有言実行…成らず
「くぁ~~暇だねぇ…」
俺は今、王城の馬車置き場でアニマルズとまったり過ごしている。
サウスを枕に横になり腹の上には白が陣取っている。
黄助はテンの脱走以来、監視役になっている。
ここに居るメンツは以下の通り。
白、サウス(パー子装備)、黄助、テン、クロハ、チビスライム、マリア(ルナのバトルホース)、ジャスティ(ソルファのバトルホース)、馬車引きのバトルホース2頭(名前は無い)、マキサックだ。
…うん、結構いるな。
「…パー子はともかく、お前は何でここに居るんだよ」
「俺、堅苦しいの駄目なんすよ」
そう言って腹筋にいそしむマキサック、暑苦しい事この上ない。
「チナさんこそっ!何でっ!行かなっかっ!たんっ!すか?」
喋るなら腹筋を止めろ。
「ハンマルクの事も有るしなぁ…それに王族全てがシェルパのように変態揃いだとは思えん、俺みたいな粗野な人間はお呼びじゃないだろうよ」
面倒事は避けるに限る、避けれるものはだがな。
こっちの世界に来てからあんまり避けられてない気がする、それはそれで退屈しないで良いんだがねぇ。
「……イチナは…面倒作りの…職人…」
やかましい、どんな職人だそれは、素直にトラブルメーカーでいいだろうが。
それにお前も結構なモンだと思うぞ?
「……誉められて…しまった…」
誉めてねぇよ…
テンが球体になったチビスライムで玉乗りしているのを見ながら、煙草を銜える。
火はつけない流石にサウスが近すぎる。
俺の腹の上で丸くなる白を撫でながら、ルナ達が戻って来るまでまったりと過ごすのだった。
その頃ルナ達は…
ババミル大臣に案内され謁見の間で王の到着を待っていた。
中は豪華な造りで10人程の兵士が謁見の間を守っている。
「のう、ババミル大臣よ…我等は何時まで跪いておればええんじゃ?王はまだ来んのか?」
仮にも王族であるファルナーク、そろそろ我慢の限界のようだ。
その時突然後ろから声があがる。
「良い尻だ!!!」
静まり返る謁見の間、慌ててババミル大臣が声を上げる。
「ジャ、ジャファン陛下!なぜ兵士の格好を!?おふざけはお止め下さいと何どもご注進したではありませんか!!」
「バカ者ぉ!!!こんなに良い尻達を眺めないで何を見ると言うのだ貴様は!!!!」
「ジャファン陛下ぁ!シェルパから王女と勇者様が来られているのですから、ご勘弁してください!?」
ババミル大臣に泣きが入るのが見ていて痛々しい。
ルナ達は一斉に体を引く、一南が居たらこいつもかと呆れるか、問答無用で拳を叩き込むかのどちらかだろう。
「ほう、勇者様と王女様か小ぶりな尻だが中々…む?ババミル、人払いをせい」
しばらく視線を彷徨わせフミーニャで固定したジャファン王、どうやら気づいたようだ。
カテボニが自分に向かって大きく手を振っているのに軽く手を挙げ返しながらババミル大臣にそう告げる。
「は?いやしかし「命令だ、早くせんか」…畏まりました」
手を二度ほど叩き謁見の間にいる兵士を外に出す。
決して自分でやれば良いのにとは思っていない。
「さて、人払いも済んだ、何故今捜索中の『予知巫女』がここにおるのか説明してもらおうか」
扮装していた兵士の鎧はそのままに、兜だけを取り玉座に座るジャファン王。
その雰囲気は王と言うよりも戦士の風格だ。
歳は54歳。
顎髭をたくわえてはいるが手入れはしておらず伸び放題で、髪型もどこか大雑把である。
髪の色は深緑で瞳は茶色、兵士の鎧がよく似合う王様である。
ルナはガナから預かったブローチと共に書簡をババミル大臣に渡す。
ババミル大臣から書簡を受け取り目を通すジャファン王、読むにつれて次第に口元に好戦的な笑みを浮かべ始める。
「事情は分かった。して、この書簡に書いてあるイチナなる者は何処だ?マシマスがこれ程念を押してまで危険性と有用性を訴えて来たのは初めてだ…予知巫女の礼もしたい何処におる?」
その書簡に何が書いてあったのか、ジャファン王は一南に興味を持ったようだった。
「イチナならば恐らく馬車置き場であろうが、行くのはお勧めせんぞ?手を出す積りなら尚更じゃ。ハンマルクの坊主のお蔭で手を出す輩は本気で潰すじゃろうしな」
