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猫守紀行  作者: ミスター
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付加袋と新しい加護

新しい加護…これで一南もチートに!!

女将さんから水を貰い啜っていると。

キャッキャッと騒がしくマルニ達が食堂に入って来た。


マーミナは少々お疲れのようだが、アイリンは楽しそうである。


「そろそろ良いか?バスハールは先に帰っちまったんで送って行こうかと思うんだが?」

「貴様など必要ない。私だけで十分だ」

まあ、そうなんだけどな。


「俺も祭壇に用があるからな。付加袋を作ってみたいんでな」

こちらがついでなのだが、何時までもバスハールの同類と思われるのは嫌だった。

疑いの眼差しで見てくるマーミナ。


「まあ、いいだろう。しかし姫様には近づくなよ」


なんて面倒な…見た目は村娘、怒ると般若。

それがこのマーミナという女である。


「そう言えばバスハールは結婚してないのか?」

王族なら政略結婚とかありそうだが…


「……殿下は『三人共』伴侶が居られない。バスハール殿下は…年下趣味で成人していない子を好む趣向が他国にも広がっているため縁談が来ない。バラーグ殿下は第三王子という事でそれなりに結婚の話は来るのだが…縁談の席で趣味の人形を見せたりするため未だ成功していない。シャーニス殿下は熟…年上好きで50歳以上のお相手をご本人が探している最中だ。…ハンカーテス王家は次の代で潰えるかもしれん」


