白衣の神もどき
遅くなって申し訳ありません。
エギュニートside
「…気付くのが遅れていたら危うかったか?」
遠方より飛来した神気の斬撃を手のひらに収まるほどに魔法で圧縮を掛けた。
…この神気の密度と量。
今まで与えたものと合わせれば、即座に我が神の精神体を召喚できるやもしれん。
[私とお前が事に当たったのだ、どのような状況だろうと問題ないだろう。それよりもいいのか?侵入を許して]
バルドカールの言葉を、手の上で神気の玉を転がしながら聞く。
[あれだけの『意思』を持った奴らだ。餌になりに行った訳ではないだろう。特にあの先頭白衣の神もどきだ、短時間でお前の結界術式を解析してのけたのだ『グラトニースヴェン』も危ういぞ]
「だが、都合が良いともいえる」
ああ確かに、一部とはいえ結界を破壊されたのは驚いた。
だが、態々『器』が自ら結界内に入ってくれたのだ、
神もどきとはいえ、その力は侮れない交戦する手間が省けた事は喜ばしい。
[都合が良い?……そうか、奴が器か!ならば…!]
「ああ、この神気の塊もある。戻るぞ」
私とバルドカールは転移で一気に結界内へと戻る。
しかし、魔都内に転移した私達が姿を現すと同時に、神気を纏った多数の攻撃が常時展開の障壁に突き刺さった。
「なに!?」
[いきなりか……なに?]
そこにいたのは白衣の神もどきでは無く……。
「おい、チャンター。はずしてんだろうよがよぉ?そのデカブツじゃあしっかり狙わねえと当たんねえぞ?」
「やかましい、ジャマカダ。貴様とて障壁に阻まれておるだろうが。双剣なんぞ使うから一撃が軽いんじゃよ」
転移のタイミングを完全に読まれていた!?
しかも、この老人達が今の神気を放ったとでも言うのか…!?
…まて、雑兵からも神気を感じるとはどういうことだ…!?
「ファスト・ザンバー!!!」
考えているうちに、背後からの強襲。
これも神気!まだいるのか!?
[これはまずい…!エギュニート!!]
「分かっている!!」
私とバルドカールはその場から高く飛び上がる事でそれをかわし、現状を把握するために視線を動かす。
そして把握した、あの白衣の神もどきの馬鹿げた所業を。
それはバルドカールも同じだろう。
[…あの男、結界内に入った軍団全てを『使徒』にしたのか!?]
バルドカールの驚きも当然だ。
使徒とは神の力を『分け与えられ』行使する者。
我が神や創世神でさえ、使徒を作るのを一体に留めている理由。
それは己の力が目減りするためだ。
人型では決して上げる事の出来ない階位、それを神と言う最上位存在が身を削り分け与え。
力の知識を魂に刻み、器を拡張し、そこに神気を流し込む。そうして出来るのが使徒だ。
神がどれだけ階位を与えたかによって使徒の質も変わる。
一体に集中的に力をつぎ込み絶対的な戦力を作りだすのが普通だ。
…これだけの数に力を分け与えるなど、あの白衣の神もどきはもう神としての力はほとんど残っていなおのではないか?
与えすぎると神としての存在すらも怪しくなるはずだ、こんな愚行を何故犯した?
「…神としての常識がまるでない」
[だが、これだけの神気が蔓延していると奴の場所も特定しにくい。奴が『グラトニースヴェン』の破壊を目論んでいたら厄介だぞ]
笑わせる、展開中のグラトニースヴェンの破壊は不可能だ。
神気すらも吸い込む悪食な魔方陣。
あの斬撃程の密度がなければ陣を乱すことすらできない。
そして、グラトニースヴェンの影響下でそれほどの密度の神気を練るなど、不可能に近い。
しかし、解せない何故こいつ等はこうも歯向かうのだ?
