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猫守紀行  作者: ミスター
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王と時姫の不思議な関係

数々の高そうな調度品。

一つの石を切り出して出来たかのような壁。

警戒を怠らないサウスの上で呆れる黄助と、その黄助の上で鞭で遊んでもらってる白。


謁見の間に行く間に見ただけだが、中々に面白い物だった。

動物タワーが一番面白かったが。


謁見の間に続く赤い絨毯の敷いてある長い廊下を渡り、重厚な扉の前にたどり着く。

赤い紋の入った鎧の兵士が2人番をしており、手に持つ槍を重ね用件を聞いてきた。


「止まれ!現在謁見中のため、用件があるのなら謁見後にお願いします」


「近衛黒金隊隊長のガナクス・グレームよ。王の命でお客人を連れて来たのだけれど、誰が謁見しているのかしら?」


「それは……言えません」

そう言って下を向く兵士、コレは王子の嫌がらせか?


「…あら貴方達、意外と可愛いのねぇ。どう今晩?3人でお酒でも?」

ジリジリと下がる兵士達、ウフフと笑いながら詰め寄るレーム。


「何をやってるんだ、お前は…」


「あら?だってこの子たち近衛灼剛隊じゃないのに、こんな所で門番なんかしてるんだもの。からかったって良いじゃない?それに貴方達と合流した時点で部下を走らせたの。もしこれが緊急の謁見なら部下から知らせが来るはずよ。…それに、貴方達バラーグ様の兵よね?諜報部隊を甘く見ないでね?」


近衛灼剛隊は王の護衛的な役割か?

諜報部隊にしては口が軽いな。


「要はただの嫌がらせか?器が小さいな」

俺の言葉にそうねぇと同意するレーム。


レームは俺達に背を向けて、扉に向かい息を吸い大声でこう発した。


「黒金隊隊長のガナクス・グレーム!お客人を連れてまいりました!」

辺りにビリビリと響く野太い声。

凄く煩いです。


動物タワーから、白が転げ落ち。

大声に顔を顰めながらも黄助が鞭で救助する。

サウスが毛を逆立て威嚇し、アリーナンが耳を抑えてのた打ち回る。

ハーネとリンマードは耳を抑えうずくまるが、ソルファは直立不動であった。

俺は息を吸い込んだ時点で耳に指を入れ難を逃れている。


カオスである。


「あら?聞こえなかったのかしら?ならもう一回……」

先ほどよりも大きく息を吸い込み始めるレーム。


俺は無言で背中に掌打を放った。


「ぶぼばっ!」

ゴガンッ!!!


…デカいノックになったがまあいい。

次やられたら、ここに居る全員の耳がおかしくなる。


後ろを振り返ると兵士を含む全員がサムズアップしていた。


「何事だ!!あっ隊長?」

中から黒装束のレームの部下が出てきた。


説明してやると微妙な顔をして隊長をみていた。


取りあえず中にと促されたのでアリーナン達は先に入るが、ソルファが動かない。

どうしたのかと前までいき声を掛けるが反応がない。


まさかと思いフルフェイスの兜を外すと…

白目をむいて気絶していた。

そっと瞼を閉じさせて、再び兜をかぶせる。


兜に反響したのか?

…今の顔は俺の心の中にだけ仕舞って置くことにしよう。


ソルファを背負い、掌打で顔面から扉に突っ込んだレームの足を持って引きずり、白達と謁見の間へと入って行く。


ん?誰かに見られている気がする…気のせいか?


中に入ると王の前で跪くアリーナン達と俺を見て驚愕の表情を浮かべる王と王妃に3人の王子と1人の王女、その護衛や警護の方々。

王妃と王女の驚愕は俺にではなくサウス、黄助、白の動物タワーに向けられているが。


引きずっていたレームを適当に転がし、ソルファをそっと女官に預ける。

「すまんがこの子は気絶してるんだ、女の子だから俺が鎧を脱がして気つけするわけにもいかんしな。よろしく頼む」


女官は分かりましたと言って、人を呼び謁見の邪魔にならない端の方に運んで行った。


「…俺も跪いた方が良いのかね?」


近くにいた赤い鎧の人に聞いて見た。

「あ、ああ。そうだな、王の御前だ。お前も彼女たちの所に行くと良い」

「まあ、今更な気もするがねぇ。そう言うなら行きましょうかねぇ…」


アリーナン達の隣で俺が跪くとサウスは伏せて、黄助もサウスから降りて伏せている。

白だけは黄助の背から降ろされるたびに、何度も登ろうと頑張っていた。


「ふふっ愛らしいな……面を上げよ!!」


王の一言で一斉に顔を上げる俺達、サウスと黄助はお座りに移行した。

白も諦めたのか「みー」と鳴いてキョロキョロと辺りを見回している。


玉座には王族の持つ覇気というか威厳か?