(もっとも、ジャファンの坊主にどうこう出来るとは思えんがの、問題はその後じゃ王を潰したなど笑い話にもならん、逃げても『国』が追ってくるじゃろうな)
「……どこかで見た尻だと思ったらファルナーク殿でしたか。思えば幼少の頃にファルナーク殿の尻を見てから尻好きになったのでしたなぁ…いや、お懐かしい」
この王、顔より尻で人を覚えるのだ。
そして、そんなカミングアウトは誰も望んでいない。
「ジャファン陛下、そんな事よりも予知巫女が戻られたのならば、あの件の予知をもう一度お願いしたいのですが。イチナなる者への報奨はこちらで出しておきますので」
今にも謁見の間を飛び出しそうなジャファン王にストップを掛けるババミル大臣だった。
「むう、仕方ない。フミーニャ「……負けます」…結果は変わらぬという事か?」
「……はい、恐らく教会都市はすでに陥落しているでしょう。そして次は…」
「このパレサート大陸という事か…お客人に聞かせる話でも無い。後にしよう」
教会都市が陥落したと聞いてソルファ達はかなり動揺した、ルナだけが冷静に事実として受け止めていた。
「……いえ、勇者様にも関係のある話です、聞いていただきましょう」
「え、私?」
今一のみ込めて無い勇者高松安奈。
当然と言えば当然である、この勇者の知識量は『腐』に偏り、一南よりもこちらの世界の事を知らないのだから。
この場に居る全員の顔を見渡し、予知巫女であるフミーニャ・パニャックは語り出す。
「……まず王都『シーバンガ』は無事です。狙われたのは教会都市『カナターマ』、恐らく王都からの応援も間に合わなかったはずです。詳しくは報告を待っていただくとして、問題はこれからです…先ほど王が言われたように、このパレサート大陸にも侵攻してきます」
「それは魔軍がかの?じゃったらパレサートの勇者を呼び戻せば良いではないか。多少なりとも戦力になろう」
「もう既にマシマスを向かわせている。予知巫女を確保せねば、細かい日時が分からんのでそちらを優先したが」
「……この侵攻で狙われるのは闘技都市『ガルテウ』です。そして『魔王』が出てきます…」
「闘技都市じゃと!?それに魔王か…イチナがこの場におらなんで良かったわい」
ジャファン王がどういう事だと尋ねるとルナが呆れた様子で答えた。
「あ奴の目的が闘技都市にあるんじゃ。パレサートに有ると知らん筈じゃし、聞かれたらすっ飛んで行くじゃろうよ」
(流石に神と戦う為とは言えんしの)
「……そうですか、やはり言わなくて正解でしたね。この予知が見えなくなると困りますから」
「フミーニャよ、見えなくなるとはどういう事だ?」
フミーニャは無断で城を出た経緯についてジャファン王に説明する。
「何と…そのような事が有るのか?何者だそのイチナというのは…」
パレサートの強みでもある予知を潰せる男の出現に思わず天を仰ぐジャファン王。
一南自体は多少、いや結構?剣の腕が立つだけの異世界人である。
白の拉致に巻き込まれたと言うイレギュラーではあるが。
ジャファン王の疑問に答えたのはルナだ、ソルファ達は空気と化している。
王族相手に気軽に発言できる筈も無く当然かもしれないが。
「魔軍の将相手に無傷で生き残る位の剣の腕を持っておるのは確かじゃな」
「何ソレ怖い…待て、先程ハンマルクと言ったな?まさかルァック・ゼイカ・ハンマルクの事か?」
「そうじゃが?どうかしたのかえ?」
やっちまったとでも言いたげに顔を手で覆い隠すジャファン王にババミル大臣が…
「そう言えば先ほどルァック・ゼイカ・ハンマルクが見えましたな、何をお話で?」
「研究用強制捕縛許可証…出してしまったんだが?」
ジャファン王の言葉に勇者以外の皆が絶句するのだった。
「ぶぇっくし!!…あぁすまん起こしたな、しかし遅いねぇ何してんだか」
咥えてた煙草がどっか行ったな…流石に探してまで吸う気にはなれん。
微睡んでいた俺のくしゃみで起きてしまった白がモニョモニョと腹の上で動く。
何時の間にかテンとチビスライムも俺の腹に乗っていた…あのくしゃみで無反応か遊び疲れたのか?
