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猫守紀行  作者: ミスター
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アホ毛、友を得る…舎弟でも良し

俺達は朝早くにカナンドとマジムに見送られ大橋を渡る。

大橋の半ばまで来ると、辺りには海しか見えない。


不安だ…この橋どうやって作られてるのかが分からない。

通常の支えとなる柱が無いのだ、それでこの巨大な橋をどうやって作ったのか…

そして何で落ちないのか、何で風で揺れないのか?

それが不思議でしょうがない。

繋がってるのが大陸との接地面だけとか何のジョークだ…


そんな事を考えながら、俺だけが消耗し大橋を渡り切ったのだった。

途中、白が突然飛んで風に煽られた時はどうしようかと思ったが…

その後は黄助に捕縛されたままクロハの上で反省中だ。


腐敗勇者?馬車の中だよ。




「もう二度と大橋は渡らねぇ…」

まあ、陸路で魔国に行く場合はどうしても渡らなきゃ行けないんだけどねぇ…畜生。


「クフッ、イチナでも怖い物が有ったか。大丈夫じゃよ大橋の建材には全て浮遊の神の加護が付いとるからの。落ちはせんよ」

怖い物くらい有るに決まってんだろうが…建材すべてに加護ねぇ、そりゃ浮くわな。


…だからあの魔族、橋に入って魔法球を取り付けようとしてたのか、一か所壊せば戻らない跳ね橋になるからなぁ。

いや、全体に均一に浮力が有ればそうはならんのか?

まあ、いいか、終わった事だし…多少実験してみたい気もするが。


「そりゃ、安心だねぇ…しかし、こっちは警備が厳重だな。なんか偉そうなのも居るし」

大橋を渡った先はカナンド達の砦よりもかなり大きな砦だった…大橋砦とでも呼ぼうか?


うん、これが砦だよな、カナンド達のは駐在所が相応しい。


何か豪華な鎧を付けた貴族っぽいのがちらほら。

俺達はシェルパ側から来たため、現在対応待ちだ。


「まあ、国境警備も兼ねとるからの当然何じゃが、何よりこっちは王都が近いからの。シェルパはカルゲン山脈が有るからの迂闊に人員を送れんのじゃよ。山のモンスター共を刺激すると碌な事にならんしの」

俺、思いっきりワイバーン殺しちゃってんだけど大丈夫か?

俺の微妙な視線に気づいたのかルナが言葉を続ける。


「クフフッ今頃大変かもしれんのう」

フォローじゃ無かった…すまんな、カナンド死んだらパー子に取り憑いてくれ。



「待たせたな、そのラピッドウルフの事で貴族様ともめてな…貴族様が話があるそうなんだ…すまんな、流石に俺の権限じゃ止められない」

対応してくれた兵士はかなり良い奴だった。

まあ、この兵士にはすでに勇者の事は言ってあるためこの対応なのだろう、アイリンの持っていた自己証明の書簡も効いている。


「初めまして、僕は王都パレサートで研究をしているルァック・ゼイカ・ハンマルクという者です」

笑みを浮かべ近づいてきた男、丁寧な喋りだが視線はサウスに固定されている。

もちろんサウスの上にはパー子が居るが、ガン無視だった。


青い髪は片目を隠すように伸ばされ、見える瞳は黄色で喜色を帯びている。

服装は高価そうな装飾の施された服の上に『白衣』

身長は165cmくらいか?

顔のつくりはそこそこ整っては居る。


「で?その研究者が何の用だ?まどろっこしい建前は要らんから本題だけ言え」

俺の物言いに少し反応するが笑みを浮かべたままこう言った。


「…そうですね、本題はそちらのラピッドウルフを譲ってもらえないかと言う交渉ですよ。先ほど確認しましたがCランクで魔法紋を6つもモンスターに入れるだけの収入は無いでしょう?何より魔力の少ないウルフ系に魔法紋を入れる意味が無い。突然変異ですよねソレ。どうでしょうか?ソレを研究に差し出してくれた方がよほど有用ですよ?何なら言い値で買い取りますし、代わりのラピッドウルフも用意しましょう」


ハンマルクが得意気に話している間に恐らく護衛だろう、騎士たちが集まって来た。

コレは交渉では無いとの意思表示か?んな訳ないか、ただの護衛だろうな。


そんな事よりもコイツ何て言った?