それを感じさせる40代後半の男がいた。

灰色の髪に金眼…どこかで見た組み合わせだな?

同色の髭を揉み上げから、顎髭につながるように生やしており。

綺麗に手入れされている。


「まず、アリーナン・バルト・ツァイネン。」

アリーナンも珍しく緊張しているのかハイと片言で返事をしている。


「此度は息子が迷惑を掛けたな…バラーグにはツァイネン卿の新たに持ってきた婚約者と婚姻するように言ってある、ツァイネン卿もそれで納得している。王宮騎士隊にも罰を与える事になっている、それで手打ちにしてはくれないか?」

アリーナンは絞り出すようにハイと答えた…


「こっちは命を狙われたのに随分と軽いな?いや、一介の冒険者相手には破格の条件か…」


王の許可なく喋りだした俺に様々な場所から殺気が飛んでくる。

王の側近は剣を握って「無礼であるぞ!」と言ってきた。


王は片手をあげ「よい…」と側近を制し言葉を続ける。

「そなたはあの剣の持ち主だったか?あれほど美しい剣は初めて見たぞ。どこで手に入れた?」


「ガキの頃から使ってるからねぇ、いつの間にか用意されてたとしか言えないな」

「ふむ、アルフィム報告を」


そう言うと1人の女性が出てきた。

全身が白いローブで覆われていて姿が確認できない。

だか、ある一部分だけローブの上からでも分かるほど女性を強調していた。


「うい、ほんじゃ報告させてもらいますかいのう」

高い声で予想外の口調であった。


「え~、魔剣という報告だったけん。解析したけぇの、加護が2つ検出されたんよ。1つは『鉄』でレベル5の頑強。もう一つは『鍛冶』でレベル2の修復。要は折れない、欠けても直る。鉄剣としては最上級の物じゃの」


加護にレベルとか有るんだ…

それ以前に、刀に加護ついてたんだな。


「魔剣ちゅうには、ちぃと弱いし、まともに使えん。オンシ、これでよく戦っとるのお?」


そう言ってこっちを見てくるアルフィム、たぶん見てるんだろうがフードで顔が分からん。

…流石に使えんって事は無いだろうが刀は扱いが西洋剣よりも難しいのは確かだ。


喋り方はひと昔前のバンカラみたいだが能力は有るみたいだ。


「魔剣じゃないなら返してくれるんだよな?理不尽に金を要求したりしないよね?」

少々の殺気と結構な怒気をブレンドし、さっきから殺気を飛ばしてくる連中にぶつけてやる。


その時後ろの扉が突然開いた。

「この我を差し置いてソヤツと謁見とは中々面白い事をしておるのう?ザル坊よ」


…『時姫』がなんでココにいる?

あぁ、どこかで見た髪と目の色だと思ったら時姫と一緒だ。

ザル坊と呼んでいる処をみて時姫も王族という事か?


「ファルナーク様…何故ここに?」


「なに、小腹がすいたのでの厨房につまみ食いに行っておったのよ。するとソヤツがオカマを引きずって謁見の間に入って行くではないか!しばらく扉の外で出るタイミングを窺っていた居たら今の殺気…コレは突入するしかないじゃろう?」

クフフッと笑う時姫。

さっきの視線はコイツの物か…ま、時姫の事は王様に任せようかねぇ。



王が時姫の対処をしている間、俺は近くに来た2人の王子と談笑していた。

2人とも白に近い灰色の髪と金眼に乙女ゲームに出てきそうな極端なイケメンだ。

父親ではなく母親の血の方が濃いのが分かる。


「ふふ、イチナさんは物怖じしないんですね?普通は王に向かってあんな口は聞けませんよ?皆さん父上を前にすると萎縮してしまいますから」


それ以前に不敬罪で牢獄に入れられてもおかしくない。


ちなみにコレは第一王子のシャーニス殿下(23)。

柔らかい雰囲気と俺のような者にまで礼儀を忘れない王族の鏡だ。


「そうそう!この前だって冒険者が陳情に来たけど、どんどん小さくなっていったもんね?」


こっちは第二皇子のバスハール殿下(22)。

年齢に対し子供っぽく、元気な少年といった印象をうける。

二人ともキラキラしすぎて眩しいです。


「ありがとうよ。それより時姫と王様はどんな関係なんだ?」

俺の質問にシャーニスが答えてくれた。


「ファルナーク様は父上の曾お婆様の姉に当るそうで昔からちょくちょく遊びに来られるんです」

「まだ独身なんだって、自分より強い男しか認めないって言ってたよ?」


なんだと……俺明日戦うんだが?勝つつもりだったんだが?


