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猫守紀行  作者: ミスター
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闘技都市

10万pv突破記念に1話投稿です。

これからも頑張りますね。


byミスター

結局、アイリンの部屋での皆への意思確認は、俺が今更何言ってんのコイツ?みたいな目で見られるだけで終わった…

俺、間違った事してないよね?相手は魔王だよ?

どの程度強いのかは知らんが、勇者にしか倒せない世界の脅威だろ?…解せん。


「み~♪」

そんな事を考えていると、蝶っぽい何かを見つけた白が羽を生やして飛んで行く…今は大人しくしてろな?


「み!?」

猫持ち状態で飛んで行こうとする白の胴体を掴んで『クロハ』の上に戻す。

そう、俺達は今闘技都市に向かって疾走中なのだ…


あの後、各自準備が有ると部屋を後にし、俺はアイリンに「えと、お留守番お願いします」と頼まれ了承した…何で了承したかって?その時はそれ位問題ないと思ってたが、後になって自分の部屋に戻ればよかったと思ったね。


部屋の中を駆け回るテン、後ろを転がるチビスライム。

大分良くはなっているがぐったりとした黄助に、あくびをするサウス。

構って構ってと俺の足にすり寄ってくる白、当然構い倒してやった。

サウスが居れば当然パー子も居るし、部屋の隅にはアリーナンが『ディスカイネ』に白への愛を説いていた…


印象的だったのがディスカイネだ、沢庵かと言いたくなるほどクタッとして全体が黒かったはずの短槍が、半分老人のようにしわがれ、白くなっていた…本当に武器かと疑った位だ。


俺が目をむけるとまるで助けを求めるようにビチビチと跳ね回っていたのが可哀想で、可哀想で…取り合えずディスカイネに愛を説いている間はアリーナンが大人しいので握られといて貰ったのだが。


今、闘技都市に向かって居る事は言ったな?

ディスカイネの事だが王都を出る頃には、もう既にアリーナンの杖と化していた。

前魔王の魔石が使われた最上級の魔武器、使い手次第で形を変える『ディスシリーズ』の一つ『ディスカイネ』

見つけた当初の威圧感はすでに無く、感じるのは諦め、黒かった色はまるで燃え尽きたかのように真っ白に変色していた…流石、アリーナンとしか言えない。



「ガウッ!!」

先行して走っていたサウスが何故か戻って来た。


「……おーぷん…こんばっと…血煙温泉…殺人試験…」

「取り敢えず、もう始まってんだな?」

何だその血煙温泉ってのは、どっから出て来た?

それに殺人試験って…まあ、腐敗勇者には一種の試練かもしれんがな。


俺はクロハの上で『可変両槍(カヘリョソ)』を長槍へと組み立て、右手で持って脇で固定する。

「黄助、何時でも出れるようにしとけ…さあ、行こうか」

「うむ」

「はい!」

「がぅ」

「ガウッ!!」

「……うぃ…まどまあぜる…」

…せっかくヤル気を出してんだから、ヤーくらいにしといてくれよ。

あと、俺は男だ言うならムッシュにしろ。


「み!」

「ぴ!」

「……!?」

「チビーズは馬車の中で応援な?」

ちなみにテンの脱走以来、テンはシャツの胸ポケットに収納している…

ボタン穴から嘴を出して穴を広げようとしたり、中で羽を広げようとしたり、突然つついてきたりと大人しくしている事が無い。

チビスライムは左肩に乗せているのだが、たまに背中をつたってクロハの尻の方へ行ったりと走行中は落ちないかと中々ハラハラさせられた。


取り敢えずチビーズはアイリンに丸投げするとして、アリーナンを早めに放流しないと駄目だな。

…こっから走らせるか?


チビーズの不満げな鳴き声を無視しながら、敵に悟られない場所まで近づく事にしたのだった。




「何だこりゃあ…おい、ルナ。闘技都市に『防壁』は無いんじゃなかったのか?」

本来の闘技都市の姿は知らんがコレは違う。

真っ白な巨大なドーム…これが本来の姿だったらある意味スゲェ。

そして眼下には乱戦、なんてものは無く冒険者の姿すらない。


そしてパー子、この光景を見て何であのセリフが出た?


