長い一日 -勇者のピンチ-
50000pv突破記念のゲリラ投稿です!
勇者合流まで後『1日』
ん?1日ほど飛んだって?気にするな、俺は気にしない。
一応、簡略して伝えようか。
1日前
テンの筋肉痛が治る、走り込みの成果か足の速さがUP!!
俺特訓、魔力を使わずに飛ぶ斬撃を物にできず…だが体が重量の加護に慣れてしまい加護が更に強力になる。
で、今日に至る、だ。
おかげで体が重い、重い。
「で、こっちであってんだよな?」
俺は今近場の依頼に向かっている最中だ。
カルトイヤが朝一でアンドレイ改とジョニー改を届けて来たので、そのテストも兼ねている。
「ええ、ガストン村はこの方角で間違いないです…急がないと…」
受けたクエストは『オーク撃滅』…早めに行かなきゃ悲惨な事に成るのは請け合いの相手だ。
どうも村を襲ったオークの中に上位種が居るらしく他の冒険者やオークハンターも駆り出されているらしい…結構な規模の群みたいだな。
家のメンツは何時もの通り。
俺とソルファが馬で移動、サウス(パー子装備型)は走り。
馬車のメンツは行者がルナ、中にアリーナンとマキサックそしてテン。
俺のリュックに白と黄助となっている。
「イチナ!このまま行くぞ!もうちょっとでギルドが張った最終境界じゃ!」
今回みたいな大規模な群が出た場合ギルドが境界線を決め、そこを越えたら王都に連絡…軍が出る。
コレは王都に近い場合のみだ、他はレイドパーティーを組み対処する事が多いらしい。
俺達が最終境界に着いた頃にはガストン村は完全に飲み込まれていた…
これ、いくつかのパーティーで如何にか出来る規模じゃねぇだろ?
「な、何じゃコレは…これではスタンピードではないか…」
そう、目の前には以前見たスタンピードよりも明らかに多いオークの『群』
「俺等が行ったところで焼け石に水だなこりゃ…何でここまで情報が食い違う?」
俺達が受けたのはギルドの斥侯が確かめた撃滅依頼だ。
数は多いが200体規模と聞いていたし他の冒険者たちも受けていたからこの仕事に乗ったんだが…
「コレはまた…先ほどより増えましたね」
ハフロスか…今増えたって言ったか?
「どういう事じゃ?増えるとは」
「言葉通りですよ…王都に報告してくる間にも徐々に増えているようですね。恐らくどこかに転移方陣が有るものと考えられます…しかしこれ程のオークを何処から…」
そこは問題じゃねぇ、問題は何のために、だ。
転移方陣と大量のモンスターで思いつくのは『魔族』
しかし、オーク共は魔石を埋め込まれてねぇ…
まあ、オークに限っては操るより本能のままの方が、扱いやすいのかもしれんな。
「…ハフロス、勇者召喚を終えてない国は何カ国ある?その中で襲われた国は?」
「え?召喚の儀を終えて無い国ですか…ウォルガイの襲撃の報告を受けて全ての国が召喚の儀を終えたと先日報告が有りましたが?」
という事はだ、目的を召喚阻止から国潰しもしくは勇者殺害に変えてもおかしくない訳だな?
