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猫守紀行  作者: ミスター
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報告と解放

なんか短いです。

報告は何事も無く終わる……訳がなかった。


バーマックのおっさんは今にもキレそうな顔をしているし。

ハフロスですら怒気を隠そうとはしない…

あれ?バラーグも不機嫌そうだな…何なんだ一体?


「お約束通り、魔族の鎧の欠片を持ってきました」


「俺はハフロスに報告を「小僧…何を報告する気だ?」あん?何って魔族の事に決まってんだろうが、筋肉が脳みそまで回ったか?」


何言ってんだよ、おっさんは。


「フヒッ…今しがた勇者様が来られて、魔族討伐の成功を報告していったよ。ファルナーク様は逃がしたようだけど、彼は『2体』も倒したそうだ証拠にこの鎧の欠片を持って来たよ」


何?アイツは魔族の死体に近づいてないはずだが…


「おい、おっさん…どういう事だ?」


「小僧、勇者はSランク貴様はDランクどちらが信用にたるか分かるだろう?」

ああ、北条よりは俺だろうな。

おっさんは拳を握りしめている…何が有ったんだ?


「貴様はこの決定に素直に従え……頼む」

おっさんが俺に向かい頭を下げた…マジかよ。


その時に頭をよぎったのはガナの脅迫。

身近な人間を狙うしかないと言ったあの一言。


「…ガナか?…」


小声でおっさんに問いかける。

ピクリとおっさんが反応した。


「脅されでもしたか?」

それに屈するおっさんでも無さそうなんだが…

なんぞ弱みでも握られたかねぇ?


「貴様が了承すればいい事だ」


……パークファが言ってた他の任務ってのはこの事か?

…という事はハフロスもか?…確認のしようがないな。


しかし何でこんなアホな事を?

他国でこんな勝手をやって、戦争でもやりたいのか?


俺をどうにかしたいんなら、ガナを直接送ればいいだけなんだが…

北条が俺を覚えていなかった事から俺自身はあんまり関係ないと思われる。


バラーグやおっさんの言葉からは、明らかに手柄を奪いに来ている。

回りくどいし、その程度の事で人を脅すってのも何か微妙?


他の勇者は…知らないんだろうな、恐らく。


ガナの独断と考えるのは、厳しいか?

…さっき北条に会った時の報告頑張れ宣言があるしな。


そもそも、護衛が暗殺者ってのがおかしいんだよな…


純粋に戦闘力だけなら暗殺者より騎士や雇われの冒険者の方が良いだろうし、戦い方も指南できる筈だ。

まあ、使い勝手は良いだろうが。


そう考えるとパレサートの奴等が何を考えて、暗殺者なんて護衛を付けたのかが気になるな。

元々この国の弱みを見つけるために護衛を暗部にした?

それとも他国での実績を『造る』ためにか?


う~ん…パークファは俺の監視のためとすると仮定してだ。

依頼者が北条という事は余り考えられないか?

何せ覚えていなかったしな…

結構インパクトの強い出会いばかりだったと思うんだが…影薄いのか俺?

どちらかというとガナからの『命令』がシックリくる。


「俺の報告は、『援護』に関する事だから後でいい。先にアリーナンの件を片づけてくれ」


まあ、労せず手柄が欲しいならくれてやる…その分、死に近づくのは自分なんだからな。

たとえ勇者だろうが、経験も積まずに強くなれる訳無いだろうに…アホウが。


「……すまん」

気にしない…というと嘘になるが、それで何とかなるなら安いものだ。


まあ、本当に何とかなるならだが。

ハフロスもホッとしているようだ…コイツにもなんかしたのか?

後が怖いな、ギルド総力を挙げての報復劇とかならないよね?


「ふむ、何かと面倒なようじゃのぅ、お主らも…ほれ白狂い、さっさと済ましてしまえ」

今のやり取りを見て面倒の一言か…バッサリだな。


アリーナンはリュックの白に釘づけだがバラーグの前だからか、顔を引き締めながら。

ンフーンフーと鼻息だけが荒い…今にも飛び掛かって来そうな鼻息だ。


「……おい、アリーナン?聞いてたか?さっさと渡しちまえ」

俺が振り返りながらそう言うと。


「ちょっと!イチナ!?白たんが見えない…あ。…コホンッ見えないじゃないですか」

遅い、遅いよ…隠すなら最後まで隠し通せよ。


「こちらが魔族の鎧の欠片になります。お確かめください」


「う、うむ…ツァイネン嬢は猫を被って居たのか?」

え?ようやく気付いたのか?

ハフロスとバーマックは猫?と疑問に思っているようだが…


「私が白たんを被る!?そんな残酷な!!…駄目よ!やっぱり王子とは相いれないわ!!」

誤解して一方的にショックを受けるアリーナン。


一方バラーグは初めて見るアリーナンの本性に引いていた…

おかしい…さっきまで深刻な雰囲気だったのに、流石残念お嬢様。


アリーナンの持って来た魔族の鎧の欠片をハフロスに渡して真偽を確かめる。

「本物ですね……よく生きて帰ってきましたね…いえ拾ってきたんでしたね」


「え?イチナが…あふんっ!?」

黄助が鞭でアリーナンの頬を張った…あふんって何だよ、あふんって…

しかし流石、黄助。

話を理解しての行動だろう。


だが、今のアリーナンには逆効果だった…


「うふふっ…良い、久しぶりに良いわ!滾る!!」

もうバラーグの前とか関係なしにヒャッハー!!とハッチャケだすアリーナン…

今はストッパーのソルファが治療で居ないんだぞ?