「…有用?代わり?言い値で買うだぁ?」

ええ。と頷くハンマルク。

俺から徐々に殺気が漏れ始め、騎士たちが構えながらハンマルクを守ろうと前に出る。


「ハンマルクじゃと?イカン!イチナ、絶対に手を出すでないぞ!?」

「そうです!断るだけにしましょう?ね?」

「……やっちゃえ…そいつは全サウラーの敵…イチナごー」

他のメンツも俺の異変を察知して馬車から降りてくる。


「ああ、大丈夫。俺は冷静だ、決して舐めた事言ったコイツとこの邪魔な騎士共を斬り散らそうなんて考えて無い……なあ、お前等は何分割が良い?」

建物の上からボウガンでこちらに狙いを付けている『黒装束』共に殺気を込めて問いかける。

その中の一人が合図すると黒装束たちは構えを解いてリーダーらしき人物だけが降りてきた。


「いやいや、分割されるのはご勘弁戴きたい。お久しぶりですねアマサカ殿」

相も変わらず嘘くさい笑みを浮かべ、挨拶してくるガナ。

マシマス・ガナ、パー子の元上司でパレサートの暗部。

パー子に名前を忘れられる悲しい過去を持つ。


「何でテメェまで居やがるんだよ…今は機嫌が悪いんだ、ソレを連れて帰るなら歓迎してやる」

ハンマルクを指さしてそう言うとガナの嘘くさい笑みが引き攣った。


「イチナさん駄目です!ハンマルク家は王家の分家ですよ!」

アイリンの叫びにハンマルクが笑みを深くしたのが癪に障る。


「んな事はどうでもいいんだよ、サウスを売れとかほざく輩に払う礼儀なんぞ持ち合わせてねぇしな。家の連中に手を出したら、たとえ王であろうと叩き潰すだけだ」

知ってるか?今まで予告はしても実際にやった事は少ないんだ。

折角大陸渡ったんだから、心機一転。

これからは有言実行を目指そうと思う。


「おや、交渉のつもりが反乱分子を見つけちゃったね、捕らえろ…どうしたんですか?」

その言葉で騎士たちが動…かなかった、いや動けなかった。


「殺気で動けない騎士か、練度が足りねぇんじゃねぇか?…ガナお前も喰らっとくか?」

徐々に漏れ出し膨れ上がった殺気はその余波だけで十分に死を連想させる。

その殺気を真正面から受け続け、なお下がらなかった騎士達は十分に練度が高いと言えよう。


「遠慮します、それよりも先ほどの発言…本気ですか?」

ああ、王だろうがって奴か?


「手を出さなきゃいいだけの事だろうよ『触るな危険』って奴だ。話し合いや仕事くらいは請け負うぞ?冒険者だからな一応」

一度こっちのギルドにも顔出さにゃなぁ…コッチも臭いのかねぇ、やっぱり。


俺を危険と判断したか、手を出さなければ無害と見たかハンマルクの護衛の騎士達はハンマルクを連れ、引いて行った。


まだ何か言っていたが聞こえなかったので気にしない。

何で研究者がこんな所にとか疑問はあるがまあ、苛立ちの元が消えた事で良しとしよう。


「……では、さっそくですが情報提供をお願いできますか?」

ガナは少し考え話を続ける。


「王より頂いた情報では独特な服を着ており。カテ、いえ…少し、そう少し残念な奴隷を一人連れています…恐らく大橋の国境を越えカルゲン山脈へ入ったものと思うのですが、途中で馬車か何かとすれ違いませんでしたか?」

ああ、予知巫女捜索に駆り出されたのかコイツ。


「情報は2つあるがどうする?悪い方と良い方どっちから聞く?」

良い方から聞かれた場合悪い方は意味を成さない…悪い方から聞いてくれ!