下手したらこれが陽動で勇者が狙われる危険性もある訳だ…イカンな考え出したら切が無い。
さて、どうするか…今から城に戻っても無駄足を踏む可能性がある訳だ。
コッチで延々とオークと戦い続けてもいいが…俺的にオークの上位種とか言うのが気になるんだよなぁ。
…まあ、ここは勘に従うか。
「ハフロス、あの転移魔具今持ってるか?」
ええ、持ってますが?と言う返事に頷き。
「ルナ、群と戦うかは任せる。俺はちょっと城まで行って来るから、サウスは此処でルナのいう事聞いてくれ」
ルナの返事の聞かずにハフロスに向き合う。
「勇者の近くに飛んでくれ、説明は後だ。何にも無きゃそれでいいからな」
「……分かりました、説明は後でしていただきます…跳びますよ」
ハフロスが袋から転移魔具を取り出し天に掲げた瞬間俺とハフロスは跳んだ。
「ぐぅぅ!これで魔軍の隊長だと!?…勇者殿逃げられよ!!」
バーマックが魔軍の隊長を鍔迫り合いで抑えている時その後ろでは、腐敗勇者が腰を抜かしていた。
周りには恐らく護衛だったのだろう人間と魔族の兵士が20人ほど物言わぬ骸と化していた。
魔軍の隊長の後ろにはローブで全身を隠した魔族が一人、コレで逃げろと言うのは到底無理である。
「頑丈だぁねぇ~人間…中々強いがそこまでだぁねぇ~?」
筋骨隆々、白い髪に赤いメッシュが入ったオールバック。
間延びした独特な喋り方からは想像も付かないような猛獣のような眼つき。
鎧は頑丈そうな胸当てと手足だけ重装備。
武器は黒いロングソードを2本持っているが、現在1本しか使っていない。
片腕で徐々にバーマックの大剣を押し込めていく…
「ぐ、ぐうぅ!?」
力で負けて片膝を突き自分の大剣が肩口に食い込む…
「バ、バーマックさん!?」
「…ほい、終わりだぁねぇ~」
その怪力でバーマックを蹴り飛ばす…
バーマックは5メートルほど飛んで壁に激突…血を流して倒れ込む。
「はあ、こんな任務オイラじゃ無くても良かったんだぁねぇ…ホイじゃサイなら~」
軽くそう言いながら勇者に向かって剣を振り上げる魔軍の将。
「い、いや…死にたくないよ!誰か助けて!!!!」
振り下ろされた剣はキィンという軽い金属音で止められた。
「ったく…近くにって言ったじゃねぇか何で入口なんだよ、あのアホウが」
俺は一匁時貞で魔族の剣を受ける…何だコイツ、バカみたいに力がつえぇ。
そう愚痴を言いながらも目前の『獣』に注意を払う。
『獣』は剣を受けられ警戒したか一度ローブの魔族の居る場所まで下がった。
「……お宅どちらさん?なぁんで邪魔するのかぁねぇ~?」
コイツは…喋り方はアレだがアルケイドと同じ雰囲気をしているな。
「な、何でお前が生きてるんだよ!?アルケイド様に斬られた筈じゃねぇの!?」
ん?ソコのローブは……名前が思い出せんな、端役は放置だ。
「ガナムのお知り合いでぇすかねぇ~?コイツ邪魔なんですけぇ~ど?」
「奴はアルケイド様と打ち合った冒険者です…斬られたと思ってたのに何でだよ…」
ああ、そうだガナムだ…胸糞悪い提案をしてた野郎だな。
「イチナくん、早すぎます…もう少しゆっくり…な!コレは!?」
ハフロスさん、御到着です。
「これが理由だ、説明は要らんだろ?」
ええ、と表情を引き締めるハフロス。
「しかし、お前さん本当に『隊長』か?ジャンやジューデかとは別物…どっちかってぇとアルケイドに近いんだがね」
そう言いながら煙草に火を着け紫煙を吐く。
「ははっ…オイラは生まれに難が有るって将から弾かれたんだぁねぇ~。おかげで今は裏方さぁ~」
生まれねぇ…まあ、弾かれただけで実力は将クラスだと思えばいいか。
まあ、将はアルケイドしか知らんが。
「ハフロス、バーマックと勇者を頼む、後白も…行くぞ黄助」
黄助が鞭で俺の肩を引っかけリュックの外に出る、その時ついでに白も巻き取りハフロスへ届けに行ってくれた。
バックルに魔石を装着し黄助が変身。
勇者の元へと動き勇者をハフロスの元へと投げるのだった。
ハフロスが結界を張った事を確認するとガナムは魔軍の将に撤退を意見する。
「…マーリガ隊長撤退しましょう、ここで時間を潰せばもう一つの任務の達成が難しくなります」
おお?意外と冷静だな以前とは大違いだ。
しかし、隊長ねぇ…とてもそうは見えんな、アルケイドと一緒で他の魔族とは別物だ。
「駄目だぁねぇ~…援軍の結界術師は予想外だぁけど、勇者殺害任務の遂行は絶対なんだぁねぇ~」
ガナムの提案を却下するマーリガ…ガナムくん以前は隊長だったのにねぇ。
こっちとしては、いざとなったらハフロスの転移魔具で逃がせば良いだけだからどっちでもいいんだがね?
