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猫守紀行  作者: ミスター
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王都『パレサート』

パレサート大陸の王都『パレサート』は大橋からクロハ達を走らせ5日の距離にあった。

夜に着き門が開いておらず、仕方なく野営をして翌朝王都に入るのだった。



俺達は王都の門兵に身分証であるギルドカードを見せる。


「冒険者か、そっちは契約モンスターか?…良いな癒される」

俺と一緒にクロハに乗ってる白と黄助を見て頬を緩める門兵。


「…問題ないな、後は馬車の中には誰が居るか改めさせてもらうぞ」

乗ってるのは腐った勇者とお子様姫に筋肉、あとひよことスライム。

…あ~予知巫女達が居るんだったな。

アイツ等もこの門を出てるはずだし問題ないか?


門兵が馬車に近づこうとした時、パー子を担当していた女門兵が応援を呼びに来た…


「カーン!助けて!この子の言ってる事が分からない!」

「は?他種族か?言葉の通じない奴なんて久しぶりだな」

…違う、違うぞ。

パー子は語録がおかしいだけでちゃんとこの世界の言葉を喋ってるから。


……イカンな門兵達がパー子に付き合ってたら何時までたっても町に入れん。


「そいつはパークファ、この王都に居たらしい。仕事で出てそのまま俺達と来たんだ、馬車には護衛対象の王女が1人と俺の仲間が1人、親(分裂元)から預かった仔とその友達…あとシェルパの(腐敗)勇者様が1人、出戻りが2人だ」

俺の言葉を聞いて門兵達は動きを止めた。


「…王女様に勇者様だって?じゃあアンタは勇者様の護衛なのか?Cランクなのに」

「カーン、時姫も居るから本当にそうかもしれない…」

どうするか相談し始める門兵達、取り敢えず真偽の確認が先じゃないか?


俺の護衛対象は王女だって言ってるだろうに。

しかし勇者に護衛が付くってのは、なんとも変な話ではあるなぁ…

そんなんで委員長達は強くなってんのかねぇ?


