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猫守紀行  作者: ミスター
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カナンド・カイン -燃え尽きた男-

戦闘も終わり、生き残りの駐在兵の治療もすんで、今は墓づくりに邁進している。

本来は通り過ぎるだけだったはずなのにねぇ…あ、魔族の死体は一か所にまとめて有る。


「すまない、助けてもらって。それに仲間の墓まで…」

カナンド・カイン駐在兵の隊長だ。

剣の腕は良い。

もしかしたら主人公じゃないか?と思うくらい容姿も整っている。

見た目20歳行ってない。


だが、残念なことに…


「なあ、アマサカ…その…あのお嬢ちゃんもお前と行くのか?」

吊り橋効果って怖い。

自分が諦めた局面を、あっさりと覆したパー子にやられたらしい。

ちなみにカナンドの歳は、30歳だ。

俺も何歳か聞いて驚いた…若すぎるだろ。

お前とパー子が並んでも兄妹にしか見えないぞ?


「別に置いて行ってもいいが、サウスは連れて行くからなぁ。どのみち着いてくるだろうよ」

サウラーだし。


「そうか……」

遠くを見て黄昏るカナンド。

正直、カナンドの反応はどうでもいい。



取り敢えず、黄昏るカナンドは放置して『羽白』を砂浜を走るカップルばりに素敵な笑顔で追い掛け回すアリーナンを襟首を掴み捕獲する。

聞きたいことが有るんだよねぇ…


「ウフフフフ♪待って~白たへぶぅっ!?…何よ!!今いい処なの!幸福の空飛ぶ白たんよ!?捕まえなきゃ!!」

いい感じに頭の中がフィーバーしてるな…


「…馬車に吊るしたら魔除けとかにならんかなぁ、コイツ」

思わず思ったか事が口から出てしまった。


こう、UFOキャッチャーのクレーンで頭掴んでブラーンと…体ごとだぞ?首だけじゃないからな?

想像したら逆にモンスターが寄って来そうだった…俺なら近寄りたくも無いが。


「何それ、怖い。ていうか何で吊るすのよ!?私はただ白たんを愛でたいだけなのに…理不尽よ!!」

まあ、確かに吊るす必要は一切無い。

アリーナンを捕獲する体力も勿体ないので、さっさと聞きたいことを聞いてリリースしよう。


白お前は黄助の所に行ってろ、コレを刺激するんじゃありません。

白は、しばらく俺の頭の上をくるくる飛んで、ふよふよと黄助の所に向かって行った。


「ああ~…くっまだ届かないのね…何の用よ、私忙しいのよ!開放しなさい!!」


「はいはい、そうだな。取り敢えず聞きたいことが有るんだよ。あの魔法球だったか?アレどんな魔法なんだ?橋が無くなるほどの魔法にゃ見えなかったが」

素直に答えれば解放してやると言って魔法球の事を聞いてみた。


「魔法球は魔法を溜めて置けるのよ、50年前の勇者様が開発に携わったらしいわ。魔力を通せば発動する誰でも使える術式魔法として戦士系の冒険者の切り札として人気が有るの。魔法屋に売ってるけど凄く高いんだから」

要は手榴弾みたいなもんか…50年前の勇者様は兵士だったのかねぇ?


「魔法の方は恐らくダーク・イロウシェンだと思うわ」

「恐らくってのは、どういう事だ?」

他にも類似した魔法が有るのかねぇ?


「大きさが桁違いに大きかったのよ、本来のダーク・イロウシェンは10cmくらいで人工物の排除に使われるの。というより鎧や剣を壊すためね、当った先から黒く変色しながら対象を浸蝕、自重で崩れるほど脆くなるのよ。橋を崩すには最適ね。イチナが打ち上げて浸蝕する対象が無かったから直ぐに消えたんでしょうね」


そこまで大きさが違うと流石に違う魔法じゃないか?

