共闘志願
イチナside
「で?どうやったらあの駄神は復活するんだ?体ボロボロなら治しゃいいのか?」
自分で言うのもなんだが、無計画の極みだな。
復活させるのは決めてたが、どうやってそれをするかは考えてなかったからなぁ。
その問いに答えたのはフレアリアだった。
「私が地上に降りてきた理由は『邪神が復活する兆しがある』から体を治せ。と命を受けたからなの。恐らく邪神の使徒の召喚魔法が妥当なところでしょうけど、アレは体を治したところで邪神が神域の牢獄から出ない限り自主的に降りて来る可能性は限りなく少ないわ。あなたが体に近づけば何らかの反応を示す事もあるでしょうけど…」
邪神復活かぁ…。
あのくそ野郎が上手くやる事を願うしかねぇかね?
そういや…。
「神域ってのは何処にあるんだよ?行けるとこなら取りあえずカチコミしにいかねぇか?」
「鬼いさん、そんなコンビニに行くみたいな感じで言わないで…。お願いだから。最近胃の削れる音が聞こえるんだ」
「甘坂さん、神域は生身では行けませんよ。生身を捨て去るほどの悟りを開けば行けるかもしれませんが」
俺の疑問に王真君とばあさんが反応した。
王真君、そんな音は存在しない。幻聴だ。
胃液で穴は開くかもしれんが、氣でふさいでりゃそのうち治るから気にスンナ。
え?無理?そういう細かい調整得意だろ?大丈夫、逝ける逝ける。
そもそも、生身を捨て去るほどの悟りってなんだ…。
次元やら創造やらの神を見てると、とてもじゃないが悟りを開いてるようには見えねぇんだが…?
まあアレはアレで極まってるのかもしれんが。
駄目だ、神の事を考えたら余計に分からなくなった…。
悟りってなんだ…、そもそも俺とは無縁な気がするわー。
……まさか、アリーナンなら行けるのか?精神構造的に。
「あ、鬼いさんが駄目な方向に突っ走ってる気がする…」
「ええ、考え込んだと思ったら遠い目をしましたからね。確実に馬鹿な事を考えているでしょう」
ババアとヘタレがうるさい、分かってんだよ馬鹿な事考えてんなって事くらい。
「いえ、行きたければ行けばいいでしょう」
「マジで?行ってもいいのか?それで、結局どこにあるんだよ」
俺がそう言うとフレアリアは優雅に空を指差した。
その先には岩盤を貫いてできた大穴、ではなくそこから見える太陽が三つ…。
…おい、まさか。
「あの太陽の三つの内、一つが神域、一つが邪神を繋いでおくための牢獄なのよ」
「行けるかぁ!別の意味で逝ってしまうわ!!」
神共って地球外生命体なの?宇宙人なの?…いや、ここ地球じゃねぇけどさ。
それにしたって神域の位置おかしいだろ?!なんだ太陽の隣って…。
いやまあ、太陽が三つある時点であり得ない所だとは思ってたけどよ、最近じゃ気にも留めてなかった。
慣れて来ると割とどうでもいいんだよねぇ太陽の数って。
しかしそれじゃ、斬りこみに行けねぇじゃねぇか!?