「そうなんじゃが『アレ』は…「いい加減に降ろしなさいよ!イチナ!!白たんとのふれ愛が無くなるでしょう!!?」…喧しいのう、イチナよこのまま騒がれたらせっかくの位置取りが台無しになる。降ろしてやれ」

まあ、確かにうるさい。


白達を馬車に置いてくる時にアリーナンを『可変両槍(カヘリョソ)』の石突に引っかけ外に運び出したのだが、そのままぶら下げたままだったのだ。

何で降ろさなかったのかって?その場で降ろしたら白に向かって突撃するだろ、コイツ。


「はいはい、ほら降ろしてやるから大人しくしとけよ?」

刃を下にして担ぐように持っていた槍に付いた荷物(アリーナン)を降ろす。

降ろした瞬間アリーナンは「白た~ん!!」と馬車に向かって走り去るのだった。


「……まあ、良いか。それで?『アレ』は何なんだ」

マキサックにアリーナンが来たら御者席にって言ってあるし…

ハチカファにゃ悪いが、アリーナンには御者の助手でもしてもらおう。


「結界じゃよ、しかもかなり時間を掛けて作られた強力な結界術じゃ」

時間を掛けてねぇ?


「まあ、予知の事もあるし時間は有ったのかもしれんが、都市をすっぽり覆えるほどの結界を張れるもんかねぇ…」


それに…

「何で魔族は列を作ってんだよ、アトラクションじゃねぇんだぞ?包囲して弱いとこでも見つけりゃいいのに」

遠目で見た感じ、お行儀よく列を作って順番待ちをしてる魔族兵達…待ってれば入れんのか?


「もしかして『結界迷路』かの?ハフロスが来とるんか」

「何だその『結界迷路』ってのは?それにハフロスはシェルパのギルドマスターだろうよ、何で居るんだ?」

まあ、名前からして結界で作った迷路だろうが、魔王相手に通じるもんなのか?


「あれが結界迷路ですか?僕も話だけは聞いたことが有りますけど…あ、近くに魔族兵は見当たりませんでした」

ソルファが付近の見回りから戻って来た、肩には『魔量斧槍(マリフソ)』を担いで、ジャスティに乗っている。

防具も新調したからか動きが軽快だ、ミスリルのフルプレート…幾らしたんだか。

本人曰く「軽すぎて頼りない」そうだ。


「うむ、ご苦労。結界迷路についてじゃがの、ハフロスしか使えん結界術での?あ奴は数少ない『契約と執行の加護』を持つ、それを使って条件を付けるんじゃ『壁を壊すと入口に…』とかの?条件が弱ければ沢山付けられるし、死など強い物は1つが限度だと言っとったかの。時間稼ぎには最適な魔法じゃよ、並んどるのも結界迷路に入るための条件の1つなんじゃろうな。何時から張っとるのかは知らんが、これなら軍も間に合おう」

コレ利用したら魔王も殺せるんじゃねぇか?


予知で魔王が来る事は分かって…無いのか?他国のギルドマスターに協力を要請する位だし教えてても不思議はないんだが。

まあ、将や兵それに魔物も居るし足止めがベストなのかもしれんが。

微妙に乱戦を期待してたから拍子抜けだ。


まあ、こんな物で魔王をやられちゃ…

「面白くない…じゃなかった、俺達も中に入れないじゃねぇかアイツらと一緒に順番待ちでもすんのか?」

そんな事なら、順番待ちの魔族兵を斬り散らして戦力を削いだ方が有意義だと思うのは俺だけだろうか?


…いや、俺等も急ぎだしあまり時間は喰いたくはないんだがね?


「まあ、あ奴の結界迷路には冒険者用の出入り口が有るから大丈夫じゃよ」

…スタッフ用の出入り口なのか?本格的にアトラクションだな。

しかも敵が列を作る程の大盛況だ…何かもう面倒になって来たよ俺。


「面白くないって、イチナさん…」

「本音がポロッと零れただけだ気にすんな。パッと見魔王やら将やらは居ないがもう中に入ったのかねぇ…並んでんのが200人程度だし、もう相当数中に入ってんだろ。ちいと急ごうか」

俺達は恐らく有るであろう、冒険者用の出入り口を目指して動き出すのだった。





魔王side


「フハハハッ!!見ろジャン!素晴らしい結界術だ!己の加護と結界術式を組み合わせた加護結界。しかもこれは結界迷路、あの『結界王』が来ているぞ?それにかなりの数の条件を付けているようだしな。良いぞ、実に良い」

(術式改造も無しにここまでの物を生み出すか!素晴らしい!!)