それに下手したら、あの場で魔法に飲み込まれて全員マッパだったかもしれん…恐ろしい魔法だ。


「魔国で新しく創られた術式かもしれないわ…神様から貰った術式を弄る何て信じらんない!!…こほん、ダーク・イロウシェンはただでさえ、とんでもなく魔力を喰う魔法なのに、あんなバカみたいな大きさ…白たん以上の魔力でもないと無理よ」

もしアレを城や城下にでも打ち込まれたらそれだけで終わるな。


「もしかしたら新しい術式のテストだったのかも知れないわね…この橋、対魔法防御関係が高いし」

ふむ、有りえない事じゃないんだが…


俺達というイレギュラーが有ったにしろ今回の指揮官は遊びが過ぎる。

小分けにせず、最初から全部隊でやってれば俺達は間に合わ無かったし、カナンドも物言わぬ骸と化していただろう。

最後は命を賭けて任務を果たすと言っていた指揮官…果たして本当にテストだったかは怪しい処だな。


確かに、この大橋が無くなったら一時は騒動にはなるだろうが…

そもそも、あまり使われて無いのだ、お国関係のみで騒動は終わるだろう。

ギルドにはもちろん伝わるだろうがな。

よほど欲深い商人か、俺達みたいに事情がある人間が使うくらいだしねぇ。


何でここを狙ったのかが分からんな、50年前の再現をしたいのか?


「ありがとよ」と礼を言いアリーナンをリリースする。

白はすでに黄助達の元へ行って居るため迎撃準備は万全だ。

クロハも混じりアリーナンの負け越しは、やる前からすでに決まっている。


……うむ、ダイエット成功だな黄助。


「もういいわよね?……白た~ん♪」

それでも行くアリーナンに心の中で敬礼してその場を離れた。



ああ、もう日暮れかよ。

たがだか橋渡るくらいで面倒事が多すぎるだろ…今日はこの辺りで野営か?

3つの太陽が沈み行く姿を見ながら、煙草に火を着け一服。


「あ、チナさん!マジムが砦の仮眠室で休んで行けば良いって言ってるっすよ」

マジムって誰だよ。


「マキサック、マジムってのは誰の事だ?」

「私の事であります!!」

……マキサックの体に隠れて分からなかったな。


150cm位の小柄な体格の割にがっしりと筋肉か付いた『ザ・一般兵』

兜で目のあたりが影になっている辺りがモブっぽい。

声からして男、というか体格が男だ。

これで女だったら俺の観察目が役立たずに成ってしまう。


「マジムってのは本名か?マキサックが付けたんじゃ無く?」

もしそうなら何で俺の名前を憶えないのか小一時間ほど問い詰める。


「あ、いえ!本名はアルゥウォカジャンバークガレスィアマジム・カウォートゼイバナンであります!」

……なっが!?

そして呼びにくい、一般兵の名前じゃないなぁ…


「…マジムで良いな、噛まずに呼びきる自信が無い」

親も何を思ってこんな名前を付けたのか…まともに呼んだこと有るのかねぇ?

何より驚くべきはミドルネームが無い事か?それとも苗字より長い名前か?


まあ、ミドルネームは貴族や位の高い奴にしかないらしいしなぁ…途中で切れてれば、まだ多少は呼びやすかったのに。

ま、それでもマジムになっただろうがな。


「そうでありますか…いえ、何時も略称で呼ばれていますので問題ありません!」

そりゃそうだろうよ、咄嗟の時に呼んでらんねぇよ、お前の名前。


「なら、マジム。仮眠室を使って良いって話だが。俺等は結構な大所帯だぞ?旅馬車に結界石も有るし野営でも別にかまわんのだが…良いのか?」

「問題ありません!駐在部隊の人数も大分減り、ベットは空いて居りますので……それに夜になるとモンスター達が魔族の死体を漁りに来るのであります。その横で野営は流石に……」

ああ、うん…無理だね。

流石に咀嚼(そしゃく)音は子守唄にはならないからねぇ…


「じゃあ、他の奴等を案内してやってくれ、俺はカナンドと行くから。あ、マキサックも頼むわ」

カナンドはそろそろ黄昏から帰って来たかねぇ?


「了解したであります!!」

ビシッ!と心臓に当りに右拳を叩きつけるマジム。

アレがシェルパの敬礼か?そういや王都に居ながら敬礼を見たこと無かったな。


やはり敬礼には敬礼だろう。

自衛隊に入ったことも無ければ警官でも無い、そんな俺の適当かつユルイ敬礼に目をむいて驚くマジムとマキサック…何かしたか、俺。


「チナさんは軍属だったっすか!?チナさん見たいなのが軍人やれる国ってどんな所っすか!?」

凄まじく失礼だなお前。


ま、もし命令されても従わんかもしれんが。

それに、俺だって団体行動は取れてるだろ?……取れてるよな?