「まあ、神々があなたのようなイレギュラーから身を守る術ですからね」
「あー、そうですかい…。畜生、何の解決にもなりゃしねぇな」
俺は思わず頭をガリガリと掻いた。
別に俺対策という訳ではないだろうが、過去には俺みたいな神に挑む奴もいたという話だ。
それの相手はさぞ面倒だっただろう。引き籠りたくなるのも分からんでもない。
皆が皆ガトゥーネみたいな訳じゃねぇからなぁ…。
だが、神域にも行けねぇ。創世神の体を治しても来ねぇ。じゃ話にならねぇ…。
どうしたもんか…。
「いえ、言ったじゃないですか。あなたが体に近づけば何らかの反応を起こすと。流石に創世神も体を壊される事を良しとしないはずですし、甘坂の事は特に警戒していますから本体といかなくとも、それに近しいモノはガーディアンとして配置するはずですよ。それを倒せばもしかしたら邪神を開放してまであなたを消しに来るかもしれませんね」
俺を警戒するあまり自分の天敵を開放するとかどんな馬鹿だよ。
流石にそこまで間抜けじゃねぇだろう。
しかし、ガーディアンか…。
俺は一瞬だけ王真君を見る。
…もし王真君が相手だったらばあさんもあっち側につくだろうなぁ。
非常にしんどそうだねぇ…。
………それはそれでアリか。
うん、中々に漲ってくる相手だな。
「まあ、邪神も監視の目を盗んでは色々やってるみたいですが。特に白がこの世界に来た時に発足された『加護を与える会』の会合の時に分霊体がしれっと交ざっていたのには驚きましたよ。多分それ以外でも動いているのではないでしょうか。近々『白は皆の使徒にする会』が発足される予定で、そちらにも顔を出すと言っていましたが、アリョーシャやタヌァーカァ等の重要神物が抜けたためお流れに…、残念ですね」
…ん?なんかの聞き間違いか?すごい馬鹿な事が聞こえたんだが…。
それに、邪神が割と自由に出歩いてるイメージが…。
「……は?そもそも封印?されてんじゃねぇの?」
そのためだけの出てきてましたからと、俺の中の邪神のイメージをとことん崩して来るフレアリア。
「え?白って邪神の加護も受けてるの?」
「そういえば、あの仔の加護は数が多すぎてただ加護の反応を探るだけでは何を受けているのか全く把握できませんからね…」
「まあ、ゴチャっと入れましたからね…。受けていない加護は創世神の加護と戦の神の加護くらいじゃないでしょうか。牢獄に繋がれていても、創世神と対をなす神ですからね。そのぐらい簡単に出来るのでしょう」
俺は次元袋にある加護リストを思い出す。そういやソルファに預けっぱなしだな。
…駄目だ、読んだ記憶が前過ぎて思い出せねぇ。
いや、思い出す以前に、覚える価値無しと完全に流し読みだったしなぁ…。
かといってもう一回アレに目を通す気にもならん!
というか白に加護を与えるためだけに監視の目を盗んで分霊体を送り出すって…。
しかも白を皆の使徒にするって…。
「…分かりきってたが、(お前等全員)馬鹿なのか」
「いえ、猫好きですよ。彼女は」
通じてねぇか、まあいいけど。
…しかし、女なのか邪神。
たしかダチュカーダっつう名前だったな…。名前で判断出来ねぇよ。
そういやクソ野郎が美しいだの麗しいだの言ってたっけか。
女の猫好きってこの世界じゃヤバい匂いしかしないんだが。アリーナンとかギルドのマーニャとかさぁ…。
創世神と対をなす神って言っても、そこまで対にしなくてもいいだろうに。
邪神は復活しなくてもいいと思い始めた俺が居る。
「まあ、ここでうだうだやってても仕方ねぇし、取りあえず創世神の体でも殴りに行くか」…ガーディアンってのにも興味があるしなぁ。
もし王真君達が相手だったら無手は厳しいんだよなぁ。
仮に王真君が相手だったら武器破壊から狙って、こちらの土俵に引きずり込んでみるか。
「私としてはそのまま爆散させてくれた方がありがたいのですが」
「ディニア、それ教会関係者の台詞じゃないよ…」
「まあまあ、勇者殿。ディニアは私の使徒ですから、それくらいでないと困りますわ」
「それもどうかと思うがねぇ…」
相変わらずのぐだぐだっぷりだが、俺達は一応の目的を決め歩き出した。
創世神の体が安置されている『元』大聖堂、現爆心地に向かう。
……で、半ばまで来てみたんだが。
恐らく爆心地であろう体のある場所には、鎧姿の男たちが集っていた。
「なあ、あれがガーディアンか?」
「いや、違うと思うよ」
「ええ、王真。あれはただの本部の教会騎士です。およそ500ですか。……良く残って居ましたね」
「ええ、全くね。地下にでも居たのでしょうか」
もうここが地下だよ。
これ以上下があんのか?…ああ、騎士たちの練兵場でも作ってあったのかもしれねぇな。
あれだな敬愛する神様に無様な鍛錬は見せられないとかそんな感じの理由で。
で、異常があったからわらわらと出てきたってとこかね?
取りあえず神気一閃で……チクショウ、刻波がねぇんだった。
ん?なんだ?爆心地を中心に魔方陣…?
教会騎士達が『溶けて』いく…!