そう言ってアイリンを見るマーミナだった。

ハンカーテス王家…業が深いぜ。


「あ~…何か、すまん…」

三人の王子の中で比較的に結婚できそうなのがなのがバラーグだとは…他の二人はどうしようもないな。


マルニ達は別れを惜しんで抱き合っていた。

短い時間でえらく仲良くなったな…


「今度はお城に来てねマルニちゃん」

「うん、白ちゃん達と行くね!アイちゃんもまた来てね!」


別れはすんだのかアイリンがこちらにやってくる。

「楽しかったか?」

「はい!素敵なお友達を紹介してくれてありがとうございます!」


アイリンは年の近いお友達が出来てうれしそうだった。


「そんな畏まって礼を言われるほどの事はしてないんだかなぁ」

……バスハールからマルニを逃がすためでもあったしな。


「まあ、礼は受け取ろう…そろそろ行くか?」

はい。と返事をするアイリン。


宿を出るとマルニが見送りに出てきて、見えなくなるまで手を振っていた。

「またね~!アイちゃん!」

「うん、またね。マルニちゃん!」


アイリンと黄助をサウスに乗せ、白は白専用皮袋に入れた。

宿を後にし城へと向かう。


「そう言えば、祭壇へのお供えって何を供えりゃいいんだ?」


「貴様そんな事も知らんのか神は寛大…いや適当だ。お供えといっても供える側の気持ちが伝わればそれこそ、そこらに落ちてる石でも問題ない」

マーミナは寛大を言い直し適当とか言っちゃった。

そうか、何でもいいのか。


「供えたら持ってかれるのか?」


「いや、そんな事は無い。というか本来無償の物なのをこっちが勝手にやっているだけだからな。それを合図に降りてくるのでお供え物と言うようになったらしい」


なるほど合図替わりなんだな。

しかし、マーミナは聞けば意外と質問に答えてくれる。

根が真面目なんだなコイツ。


城にアイリンを送り届け俺は白達と祭壇に向かう。

商人達の列の最後尾へと並び順番が来るのを待つ。


その間に白を袋から取り出し黄助の上に置く。

黄助に預ければ、とりあえず自由すぎる行動は回避できるからだ。

城の中で迷ったら流石に面倒である。


ようやく順番が来て俺達は祭壇の前へと足を運ぶ。

白は黄助の背中でお休み中だ。


とりあえず財布代わりの袋と寝ている白を供えてみた。

次の瞬間、一瞬でドーム型の結界が張られ目の前に穴が開いた。


そこから聞こえてきたのは、実に寛大な神の言葉だった。


「ちょ、オレッチが呼ばれてるんだぜ?ソコは譲るだろフツー!?」

「はぁ!?白ちゃんはアタシに会いに来たのよ!邪魔しないでよ!」

「皆さん落ち着いて、ここは公平を司るこのワタクシめが……」

穴の奥から沢山の声が聞こえる…


取りあえず穴に近寄り、端を持って閉めようとフルパワーで頑張ってみた。


「ちょいちょいちょい!何閉めようとしてんの!?閉まらないからね!?俺の次元の力で開けてるから、閉まらないからね!?」


「そう、コレは戦いだ…神との戦いと認識すればいけるはず!」

加護よ来い!!と叫びながらさらに力を込める。


我ながらアホな事をしているとは思うが…

次元の神くらいは釣れるかと思って白を供えたが、まさかと神が群れでやってくるとは思わなかった。


穴から漏れる膨大な神気とでも言おうか、それを受け多少パ二ックになっていたのは認める。


「え!?何か次元の穴がギシギシいってるんだけど!?ホントに人間ですかね、おたく!?」


くっこれが限界か…


「こうなったら……斬り散らす!!」

居合刀『刻波』に手を掛ける。


「ヘイヘーイ!OK!分かった俺一人で行くから剣から手を放しな。何かお前、ホントに斬りそうでコエーよ!!」


「ちょーと待ってなよ?今話を付けてくるからさ!」

声はそう言うと一瞬聞こえなくなったら、穴から一人の男が出てきた。


「ちょいーす!貴方のそばに『次元の神』。ことタヌゥークァでっす!」

イェーイ!と横ピースを決めるチャラ男・タヌゥークァ。

後ろの穴からは「じゃんけんホイ!」と連続して聞こえてくる…


タヌゥークァの見た目はチャラ男これに尽きる。


茶髪に青目、髪は目にかかるほどに伸ばして分けている。

服装は恐らくこの世界では売っていないだろう白のスーツに赤のシャツ。

薄いサングラスをしてどこのホストだと言いたくなる。


黄助とサウスは神共の神気に充てられたのか近づこうともしない。

白はこれだけ騒がしかったにも関わらず、祭壇でお休み中である。

取りあえずだ…


「ふん!」

俺は腰を入れて割と本気で胴体を殴りに行った。

当てるだけなら頭より胴の方がやりやすい。


「ちょいなー!?…いきなり何すんだよ!?」

外したか…


タヌゥークァは…言いにくいな田中でいいか。

田中は体をくの字に曲げ回避した。


「お前に会ったら取り合えす殴ろうと思ってな。余計な物扱いしてくれた礼だ。一発でいいから、な?」


「いやいや!?お前、付加袋作りに来たんだよね?っく、仕方ないアレは俺も悪いと思ってたんだ。……よし!ひと思いにやってくれ!」

そう言って頬を突き出してくる田中。


俺は殴るため構えを取る。


神薙流・無手武技『杭月(クイヅキ)』コレは…ただの一本拳での打突に回転を加えて相手の鎧ごとブチ抜くというおバカなロマン武技だがそれを実現してしまうのが神薙流の怖い所だ。


「いくぞ?」

「あれ?何か必要以上に殺気を感じるんですけど?」


「おらっ!!」

キュッゴウッ!と音を立てて頬に向かい奔る拳。


「NO~~~!?」

それを地面に転がり避ける田中。

戦闘力は無いようだ。


「ふぅ、全く……避けるなよ?」


「今の完全に殺ル気でしたよね!?殴ってもいいとは言ったけど…あれ?俺その剣持ってきた時点でお咎めなしじゃね?」


今更、刀に気づいたようだ。

確かにこれがあって助かってはいる、が。


俺的に余計な物扱いが気にくわないので殴ろうと思う。


改めて拳を握ると田中がストップを掛けてきた。

「チョイ待ち!いったん落ち着こう、な?付加袋も作るときサービスしてやるし、お前に渡さなきゃいけない物もあるんだよ」


むぅ、仕方ない。

「分かった。渡すものって何だ?」


「それは後のお・た・の・し・み♡先に付加袋からやっちゃいましょうね~」

イラッとしたが我慢だ俺…


そう言って白の横に置いてある袋を手に取る。

視線は白に釘づけだが。


「うえへへ、やっぱ生は良いね~可愛さが違うよ。起こさないようにしないとね」

白の寝姿にデレデレの田中。


これが神である。


今までスルーしていたが、先ほどから穴からはずっとじゃんけんホイと聞こえている。

恐らくこの次に行った祭壇か教会ではジャンケンの勝者が現れる事だろう。


もう一度言おう…これが神である。


俺はさっさとやれと拳を握る。

「おうふ!メンゴ、メンゴ!あんまりカワユイからさ~!じゃあ、さっさとやっちゃおうかね」


田中はそう言うと袋に「ホイッ」と神気を込める…軽いな。


「はい、カンセー。何でも入る次元袋~!この城くらいだったら軽く入るようにしといたから。使い方は入れたいものを近づけるだけ!出したいときは手を突っ込んで頭にそれを思い描くだけという親切設計!」