「すまんがアマサカ殿。聞きたいことがある」

王様から呼ばれたので、王子たちに断りを入れ王様の元へと行く。


「明日ファルナーク様と戦うと聞いたのだがどういう経緯か聞いてもいいかな?」


時姫が首を横に振っているが構わず宿の食堂であった事を説明する。


「あの椅子は破棄してくださいと何度も言ったではないですか…」

王様は眉間をもんでいる。


「クフ、我の楽しみの一つじゃからのう?それにお主が出したお触れのせいで人が座らん。久々の婿候補じゃ精々楽しませてもらうよ。クフフフッ」


わーい、婿候補だー、ウレシイナー。

…なんであの時俺はあの席に座ったんだろう。


がっくりと肩を落としていると服の裾を引っ張られた。

サウスか?と見てみると王女様と王妃様がいた。


王妃様は銀に近い白い髪にオレンジの瞳。

ニコニコと柔らかい雰囲気に子供っぽい笑顔は、シャーニスとバスハールの母親であると思わせるに充分であった。


そして王女様(12歳くらいか?)はこちらは父親譲りの灰色の髪に母親のオレンジの瞳。

オドオドと内気っぽいがその様子が小動物のようで和む。

女官たちも熱いまなざしを送っている。


……もう謁見とか完全に形だけだよね。

第三王子はアリーナンに声を掛けてるしさ。


「何でしょうか?」

ほら、アイリンちゃん頑張って!王妃様の声援を受けて、一度コクリと頷き。

王女様が意を決し言葉を発する。


「あ、あの!その…動物さん達に触ってもいいですか!」

内気な少女の決意を込めた一言だった。


「その前に名前を教えてもらえるかい?俺はイチナだ」


「は、ひ。アイナクリン・リン・ドメイク・ハンカーテスです…」

王妃様が「私はニルナッドね、この子はアイリンと呼んであげて?」と言ってきた。

王族は何か軽いな。


「分かったアイリンで良いか?」

コクコク頷くアイリンに苦笑が浮かぶ。


「サウス!黄助!白を連れてきてくれ!」

サウスがガウッと返事をすると周りの兵士が警戒して武器を向けた。


王妃様が兵を制し。

黄助は近くの柱で爪とぎしていた白を捕獲しサウスに乗る。

サウスはゆっくりとコチラに向かい歩いてくる。

白は黄助の鞭でグルグルに巻かれ「み~み~」と鳴いていた。

何故か白の近くに居た女官たちもついて来たが。


ふむ…

「王様、もう謁見の形すら成してないですし。ここいらでお開きにしませんか?俺もカタ…剣さえ返してくれればいいですから」


そう言うと「そうだな、そうするか」王の若干疲れた声でこの謁見というグダグダの話し合いはお開きとなった。


アイリンはもうすぐ白達に手が届くのにお預けをくらい絶望的な表情でコチラを見ていた。


「取り敢えず、場所を移そう。ここを何時までも使っている訳にもいかんし、他の奴らも仕事有るだろ?おい、シャーニス。どっか城の中でこいつらがいても問題ない所知らないか?」


シャーニスは苦笑して、

「一応僕は王子なんですけどね?そうですね……うん、練兵場なんかどうでしょう?僕も一緒に行きますし特に問題ないと思いますよ」


なら決定だな。

「アイリン、続きは練兵場でだ。いいな?…アリーナン達はどうする?」

アリーナン達は第三王子のあしらいで疲れたのか宿に戻ると行ってしまった。


「れんぺいじょう…どこにあったかしら?マーミナに聞けば分かるかしら?」

アイリンはそんな事を呟きながら王妃と一緒に去って行った。


「それじゃ案内よろしく。王子様?」

「ふふっ、僕に案内をさせるのはイチナさんくらいですよ」


俺と白達はシャーニスの案内で練兵場に向かうのだった。

別に不思議でもなんでもなかった。

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