れたチャンター将軍だった。


「何時呼ばれても良いように待機はしておりましたが…まさか呼ばれた先にいきなり敵とは思いませんでしたぞ?」

副官が「何してる!迎撃準備急げ!!転移方陣を守れ!」と指示を飛ばす中、チャンターは戦斧ディスグロウを横薙ぎに振るい突出してきた冒険者達を吹き飛ばした。


「チャンター、リリス、祭壇に向かうぞ。俺様は呼び出し準備に入る、遊んでも構わん。ジャン貴様はチャンターの指揮下に入れ相方と共闘でもしてやるがいい」


「御意に」

迫る冒険者を吹き飛ばしながら返事を返すチャンター。


「えー面倒臭い☆」

そう言いながらも大剣を構え直すリリス。


「…ハッ!」

(相方か…下級の中では腕が立ってバカだから盾役には丁度良いと思って使ってたんだがな。実力主義のチャンター将軍の部隊で何処まで行けるか…実戦の多い部隊だ俺より早く中級に上がるかもしれんな)

次々と転移方陣から出て来る魔族兵の中に冒険者に切り掛かるジューデを見つけ、そんな事を考えるジャンだった。




『勇者様御一行』side


「あちゃあ…狙撃失敗だ。やっぱりゲーム仕込みじゃ無理が有ったかな?皆さん、突撃準備お願いします。隙を作れればもう一発…」

まるで銃のように構えた白銀の杖を下ろしながら冒険者に指示を飛ばす『聖人の勇者』

その姿はまるでこちらの冒険者と見間違うほどに馴染んでいた。


そしてその姿は『逆星の勇者』達には異様に見えた。

「ど、どうして…どうしてそんな命令が出せるんですか!?その一言で「ハイ、ストップ!」…」

「その先は言っちゃ駄目だよ。ともちゃん、日和ちゃん、瀬名ちゃんに何が有ったのかは知らない。けど、ここに居るなら打倒魔王だよ?それが出来ない勇者はどんな功績があってもこの世界じゃ『イラナイ』者なんだから。それに私は大人だからね?子供を守らなきゃ」

改めて白銀の杖を銃のように構え魔王の隙を狙う『聖人の勇者』田中雛子であった。

ちなみに、逆星の勇者のレディースモドキ田中巴の実姉でも有る。


「それと北条くんはどうしたの?呼びにいったガナさんは?」

「姉さん…」

拳を握るなんちゃってレディース田中巴。

「……」

俯く委員長こと間中日和。

「……」

泣きそうな顔をしているツインテール少女こと合田瀬名。


「私が説明するよ」

巴は語り出した、北条の末路を。


他国でもパレサートと同じように好き勝手やった北条、勇者を盾に女を犯し、奴隷に貶めた。

王城に苦情が殺到し、投獄される事になったのだがそんな時にマシマス・ガナが来て召集。

それでは収まらないという事で、ガナが代わりに投獄されてしまったのだ。

こちらに向かう際の馬車の護衛に女性が混じって居て北条の被害者だったという。

闘技都市まであと1日という距離で北条を刺し、自分も自害したそうだ。


委員長達の目の前で。


全員で帰る事を目標に頑張ってきた委員長、間中日和。

気が弱いツインテール少女の合田瀬名。

見た目レディースの田中巴。

高校生という多感な時期に『クラスメイト』が目の前で死を迎え、殺した相手も自害するという出来事に耐えられるほど彼女たちの心は狂ってはいなかった。


この三人が『殺す』ために武器を振るうようになる日は来るのだろうか?

そんな日は来ないほうが良いのだが…


Sideout




一南side


俺達は、ようやく冒険者用の出入り口からコロシアムに出たのだが…

コロシアムの猛者、高ランクの冒険者、警備隊とそのテイムモンスター、魔族兵…そして将。

まさに乱戦。

魔族兵の練度が高い…将が居る分魔族が優勢か?パレサートのギルドマスターも出てるのだろうがこの状況じゃ大規模な魔法は使えんし、ハフロスは何処に居るのかすら分からん。


「…魔王は何処だ?」

「あそこじゃな、ほれ、あのピンクの髪をした角の生えた魔族じゃよ」

アレか…何で白衣?いや、注目すべきはそこじゃない。

将達の守りを抜けた冒険者に囲まれ攻撃を受けている筈なのに意に介して居ない、衝撃は通るのかハンマーを持った冒険者の攻撃を受け体勢が揺らいでは居たが、左手を軽く振るだけでその冒険者を切り刻んでいた…イメージ魔法か?


コロシアム中央に有る祭壇に向かって悠然と歩く魔王達…止まってる場合じゃねぇな。

「サウス、先行して魔族兵を減らせ。将と魔王には触るなよ?「ガウッ!!」ハチカファ、ある程度進んだらマキサックとアリーナンあと腐敗勇者を降ろしてアイリンと下がれ」

「でも~…」


「でもじゃねぇ。怪我したら治してもらわにゃ成らんのだ、それにチビーズが乱戦の中外に出たら戦闘どころじゃ無くなるんだよ。俺が」

まあ、それは大丈夫だと思うが、アイリンは王女だあまり怪我をさせたくない。

腐敗勇者?本懐を遂げるんだ、問題ないだろ。


「行くぞ」

各々が武器を構え乱戦の中へと突撃するのだった。



「シッ!!」

長槍に組み立てた『可変両槍(カヘリョソ)』を振るい魔族兵を屠る。

目指すはコロシアム中央の祭壇、魔王より先に着く必要が有る。

俺の隣には若虎黄助にしがみ付いた腐敗勇者の姿がある…魔王相手にはどうしても連れてく必要が有ったんだがクロハが乗せるのを嫌がったため、急遽黄助に乗る事になったのだ。


「ほうわっ!?落ちる!!落ちちゃうってば!?」

近づいてくる魔族兵を鞭で薙ぎ倒すも腐敗勇者が乗っているため、爪と牙が使えない黄助は決定打に欠けていた。


「もう少しなんだから、ちいと静かにしとけ!ん?」

突然真上に影が差す。

「散開!」

後ろから付いて来るルナとソルファにも聞こえるように大声で言い放ち、クロハの腹を蹴り影から逃れるようにその場を離れる。


次の瞬間空から女の子が!