確かに便利だ、便利だが…さらっと、とんでもない事を口走ったぞ。

そんな容量を財布に求めてはいない。


「さて、続きましては、お楽しみの我々神様からの贈り物で~す!」

そう言って懐から20cmほどの球を取り出した。

その服のどこに入ってたんだよソレ…


目まぐるしく色が変わるその球は途轍も無い力の塊だった。

田中はそれをこちらに向け…投げた。


「はぁ!?何しやがる田中!!」

迫りくる球を避ける俺。


「タナカ?あ、それ避けても追ってくるから当った方が良いよ。害は無いから大丈夫」

避けるたびに速度を増す球。

もう既に当たるのには勇気が必要なレベルの速さになっていた。


「くっそ、何でこんなに必死にならにゃいかんのだ…」

俺の避けられない速度まで上がって、初めて球が掠る…すると球は俺の中に吸い込まれていった。


「……おい、田中。あれはなんだ?」


「俺の名前は…まあ、いいや。あれは俺達神々が総力を挙げて作った加護だよ」

なに?ついに俺もチートという奴を手に入れたのか?


「名前は『猫の揺り加護』眠りの神と愛の神の力を借りてお前の近くでは白ちゃんが幸せとする夢を見たり、お前のそばにいると白ちゃんの魔力や体力の回復量が上がったり。本来ない『安らぎ』を四苦八苦しながら作ったり、加護の力で猫のための神具…キャットフードや、猫じゃらし。ネズミの玩具とかオリハルコンの爪とぎ板とかを発現できる優れものさ!」


うむ、俺への加護じゃなく白のための加護だった…

どこいらに総力を結集したのか分からないラインナップだ。

オリハルコンの爪とぎ板って何だよ、負けるだろ爪が。


「もちろんお前にもちゃんとメリットは有るよ?」

「え?嘘だろう?」

まさかの事実!白大好きの神様たちが俺の事も考えてくれてるなんて…


「その少ない魔力が微妙に上がったり、魔法を使った時威力が微妙に上がったり…俺達の嫉妬を一身で受けれたり」

前の2つはともかく、最後のは完全に私情じゃねえか。


「まあ、こんなトコだ。それじゃ退散するけど白ちゃんに怪我とかさせんなよ?」

アデュー!と次元の穴に消えていく田中。


「くっ!殴り損ねたか…」

田中が消えると同時に結界も消えていく。


ん?もしかして田中に頼めば新しい煙草の入手も可能だったんじゃないか?

明らかに俺の世界の服だったし…くっ、何故俺は気づかなかったんだ!?


煙草が手に入ったかもしれない事に多少凹みながら。

終始起きなかった白を拾い上げ、結界の端で神気に当てられ大人しくしていたサウスと黄助の元へと向かう。


2匹の頭を撫でながら。

「相手は神だ仕方ない、その言葉で済ませたくないなら強く無りゃいいだけだ、な?」


「がぅ」

「ガウッ!」

黄助とサウスは当然だと言わんばかりに吼えて答えた。

俺もあの神気でパニックになったくらいだ…もっと鍛えにゃならんな。


黄助はのそのそとサウスに乗り鞭で白を指さす。

乗せろって事かね?


モゾモゾと起きそうな白を黄助に乗せる。

「み?……み!」

シャキーン!と黄助の上で四足で立ち上がる白…こいつは大物だ。


「がぅ」

「み~…」

黄助に声を掛けられ座る白、座れ。は~い。といった所か?

その様子に頬を緩ませながら俺達は祭壇を出るのであった。



城から出て来た俺達は、精神的に疲れたので宿屋で1日潰して。

次の日ギルドに向かう事にした。

田中に煙草を頼めなかったのが、堪えたんだよ…



「それじゃ、女将さん。行ってきます」

「ハイよ!しっかり稼いでおいで!」


女将さんの声を背に受けてギルドに向かい歩き出す。

そろそろギルドで仕事をしないと、自分が冒険者になったことを忘れてしまいそうなのだ。


あまりあそこには入りたくないが…


白は自分のまわりの空気は綺麗にする(それが目的じゃないだろうが)精霊神の加護があるから大丈夫だが。

少なくともサウスと黄助は一緒に入れない。


俺ですら鼻が曲がりそうな場所に、鼻の良いサウスとか必要に迫られない限り入れたくない。

黄助も同様だ。


ギルドの前で足を止める。

「サウスと黄助はココで待て。理由は…分かるな?」

もうここに居ても香ってくる芳しい香り…まあ、中はそんな生易しい物じゃないが。


サウスはすでに顔をしかめている。

流石の黄助もサウスの上で一歩引いた。


…白は相変わらず無邪気だ、飛んでる虫を見つけ黄助の上からのダイビング猫パンチに失敗していた。


「み~…」

キャッチに失敗して消沈して、ぽてぽてと足元に寄ってきた白を拾い上げる。


「ふ~…うしっ!行ってくる」

実にアリーナンやソルファの気持ちが良くわかった。


俺は気合と共にギルドの扉を開くのだった。


チートなりませんでした…


神様的に一南より白でした…

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