「…鎧ごとかよ、見てて気持ちのいい光景じゃねぇな」
思わず呟いた一言に、王真君もばあさんも顔を顰めつつ同意する。が、
「あら、生贄の陣ね。態々吸収系じゃなく融解系を選んだのは中々のセンスね。という事はあの教会騎士達は創世神の『神託』でも受けてあの場に呼び出されたのかしら」
フレアリアはその光景を見ながら、どこからか取りだしたティーセットで優雅にお茶を飲み始めた。
お茶を含むために口元まで上げたヴェールの下からは、愉悦すら感じさせる笑みが覗いていた…。
…これが治癒の神だもんなぁ。
相変わらず神共カオスってんな。
こいつは世のためにいなくなった方が良い部類じゃないだろうか?
邪神だと言われても俺は疑問すら覚えんぞ、きっと。
サラっと言ったが創世神のやる事も中々にゲスいな。
邪神は猫好きだって言うし、なんか敵意を持ち辛いとこがあるのに対し、このゲスさ。
すさまじく好感が持てる。
一通り教会騎士が溶け終わると、その血肉は魔方陣の上で圧縮され、人型となった。
しかし、あれがガーディアンか?その数は5体。この感じ、神気も使えそうだなアレ。
まあ、じゃねぇと創世神がガーディアンとして送るわけねぇわなぁ。
「…ガーディアンは王真君じゃねぇのか。やっぱお前さんは創世神の切り札的な何かなのか?」
「いや、僕に聞かれても。でも僕は、戦わずに済んで心底安心したよ…。ん?あれ?」
あ、可能性としては王真君も考えていたんだな?だから歩くのが遅かったのか…。
ガーディアンの見た目は禍々しい黒い人影としか言えない。
実体がないのかもしれねぇ、なんか存在自体が揺らいでやがる…。
「……アレはやばい。鬼いさんぜぇったいに!アレに近づかないで!お願いします!!」
「そうね。本当に止めてくださると助かります。しかし、アレをあそこに配置するとは…、1体ならまだしも5体…。これは私達も近づけませんね」
あのガーディアンがなんなのか分かったのか血相を変えて全力で頭を下げる王真君と、
王真君とは違い冷静なばあさん。
「おい、フレアリア。どういうことだよ?そんなに強い奴らなのか?」
「あら、イイ顔で哂いますね。そうですね、名を『ドッペドリアンペローペロルゲンガー』ドッペル系の最上位種です。創世神がガーディアンにしたのならば真似た者以上の力を出してもおかしくはないですし、私のような神すらも真似て来るでしょうね。離反した神がこちらに付いているのは創世神も分かっていますし」
「上位種の『ドッペドペロルゲンガー』ですら僕の神薙流を完全にコピーしたんだ。劣化なしの鬼いさんが5人も相手とか想像もしたくないよ僕」
ああ、王真君は前に上位種と戦った事があるのか。
それの最上位種、なるほどそりゃ何敵だ。
しかし、名前がヒデェ…。
余計なものが挟まりすぎて、可哀想になってくるレベルでヒデェ。
もう、真とか強とか改とか改二とかで許してやれよ…。
「名付けたのは邪神です」
あれだな、エギュニートのローブや四本角の名前とかはマシな方だったんだな…。
……ん?神でも真似れる?
…ヤベェ気付いちまった。
それじゃあ、あいつの前に立たせれば田中に実害なしで殴り放題とか、対神用鍛錬とかも出来るってことか…!一体といわずに鍛錬分欲しいな、…100体位次元袋に詰めれねぇかなぁ。ああ、生き物は詰めれねぇんだったな、クソッ!…田中め、戻ったらアバラを貰う」
「鬼いさん、途中から思考が駄々漏れだよ…!それに次元袋に関しては、次元の神様は悪くないから!悔しがるところがおかしいよ!」
「でも王真、無許可でここに飛ばしたのだからアバラくらいいいのではなくて?神様なんだから肺に刺さっても大丈夫よ。きっと」
「そうねぇ、肺に刺さってもゆっくりと治してあげるから大丈夫よ。でも、あの子の悲鳴は悲壮感がなくて私好きじゃないのよ。プライドも低いですし折る価値も無いわ」
「次元の神様の味方がいない…!」
むしろこの二人が田中の味方をすると何故思う。
そんな馬鹿な事をやりながら、気付かれないようにそろりと一歩前に進む。
……おかしい、5体だっだドッペルが8体に増殖したように見える。
もしかして近づくだけで増えるのか?あそこにたどりつくまでに相当イカレタ数になるぞこれ。
それとも時限式で増えたタイミングと踏み出したタイミングが重なっただけか?