「それに、この人間は今殺しておかなきゃいけない気がするんだぁねぇ~…アルケイド様には悪いけぇど」
それは勘か?それとも本能か?何でそう思ったのか是非聞きたい。
その台詞と共に俺の体に殺気が突き刺さる。
「くはっ!それは怖いな…じゃあ殺されないように本気でやらなきゃイカンなぁ?」
殺気の応酬…しかし、魔軍ってのは、こんなんばっかりなのかね?
…実に楽しいじゃねぇか!!
「黄助はガナムを殺れ、俺はコイツを殺る…さあ、楽しもうか?」
「グルガァア!!」
黄助がガナムに向かい突撃していくのを横目で確認して、煙草を踏みつぶす。
「楽しむかぁ…オイラにとっては作業だから無理だぁねぇ~」
そう言いながら間合いを一気に詰めてくるマーリガ。
言葉とは裏腹にその顔は、狂笑に彩られていた。
剣を両手で持ち袈裟切りを放ってくる…何だコイツ、我流か?
袈裟切りと言っても力任せに振り下ろすだけだ…基礎が見えない剣である。
俺は握っている一匁時貞で受け流し首を狙い刀を奔らせる。
「おっと危ない…怖いねぇ~、でも、遅いんだぁねぇ~」
うん、重量の加護切り忘れてた。
下手したら今の一刀でケリが付いてたかもしれんなぁ…これが油断か、ど忘れとも言うが。
「重量の加護、off…うし、さて本番行こうか」
ああ、体が軽い…戦の加護も相まって今なら水の上も走れそうだ。
今度は俺から仕掛ける、一足で相手の懐に飛び込んだのには驚いたが。
氣は無機物…刀を媒介には出来ない。
なら『魔力』はどうだ?と思いついたのがコレ。
「一匁『空居合』」
魔力を纏わせた刀を包む様に氣を集める事に成功したので、そこで切っ先部分を爆発させてみた。
氣での鞘と爆発、俺の振り抜く力を合わせての疑似居合抜刀術である。
これだけやっても速度的に刻波に勝てないが、どんな角度からでも打てることが魅力だ。
まあ、魔力と同時に氣を溜めないといけないので乱発は出来んが。
「なぁ!?チッ!」
咄嗟に腰に下げた2本目の剣を抜き『空居合』を防ぐマーリガ。
そのまま2メートルほど後ろに吹き飛ばされ…いや、自分で跳んだなあれは。
「ったく…新技なんだから大人しく斬られろよ、どの位の威力があるか分からねぇじゃねぇか」
「いやいや、斬られてたら終わってるよぉ?…やっぱりお宅は危険だぁねぇ…」
マーリガは今までの剣1本から2本に変えて『二刀流』の構えだ…こっからだな。
俺はバックルに魔石を補充してから、一匁時貞を鞘に納め、刻波に手を添える…さて、我流の剣士よ…
お前は何処まで神薙流の居合抜刀に付いてこれる?
その時、黄助は…
「くっそ!何でモンスター如きに!!…ぐおっ!!?」
意外と余裕だった。
無詠唱の魔法がある、魔道士タイプの敵だが口に出させなければ発動しない。
詠唱が無いだけで魔法名は口に出す必要が有るのだ。
そして、今はハフロスが結界内から黄助に強化魔法を掛けてくれているため、身体能力が上がっている。
老虎としての戦闘経験を持つ黄助に対策を練ることなど容易であった。
ガナムの放つイメージ魔法は魔力を多少帯びさせた鞭で迎撃しそのまま叩きつけ避けた所を爪が襲う。
無詠唱魔法は回避しながら観察し反撃に移っていた。
「ぐっ…だけどさぁ…そろそろ時間切れだろうよ!体内の魔力が少なくなってきてんぜ!!…お前が戻った時きっちり殺してやるよぉ!!」
そう言うガナムに答えるように黄助が光る…
「ハハッもう、時間切れのよう…は?」
そこに居たのは若虎では無く体の出来上がった大人の虎…肩から生える半透明の鞭は以前より太くなっていた。
コレはカルトイヤが改良したジョニーが魔力吸収効率上げた結果、イチナが魔石を居れた時、黄助に残った魔力と入って来た魔力が『若虎』の許容量を超えたため、一時的に階位を上げたのだ。
「グルガァァアアア!!!」
「ハ、ハハッ…マジかよ…ここで終わりか…」
最後の希望を黄助の魔力切れに託していたガナムだった。
さて、イチナ達に戻ろう。
「いい加減に死んでくれませんかぁねぇ~!!」
二刀を使った乱撃が絶え間なく俺に降り注ぐ…バカ力が、受け流すのも一苦労だっ!