「ま、まさかスパイでありますか!!?くっ、如何に恩人と言えど我が国の情報を漏らす訳には…捨て身の覚悟で挑むであります!!!」

この瞬間、もうこの世界で敬礼はしないそう決めた。

しかし声がデカいなコイツ…他の奴に聞かれたら面倒じゃねぇか。


「やめろアホウが…俺は軍属じゃねぇ、軍隊なんかに入ったら上官殴り飛ばしそうだ」

元々命令されるのは好きじゃない、そう考えると会社務めじゃなくて良かったかもしれんなぁ…元の世界で殴り飛ばしたら傷害罪で豚箱行きだ。


「敬礼には敬礼で返そうと思ったんだよ、見様見真似の偽物だ。勘違いさせて悪かったな」

何で俺が謝るのか分からんが、この勘違いを放って置くと面倒臭そうだ。


「そうっすよね、チナさんが軍属の訳が無いっす。もし軍にチナさんが居たら、上官皆斬っちゃって国がヤバいっす」

マキサックよ、お前の中で俺はどんな危険人物なんだ?

是非、聞かせて欲しいねぇ…


「こ、こちらこそ勘違いしてしまい誠に申し訳ありません!ですから、どうか斬らないで欲しいであります!!」

斬らねぇよ、このバカのいう事を真に受けてんじゃねぇ。


俺は思わず頭を抱える。

「ハァ…ああ、斬らない斬らない。だからさっさと他の奴にも伝えて来てくれ。今日は駐在所で一泊するってな、マキサックも行っとけ」


「り、了解であります!」

マジムが今度こそルナやソルファ達に伝えに走る。

どうも俺が恐怖の対象になった気がするなぁ。


「それじゃ!また後で会うっすよ!!」

マキサックもそれに続くように走って行った。


……何か疲れたなぁ、さっさとカナンド捕まえて駐在所に向かうかねぇ。



そう離れて無い所で俯いたカナンドを発見した。

パー子と離れるのがそんなにショックだったのか?


「おい、カナ…何の積りだテメェ…」

俺が声を掛けた瞬間、顔を上げ双剣を抜き放ち殺気を送ってくるカナンド。


「黙れ!お前みたいなスパイとあのお嬢ちゃんを一緒に行かせる訳にわいかない!!」

…………あれか、マジムの声が聞こえたのか?

で、俺をスパイと思い込んだと?


「……いや、何でだよ。大体スパイなんぞ勤まると思うのかこの俺に、斬った張ったの方が断然楽だろうがよ」

まあ、所詮自己紹介しただけの他人だ、それで分かれってのもかなり無理が有るのは分かっているがねぇ。


それにスパイと言えばカナンドの思い人、パー子の方がそれに近い職種である。

ポンコツではあるが…


「スパイは皆そう言うんだ!」

お前の中でスパイってのは、どんな人間なんだ?是非聞きたい処だ。


「あのなぁ…誤解だ、ここまで盛大に暴れてさらに勇者様の護衛もしてるスパイが何処に居るよ?お前は勇者様の護衛を斬る積りか?」

正確には王女の護衛だがな。

護衛の仕事してないって?言うなよ、俺も今思ってたから。


まあ、でもこれで納得はしないでも剣は引くだろ。


「ここに居るじゃないか!!勇者様は騙せても俺は騙されない!」

俺に双剣の片方を突き付けそう言うカナンド。


…もうヤダ、何コイツ。


この橋を最後まで守るために戦った気概と剣腕は認めるが…何て面倒臭い性格してんだよ。

もうちょい、まともだと思ってたんだがなぁ。

何でそこまで俺をスパイにしたいのか…もしかしてパー子か?


「…俺をスパイとして捉えるか殺せるかすれば『お嬢ちゃん』が残ってくれるとか思ってんのか?」

突然そっぽを向いて口笛を吹きだすカナンドだった。


……バカかコイツ、考え無しにも程が有るぞ。


「ハァ、アホウが…俺にそこまでする位ならいっそ告白でもして来い。その方がスッキリすんだろ。明日にゃ居なくなるぞ俺達は」

俺に迷惑かけんな、爆砕して来い。


「そうか…そうだよな。済まない、分かっては居たんだ。お前みたいなのがスパイ何て出来やしないってのは…」

おい、喧嘩売ってんのか?安く買い叩くぞ?