どちらにしろヤバい事に変わりはないが。
そう思いながら更に一歩進む。…うん、更に3体増えたね。
「…鬼いさん。そこから前に一歩も進まずに後ろに下がって。お願いだから…!」
「…下がりなさい甘坂さん。こちらは4人。もし一歩進むごとに増えるのだったら手に負えません。しかもフレアリア様と甘坂さんを真似られたら、目も当てられません…。ここは退きましょう」
「甘坂はともかく、私の名が何故そこに入っているのかが疑問ですね。私は治癒の神でありカヨワイ淑女ですよ?」
フレアリアのその言葉にツイと目を反らす王真君とばあさんだった。
流石に6体増えた事にはすぐに気付いたようだ。
そしてその原因が俺の一歩であることもお察しのようで、厳しい目を向けて来る。
何故俺だと思うのか聞いてみると、鬼いさんだからとしか返ってこない。
それは理不尽だろと思いながらも、俺は踏み出した足を下げながら、元の位置に戻る。
「……5体に戻ったな。誰でも増えるのか、やってみてくれ」
それぞれが歩いてみたが、ばあさんとフレアリアではドッペル達の増える数が俺とは違った。
ばあさんは30歩歩いて1体、フレアリアは10歩で一体増えた。
反応しなかったのは王真君だけだった。
やはり創世神の使徒という事で反応しないのだろう。
俺だけ1歩で3体……どんだけ警戒してんだあの駄神。
ならば…。
「よし、王真君。殺ってくれ」
「無理だよ!?」
「いいか王真君。例え自分より強かろうが、生き物なら大体首を刎ねればば死ぬ。相手より早く刎ねればお前さんが死ぬ事はない。だろ?」
「そんな甘坂理論を持ちだされても行かないよ!?」
うーむ。何も接近戦でやれとは言ってないんだが…。
神気の斬撃をブッパしてくれりゃいいと思ったんだがねぇ。
俺はやりたくても得物がなくて出来ないからな。
…あ、王真君のは砲撃だったか。言い方が悪かったな。
「…ん?あれは?…ハッ、腐れ縁か?嬉しくもねぇな」
一瞬空が陰ったと思い、見上げてみると。
そこには、四本角の竜と半透明の人型術式で囲み大事そうに姫抱きにするクソ野郎が飛んでいた。
徐々にこちらに向かって降りて来る。
「天神の体を確認しに来てみれば…はぁ、帰るか。ここに甘坂が居るのならば、あの魔族共を探した方がまだ建設的だ」
[はぁ、全くだな。今の状態でこいつの相手などやってられん、帰ろう]
おい、俺を一瞥してそれか。二人揃ってため息ついてんじゃねぇよ。
…なんか無気力じゃねぇかこいつら?
いつもは敵意むき出しなのに…、いや、割と俺が挑発する部分も多いからなぁ。
しかも、気力もなけりゃ余裕もねぇな何があった?
「いやしかし、随分と…なんだ。ゆかいなキャラになったな」
「鬼いさん、あれって邪神の使徒、だよね?」
王真君が警戒しながら問うてくる。
そうですよ。王真君が疑問に思うほど無気力だがな。
根暗で、黒ずくめのローブ姿で人形遊びする変態…。
まあ、あれ絶対普通の人形じゃねぇだろうが。
最初会ったころはコイツ自体が感情が薄くて人形臭かったが、今のこいつは人間臭ぇ。
というかコイツも竜も目はどす黒く燃えてるのに、生きる力だけを失ったっつうか…。
矛盾してるが、そんな感じ。もしかして魔力切れか?どっかで大規模な戦闘でもこなしてきたのかねぇ?