アホ毛をZの形にして鼻提灯を膨らませ、スライムベッドで寝るテン。
テンとチビスライムの上下関係はハッキリしているようだ。
「チナさん風邪っすか?駄目っすよ、お腹出して寝ちゃ」
お前じゃねぇんだから腹出して寝やしねぇよ。
「誰か噂でもしてんだろ、きっと」
「……イチナの…鬼ぐあい…についての論争…」
論争されるほど鬼じゃねぇよ。
「……戦闘時の…笑い方が…引き返せないレベル…」
「笑い方の問題っすか?もっとこう根本から鬼!って気がするっす!」
パー子はその言葉に、それだ!と言わんばかりにビシィ!と一指し指をマキサックに向ける…というか本人の前で話す事じゃねぇだろうソレ。
「お前等、喧嘩売ってんのか?笑い方はともかく、何だ根本から鬼って人間だぞ。俺は」
腹に白達が乗って無かったら、間違いなく拳骨を落としている処だ。
何だその信じられないって顔は…俺だって斬られりゃ血も出るし死ぬんだよ。
俺は良い笑顔で「喧嘩なら買うぞ幾らでも」と言ってやると。
「…例素羅は体が基本っす!」と言って会話をぶった切り、マキサックはそっぽを向いてスクワットをし始め、パー子は無言でサウスに顔を埋めた。
「元来、笑顔ってのは攻撃的なもんだろうよ、戦闘中に笑うのは威嚇の意味もあるんだがねぇ…」
いや、命のやり取りが楽しくて自然に出てくるのも有るがな?
独り言のように呟いて、自分で思っている以上にこの世界に順応している事に気づく。
……俺は平和な日本から来たんだよな、確か。
「まあ、帰るつもりは更々無いから別に良いんだが…住み続けるには魔王が邪魔だなぁ」
倒すべき神が居る、嫁候補も居る、白達も居る。
やるべき事と守るべき者がこの世界には有るんだからな。
腐敗勇者辺りを実戦で鍛えて魔王を倒してもらうか?
でも、出来れば一回は斬って見たい相手だよなぁ魔王はさ。
しかし、アレを戦線にぶち込むにしても、どの程度鍛えればいいのか見当もつかんのだよなぁ。
……やっぱ勇者全員生き残っての物量戦か?しかし、魔軍の将に勝てなきゃ意味も無い。
詰んでんなぁ、勇者様は…全員鍛える?無理だな、死亡予知されてる北条然り、委員長然り戦いに向いてない。
委員長はあの甘さが、勇者よりも食堂で働いた方がこの世界でやっていける。
北条は絶対的な強さに会ったら尻尾を巻くタイプだ、勇者より盗賊の方が向いてるだろうな、三下的な感じで。
その点、腐敗勇者は他の勇者とは、どうもベクトルが違う。
魔族兵相手は駄目だったみたいだがモンスターの人型相手は問題なく戦える。
まあそこは委員長も同じかもしれんが「経験値にな~れ!」と言って止めは刺さんだろう。
あのゲーム気分のまま鍛えられるだけ鍛えて、命を奪う感触に慣れさせるのも有りか?