ズガァァンと轟音を立て地面に大剣を突き刺す女の子…


「もー避けちゃ駄目でしょ☆」

青い肌に別物の力、将か?将だろう、将なんだが…なんだろう存在がイラッとする。


「取り敢えず、死んでくれるとリリスちゃん嬉しいな☆」

大剣を引き抜きながらそんな事をのたまう将。


…駄目だ、生理的に受け付けないタイプだ。

かといってスルーできる状況でも無いか…面倒くせぇなぁ。


「あ、ひっどーい☆リリスちゃん見てそんな嫌そうな顔…テメエから殺してやろうか?あ゛?」

うわ、ひどい二面性だなコイツ。


「イチナ、コヤツは任せて先に行け」

ルナがマリアから降り尻を叩いて下がらせながらそう言った。


「え?イチナ?コイツが…」

ん?何か俺の名前を聞いて将が驚いてんだが…まあ、良いか。


「良いのか?コイツ将だぞ、多分」

「かまわん、それに50年前の決戦時にはおらなんだ奴じゃ。新しい将ならば50年前の将と比べてやろうと思うての?ほれ、さっさと行かんか!」

ルナに怒鳴られ俺とソルファ、腐敗勇者は気を付けろとだけ言ってその場を後にした。



一南の後を追おうとするリリスにファルナークは大剣を一閃、リリスの動きを止めた。


「…もーおばさんのせいで逃がしちゃったじゃない☆死んで償ってね☆」

殺気を放ちながらも笑顔で大剣を構えるリリス。


「クフフッそりゃすまんかったの。お詫びと言ってはなんじゃが、我の大剣思う存分、喰らっていくがよい」

ルナも大剣を背中から抜き放ち構える。

同時に地を蹴り、ぶつかり合うルナとリリスであった。



ルナの居る場所から轟音が響く…大丈夫かねぇ?

まあ、こっちもあんまり余裕が無いんだが。

視線の先には魔王と老将、それに取り巻きの魔族兵。

対するはギルドマスターと冒険者達それに委員長達か?北条はどうした?それにアレは…


「…社長?」

いや、チラシの字とか引越し業者とか色々ヒントは有ったよ?

でもやっぱこの目で見るまではどうもなぁ…しかし、杖を銃のように持って何の遊びですか?


「…イチナさんは、アンナさんと他の勇者様と魔王を。僕はギルドの皆さんと将を足止めします」

俺の返事も聞かぬままに、ジャスティごと将に向かって突撃して行くソルファ。


「おい!…チッ、黄助、腐敗勇者を降ろしたらクロハと共闘して魔族兵を潰せ。魔力がヤバくなったらクロハと一緒に下がれよ。行くぞ」

バックルに魔石を入れ黄助に魔力を供給する。


魔王は鼻歌を歌いながら向かって来る冒険者をあしらっていた。

可変両槍(カヘリョソ)』を次元袋にしまい、クロハの首を撫でてから飛び降りる。


「フンフンフーン、ん?また冒険者か、いい加減うっとうしいぞ?」

「そう言うな、せっかく急いで来たんだ。遊んでくれ、な?」

刻波に手を掛けながら殺気を放つ。


「…え?何これ怖い。貴様、人か?」

…あれ?殺気強化のディスカイネくんは持ってないよ?

なのになんで魔王に人かどうか聞かれてるのさ俺、ちょっとへこむんだけど。

まあ、そんな事より気になるのが、アホな事を言いながら俺の構えに反応した魔王なんだがね?



勇者side

「え?イッチー?何で?」

雛子は混乱している!

「姉さんの言ってたイッチーって甘坂さんの事だったのか…」

「うぁ~酔ったぁ…あ、パレサートの勇者さん達ね?俺様王子がきっと隙を作ってくれるから頑張ろう!」

「高松…安奈?」

「モデルさんです…」

勇者達は混乱した!


Sideout



「俺が人以外に見えるなら、その目は節穴だなぁ。ガラス玉入れた方がまだ良いんじゃねぇか?」

取り敢えず軽く挑発してみた。


「フン…俺様の目が節穴だと?視力は2.0だ馬鹿め」

…なんか思ってた反応と違う。

凄いアホっぽいぞコイツ。


「おい、今のは笑う所だろう。全くこれだから人種は」

「どんな理由で種族に対して呆れてんだよテメェ」

取り敢えず今のうちに足に氣でも溜めとくか。


「で?冒険者。貴様は俺様の前に何しに出て来たのだ?下らぬ話をしに来たのではあるまい?」

不敵に笑みを浮かべ余裕の表情、そりゃそうだわな、俺の剣が効かないかも知れんのだ。

その余裕も分かる、対面してるだけでピリピリと肌に刺さる魔力。

コッチが攻撃しても傷一つ負わせられない可能性の方が高い、俺は勇者じゃないからねぇ。


聖なる魔力でしか倒せない、それは『殺せない』って事なのか、『傷すら付けられない』って事なのか…まあ、どっちにしろやることは変わらないが。


「ああ、そうだな…」

煙草を一本取り出して火を着ける、俺は紫煙を吐き出しこう告げた。


「テメェを斬りに来たんだよ」

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