しかし見事なまでに覇気がねぇ。竜の方も一回り小さく見える程だ。
…まさか分身魔法的なやつか?いやでもアイツの中の氣は本物だしなぁ…。
ん、どうやらクソ野郎もドッペルに気付いたようだ。
つうかそれ以上近づくな。めっちゃ増えてるからあいつら。
「…あれは、我らが神に名を与えられながら天神の守護などしている愚か者か。ふん、増殖の特性を植え込んだか。随分と改造してあるみたいだな。…何時もならば斬撃を飛ばして終わりだろう?何を躊躇している甘坂」
クソ野郎と四本角はあろうことか俺達のすぐそばに降りてきた。
やりあうつもりはないということか、その場に腰を降ろし大事そうに人型の何かを抱えている。
王真君やばあさんもかなり困惑しているようだ。俺だってそうだからな。
四本角の竜、バルドカールの視線が俺の腰辺りに向く。
[…得物がないのか。なるほど、天神の使徒の神気では無効化されるだろう。そして、それを切欠に真似られる。それで奴ら相手に攻めあぐねいているという訳か]
…そこまで考えてなかったわ。下手したら王真君五人衆との戦いだったのか。
それはそれでおいしい話だが。
「近づくのも駄目。下手な攻撃も駄目だぁ?あれか、一撃で消し飛ばさなきゃ駄目ってやつか?」
「……私が消し飛ばしてやってもいい。現状貴様たちではどうしようもないだろう?神もどきも居るがそれは治癒の神気だ。よほど接近しなければお前や天神の使徒のようには使えまい」
そう言われてばあさんとフレアリアに確認を取ると、頷かれた。
本当に打つ手なしだったのかよ…。
いっそのこと突っ込んでしまえば体が慣れる気がするんだがねぇ。
あ、数が増えすぎるってのも問題か。
コイツも創世神の体を確認しに来たつってたし、やって貰うか。
「ならさっさと「ただし、条件がある」…なんだ」
完全に敵対していたコイツから条件だぁ?本気で何があった。
「貴様にも悪い条件ではない。…戦の神もどきを殺すのを手伝って欲しい」
「戦の神って事は、アルスか。あの馬鹿は俺の獲物だ、そこんとこ分かって言ってっか?そもそも、お前等が本気で殺しに掛かったら、殺れるんじゃねぇの?」
多少の殺気と共に、俺いらねぇんじゃね?と聞き返してみた。
すると、少々の間無言だったが、エギュニートと四本角が頭を…下げた…?!
え?…はぁ!?何してんのこいつ等!?正気か!!?馬鹿なのか!?……偽物か?
「アレは私に慢心があったとはいえ我が神の復活を妨げた。アレだけは必ず殺さねばならない。そのためには確実と思える手は打っておきたい。…頼む」
[私からも頼む。自らの油断と慢心が招いた結果だとしても、我々は降魔の神に仕える者として、魔族の将を、王を、殺さねばならぬ]
被り続けた黒いフードを取る、フードの下から現れたのは、多少頬はこけていて、目つきの鋭い男だった。
顔を上げたその瞳にはどす黒い復讐の炎が宿っていた。
…アルスのアホウは大活躍だったみたいだねぇ。
邪神の復活を止めたって事はだ、創世神まで復活阻止してくれちゃったのかよ…。
どこの英雄だ。勇者より勇者してんじゃねぇのあの元魔王。
しかし、エギュニート…。
人間だったんだなぁ…、エルフとかを予想してたんだが。
「…そう、やはりその人型は邪神の精神体ね。意思が入る前に召喚陣を壊されたのかしら?」
「……そうだ。だが、まだ諦めはしない。…諦めてなるものか」
フレアリアの問いに苦々しく答えるエギュニート。
フレアリアはそれ以上は何も言わず、見守るだけだった。
「…今のは確認ですね。折れているか折れていないかの。まあ、それは良いとして、どうするんですか甘坂さん」
「鬼いさん、僕は反対だ。ここで退いて皆と合流すればきっとなんとかなる。こいつらと手を組むとデメリットしかないよ」
ふむぅ…。
「いいぞ。しばらく共闘するか。だたし、こっち条件はやる事に文句言うな。だ」
「そうか、感謝する甘坂一南。勿論条件も飲もう」
[礼を言う]
「ちょっ、鬼いさん!?……あの、鬼いさん?何でそんなにイイ笑顔?」
「…まあ、甘坂さんがそう決めたのなら仕方ないですか」
「ふふ」
唯一フレアリアだけが、楽しそうに笑っていた。
まあ、いいや言質は取った。
鍛錬の相手と称して殺しあいになっても、文句は言わせん。
バルドカールの鱗で防具作ろうと文句は言わせん。
後ろから天鎚ぶち込んでも、きっと事故だ。文句は言わせん。
アルスを殺すまでの協力体制だが、俺の気が変わって裏切っても文句は言わせん。
そうして俺達と邪神の使徒との共闘関係は出来上がったのだった。
ドッペル達を吹き飛ばした魔法の威力はすごかったですマル。
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