「…ナさん!チナさん!お客さんっすよ!」
俺が対魔王キリングマシン作成計画を考えていたらマキサックから声を掛けられていたようだ。
「ん?誰だよ、一体」
「奇遇ですね、こんな所で何をしているのですか?」
……こんな所で何をしてるか、ねぇ…それはこっちの台詞だな。
そこに居たのは、ルァック・ゼイカ・ハンマルク。
15人ほどの騎士を引き連れこの馬車置き場にやって来ていた。
サウスに目を付けた貴族の研究者様だ、胸糞わりぃ。
視線は相変わらずサウスに釘づけ、まるで俺では無くサウスに話しかけた様だった。
「今忙しいんでな、用件は千年後にしてくれ」
そう言いながらテンのベットに成っているチビスライムを、遊んで欲しそうにつつく白を撫でる。
あ~忙しい、白を撫でるので忙しいなぁ、どうよ、大事な事だろ?スキンシップってさ。
ウリウリと頭、体、喉と撫でてやる、久しぶりに猫じゃらしを使ってみようか。
ハンマルクが居る事を忘れるために白を構い倒す。
「いやあ、今から探しに出る処だったのですよ、手間が省けて良かった。コレを見てください『研究用強制捕縛許可証』です。知りませんか?強制徴獣許可証は戦力になりそうなテイムモンスターを強制的に…主を殺すや魔力で上書きするなどして、騎士の物にするための物ですが、研究用強制捕縛許可証は研究用、引き剥がすのは同じですが、主は作らず研究を終えるまで捕縛する事を国が許可した証明書ですよ。あなたがあの時すんなりと渡してくれればこんな事しなくて済んだんですが…王もそのラピッドウルフの重要性を認識して戴いたようで、出して戴けましたよ」
俺は無言で立ち上る、白とテン、あとチビスライムが転げ落ちたが黄助にキャッチされていたので心配はない。
「駄目っすよ!?チナさん!ここは逃げの一手っす!」
逃げね、悪くないが出口はコイツ等の居る一か所しかない、仕方ないよなぁ?
「……パー子はそのままサウスに付いてろ。マキサック、白とテン達の護衛、良いな?」
「……うぃ…イチナよ…絶望を…味わわせてやるのだ…」
何のキャラだ、それは、まあ、絶望とは言わんが後悔くらいはさせてやろうか。
「ああ、眼つきが鬼になっちゃってるっす…了解っす」
マキサックがようやく目を覚ましてキョロキョロしてるテン達のもとに行くのを確認して、ハンマルクに声を掛ける。
「お前さんはあの時の言葉を聞いてなかったのか?言ったよな『手を出したら潰す』って…そんなもん持ち出して来たんだ、殺してくださいって事だよな?」
あの時のように漏れ出し膨れ上がるような殺気では無く、鋭く斬り裂くような苛烈な殺気…
それをハンマルクとお付の騎士達の首に目掛け叩き込んだ。
何人かの騎士はその場でへたれ込み、残った騎士も足が震え戦える状態じゃないのは一目瞭然だ。
肝心のハンマルクは歯の根がかみ合わず声も出せずにいた。
「さて…「そこまで!!」…何だオッサン、今は機嫌が最悪に悪いんだあっち行ってろ」
恐らく走って来たのだろう、ゼーゼーと息を乱した兵士のオッサン…走って?
この馬車置き場から殺気が漏れる様な真似はしてないんだがな、何者だコイツ。
「ハ、ハハ…なんという密度の殺気だ、一歩踏み入れただけで冷や汗が止まらん…余も腕に自信が有ったのだがな、砕けそうだ」
いや、無理すんなよ、直接当ててる訳でも無し、余波程度の殺気魔軍の将の方が強いだろうに。
「だから言ったじゃろうが、先に突っ込むなと。イチナ殺気を収めい、コヤツはこの国の王ジャファン・カルドラ・ドンジェ・シルバリアじゃ。研究用強制捕縛許可証の取り消しをしに来たんじゃよ」
俺はガリガリと頭を掻いて殺気を収める。
「その者の研究は我が国に欠かせぬものだ、殺させる訳にはいかん」
チッ、有言実行ならず、か…仕方ねぇ。
苛立ちを紛らわせるために煙草を取り出し火を着けた。
こっちに来て初めてまずいと感じる煙草だよ、くそが。
「ぷは~…チナさんの殺気はきつすぎるっす、思わず息止めてしまったじゃないっすか!」
…そりゃ、悪かったな
「……私は…サウスガードで…もーまんたい………比較対象がおかしい事に気づくべき…」
「何の事だよ?それより白達はどうよ?」
イカンな殺気が強すぎたか?これで白達に何かあったら目も当てられんな。
そう思ってマキサックの後ろの黄助と白達を確認する。
「み!」
「ぴ!」
「……!」
…お前等に何が有った?