いや、自分でもそう思うが言われると腹が立つんだよ。


「よし!それじゃ行って来る!!仲間が減るかもしれないが許してくれ!」

そう言って自信満々に駆け出すカナンドだった…全く世話の焼ける…



「……取り敢えず砦に行くか」

煙草に火を着けカナンドが走り去った方へと歩き出したのだった。


歩いているとクロハが迎えに来てくれた…うん、ありがとうな。

クロハの上には白がちょこんと乗っていた。


「白も迎えに来てくれたのか?ありがとな」

「み!」

クロハに任せカッポカッポと砦へと向かう。



「へへっ燃え尽きたよ…所詮俺は大橋の駐在部隊の隊長さ…」

砦に着いたら入口に真っ白になったカナンドが誰に話すでもなく独り言をブツブツ呟いていた…フラれたか。


俺はカナンドをスルーして(うまや)へ向かいクロハを置いて砦の中に入ったのだった。


砦…と言うか駐在所?石造りの2階建ての建物で頑丈そうではある、中は簡素な長机と長椅子…入って直ぐ食堂のようだな。

どうやら2階が仮眠室のようだ。

消防署のように一階の天井に穴があり、そこからポールが下りていた緊急時はコレで降りて出動するんだろうか?


「遅かったのうイチナ、もう少し早く来とれば面白い物が見れたと言うに」

確実にカナンドの愛の告白だろうなぁ…


「……もう少し毛深くて…四足歩行で…モフれる相手だったら…危なかった…」

それはカナンドに一切興味が無いという事だな?


「あの、それは人ですらないのでは?」

「ソルファ、パー子だぞ?今更だろうよ」

「……そうですね」

残念そうな視線をパー子に送るソルファだった。


「あの隊長の事なんてどうでもいいのよ!さあ、イチナ!その手の白たんを渡しなさい!!私の愛は白たんのために有るのよ!!」

お前とパー子はその情熱を人に向けて欲しいと心から思う。


「…さ、飯喰って寝よう、テンとマキサックは?腐敗勇者とアイリンあとハチカファも見えないが…」

予知巫女と残念奴隷は大人しく席についている。

聞きなさいよ!!と吼えるアリーナンを無視してルナに問いかける。


「ん?あ奴等なら今夕餉(ゆうげ)の準備をしておる所じゃ、そろそろできる頃合いじゃろうて」

凄く心配になるメンツだな…大丈夫なのか?


「は~い、皆さん~ご飯が出来ましたよ~」

ハチカファが間延びした声を上げるなか、以外にも腐敗勇者がテキパキと配膳していたのに驚いた。

あ、目が合っちまった。


「およ?…もしかしてギャップに萌えた?コスプレや薄い本を買うのにお金が要るからね。モデル始める前はバイトでブイブイ言わせてたのさ!」

聞いてねぇ。


「まあ、いいか…どうでも」

俺の正面にふてぶてしく陣取るテンをつつきながら腐敗勇者の言葉を流す。

む?白も遊んで欲しいのか?仕方ないなぁ…


「あれ?そこはもうちょっと、つっこんで聞いてくる処じゃないかな?」

コイツがバイトしようが特に問題は無いしな。

白とテンあと腐敗勇者に構っている内に料理が並び終えていた。


「………これは…何だ?」

済まない料理を見て出て来た率直な感想なんだ。


料理の品数は多い10品位ある…が、驚くほどにカラフルだ目がイテェ。

まず、恐らく芋料理であろう物は『青い』青は食欲減退色だろう。

アイスとかならともかく、少なくとも湯気の上がる料理が青いのは駄目だろうよ?

他の料理も赤・黄・ピンク・緑…

唯一、一目で失敗したのが分かるほど焦げ付いて黒くなった肉らしき物が一番料理っぽかった。


「あ、その焦げた肉はマッキー作だから。私達じゃないからね?」

むしろ焦げ肉を作ってくれた方がまだ良い。

という事はだ他の料理は女性陣で作り上げた事になるんだが?

どうやったら、こんな色になるんだよ……


「おい、現代人。この料理の配色に疑問を持たんのかお前は?お前は今までこの世界で何を食って生きて来たんだ?」

シェルパの宿のマスターの料理は見た目、味、共に素晴らしい物だったぞ?