ちなみに家は厳しく…は無い。

基本戦闘ではアイリンと一緒に後衛だ…うむ、あまり変わらんな、弱ったモンスター相手に槍の練習をさせる程度だ。

これからは前線に押し出してみようか。


「今連れて来るから待ってろ」

「いや待て、確認できる人間を城に呼びに行かせる。ショノ行って来い」

えっ私?と言いながらも詰め所に行って交代を告げ、城に走る女門兵だった。


「しばらく端に寄って待っていろ、入ってくるのはお前等だけじゃないんだからな」

まあ、そうだわな。

俺達はしばらく門の端に寄って城下に入って行く人たちを見ながら待機する事になった。

しかし…シェルパでは見なかった他種族が多いな。

鹿のような足の女性や羊の顔をした人まで様々だ。

残念ながら猫耳はいない様だ。




馬車から飛び出してきたテンとチビスライムが白に喧嘩を売って奮戦しているのを横目に、俺は5本目の煙草に火を着けた。


「ッフー…そろそろ来てもいいんだけどねぇ」

たかが呼びに行くぐらいで、何を手間取ってんだか…

白達に人だかりができ始めたんだが…いい加減来てくれないかねぇ。


「そうですね…あ、来たようですよ」

ソルファの指差す方向には豪華な『馬車』…王族でも乗ってんのか?ちいと成金過ぎるだろうよ。


まあ、そろそろテン達には大人しくしてもらうか。


「黄助、頼む」

「がぅ」

クロハの上からふわりと飛び降り人だかりを上手く避けながらテン達を捕獲する。

うん、これが黄助だよな…食い過ぎ黄助も和めるが。


白を咥え、テンとチビスライムを鞭で捕縛し戻って来た黄助、相変わらず見事な手並みである。


「有難うな、そのまま馬車まで頼む。ソルファ、ルナ、ちいとアイリン達を呼んでくる」

そう声を掛け黄助と共に馬車へと向かう。


馬車の扉を開けて黄助達を中に入れ、アイリン達に声を掛けようとする…


この旅馬車は加護が掛かっていて中は恐ろしく広い。

俺達全員が雑魚寝しても余裕があるくらいだ。

そこに王家御用達の家具やら寝具やら持ち込んでいるため下手な宿より居心地が良い。

まあ、男の俺とマキサックは此処で寝たこと無いんだが…あとパー子のベッドはサウスだし。


「そう、そこでこの紐をここに通して…フミーニャさんもカテボニさんもお上手です!」

ああ、編み物やってたのか。


「みーちゃん!誉められちゃったね!」

「……ええ、面白いですね編み物って」

お楽しみのとこ邪魔するのも悪いんだが…


「アイリン、ちいと来てくれないか?パレサートに入るのに王女と勇者だって証明して欲しいんだよ…腐敗勇者は何処だよ?」

いや、見失うほど広くは無いから分かっては居るんだがねぇ。


「私はここだぞ~!!」

マキサックが突っ立ってんのはおかしいと思ってたんだが…アイリンに見えないように隠してたんだな、悪影響の塊(絵を描く勇者)を。


「マキサック、お疲れ…いい仕事するじゃねぇか」

マキサックに近づいて肩を叩いて労ってやる。


「いや~、流石に駄目っすよアレは…俺じゃ無くてもこうすると思うっす」

ですよね~…っとこんな事をしてる場合じゃ無かったな。


「ほら行くぞ、もう城から人が来てんだ、待たせちゃ悪い」

「は、はい!」

直ぐに動いたアイリン。


「え~、もうちょっとで描き終わるのに…」

ごねて中々動かない腐敗勇者。

……仕方ないエスコートしてあげよう。


「さあ、行きましょう勇者様」

そう言いながら襟首を持って引きずり馬車の外へ出るのだった。




馬車から降りるとルナとソルファが偉そうな文官と話をしていた。

「まさかあの『時姫』を護衛に就けるとはシェルパは剛毅ですな、しかし貴女は人と組む事をしなかったはずですが?」


へぇ、そうなのか、確かにルナのパーティーとか聞いたこと無いな。

俺は腐敗勇者を引きずりながらルナ達の元へ向かう。

アイリンが心配そうに腐敗勇者を見ていたが…

確かに静かになったな、さっきまで騒がしかったのに。


「お待たせ、アイリンとふは…勇者様だ」

腐敗勇者を襟首持って持ち上げる……ん?

あ、ヤバい…そのまま心臓に軽く氣を打ち込む。


「ブホァ!!……およ?ここ何処?お花畑は?」

よし…何時も通りだな。

そのまま地面に立たせてやる。


「イ、イチナさん?…今アンナさんが「気にするな」いやでも「気にするな」…はい」

若干周りが引いているが問題ない、文官の顔も引き攣ってるが全く問題ない。

うん、何も無かったからな。


「何か口のまわりが濡れてる?泡?何で?」

前世は蟹だったんじゃないのかねぇ…きっと。


「…ほら、確認するんだろう?早くしてくれ。俺は城に用が有るんだ」

それがすんだら宿探し、明日は馬上戦闘用の武器を買いに行かにゃならんしなぁ。


「お、王城に何の用が有るのですか?返答次第では…」

あれ?何か凄く警戒されてる?

…まあ、予知巫女のお届けだけだし、別に俺が行かなくても良いか。


「ちいとお届け者が居るだけだよ、俺は行かないから安心しろ」

「む?イチナはいかんのか?」

「こんだけ警戒されてんのに行ったってなぁ…サウス達も入れんだろうし大人しく外で待っとくよ」

その方が面倒事に為らないだろうしなぁ…

まあ、後は任せるとして俺達が泊まれる宿でも門兵に聞いとこうかね?

そう思いながら、ガナから預かったブローチをルナに渡す。

あれ?もしかしてコレ要らなくね?



