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猫守紀行  作者: ミスター
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長い一日 -出番は終り-

「絶対に最終境界より先に行かせるな!!僕様に続け!!」

そう言いながらカートス自身も剣を振り10体ほどをまとめて吹き飛ばす。


武神の命を受け冒険者達がオークに向かって突撃する。

次々に蹴散らされるオークだが一向に減る気配が無い。


まさに数の暴力。

軍の兵士にも疲労の色が見え始めている。


「わ、私だってやれるわ勇者ですもの!!…(ほとばし)れ妄想!!滾れよ()力!!エロゲの力よ、今ここに!!創造(妄想)魔法『マイ・フェイバリッド・セブンナイツ』!!」

震えながらも、無理やりテンションを上げ魔法を使う勇者。


勇者高松安奈の周りに七つの魔法陣が展開しそこから7人の騎士が現れた…明らかに2次元の住人である。

これでもかと美化された容姿は恐ろしい程に整っていた。

そして、どこから見ても『正面』である。

疲れを知らず死角も無い、ある意味最強の騎士たちだった。


その中の1人はどこかで見た事のある日本刀2本を携え、長さ違いの籠手をし、煙草を銜えている。

そこには高松安奈の腐力によって極限まで美化された一南っぽい何かがいた。

一南がこの場にいたら、間違いなく真っ先にこの騎士を叩き斬っていたであろう。


そして、何故か全員半裸である。


「……うひょー!!コレは堪らん!!魔法様有難う!!さあ、行きなさい!コード『ローズダンス』!!」

テンションが振り切れた雄叫びを上げながら騎士たちに指示を出す。

先ほどの震えは何だったのかと問い詰めたい。


騎士たちが頷き、敵の中心へと飛び込んで行く。


縦横無尽に剣…では無く腰を振る騎士たち。

まるでフラフープでもしているかのような動きである。

そして、腰を一振りするたびに聖なる魔力が乗った衝撃波が飛ぶ。

味方に一切の被害を出さずに腰を振るだけオークを吹き飛ばし仕留めていく。

その姿はそこに居る冒険者達の尻に恐怖を与えた。


その時の『騎士達』の顔は星が出る程に眩しい笑顔であったと言う。


「むふっ、むほほほ!!まさかこのセリフが言えるなんて…見よ!!我が騎士は圧倒的では無いか!!これが対軍用戦術、コード『ローズダンス』よ!!むふふ、堪らん腰つき…パーフェクツ!そのまま進撃よ~!」

ヒャッホーイ!と自身の持つ白銀の槍で方向を指し示し指示を出す勇者だった。




「何だろう、俺は今無性に腐敗勇者を斬らなきゃいけない気がしてきた」

オークを斬りながら、そんな事を呟く。

しかしこのメンバーの中でその呟きに答える者は…


「……腐って…やがる…読みすぎたんだ…」

サウスの背中に顔を埋めながらもそう呟くパー子。

薄い本をか?そんな事はで会った時から分かってんだよ。


「お前等はどう思うよ?」

俺はパー子の言葉を無視して転移方陣の前にいる魔族とオークキングに問いかける。


「仕事が一つ減るので、是非お願いしたい」

「ブフヒィ!!」

壮年の魔族とオークキングが答える。


ふむ、これがオークの上位種か…何を言っているのかはサッパリだが。

4メートルくらいの身長で普通のオークよりもデカい。

普通のオークと違い鎧に兜それにマントをしており、大剣を携えている。

その額には魔石が埋め込まれ、魔物と化していた。


そして、壮年の魔族は黒い全身タイプの『Gアーマー』に身を包み、盾と剣を装備した騎士といった様相だ。

兜はまるでカブトムシの様な角飾りが付いていた。

青い肌にで見事な金色のカイゼル髭を蓄えた、眼つきの鋭い男である。


「そうか、お前等の有利になるような事はしないと、今決めたんだ。悪いな」

ふむ、コイツも勇者殺害の任務が有るのか?…あのワンコロが失敗した時の保険かねぇ?


「それは残念、しかし、いいのかな?のんびりと話をしていて。君はコレを止めに来たのだろう?」

そうなんだがねぇ…斬り伏せたオーク以外に出てこないんだがまさか打ち止めか?


「打ち止めとか考えているのですかな?残念、設定をランダム転移に変えただけですよ。この王都の周辺の何処に出るか分からない、さて守り切れるかな君たちは」


それを聞いて俺は動く。

一直線に転移方陣へと向かい…チッ!