アイリンは食ってる筈なんだがなぁ…サンドウィッチだが。


「…まあ、ちょーっとアレンジ効かせすぎたかな?ハチカちゃんもノリノリでさ!頑張っちゃた!」

テヘッ!と可愛く舌を出す腐敗勇者に軽い殺意が沸いた。


「えと、御免なさいイチナさん、止めれませんでした…でも!味は大丈夫です!ちゃんと確認しましたから!」

コレを味見したのか…勇者より勇者だなアイリンは。


「そうか、頑張ったな…ならアイリンの勇気を無駄には出来んな……食うか」

ハチカファが頼んでも無いのに各料理を皿に盛り付け運んでくる…笑顔がウザイ。


あのアリーナンですらも絶句する配色、生き残った駐在の兵士達は温かい食事がここにあると言うのに干し肉を齧って遠巻きに見物している。


頂きます、御馳走様は感謝の言葉、作ってくれた人と食材に捧げる言葉だ。


「い、いただきます…」

一応、作ってくれたからな…今回は食材への謝罪も込めてだが。

俺達は料理に手を伸ばすのだった……




「…御馳走様」

食ってみると意外と美味い。

ただし、口に入れるまで目を瞑るという飯時にしなくていい事をして、初めて分かる味ではあったが。



俺は食後の一服のために外に出る。

煙草に火を着け紫煙を肺に入れる…むふ。


「……お体に悪いですよ、甘坂様……驚かれ無いんですね」

気配も消せてないのにどう驚けと?驚かしたいならガナに気配の消し方を習ってから来い。


「飯時も大人しかったからねぇ…そろそろかと思ってた」

紫煙を空に吐いてから、予知巫女に振り返る。


「で、納得のいく結果は得られたか?今回はお前さんに教えられなきゃ、間に合わなかったかもしれんのだがねぇ?」

この予知巫女もよく分からん。

本当に予知の確認がしたいならあそこで動かず、その結果を見て判断すれば良い物を態々自分で予知の結果を変える事を加速させたんだからなぁ…深読みのしすぎかね?


「……そうですね、確かに甘坂様が起点となり予知を変える事は分かりましたが、同時に巻き込まないと動かない事も分かりました」

当たり前だ、予知能力何ぞ持ってないんだからなぁ…

それに現状でも有りえないくらい巻き込まれているがな、護衛やらクエストやらで。


「……ですから、巻き込んでしまおうかと思います」

「何言ってんの、お前?」

俺の疑問を無視して語り出す予知巫女…面倒な匂いしかしねぇなぁ…


「……勇者様達は魔王にたどり着く前に死にます」

衝撃の死亡予告…でも無いな、魔軍の将にアルケイド見たいなのが居る地点で詰んでるし。

将にすら勝てないのに魔王に勝てる道理も無い。

この世界にRPGみたいにレベルが有れば元が弱くても何とかなったかもしれんがなぁ。


「……本来、シェルパの勇者様はオーク襲撃時に魔族に襲われ息絶える未来でした。パレサートの勇者様達は北条様が女性に刺され死亡し、他の勇者様が勇者として機能しなくなります…」

…あれ?魔軍の将関係無い?というか腐敗勇者が唯一戦闘で死んでるってどうなんだ?


北条はどうでもいい、むしろ刺されるような事をする奴が悪い。

勇者として機能しなくなる…委員長の甘さが原因かねぇ?

北条の死が切っ掛けで、戦うのはもう嫌だって感じか?…何かおかしいな、何が有った?


「で?それを聞かせてどうすんだ?俺は『勇者』じゃないから魔王は殺せんぞ?」

まあ、『斬る』心算ではあるがな?


「……そこまでは望んでいません。ですが聞かせておけば、気に掛けてはくれるでしょうから。旅先で会ったらお願いしますね?」

いや、時期が分からん死亡予告をどう防げと?


「…もし、会ったらな」

「……はい、それで結構です」

満足気に頷いて駐在所の中に戻って行く予知巫女だった。


「本当に退屈しない世界だ……面倒くせぇ」

2本目の煙草に火を着け、そんな言葉と共に夜空に紫煙を吐き出したのだった。


サブタイに意味はありません。

燃え尽きてはいますが…

そのシーンもないのにサブタイにするなとか言わないで。


何故か思いつき、頭から消えなかったこのサブタイ…

思い切って付けて見ました。


byミスター

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