「……何故、貴様等はここまで反抗する?貴様たちの神でもあるだろう?その復活を拒む理由はないはずだが?」
《それには俺様が答えよう!!》
殺気をむき出しにする老魔族達の間を縫うように光の玉が飛んでくる…。
通信用の『言像』だな。白衣の神もどきか。
本体は……チッ、特定できんか。
《貴様の目だ。貴様も、そして邪神ダチュカーダ様も我々魔族を種としては見ていないだろう?そんなもの上に置くのはごめんなのだよ》
「…理解していないな。貴様等は我が神の道具。貴様達に許された事は使われる事に喜びを感じる事だけだ『従え』」
強い強制力を込めての言霊を発する。
「……!…これがアルケイドの言っていた強制力と言うやつか。確かにざわめくものを感じるがそれだけじゃな。坊ちゃんの読みはあたっていたようじゃ」
大きな戦斧を肩に担いだ老戦士がそう言った。
強制力の上塗り!
使徒ならば己の神の言う事さえ聞ければいい。強制力は自然とそちらに傾く…!
「そのための使徒化か…!」
《当然だ、アルケイドから報告は上がっていたからな。対策は練ってある。それに俺様の場所も特定できてないだろう?それに俺様だけじゃ太刀打ちできそうもないからな!以前戦の神に言われた事がある、俺様は戦う者ではなく創る者だと!だから、神とも戦える軍を創ってみたのだ!……半分以上実験入ったけどね!》
…こいつも、甘坂と並んで危険な存在か。
そもそも、我等の時代の術式を短時間で解析出来るのがおかしい。
器でなければ即座に消さねばならないと思うほどだ。
《…さて、ご自慢の魔方陣解析し壊させてもらうぞ。俺様が命じる!皆のもの、ガンバ!》
「……チャンター。アルスの坊に命令の出し方教えてなかったのか?これでは士気が下がるぞ」
「…すまんのワクバラン。最近まともになっとったゆえ、教育の方はおさえとったんじゃ。おそらく見慣れぬ術式を前にテンションがあがっとるんじゃろ…」
「まあ、いいじゃねえか!坊主らしいぜ。…さて、双将ジャマカダ押してまいる!」
双剣を持った老人。ジャマカダと名乗ったか。それが神気を発し、いたるところに『足場』を創る。
なりたての使徒だというのに随分と器用に神気を使う…。
この老人達、雑兵とは与えられた格も違う。
それだけあの白衣の神もどきから信を置かれているということか…。
興味が沸いて来た。
片手間にだが『アーカイブレコード』でこの老人達がどのような者達か調べてみるとしよう。
歯車で出来たモノクルのような検索魔法を左目に発動させる。
それを通して見たものの情報を引き出す事が出来る『サーチアイ』だ。
バルドカールにもアーカイブレコードとリンクさせたサーチアイを付加しておく。
それと並行してアナライズも作動させておく。
「うおらああ!」
ジャマカダは雄たけびを上げながら神気で作った足場を苦も無く駆けあがり、
双剣を左右それぞれ別の生き物のように巧みに振るう。
それを障壁で防ぐ。
他の二人はバルドカールへ、か…。
あちらの方が脅威度が高いと思われたのか、それともなにかあるのか…。
どちらにしろ、なめられたものだ。
「魔軍の老将、双将ジャマカダ。注意すべきはその戦闘服の背中に書き込まれた『喧嘩上等』の魔導紋を使ってのブーストである。か」
流石に将にもなると魂があるな、特性は耐性弱…。
これは風邪に掛からない特性だな。いらないな。
「んな!?…いやこれくらいやってくるか」
反則で己の手札を当てられジャマカダの表情は驚愕に染まるが、すぐに立て直す。
「アルスの坊はお前等を相手にする危機意識が足りてねえ。今の魔族全てに言える事だが、圧倒的に経験不足だな」
「ならばお前は分かっていると言うのか?」
そう言いながら、ダークレーザーを10本ほど放っておく。
「ちっ!『喧嘩上等』!!」
そう唱えた瞬間、ジャマカダの姿が眼前から姿を消した。
緊急回避のための一瞬の使用だったのか、10mほど先の建物の上にその姿を確認出来た。
「…これは、速いな。なったばかりの使徒がよくもまあここまで神気を扱えるものだ。しかしまだ神気での魔導紋の起動には慣れていないようだな」