ルナはニヤニヤ笑みを浮かべソルファの口を押さえている。

幸いにも予知巫女と残念奴隷は馬車の中だ。


「…では悪い方「あー!!マシマシが居る!」カ、カテボニ?」

行き成りの残念奴隷の登場に素の表情になるガナ…いや、マシマシ。

スゲェ、素の表情を初めて見たよ。


「あぁ、出てきちゃった…」

はっ!?と気づいたように無表情になるマシマシ。


「アマサカ殿…遊んで「みーちゃん!マシマシが居たよ?」いまし「……そうですか、良かったですね」たね?……ハァ」

うん、もうちょっと遊んで居たかったけどねぇ。


「で?マシマシはあの残念奴隷とどんな関係だ?」

とても気になります。


「…一応夫婦という事になっています。ですが私が任務に出ている間に何故か…本当に何故かカテボニが奴隷になり今の主人に買われたと聞きました。まさか予知巫女様だったとは…流石に調べても出てきませんでした。たまに会った時もみーちゃんとしかいいませんのでアレは…」

まさかの夫婦…しかもあの残念奴隷を少し残念と言えるのが凄い。


しかし任務に出ている間って…コイツの事だから調べたんだろうなぁ。

それでも出てくる『何故か』まあ、予想を遙かに超え残念だった、という事だろう。


マシマシに予知巫女と残念奴隷を保護した状況の説明を求められ、覚えている限り詳しく説明した…


「そうですか…今から王都に向かわれるので?」

「ああ、そのつもりだマシマシ」


「分かりました、王都に着いたら直ぐに王城に向かってください。今書簡を用意します、それを王に見せれば経緯が分かるようにしますので…あとマシマシは止めてください、アマサカ殿に言われると違和感しかありません……それと城の門兵にはコレを見せてください」


俺がマシマシと呼ぶのを本気で嫌そうにしながら、渡されたのは金属で出来た花のブローチだった…何で?


「それは特殊な金属で作られた物で各部隊の隊長が持っている物です。我々の場合は任務が重なった際に、信頼の置ける者に代役を頼む場合などに証明として預ける事が多いですね。それを持っていれば取り敢えず謁見は出来るでしょう」

それは便利だこのまま拝借してもいいかな?


「そいつは助かるねぇ、でもなんで花?」

花の種類は多少知ってる程度だ…コレはコスモスに近いかな?


「これは王都パレサートを建国された初代様が好まれた『クァンテの花』をモチーフにした物です。実物はモンスターの死骸に寄生する1メートル程ある巨大な花なんですがね…ちゃんと返してくださいよ?」


何でそんなもんを好んだんだ初代様は…冬虫夏草みたいに薬にでも使えんのかねぇ。

何よりデカすぎるし、死骸を城に常備してたのか?

どちらにしても、あまり良い趣味とは言えんなぁ…


「ああ、はいはい、返す返す。それじゃそろそろ行こうかねぇ…カテボニは置いて行ってやろうか?」

「結構です、まだ任務が残っていますので」

そう言うとガナは一度だけ残念奴隷に目線をやって部下と共に去ったいった。

任務ってのは予知巫女の捜索だけじゃないのか?…まあ、聞いたところで喋る手合いでもないし。


「…ほれ、お前等もさっさと馬車に戻れ」

そう言いながら後ろを振り向くといそいそと馬車に戻る面々。


パー子はサウスに跨っている状態からしがみ付きに移行、何時でも行けるぜとサムズアップだけこちらに寄越した。

ルナとソルファも自分のバトルホースに乗り準備完了だ。

ん?マキサックが何か探してる?