「それはコッチの台詞だな、いい加減に…斬り散れや!!」
常に乱戦用の居合抜刀を叩き込みながら吼える。
流石『獣』か?殺ったと思っても本能で避けやがる。
乱撃の応酬、互いに斬り合うほどに増す殺気…まさに殺し合いである。
「シッ!!」
『十六夜』でマーリガの剣を捌き、体が開いた処で『六銭』に繋げそのまま五体全てを狙い斬りつけ…チッ!その前に距離を取られたか、勘が良いねぇ。
さっきからコレの繰り返しだ、いい加減にして欲しいもんだねぇ…本当に。
「流石『獣』って処か?肝心な処で避けやがって…ウザったい事この上ねぇな」
とは言えこのままじゃ勝負がつかんな…ふむ。
「……よくわかったぁねぇ~、オイラが狼人族と魔族のハーフだぁって。人間にこの姿でばれる事は無いと思ってたんだぁけどねぇ~」
いや、知らんよ。
お前の目が獣の目なんだよ、理由なんてそんなもんだ。
「人型のままじゃぁ勝負もつかないしぃねぇ~…理性飛んじゃうけど問題ないねぇ~」
そう言うとマーリガは天井に向かってイメージ魔法を放つ。
天井に『満月』が浮かんだ。
「アオオォーン!」
おい、もうちょっとこう…変身シーンとかさ、無いのか?その間に斬ろうと思ってたんだが。
目の前には白い毛で赤いメッシュが入った人狼。
その目にはもう理性の輝きは無い。
……『獣』が『獣』になったか。
マーリガは俺に狙いを定め突撃してくる…なんつう速さだよ!?
正面からの攻撃を受け流した直後、横合いから蹴りが飛んできた。
それを斬レンジャーで受け止め、半ば自分から吹き飛ばされ、壁に激突…
俺が当たった衝撃で壁は崩れ隣の部屋まで飛ばされた。
「アオオォーン!!!」
勝鬨を上がるマーリガ。
「イチナくん!!…くっ、こうなったら勇者様だけでも…」
「え?え?俺様王子はどうなったの?まだお礼言ってないよ!?」
「グルルルゥ!!!」
主を目の前でやられた怒りで実力差を無視して、黄助が仕掛けようとした時だった。
「…くくっ、くはははっ!!黄助、そのワンコロは俺の獲物だ…下がってろ」
頭を切ったな血が止まらん、恐らく骨だって逝ってるはずだ…なのに俺は何でこんなに楽しいのかねぇ。
ガラガラと部屋をぶち抜いた時にできた瓦礫を踏み分け、マーリガに向かって歩く。
「おい、俺を吹き飛ばしたくらいで勝鬨か?勝鬨上げるなら俺の首を取ってからにしろよワンコロ」
「ガアアアア!!」
俺の言葉に反応したのか、ただ仕留め切れてない敵に止めを刺しに来たのかは分からんがね?
「それとな…その速さにはもう『慣れた』よ」
そう、あの一瞬の攻防で、慣れた。
アルケイドの時と同じだ、一度打ち会うだけで、ある一瞬で体が神経が五感が…そのレベルまで引き上げられる感覚。
今まで強敵との『殺し合い』をして無かったから分からなかった感覚。
これが何なのかは分からんが…そう、まるでゲームの『レベルアップ』みたいだ。
多分違うが、だって『倒して』無いのにレベルアップてのもおかしな話だしなぁ?
マーリガの突撃に合わせる様に、刻波にアンドレイの魔力だけを乗せ飛ばす。
一瞬の足止め、スピードに乗った突撃は避ける範囲を狭める。
マーリガは『跳ぶ』事を選択した。
そのまま壁に飛んで三角跳びの要領で俺に向かって突っ込んでくる。
「シッ!」
俺は壁蹴り疾走してくるマーリガに居合を放つ、が。
「ガウガアァアア!!」
空中で『壁』を掴み一時停止するマーリガ、魔力で壁を作ったのか!?