魔族の剣とオークキングの大剣が行く手を阻む。

俺は間合いを外し、後ろに飛んで距離を取る。


「…ああ、そうでした言い忘れてましたよ。オークキングにはオークの統率を任せてあるので倒したらオークは散るでしょうね…戦いはあなた方の勝利で終わり、近隣の村はオークに襲われ大打撃ですね?」

うっわぁ、面倒な…でもなぁ?


「要はだ、オークキングは相手にせずに、転移方陣壊してお前も斬れば良いだけだろ?簡単じゃねぇか…重量の加護off」

時間も掛けてられんし、ちいとばかし本気で行こうか。


「サウスと黄助はあの豚の足止め、殺すなよ?俺は転移方陣を潰す」

「ガウッ!!」「グルガァ!」

サウスと黄助、とも気合十分である。

勢い良くオークキングに向かって走り出した。


「おや、この私が入っていませんが?申し遅れました、魔軍の将『ガイナス』様の副官をしているマイ・カーテと言います。ここから引かぬ蛮勇に敬意を表し名乗らせて頂いただきました」

ガイナス?どっかで聞いたな…まあ、そんな事は後だ。


俺はまた転移方陣に向かって踏み込む、今度は『全力』で。


「何!?」

マイ・カーテの驚きの声が聞こえた。

あと一歩のところで後ろから剣撃が飛んで来る。


あ、リュックに白が居るんだった。


背中に喰らう訳にはイカンと身を捻り回避。

だが、リュックに掠り穴が開いた…どうやって直すんだよコレ、それ以前に白は無事か!?

思わず顔をリュックの方へと向ける。


「み~?」

おいバカ出てくんな。

白は空いた穴から顔を出し、もぞもぞと外に出ようとしていた。


マイ・カーテは好機と見たか、更なる追撃を掛けてくる。

それをいなす一方で白の体は半分リュックに穴からはみ出してダル~ンと垂れ下がった状態だ…正直、気になってしょうがない。


俺の背後に転移方陣、正面には剣撃の嵐、リュックから白…白はいつ落ちてもおかしくない。


さて、どうするか…マイ・カーテを先に斬るか?

しかし、どの程度の間隔で転移方陣が動いているのかも分からない状態で、あまりコイツに時間を取られたくはないな。

サウスと黄助は?上手く足止めしてるな…

殺さないと言う条件を付けると、サウスと黄助、どちらかを外すのは得策じゃない。

パー子?サウスにしがみ付いたままだが?


俺が何とかするしかないか…白が落ちる前に。


手は…使えん。

流石は将の副官か、一匁時貞だけでは追いつかず斬レンジャー(長さ違いの籠手)も使っていなしている。

こちらの反撃は全て盾で防がれる。

この状態から納刀して抜刀術の構えを取ることは無理だ。


なら、足か?しかし目標は後ろすぐ一歩下がるだけだが、真後ろの下方にそこまでの威力を持った蹴り技は無い。

もう、空居合で斬りつけて……ああ、そうか。


「ふふ、どうしたのですか?すぐ後ろにお目当てが有りますよ?」

そう言いながらも剣閃は緩むことは無い。


「み?み~♪」

白は体が抜けず戦闘で揺られているのが、何か楽しくなって来たようだ。


俺は氣を軽く圧縮して『左足』に回す、空居合のように左足を俺の少ない魔力で足首までコーティングし『刀身』作る、次いで軽く圧縮した氣で『鞘』を。


さて、上手く行きゃ良いんだがねぇ…


マイ・カーテの一撃を避けるように左足を一歩下げ転移方陣ギリギリについた瞬間…氣を爆発させた。


ゴバンッ!と地面を抉る音が聞こえ…俺の足はそのまま前へと振り抜かれる。

「おおぅ!?」

俺も予想外の勢いだよ。


結構なスピードで振り上げられた足は蹴りとも言えぬものだったが、ほぼノーモーションの予想外の攻撃にマイ・カーテは盾で防ぎながら、後ろに飛んで距離を取った。


「一体何のつもり…何!?転移方陣をあの状態でだと!?」

俺も転移方陣を見る、もちろん横目にだ、流石にもう後ろを向いたりはしない。


俺の足が有った場所が見事に抉れていた…うむ、圧縮したのが効いたな。

淡い光を放っていた転移方陣は、力なく光るのを止めてしまっている。


ちなみに俺の足にもダメージが有る。

でもこれ、調整したら一瞬の踏込に使えるんじゃねぇか?