「あ、チナさん、テンが居ないっす!」

「何?」

…白は、うん、相変わらず黄助に捕まってんな。


「しっかし…どこ行ったんだよ、あのひよこは…」

どうやら出発は遅れそうだ。

あ~、ガナにも手伝って貰えば良かったな…まあ、今更遅いが。


「ガウッ!!」

そうだったな、家にはサウスが居るんだった。

テンの匂いを辿ればたどり着くだろうし。


「ほいじゃ頼んだぞサウス」

「待つんじゃイチナ、全員で行くつもりかえ?手分けした方が良くないかの?」

そうなんだがねぇ、確保したら直ぐに出たいからなぁ…


「ん~じゃあ、馬車組は出口周辺を、こっちで見つけたら直ぐ出発出来る様にな。ルナとソルファは俺とサウスに着いて行くぞ、パー子は…そのままで良し。白と黄助は俺とな?」

黄助と白をクロハに乗せ、俺も跨る。


「ほれ、さっさとテン見つけて王都に向かうぞ。ハチカファそっちは頼んだ、行くぞサウス」

ハチカファが「はい~」と馬車を出すのを見てから、サウスに声を掛けテン捕獲に向かう。


「全く、ヤンチャ過ぎるのも考えもんじゃの…行くぞマリア」

「そこが可愛いんですけどね…行きましょうかジャスティ」

それぞれのバトルホースの名を呼び走り出す…ソルファ、名前決まったんだねぇ。




その少し前……


「ぴぴーーーーー!!!」

小さい足を懸命に動かし、爆走中だった…別に追われている訳では無い。

ただ、新しい大陸、新しい世界、新しい空気…

テンにはそれが新鮮で全てが大きく見えた…ただ自分が小さいだけなのだが。


「ぴぴー…」

立ち止り空を見上げるひよこ。

要は新しい環境に興奮しているのだ、このひよこは。


「…ぴ?」

気が付けば何時もの保護者(イチナ)師匠(マキサック)の姿が無い。

当然だ、このひよこ一南達がサウス関連で揉めたどさくさに紛れ飛び出したのだから。


「……ぴぴぴぴーーー!!」

少し考え、また走り出すひよこ…

一体何を考えたのか、取り敢えず合流する事では無さそうである。



大橋砦の出入口を守る兵士の足元を黄色い弾丸が通り抜けて行く。

「おい、今何か通らなかったか?」

「さあ?気のせいじゃないか?」


そうして、ひよこはモンスターが居る草原へと足を踏み入れる事となるのだった。




「あれ~テンちゃん見つかったんですか~?」

サウスにテンの匂いを追わせ駆け回った結果、最終的に何故か出口に来た。


「まだだよ、つうかあのアホ毛外に出てやがる…」

サウスがさっきから大橋砦の外…草原の方しか見ていないそっちに匂いが続いているらしい。


「…サウスは先行して確保、パー子は目印を残しながらサウスに張り付いとけ」

このまま出発になりそうだな。


「……らじゃー…」

「ガウッ!!」


「よし、行け!」

草原に向かい駆けだすサウス…速いなもう見えなくなったぞ。

後はパー子の残す目印を辿って……ちゃんと残してるよな?