「という訳でどっかいい宿知らないか?」

「何の話だ?」

男門兵に話を振ると意味が分からんと言った顔で見られた。


「…ああ、宿ね。そう言うのは詰め所で聞いてくれ、見て分かると思うが今仕事中なんだ」

まあ、忙しそうだもんな…

ならなんで聞いたのか、そんなもん詰め所に行きたくないからだ。

シェルパでは刀を奪われたからな、拒否反応が出るんだよ。


「仕方ねぇ、適当に街の中で聞くか…」

そんな事を考えながら、城下に入って行く人を見ていると有る事に気づく。

出て行く奴らはしっかりとした装備をしているため冒険者だろう。

そうで無い者も、もちろん居るが数が少ない。

出て行く者の大半が冒険者だ。


何だろうねぇ…ここまで冒険者の出が激しいと何か有るのかと疑いたくなるんだが。

ま、ここの冒険者達が真面目なだけかもしれんが…中々に説得力の無い説だな。


「まあ、いいか…面倒事なら態々首を突っ込まなくても」

さて、そろそろアイリン達は終わったかね?

そう思い煙草に火を付けアイリン達の居る場所へと向かう。



「終わったか?」

ルナに声を掛ける。


「うむ、一応のう、もう城下に入れるんじゃが…」

「じゃが?」

入れるならさっさと行こうぜ?何か問題でも有るのか?


「あの文官、いやババミル大臣じゃな。アイリンとアンナをあの成金馬車に乗せて城まで送ると言いだしてのう。まあ、要人警護用の馬車じゃし、分からんでも無いんじゃがの」

大臣だったのか…しかし、勝手に護衛対象を連れて行かれるのは困るな。


「あ~大臣?王女と勇者はこっちで王城まで連れてくから、そっちの馬車に後ろから付いて行く形で勘弁してくれ、一応俺の護衛対象なんでな」


まあ、どっちに乗っても行くとこは同じなんだから構わないんだが、何となくこの方が良い気がする。

嫌な予感がするとかじゃなく、特にこれと言って理由は無いんだが…


「何故あなたが決めるので?リーダーは時姫殿では?」

やっぱりランク的にもそっちの方がいいよな?


「いや、リーダーはイチナじゃよ。我を打ち倒すほどの剣の腕前じゃ」

あの時はルナも本気じゃ無かっただろうが…


「ソルファも我が指導して着実に腕を上げとるし、強いぞこのパーティーは…戦えないのもおるがの」

そうか、強かったのか家の奴等…白やテン達のちびっ子達の事だな?分かります。

パー子はサウスのオプションパーツとして考えてくれ、パーツ名『吹き矢砲台』だ。

外した方が高速戦闘が出来るが外れないため、呪いの装備でもいい。


「まさか、彼等はCランクですぞ?有りえませんな…しかし時姫殿がそれほどまでに買っている冒険者ならば腕は確かなのでしょう」

もう、そろそろ行きたいんだがなぁ…結局どっちに乗ってくのか決めて無いんだが?


「…なあ、アイリンはどっちで行きたいんだ?どうせ城に向かうんだし、護衛云々は置いといてアイリンが決めてくれ。じゃないと何時まで経ってもウダウダと進まない」

大臣とのやり取りが面倒になったわけじゃ無いからな?

これ以上、ここに居るとアリーナンが布教活動を開始しそうなんだよ。

コイツだけ町の外に置いていけないかなぁ…


「えと…出来ればイチナさん達と行きたいです…」

アッチは何か堅苦しそうだもんねぇ…少なくとも俺は御免だ。

まあ、要人じゃないし大臣と乗り合わせる事も無いだろうが。


「じゃあ決まりだな。お大臣様は先行してくれ、付いて行くから」

「…仕方ありませんな、勇者様も同意見の様ですし…では王城へご案内いたします」

やっとか、さっさと行こう…一応国賓なんだし宿とか取ってくれねぇかな?


やっぱりガナから預かったブローチは要らなかったようだ…まあ、王様に会った時に渡す書簡の正当性を見極める材料にはなるだろう。


俺達は大臣の乗る成金馬車に付いて王城へと向かうのだった。

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