白の上にテン、ここまでは良い偶に見る事だ、しかし今回はチビスライムも加わっている。
テンがチビスライムに半分体を埋めそのチビスライムが白の背中で甲羅のように体を伸ばしていた。
そのままスライムが白の胴体にベルトのように体を固定したと思ったら、白が羽を広げ飛びだした、猫持ち状態でのフライトのためテンの状態は想像がつくだろう。
「ぴ!?ぴぴ!?!?」
羽をバタつかせ姿勢を直すテン、ここに羽白らいだーテンが誕生したのだ!!
「……まあ良いか。オッサン取り消すならさっさとやれ、そのアホウは視界に入れたくないからな端に寄れよ」
ぴーぴー、みーみー鳴きながら俺の周りをクルクル回る白達、サウスも寄ってきて顔を足に擦りつけて来た…敵わんなぁ。
撫でてやるとパー子が「……撫で方…はこう…」と指導して来る、止めろ色々抜けて行くから。
「あれ?余は王のはずなのだが…」
そう言いながらもハンマルクを連れ、端の方で作業に取り掛かる王様だった。
「何その新形態!?私も乗せて!いいえ!むしろ白たんが乗って!!」
あまりの興奮に鼻の右の穴から『愛』が流れ出る。
やべぇ、遂に取り返しのつかないレベルまで駆け上りやがった。
いや、前から取り返しがついたかというと手遅れだった気もするが、まだ目を逸らせるレベルだったんだが…今のコイツはただの危険人物だ。
俺はアリーナンストッパーでも有るソルファに目をやる、すると口パクで「ムリです」と返って来た。
…よし、沈めて馬車に放り込もう、なるべく記憶を無くすように沈めよう。
「白、クロハの所に行ってな」
急行、その言葉がぴったりな速さでクロハの元へ向かう羽白らいだーテン。
「ああ~…イチナ…退きなさい」
おおぅ、白の新形態を目にして振り切れてんな。
後ろではアイリンやハチカファ、腐敗勇者などが完全に引いている。
「あー、取り敢えず…」
「なによ、手を退け…「沈め」おごぉお!?」
肩に手を置いてヘッドバットをかましたのだが。
乙女が出しちゃまずい声を出して沈んだな…
まあ、いいか、アリーナンだし、何時もの事だ。
アリーナンを俵のように担ぎ、俺達の旅馬車に放り込んだ。
「これで一件落着だ、後は宿だな」
「宿なら余が何とかしようではないか!もちろん契約モンスターやテイムモンスターもな?勇者と王女を迎えるのだからな、当然ではあるが」
…何ですと?ならそこは考えなくてもいいか、後は補給と武器屋だな馬上戦闘用に長柄物が欲しい処だ。
まあ、それも明日の事か。
ハンマルクの事で色々面倒臭くなったしなぁ…しかし、アリーナンを馬車に詰めた意味が無くなったな。
馬車から俺がアリーナンを取り出して俵担ぎにし、ソルファが黄助を抱きかかえる。
サウスの横を飛ぶ白達と王様に付いて行く俺達。
俺が一歩進むたびに怯えるハンマルクは無視して馬車置き場を出る。
「えと、闘技都市の事は言わない方がいいのでしょうか?」
「そ~ですね~その方が~良いですね~」
アイリンとハチカファの呟きは馬車置き場の中に消えるのだった。