あと、蹴り技の強化とか。


今はやらんが、だって足がイテェから。


一応、神薙流にも歩行術はある。

相手の呼吸、隙、剣の引きなどに合わせ最速の一歩で間合いを詰めたり死角に入るのだが、名前は無い。

俺も当然のようにやっているので特別に名前を付ける必要も無いし、割とどこの武術でも同じような物だろう。


「ようやく面倒事が1つ片付いた…後はお前だけだな」

あと、オークキングもいるが、コイツは後回しだオークの数が減らないと殺す事も出来ん。


俺は一匁時貞を鞘に納めて、黄助用に魔石を補充し、刻波に手を掛ける。


「……少々遊びが過ぎましたね、これではガイナス様に怒られます。せめて邪魔者の首とその魔力の塊を頂いて帰りましょう」

俺とリュックに開いた穴からはみ出し、ブラブラ揺れる白を見てそう言うマイ・カーテだった。


俺が口を開こうとした時、後方から矢が飛んできた。

真後ろからの攻撃に反応が遅れ、矢が掠る。


「申し訳ありませんわ、カーテ副官。マーリガ隊長の安否確認に手間取ったんですの…やだ、可愛い!?その白いの欲しいですわ!」

ここに来て新手かよ。

しかも、矢の形状から行ってボウガンか?

それらしいものは持ってないがねぇ…


青い肌に緑の髪のクルクルドリルパーマをかけた、貴族風の女魔族。

軽装備の下に白いパーティードレスを着ている。



「…アーマナ、援護するならもう少し考えてしてください。何故私まで避けなければいけないのですか?で、マーリガはどうなりました?」

まあ、俺の真後ろって事はコイツの正面だからなぁ…そのおかげで隙を突かれずに済んだがねぇ?


「ホワー…真っ白で小っちゃいですわ~…「アーマナ!」はい!マーリガ隊長は上半身と下半身が分かれて、お亡くなりでしたんですのよ!!」

ああ、あの隊長さんは強かったよ。

しかし、確認て事はコイツ城に入ったのか?こんな目立つ格好で?


「バカな…現状の王城にそれほどの戦力は無い筈だ」


…隙だらけなんで、仕掛けてもいいかな?


俺は一気に踏み込み首と腕を狙って居合抜刀武技『二奥(におう)』を放つ。

『二奥』は居合抜刀の二連閃だ、ただし『髪撫で』に次いで威力が高く、速い。

それに微量の魔力を纏わせ打ち込んだ。


「!」

ギィンと刻波が盾に当る…咄嗟に盾で首だけは守ったか、だが、右腕は貰ったぞ?


「ぐぅうう!?貴様ぁ!!」

「カーテ副官!お下がりになってくださいませ!!」

アーマナは背中に手を回し2丁の銃を取り出す…何!?『銃』だと!?


銃には詳しくないから大まかな種類しか分からん。

あれは連射式のハンドガンタイプだ…まさかファンタジーで銃を見るとは思わなかった。


そして、その銃から発射されるのは弾丸では無く『魔法』。

しかもイメージ魔法では無く術式魔法だった、発射口に魔法陣が浮かび上がる。


「くらいなさい!」

そう言いながらアーマナは何度も引き金を引く。


先ほど背後から放たれた矢が銃口から放たれる。

音も無く、気配も無い、姿が見えなければこれ程暗殺に向いている銃は無いだろう。


だが、見えていれば避ける必要すら無いんだよ。


俺に向かい直進する魔法の矢を全て刻波で斬り落とす。

弾丸の方がまだ斬りにくい、対象の大きさが違うからな。


最後の一発を斬り飛ばすと其処から煙が上がる…煙幕かよ!?