……イメージ魔法は自由度が高いね本当に。
だが、俺はまだ刻波を鞘に戻してはいない。
掴んだ壁に蹴りを入れ加速するマーリガ、鞘に戻している時間は無い…だけどねぇ…
「刻波『空居合』…」
溜める時間は十分に取らせてもらったからな…終わりだ。
「…斬り散れ」
アンドレイの魔力で補った武具強化の魔力は氣の爆発と共に胴体めがけ振り抜いた斬撃と共に、空中で避けることが出来ないマーリガを斬り裂き城内の壁まで斬り裂くのだった…
やべぇ…また、やり過ぎたか?
天井に有った満月が消える…終わったか?
「ゲハァッ……うわぁ人狼化して負けたぁのぉか~オイラ…」
まだ生きてんのか、しぶといねぇ…まあ、こっちもギリギリでは有ったがね。
「理性の無い獣が俺に勝てる訳ねぇだろうが、勝ちたきゃあの姿で理性を保つ事だな…もう遅いが」
俺は煙草を取り出し火を着ける…紫煙が傷に沁みるねぇ、マジ痛ぇ…
俺は顔を顰めながらマーリガに問いかける。
「勇者殺害ともう一つの任務ってのは何だ?オークの群と関係あるのか?生きてる内に喋れ」
むしろ下半身がオサラバしてなんで息が有るのか不思議でしょうがない。
「ははっ!言うと思いますかぁ~?これでも魔軍の隊長でぇすよぅ?」
まあ、俺も喋るとは思ってなかったし。
「どうせ王様狙いかそこらだろ?外と中から同時に壊せば混乱するのは確実だからな」
侵入したのはコイツの部隊だけだろうな恐らく、じゃなきゃ重要任務を2つも受ける意味が無い。
「…やっぱりお宅は危険だぁねぇ…外の連中に連絡出来ないのが心残りだぁよ……」
そう言って息を引き取るマーリガに手を合わせ、黄助と共に白の待つハフロスの結界へと近づいて行くのだった。
「ハフロス、治癒できるか?出来るならこのまま戻りたい。ルナ達が心配だしな」
ハフロスが結界を解いた瞬間、白が足元に纏わりついて来た…死なねぇから安心しろ。
ハフロスは「はい直ぐに!」と治癒魔法を掛けてくれている…何とも威厳の無いギルドマスターである。
「…やったのか?ふんっ小僧にしては上出来だな」
俺が来た時から、ぶっ倒れてたおっさんが何か言ってるが…今はどうでもいい。
「あ、あの!!助けてくれて有難うございます!!…やべぇこれが吊り橋効果か、あれ?私もしかしてチョロイン?…」
……後半が無ければすんなり受け入れたんだがなぁ。
しかし、お前誰だ?…いや、アイツが狙ってたから腐敗勇者ではあるんだろうがな?
瓶底眼鏡とジャージ、後お下げが無くなっている。
瓶底眼鏡の代わりにオシャレなノンフレーム眼鏡…どうやって作ったんだ?
こっちのガラス工芸の技術は元の世界にかなり劣っているはずなんだが…持ってたのか?
流石モデルかスラッとした美人で、髪の毛を後ろで太い三つ編みにしカートス作の『四大封じの組み紐』で縛っている。
着ている鎧は素晴らしい意匠が施された白銀の鎧で胸当て、腰当、手甲に脛当て…
コイツが着ても問題ないくらいだから相当軽いんだろうな。
後はマントだ。裏地に四色の幾何学模様が施された赤いマント…コレが『四大封じのマント』だろうな。
武器は美しい意匠が施された白銀の槍…素人に槍は無理だろうよ。
「イチナくん治癒が終わりましたよ…行くんですね?」
当たり前である、オークの上位種がどんなもんか見てみたいし。
俺は頷きを返す。
「なら、私も!私も行くわ!私の創造魔法を見せてあげる!」
今違うニュアンスじゃ無かったか?…まあ、いいか。
「おっさんは王様に報告しといてくれ…ハフロス頼む」
分かりましたと言うハフロスの言葉と共に転移魔具を天に掲げ、俺達は『オーク撃滅クエスト』へと…いや、戦場へと戻るのだった。
明日もちゃんと更新しますんで、楽しんでいただければ幸いです。
byミスター