「俺等も出るぞ」

何とも慌ただしい出発になったもんだ。




その時ひよこは…今度こそ追われていた。


「ぴぴーー!?」

ひよこの後ろにはひよこと同じ大きさのスライムが球体になり転がるように1体のモンスターから逃げている。


そのモンスターは『スライムイーター』その名の通りスライムを主食とするモンスターだ。

大きさは60cmほどで、鳥のような足を持ち、楕円形の体にはみっしりと固い毛が生えている。

ストローのような口でスライムを突き刺し吸う…正直ひよこが逃げる必要は一切ない。

追われているスライムに巻き込まれた形で逃げている。


「ぴ!?」

遂には行き止まりに追い込まれるひよことチビスライム。

広い草原での行き止まり…大体50cmほどの段差のある窪みである。


ゆっくりと近づいてくるスライムイーター…まさに絶体絶命!スライムのみがだが。


「…ぴぴー!!」

何を思ったかスライムを守るように立ち、アホ毛をピンんと伸ばし、羽を広げ威嚇し始める。

そんな事は関係ないと近づいてくるスライムイーター。


「ぴ!?…ぴ、ぴ!」

片方の羽をパタパタと動かし、後ろにいる逃げる事を諦め球体から半球体に戻ったスライムにお前もやれと促す。


「ぴぴーーー!!!」

先ほどよりも大きな鳴き声で威嚇するひよこ。

後ろではスライムがうにうにと形を変えてひよこを模した羽とアホ毛をその半透明の体で作り上げ同じように広げていた。


歩みを止め踵を返し一目算に逃げて行くスライムイーター。


「ぴ?…ぴぴぴぴぴー!!」

その様子を見てスライムに飛び乗り勝鬨を上げるひよこ。

スライムは作った羽をバタつかせもがいている。


次の瞬間。


「……ほっかーく…任務…完了…」

「ガウッ」

どうやらスライムイーターはサウスの気配を感じとり逃げたようだ。


「……?…何か付いてる…スライム?」

パークファの手の中でスライムに半ば埋もれたひよこ。

そのままコネコネと弄られる。


「ぴぴーーー!!」

頭に来たのかパークファに向かって威嚇する、スライムも羽を広げた。

不思議と息の合った2匹である。


「……逃がすとイチナが……だから駄目…」

保護者の名前が出て固まるひよこ。

そのまま一南が来るまで、パークファにコネコネとスライムごと弄られ続けるのであった。




「確かに目印を残せとは言った、だがな…パン屑なんてベタなもん残してんじゃねぇよ、探す方に手間取ったわ」

俺はクロハから降り、パー子に向かいそう言った。


食べられて無かったかって?もちろん食われてたよ、ただし食った相手は麻痺して動けなくなってたがな。

最初は目印だと気づかずに警戒するだけだったんだよねぇ…目印を決めて置けばよかったなぁ。

ちなみに麻痺ったモンスターの方が目印になった、草原にパン屑撒いて誰が気づくよ?


「……さーせん…」

まあ、アレがタダのパン屑ならまだ草原を走ってるかもしれんしなぁ…もしかしてモンスターの麻痺を狙ったのか?

もしそうなら優秀な部類じゃないかコイツ、そのおかげで無駄な戦闘をしなくて済んだし。

いや、目印にパン屑をチョイスする辺りはどうかと思うが。


「……次は…麻痺剤入りを…撒く…」

……今のがそうだよ。


「ハァ…で、テンは何で捕食されてんだ?」

パー子の手の中で首まですっぽりとプルプルとした半透明の球体に覆われているテン…なんとも間抜けだなぁ。


「……手ごねスライム…テン包み…お土産にどーぞ…」

そう言って渡してくるパー子…テンは土産じゃないからな?

しかし…こねたのか?スライムを?と言うかこのスライム小さくないか?


パー子が俺の手に乗せた瞬間に分離して2匹ともぐったりしていた。

どんだけ弄ったんだパー子…


こんな種類も居るのかと思いルナに見せる。


「ふむ、大分魔素が足りんのう、核まで縮んでしもとる。スライムイーターにでもやられたかの?」

スライムイーターか、確か主食がスライムのモンスターだったな。

俺だって勉強してるんだぜ?…まあ、名前で分かるモンスターではあるが。


「して、どうするんじゃ?このスライム。えらくテンに懐いておるようじゃが…」

手の上のアホ毛と半球体を見る…

テンは俺の顔を見上げスライムを守るように翼を広げる。

一方スライムの方はテンの真似をして翼っぽく体を変化させ広げ、アホ毛っぽい触手を伸ばしウネウネしている…


「うん…まあ、いいか。無害そうだしな」

叱ってやろうかと思ってたんだが…それは黄助に任せよう。

俺の許可が下りた事でテンは嬉しそうに片翼でスライムをバシバシと叩いていた。

俺の手の平はそこまで大きく無いからな?あんまり暴れんな。



黄助にこってり絞られたテンとアホ毛の触手を伸ばしたままのスライムを馬車に放り込んだ。

まあ、王都が逃げる訳でも無いし、のんびり行こうか。


クロハの上で紫煙を燻らせ、今度こそ王都『パレサート』に向かい出発する。

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