直ぐに横に飛び煙幕から出ると、待ってましたとばかりに矢の雨が降ってきた。

当りそうな矢だけを逸らし、回避する。

また煙幕とか勘弁して欲しいからなぁ。


「これもダメ、あれもダメ、我儘ですわね貴方」

この子は頭が弱いのか?言葉選びが、ちとおかしい気がするんだがねぇ。

当たらなかったんだから、もうちょい悔しがると思ったんだが…まさか呆れられるとは思わなかった。


「アーマナ、奴は牽制程度でいい…オークキングを狙え。私はこのまま帰還する。悔しいですがこの状態では任務の続行は不可能です、後は適当な処で帰還しなさい」

俺が煙幕に包まれている間にマイ・カーテはアーマナの隣まで移動していた。


「わかりましたわ、カーテ副官はお先に。私はあの真っ白のオチビちゃんを悪漢の手から救いだして後を追いますわ!!」

何だ、このそこはかとなく香るアリーナン臭は…御同類だなぁ間違いなく。


「あ、ああ…程々にな」

そう言ってマイ・カーテは帰還するためこの場を離れる…諦めたな?正しい判断だ。


マイ・カーテが居なくなると早々に2丁の拳銃で俺とオークキングに狙いを定める。

俺はオークキングを守るように移動し迎撃態勢取る…ハァ、何でこの豚を守らにゃならんのだ。


「障害物があろうが関係ないですわ!そのオチビちゃんを残して逝きなさい!!」

引き金を引く、引く、引く、矢が絶え間なく銃口から発射され続ける。


「くはっ!まるで壁だな…神薙流居合抜刀、繋ぎ打ち『限無(げんなし)』」


コレは『十六夜(いざよい)』から『十四蔓(じゅうしかずら)』『十二天(じゅうにてん)』『十角(じっかく)』と居合を繋げ、抜刀術の『八耀(はよう)』『六銭』『四交(しこう)』まで打ち込み、また『十六夜』に戻るループ技だ。

俺の体力が切れるまでの居合抜刀、斬り落とせないものは無い。


矢の壁、その全てを叩き落され初めてその顔に焦りと恐怖が浮かぶ。


「な、何なんですの、貴方は…魔法すら使っていないのに何故私の矢が届かないんですの!?」

アンドレイ改はもう既に3回も使ってる、以前より回数が上がってんなぁ…まあ、今気づいてどうするって話だが。

こんな事ならカルトイヤに何回使えるか聞いとけば良かったねぇ。


「もう、さっさと引いてくれないかねぇ。面倒になって来たんだが?」

間合いを詰めて斬っても良いんだが、どうもアリーナンと被って斬りにくいんだよなぁ。


「分かりました、オチビちゃんを渡してくれたら大人しく去りますわ」

チラチラと白を見てはにへら~と表情を緩めるアーマナだった。


「……いや、渡すわけねぇだろうが」

後ろではサウスと黄助がオークキング相手に踏ん張っているのに、何でこんな気の抜けた会話をしてるんだ俺は。


その時、ぽてっと白がリュックの穴から落ちた…何で今なんだ、というかよく今まで落ちなかったな。

「み~、み~」と俺の足をよじ登ろうとする白…ああ、うん。ちょっと待ってな。


チラリとアーマナを見るとキッラキラに輝いた瞳で白を見ていた…

うわぁ隙だらけだ、今なら斬れるんだがそんな気が起きない。


仕方なく「ちょいタンマ」と声を掛ける…コイツには通じる気がした。


「ええ、仕方ありませんわね。その仔優先ですわ」

任務より白優先って…お前もう帰れよ。


白を抱き上げると、肩を目指して登り始める…何がしたいんだよ、一体。

登っている最中に鞭白になり鞭を俺の襟にかけ見事登頂、リュックに飛び込んだ。

そしてまた、リュックに開いた穴から体を半分だるーんとぶら下がっていた…そうか、気にいったのか。


「あー…じゃあ、やろうか」

やる気と緊張感、その他もろもろを全て白に持って行かれ、正直もうどうでもいい。


「……どうでしょう?貴方魔軍に来ませんこと?待遇は要相談ですけど貴方の腕が有ればいい処まで行けるんでわないかしら」

スカウトは白じゃ無く本人を見て言おうな?


俺が拒否の意を口にしようとした時だった。


「断るに決まっとるじゃろうが!!」

……何でルナが答えるんだ、というかいつ来た?