建物の上のジャマカダの表情は引き攣っていた。
恐らく本人ですら予想外の出力だったのだろう。
だが、あまり長引かせるのも面倒だ。
「アーカイブレコードから特性予知を選択」
予知能力を自分に付加し、ジャマカダの先を読む。
甘坂には作動すらしなかったが、やはり優秀な能力だ。
「『ターゲットロック』。さて、お前はどれだけ迎撃出来る?『ダークレーザー』」
空中に50ほどの魔方陣をばら撒き、予知で見えた逃げ道を塞ぐように放つ。
足を止めるであろう『可能性』の30箇所に、地雷型魔導『ディメンション』
それすらも越えてきた場合に備え『スパイダーネット』を仕掛ける。
ディメンションは、広範囲に敷ける魔導陣で陣のどこか一か所でも踏めば、そこを起点に消滅する。
スパイダーネットは相手を糸で絡め取るだけの魔道だ、この時代にも同じような効果の魔導はあるだろう。
どちらも地雷型なので隠密性も高く発動も速い。
神眼か神気の扱いに長けていなければ見抜く事は不可能だろう。
「む、抜けて来たか……確率が一番低いと思っていたのだがな。ただ歳を喰っている訳ではないか」
「ぜりゃあああ!!」
背後からの急襲。だが、それは予知により見えていた未来だった。
ジャマカダ渾身の一撃は全方位六層神気障壁の三層目を斬り裂いたろころで…、スパイダーネットに捕らわれた。
見た処、左腕はディメンションに巻き込まれ消滅し、体もところどころ抉れている。
満身創痍の体で神気障壁を三層も砕いて見せたか…。
「強いな。いや、強かったと言うべきか」
スパイダーネットに捕らわれたジャマカダに手の平を向ける。
「ふん。ありがたくて涙が出るぜ。だがよ、俺にここまで手を取られてちゃいけねえよ」
ジャマカダはそう言いながらも未だ自由な右腕に持つ剣に力をと神気を込め、障壁を押し切り始める。
何が言いたいのだこいつは…?
「気付いてねえのか?なら俺も上手くやれたって事だな。それとも道具は気にも留めないか?」
「なに?…これは」
そう言われ始めて気付く。
あれほど居た雑兵が一兵たりとも見当たらない。
先ほどまで近くで戦っていたバルドカールも二人の老将に誘導されたのか姿を消していた。
「…お前は囮か。バルドカールを先に始末しにかかったか。それともお前一人でどうにかなるとでも思ったか?」
ジャマカダの剣の切っ先が障壁の第四層目を抜けたところで、向けた手の平に魔方陣を構築する。
体力的にもそろそろ限界だろう。
血を流し過ぎだ、これで止めとしよう。
「ま、ここまでか。孫とアルケイドの結婚式に出られんのは痛いが、戦場で散れるのは悪くない」
「…これで終わりだな」
私がダークレーザーで体を貫くのと同時に、にやりと笑いジャマカダは一瞬で体に残る神気と魔力を剣の切っ先に集中させ、その全てを釘に変えて撃ち出した。
一瞬で視界を埋める程の量の神気の釘が障壁の四層と五層の間を跳弾する。
跳弾に耐えられなくなり四層と五層が破壊され、六層目にも罅が入る。
「目くらましと障壁破壊を同時にやるか。最後の最後でやってくれる……な!?」
私は一から三層目までの障壁を消し、釘を外に追いやった。
釘を外に追いやるために消した障壁。
そして開けた視界に映ったのは、数多の神気による斬撃だった。
雑兵による予知の届かない範囲からの神気攻撃。
そしてその下準備のための障壁破壊と目隠し。
だが、障壁をもう一度張れば…。
障壁を張るための陣を構築していると、気になるものがアーカイブレコードから送られてきた。
…これは?
「…元暗将ブリンズ?何時視界に入った?」
ぼそりと呟いた瞬間、残った障壁が切り刻まれ、拘束された。
構築中の魔法ごと斬られたのか!?これは、神気で創られた糸か…!
「…ジャマカダは良い仕事をしてくれた。そのまま朽ちて行かれよ使徒殿」
宙に浮く私の真下からそんな声が聞こえた。
コイツ、瓦礫に擬態している…!何時からだ!?
最初からこれが狙いで兵を引かせたのか?
気配どころか神気すら漏れていないぞ?…こいつ等は本当になりたての使徒か?