「その調子で何度入口まで戻ったとお思いですか?少し落ち着いてください」

白一色の結界迷路の中を興奮しながら歩く魔王とそれを諌めるジャン。

そしてその後ろには魔王の護衛として将が一人付いていた。


「そうですよ魔王様、この下級の言う通り自重してくださいね~?先に進めませんから☆アル様を誘惑して食事に行く予定なんで、早く終わらせましょうよ~☆」

このちょぴっり頭の悪そうな語尾を付けて喋っているのが魔軍の将の一人リリス・マキュリーダ。


ゴスロリの服に青い肌がミスマッチだ。

スタイルは140cmほどの体に『スイカ』を胸に装備した極端な体形をしていた。

髪の色は赤、同色の瞳を持ち、髪型は頭の横にお団子を二つ付け纏めている。

ちなみにアル様とは同じ魔軍の将のアルケイド・ガンマの事である。

今までアルケイドを誘惑した回数は数えきれないが、全戦全敗である事だけは分かっている。

武器は背中に背負った大剣『ディスジェミリナ』だ。


(魔王様半分、リリス様半分で計十回は戻っているのだがな、自分の事は棚に上げとはこの事だな…ん?)

「魔王様、出口のようです」

(しかしかなりの数が入ったはずだが誰とも会わないとは…術者は入った者の位置を把握しているのか?俺達が戻されて行った時も、戻って来ていた者は少なかった。もし把握されているとしたら、何故『出口』を出す?罠か?)


「何だと?俺様はまだ全ての条件に触れておらんぞ?それに回り切って無い所もあるのだ…戻るぞ!!」

(久方ぶりに美しいと思える魔法なのだ、これはじっくりと観察して我らの力にせねばならんだろう!)

考えている事はまともだが結界を見た所で術式が分かる訳でも無い、ただの趣味である。


「そういう確認作業は魔王様がやらなくて結構です。条件にしてもどんな危険な物が有るかも分からないので、やらせる訳には行きません。さあ、出口に向かいましょう」

(この魔王、目的を忘れてるんじゃないだろうな?…もし罠だとしても魔王様には勇者で無ければ敵わない、それにリリス様がおられるのだ、問題は無い…筈だ)

自分の考えに、思わず顔を顰めてしまうジャンであった。


「そうですよ魔王様☆ほら、この下級も嫌そうな顔してるじゃないですか☆ほらほら行きましょ~☆」

(これ以上こんな所で時間を喰ってたら、まーたアル様にフラれっちまうだろうが、ボケが!!ただでさえ『イチナ』とか言うのにご執心なんだ、さっさと進めやぁ!!)

よいしょ☆よいしょ☆と声にだしながら魔王の背中を押していくリリス。

考えている事と掛け声が全く合っていないが御愛嬌という事で許して欲しい。


「まて、リリス!押すな!俺様はまだ……」

そのまま出口の外まで押しやられる魔王、二人が消えた出口に呆れたような視線を向けて後を追うジャンだった。


Sideout




一南side


「あそこか?冒険者(スタッフ)用の出入り口ってのは?」

まあ、見張りも立ってるし、あそこなんだろうが…納得いかねぇなぁ。

魔族たちが列を作っていた場所のまるっきり裏手なのだが、馬車が2台すれ違える様なデカい穴が結界に開いていて気づかない訳が無い。


「じゃろうな、しかし思い切った大きさじゃの。どうせ条件で『魔族進入禁止』とか掛けとるんじゃろうが…軍が来た時のためかの?」

しかし、軍か…

予知で先が分かるぶん、先を制することが出来るが、無駄に戦力の消耗をしない様に動く事も出来る。


充分に勇者が育ってない今だからこそ、出てこないという選択肢も生まれるのだが…

ルナ達が予知巫女から聞いた魔王の目的が拙い。

なんでも力を奪う魔法の実験らしいが、その対象がガトゥーネらしい。

神が間に入るとその場面が抜け落ちるらしく結果が曖昧だが、だからこそ対象が分かったともいえる。

その後の魔王に関する予知が抜け落ちるとなれば、実験は成功したのだろうな。


だからこそ、魔王を魔王として討伐できるのは今しかないのだが…『切り札』が集まらない。

各国の勇者は魔国に進行中で中々連絡が取れず、難航しているようだしなぁ。


何より…

「…俺より先にガトゥーネとやり合おうってのが気にいらねぇ。急ぐぞ」

俺達は冒険者用の出入り口を通って魔王の目的地である祭壇へと急いだ。

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