「ファルナーク・サリス!?くっ、もう、引くしかないですわね…」

流石有名人、ルナの姿を見ただけで引いていったぞ。


「イチナをぎゃくなんしておいて、逃げれると思うでない!!」

ルナはベルトから投げナイフを取り投擲、時の加護で加速したナイフはアーマナの腹を貫通したが、そのまま走り消え行くアーマナ…逃がしたのか?微妙な処だ。


「むぅ、仕留めきれなんだか…イチナ!お主まさかあの誘いに乗るつもりでは無かったであろうな?」


「アホウ、あれはアリーナンと御同類だ。白目当てで俺を誘ってたんだよ、乗る訳ねぇだろうが。んな事より、アレをどうするかだ。そろそろサウスと黄助にも疲れが出てる」

俺はオークキングを親指でさしマイ・カーテが言った事を伝える。


「じゃから足止めのみにしておったのか、面倒な。すまんが人員が来るまで相手を頼めるかの?我がカートスに説明してなるべく数を減らすように伝えてくるからの」

でわの、とまた来た道を戻って行くルナだった。


「…じゃあ、頑張りますか。サウス!黄助!下がれ!俺がやる」

一足飛びで後ろに距離を取る黄助とサウス(パー子装備)。

黄助は距離を取った瞬間、子虎に戻った…ギリギリだったな。


「よくやったな…黄助、白を預かってくれ流石にアレに『ちょっとタンマ』は効きそうもない」

白を黄助に預けオークキングの前に立つ。

コレ相手に殺さないようにかぁ…まあ、やってみましょうかねぇ。




「ブヒイイ!!」

手に持つ大剣を無造作に叩きつけてくるオークキングに対し『一匁時貞』抜刀し、いなす。

いなし、流し、イラッと来たら拳で反撃。

これの繰り返しだった…偶に体当たりとか有ったけど、溜めがデカくて避けやすいんだよねぇ。


「ブキィイイイ!!」

「…そう吠えるなよ、潰せなくてイラついてんのは俺も同じなんだから」

抑えの人員はまだかねぇ…まあ、加護の身体能力20%アップにはだいぶ慣れたからそれが収獲か。


「お待たせ~!Cランクパーティー『赤のマリア』ただいま参上!!」

5人パーティーでそれぞれが決めポーズを取っていた、中々に痛々しい。


「おーやっと来たか、下がれや!豚がぁ!!…交代だ」

大剣を掻い潜り、拳を叩き込んでから交代を告げる。


「は、はい!何か遅れてすいませんでした!!」

何か知らんが魔道士の男が謝って来た。

他のメンツも慌てて自分たちのフォーメーションを組む。


このパーティーの前衛は3人、フルプレートにワイドシールドの盾役と剣士が2人。

後衛は弓使いとこの魔道士の2人だ。

最初に名乗りを上げたのは赤髪の女剣士だ、何故かミニスカートを着用しているため丸見えである。


「さて、抑えも来たしどうするかねぇ…戻ってオークの数でも減らすか」


「ちょっと待ってください、『時姫』から伝言です。交代要員は僕たち以外送れないので控えとして残って欲しいとの事です…本当、すいません」

……待機かよ。


「まあ、いいか。あの豚も永遠に体力が続く訳でも無いし、ばてたら増援でも呼ぶだろ」

それまでゆっくりさせてもらおうかね。

俺は煙草に火を着けた。



あれから3回ほど交代を繰り返し現在『赤のマリア』が足止めをしている。


ちょくちょく戦況を伝えに連絡員が来るようになった。

丸一日かけたクエストも終わりが見えて来たようだ。

腐敗勇者が予想外に頑張ったらしい。


そんな事を考えているとまた連絡員が来た。


「司令部から伝令!!オークキングを撃滅せよ!!繰り返す「聞こえてる、分かったと伝えろ」あっはい」


「だそうだ、頑張れ」


「もう無理~!!交代して、交代!!」

赤髪女剣士が泣き言を言う。


「バカ言うなよマリア!これ倒さないと大赤字だぞ!?俺等こいつに構ってほとんどオークを倒してないんだからな!?」

男剣士、豪快な見た目の割にしっかりしてんな…


「限界です!!治療お願い死んじゃうから!!」

フルプレートの盾役女だったんだな。


「矢が尽きて、魔力も無いですよ俺。どうしろと?」

あー、どうしようも無いな。


「全く…まあ、僕の魔力もスッカラカンですが」

おい、魔道士駄目だろそれはいざという時のために取って置けよ。


「あ~俺が仕留めてもいいか?」

返ってきた返事は賛成4に反対1、多数決で俺が仕留める事に決まった。


ほいじゃ、終わらせようかねぇ。

俺はオークキングに向かって歩きながら、刻波に手を掛け力を溜める。


「豚ごときにゃ、ちいと豪華だが受け取れ。神薙流居合抜刀『髪撫で』」

不可視の一刀がオークキングをすり抜ける。

鞘に納める鍔鳴りと共に崩れ落ちるオークキングを一瞥し赤のマリアの面々の方へと振り返る。


「終わりだ、さっさと戻って報告しようか」

赤のマリアの面々がアホ面晒して俺を見ていたが気にしない。

さっさと戻ろう、サウスと黄助に声を掛け移動する。

慌てて赤のマリア達がついて来た。

戻る間、色々質問されたが面倒なのでスルーした。




最終境界に着きハフロスに報告を終えた時には、軍が残ったオークを殲滅している処だった…

ああ、長い一日だったよ本当に。


あ、オークキングの魔石、回収すんの忘れた…

ま、赤のマリアの連中が回収してんだろ、そのくらい旨味がないと男剣士が不憫だしねぇ。


俺はゆっくりと歩きながら空に向かって紫煙を吐くのだった。

50話超えた!まだまだ頑張りますよ!!


感想、ご意見お待ちしてます。


byミスター

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