…これでは障壁は間に合わんか……仕方ない。
「グラトニースヴェン出力アップ」
「何を…?」
膨大な数の神気の斬撃は私に当たる前に上へと逸れ、そのままグラトニースヴェンへと吸い込まれていった。
「あまり出力を上げると使徒である私や、バルドカールも影響を受けるのでやりたくはなかったのだがな。…さて、貴様達に力を与えすぎた神もどきは今頃どうなっているかな?」
「…若ならばこんなこともあろうかと、となんとかするでしょう」
神もどきはこの事態も予測済みだとでも言いたいのか?
会いに行こうとすれば追跡して場所を特定できた…、いや、この手合いには難しいか。
「…それに、独断でジャマカダの命を掛けた策を仕掛けて置いて、なんの損害も与えられなかった。では若に合わせる顔がない」
ブリンズはどうやら魔法による追跡を警戒する事に重きをおいたようだ。
この状況でも擬態に徹底している。
多少感心していると、真下の瓦礫が弾け、ナイフや針などが飛んでくる。
それを部分的に神気を集めてやり過ごし、その力でそのまま体を拘束している神気の糸を引きちぎり、そのままダークレーザーの雨を降らせてやった。
「…いない?逃げた?あそこまで言っておいて引いたのか?それとも今の攻撃で手傷を負わせられるとでも思ったのか…?」
そう呟いていると、上空から見慣れた影が差す。
[エギュニート、無事か]
「バルドカールか。そっちは終わったのか?」
私の隣にまで降りて来たバルドカールは、不満気に首を横に振る。
[あの剣士と斧使い、空を駆ける術を持っていてな。面倒この上ない。拘束して止めと言う時に、貴様がいきなりグラトニースヴェンの出力を上げるものだから、急いで来たのだがな…]
……。
何かしらの連絡手段を用いていたとすれば、ブリンズはそちらと合流した可能性が高いか。
こちらの追跡を避けるため、徹底して姿を見せなかったため、違う可能性もあるが…。
「悪かった。こちらも一人逃した。恐らくその剣士達と合流しているはずだ」
[使徒になりたてだが、しっかりと神もどきに力の使い方を送られたのだろう。それに経験と元々のスペックも高い。力を持っている神もどきよりも厄介だぞあいつらは]
神もどきは創る者らしいからな。
研究者気質ならば、使徒にする際に神気の使い方を研究結果……熟知した知識として送られているだろう。
戦闘者気質ならば大雑把な使い方しか送られないのだがな、面倒だ。
「来たか」
[一人増えてるな。お前が逃がした男か]
剣将ワクバラン。忠将チャンター。
そして腰の曲がった黒ずくめの男、元暗将ブリンズ。
それが出来そこないの使徒の軍勢を引き連れこちらに向かっている。
だが、グラトニースヴェンの影響で動きが鈍い。
それぞれが得物を構え、駆けだそうとした瞬間、魔都の外からの轟音。
ここから少々離れた場所から『神気の柱』が地面を裂いて立ち上った。
「これは……この感覚は!!」
[間違いないぞ!奴の体だ!!]
「なんじゃ、あれは…!」
「ガゾート渓谷の方角だな」
「あそこの地下には、魔国大魔脈しかなかった筈ですが…」
天神はまだ降りてはいない…。
あの体を使うとしたら今しかない。
「遊びの時間は終わりとしよう。特性『魔導王』選択。『グランドレイジ』」
グランドレイジで地面を崩し、隆起させ…。
[炎に巻かれろ!]
バルドカールが高速で近づき、火炎を吐く。
雑兵は一瞬で炎の中に消えた。
「…避けたか。なるほど。空を駆ける術か。一瞬だけ神気の足場を創っているのだな」
だが、出力を上げたグラトニースヴェンの影響下では足場の維持すらも難しい。
神もどきが力を残していたのならば補給される事もあっただろうが、それでは攻撃もままなるまい。
貴様等はそのまま糧になるがいい。
私は懐から神気の塊、恐らく甘坂が飛ばしたであろう斬撃を固めたものを取り出し、グラトニースヴェンのへと放つ。
神気の塊が吸収されるのを確認すると、仕上げの術式を発動させた。
「ああ…。神よ、我等が前に降臨ください」
sideout
アルスside
俺様はアルケイドと共にじっと耐えていた。
あたりには術式の模写や計算式などが乱雑に放りだされている。
「……分かるか、アルケイド。あの巨大術式、徐々に『縮んでいる』恐らく縮小しきった時が神の降臨だ」
「……」
力を吸収し召喚に当てる性質だと言う事が分かった。
魔脈からも力を吸い取っている事も分かった。
神気すらも力に変える事も分かった。
出力を変える事が出来る事は身を持って実感した。
小規模なら俺様でも展開できるほどには理解した、が。
理解したが故、力の収集中のあの魔方陣の破壊は不可能と判断した。
あくまで、収集中はである。
収集が終わり、完全に終息し、その機能を召喚に向けたなら?