仕方ない…俺はルナにリュックごと白と黄助を預ける。

「すまんが、少々待っていてくれ……すぐに沈める」


ハフロス達にそう告げる…ハフロス達は、え?沈める?とか言ってたが気にしない。


フィーバーしているアリーナンの鳩尾に当て身をくらわせ、ダメ押しに首筋に手刀を落とす。

そして、気絶していることを確認。


「……よし!…さて、話を続けようか」

「うむ、相変わらず見事な手並みよの」

ルナからお褒めの言葉も頂いたので話に戻ろうか。


何処かずれたコメントを放つルナ。

唖然とするハフロス達。

アリーナン抜きで平然と話をしようとする俺。

何時も間にか、リュックから抜け出し人形棚で爪とぎする白。

回収するためリュックから出ようとするが、ルナに抱えられて出れずにもがく黄助。

そして、乙女としては問題ありな顔で気絶するアリーナン。


カオス…その言葉が良く似合う。


「さ、流石に本人抜きで話すわけにもいかないでしょう?」

再起動を果たしたハフロスはアリーナンを気にしているがそちらに目を向ける事は無い。


「要はだ、バラーグ殿下がアリーナンに手を出さなくなればそれで良いんだよ。……これ見て、まだ執着してるとか思われたくないだろ?」


俺はアリーナンを指さす。

アリーナンは……キーワードだけ言っておこう。

白目、涎、ウエヘヘヘ…以上だ。


「しかし、ツァイネン嬢には『魔法洋女アメリカン』を…」

揺らいでいるなバラーグ…

改めてテントの中のフィギュア群を見る…


「…ロボット物とか作れないのか?無双武者・合体シリーズとか」


「……?え?お前も日本人か?擬人化してもいいなら作るぞ」

いかん、思った事がそのまま口に出た。

擬人化とか、そんな物は要らないんだよ。


しかし、そこまで驚く事かね?

白や俺の格好見れば分かるだろうに…


「召喚なんぞ、されてないがな。俺も子供の頃にプラモをジジイに壊された時は同じだったから分からんでもない。だが、万人にこのフィギュアの理解を求めるのは無理だぞ?何せ、この世界に『アニメ』は無いんだ…ただの変態趣味にしか見えんだろうよ。それよりもモンスターを作ったほうが受けるだろうよこの世界じゃな。…趣味を押し付けて、壊されて殺すってのは、ちとかっこ悪いぞ?」


元の世界でも万人に受け入れられている訳じゃないが。

まあ、心血注いだフィギュアとガキのプラモを一緒にするなと言われるとそこまでだが。


……いかんな話がおかしくなっている。

「話がそれたな、アリーナンの件の証人の二人も居るし問題は無いな?」


「仕方ない、この二人を証人にしたのは僕だからな…アリーナン・バルド・ツァイネン嬢には、もう手を出さぬと誓おう…それと魂をこめたフィギュアとガキのプラモを一緒にするな!!…くそっ勇者といい貴様といいバカにしやがって」


勇者がねぇ?…あの性格なら盛大にバカにしたんだろうなきっと。


「悪かったよ…でもこれでアリーナンの件は終わりだな?それじゃ報告に移るぞ」

本人が気絶したまま終わったな…まあ、いいか。


「我から報告しようかの?バーマックと共に中央の敵部隊に一当てしたあとそこから分かれて、我は魔族の抑えに向かい替え玉に手間取り取り逃がしてしもうた。恐らくアレが指揮官じゃろうて、奴が逃げ始めると魔物も撤退を始めたからのぅ」


ガネが言ってた名前は確かジャンだったか?


「んじゃ、俺な?左翼の『冒険者』の『援護』をしてた以上」

魔族の事を言えない以上こんなもんだ。

後は竜の事だが手柄が欲しいのか手柄を立てさせたくないのか分からないため伏せる。


「そういえばどのくらいの被害が出たんだ?」

これは、聞いておきたい。


「…参加した王国軍5000の内2000がやられました、ほとんどが魔剣による味方の暴走です。冒険者は後方のためほとんど被害がありませんでした。」


2000かかなりやられたな…さすがに仲間は切りたくないよな。

もっと早くクシャーラを潰せてたら、また違った結果だったのだろうが…


「ありがとう、もう聞きたいことは無い」

脅されてるの?とか聞いても、俺にできる事が無いからな…


「……分かりました、報告ご苦労様です。ファルナーク殿もご苦労様でした。下がって良いですよ」

そう言われ外に向かい歩き出そうとしているとバラーグから俺に声がかかった。


「今度、城に寄ったら僕の部屋に来い。……無双武者・合体シリーズ作っといてやる」


コイツ…

「ボッチか?」


「ちっ違う!僕はただ…あれだ!城のやつ以外にも見て欲しいだけだ!!」

コイツ実は良い奴なんじゃないのか?

まあ、アリーナンを殺そうとした地点でアウトだが。


「アホウ、まずはその極端な性格を直して嫁さん貰え。結婚式には行ってやる」


「全くじゃな、バラ坊の兄共に結婚は一切期待しとらんがお主なら何とか行けるじゃろう。王家の命運はバラ坊の肩にかかっておるぞ!!」


ルナ、それはプレッシャーにしかならん。


ぐむむ、と唸るバラーグの顔を一瞥し、爪とぎに夢中の白を拾い上げる。

あたり一面削り節だらけだ…放置しすぎたな。


そしてテントを出ると…


「ちょっと待ってください!」

ハフロスが慌てて出て来た…何かあったか?

「すいませんが…アリーナンさんを…」


……忘れてたな。


「すまん、ルナちょっとアリーナンを取ってくる」

「うむ、噛み付かれんようにな?」


俺の扱いも相当だが…

ルナの中でアリーナンはどうなっているのか聞いてみたいものだな。


俺はアリーナンを回収しサウスの元へと戻るのだった。


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