そう、破壊できるのだ。これはすでに俺様が極小サイズのものをつくり実験済みだ。
なによりタイミングが良い。
あれほど偉そうに人を道具扱いした奴の悲願を直前でへし折る。
…やれば皆殺しだろうな。
なにせ老将が赤子扱いだ。
解析が終わるまでは命を大事に!と言っておいたのに、揃いも揃って無視しおって…。
ジャマカダのアホめ、リリスになんと言えばいいのだ…。
「アルス様、チャンター老達が…」
「あのバカ共…!…マギューロン退治がどうしてこうなった!!」
『ここは再建するための場所で、死に場所では無いぞ!死ぬなら老衰でぬくぬくと死ね!』
と通信を送る。
くそっ!兵が焼かれても、俺様には見ている事しか出来なかった…。
「あれは…、アルス様!ご命令を!!」
「やれ。やってしまえ。ぶった切れ、アルケイド!」
俺様が一番力を込めた使徒。
その猿叫が魔都に響き渡った。
「きぇええぇあああぁああぁあ!!!!」
sideout
エギュニートside
我らが神へと祈りをささげていると、「きぇええぇあああぁああぁあ!!!!」
とてつもない邪魔が入った。
この声、東郷老人と同じものか!
[いかん!!させんぞぉおおおおお!!]
バルドカール!?
[ぬぅうう!!!]
バルドカールの障壁が斬られ、現在は翼に神気を集め体で受け止めている。
それは、とてつもなく長く伸ばされた神気の……カタナ。
あれだけのものを一瞬で伸ばし、我々に直前になるまで気付かれないほどの剣速を持つ。
剣をたどれば建物の中から、それを両断しながらの攻撃だと言う事が分かった。
そこ目がけてダークレーザーを50程放つ。
着弾と同時に神気の剣は消えた。
「やったか…?」
「それはフラグと言うものだぞ、邪神の使徒よ」
いつの間にか老将のそばに、白衣の神もどきが立っていた。
…そうか、転移か。
「随分と舐めたまねをしてくれたものだ。だがもう遅い。見ろ、あれが我等の神、そして貴様等の創造主だ!」
召喚陣の中心から白い気体に包まれた人型が見える。
…お待ちしていました…。
「ああ。ああ!!我らが神よ……!「チェェストーーーーーーーー!!!!!」んなっ!?」
上空、魔方陣よりも高い処から聞こえたその声の主は、神気を纏った剣で魔方陣ごと、我らが神の精神体を斬り裂き、空中で体勢を整え空を駆け神もどきに合流した。
「フハ、フハハハハハ!!だから言ったではないかフラグだと!!良くやったアルケイド。……では」
[貴様等……生きて帰れると思うな]
バルドカールが唸るような低い声でそう呟く。
神は死なない。たとえ精神体を斬り裂かれようとも。
だが、意思が移る前に魔方陣を壊され、意思、精神体、体をバラバラにされ、この世界に降臨させる事が出来なくなってしまった…。
私とバルドカールが動こうとした瞬間。
「さらばだ!!」
老将とアルケイドを伴い消えた。
[馬鹿な!!あの転移魔法はこの時代には無い!!]
「…まさか、最初の転移時に解析されていたと言うのか…!くそっ!!」
外にいる道具共もすでに非難済みとみて良いだろうな……。
「……あああああああああああああああああ!!!!!」
殺す。殺す殺すコロスコロスころすころす。
あの白衣の神もどきだけは、この手で確実にコロス。
sideout