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猫守紀行  作者: ミスター
111/141

白き鎧

遅くなりました…。


次回の予定は未定です。


byミスター

女王陛下side


私が気が付いた時には王都のどこかの路地いた。


「ファルナーク様…。そろそろ降ろしてください…」

「ふむ、気が付いたか。ここまで来れば大丈夫じゃろ…。む、ソルファすまんがしばらくフリーナを頼む、…これ、チビ共!おぬし等は何処まで行くつもりじゃ!」

そう言うと、ファルナーク様は私を降ろして小さな3匹に歩み寄って行った。

ソルファと呼ばれた女騎士は苦笑しながら頷き。

若いティガー種に咥えられ、引きずられたままのバルクに警戒の目を走らせていた。


み~?と首を傾げ、こちらを振り向く愛らしいナニカ。

あれはなんなのかしら…。

小さいスライムは、スライム……よね?

黄色い仔はストレンジャー……かしら?

両方アホ毛が可愛いらしいわ。


白い仔は……とんでもない魔力ね。

王立図書館にも記載されていないようなモンスターだとしたら、魔憑山(マヒョウサン)のものの可能性が高いけれど…。


「み~…?」

「ぴ?」

「……?」

…ないわ。ええ、ないですわね。

この仔達がモンスターだなんてとんでもない!

むしろ国を挙げて保護しなければならないと思う程の愛らしさ。


いいえ、落ち着きなさいフリーナ…、それをすると『彼』が来る。

ファルナーク様の思い人。

でも、私が彼から感じたものは…。


そう、理不尽でしかない死。

空気を死で塗りつぶす暴虐の徒。


なぜ、あのような悪鬼にこの仔達が懐いているのかが分からない…。

…いえ、私の知らない人間性を持っているのでしょう。

第一印象だけで全てを決めるのは愚かな事です。


願わくば、彼がこの地に牙を剝かぬよう…。


「女王陛下?どうなされましたか?」

どうやらソルファさんを心配させてしまったようですね。


「え?ええ、少し考え事を…。ソルファさんだったかしら?彼はいったい何者なんですか?」

近しい彼女に聞いてみましょう、少しはこの恐怖が和らぐかもしれません。


「そんな、さん付けなんて恐れ多いです!…あ、すいません。彼とはイチナさんの事でしょうか?凄い人ですよ。ファルナークさんを降したり。魔軍の将相手に手を抜いていたり。他には一人で魔王(アルス)を物理攻撃で動きを封じたり、神様(アルス)と戦ってほぼ無傷で生き残った事も有りますし。それに『不可侵竜』の頭を叩き潰したり…」


「…………え?」

凄く楽しそうに話してくれているのに悪いのですが……なんですかそれは!?

本当に人ですか!?

実は神だと言われた方がまだ納得がいきますわよ!?


「…少し、待ってください。全く理解が追い付きません」

「そうですか?……そうですね。…僕も感覚がおかしくなってきているんでしょうか?」

私に聞かないでくださいな!



その時だった、王城の方から大きく響く重低音が聞こえたのは。


何事かと王城の様子を見に、制止するファルナーク様の声を振り切り路地を抜け、大通りへと出る。


王城の方を見やると、謁見の間から上部、天守部分まで吹き飛んだ無残な王城が目に入った…。


「イチナ…!」

「イチナさん!」

後から来た二人が悲痛な声を上げる。


「……黄助の毛並も、…ぐっど!」

全く心配していないと言わんばかりにマイペースな事を言っている少女。

しかし、バルクを咥えたティガー種は平然と王城を見つめ、事の成り行きを見極めるだけだった。


「し、城が…!?な、なにが起きたというの…?」

私はあまりの出来事に、呆然となり。


「みー」

「ぴぴ?」

「……!?」

何時の間にか足元に来て、ドレスの裾をハミハミしているオチビちゃん達に癒しを求める事しか出来なかった。



Sideout






王真くんside



僕達は今、ホームの一番大きな部屋であるホールで休憩を取っていた。

少し前にこのホームを襲撃され、迎撃し終えたところだ。


結果は、ホームに僕達がいる。それでわかるはずだ。

…まあ、マキサックが手酷くやられていたけど、あの回復力と覚えたての氣のおかげか十分な戦力として働いてくれた。



僕とマキサックはディニア監修の元ホームを襲いに来た兵隊の相手をして、疲れ切っていた。

肉体的にではなく、精神的に。

マキサックもさすがに常人なら死ぬような傷を何度も受けるのは堪えたみたいだ…。


人を、殺す。相当な覚悟のいる言葉だ。


それだけで凄まじいストレスを感じる僕は間違ってないと思う。

…いや、一度この世界の『勇者』をやっているのにまだ感覚が普通の人という事が異常なのかも知れないけれど。


…今まで『倒す』という言葉に逃げてきた僕にとって『殺す』という覚悟は重すぎるのかな?

これが、鬼いさんなら悩むのは一瞬なんだろうねきっと。



そんな僕をディニアが心配そうに見ていたのには気づいていた。

それでも、今は一人になりたくて断わりをいれ部屋に戻った。





ん?転移の部屋が騒がしいな…。


僕が落ち着いて部屋からロビーに戻って来ると転移の部屋の方向からどたどたと足音が聞こえてきた。

誰か戻ってきたのかな?


「ディニアちゃん!カートスさんを助けて!!」

そう言いながら駆けこんで来たのは安奈さんだった。

その後ろから光樹君がカートスさんを背負って歩いてくる。


ほぼ引きずってるね…。じゃなくて!


「なにがあったの!?」

その僕の問いかけに答えたのはカートスさん本人だった。


「アハハ…。ちょっと刺されちゃった、聖剣だったから止血くらいしか出来なくてさ」

背後から刺された傷から止血しきれなかった血がポタポタと床に落ちていた。

カートスさん程の剣士の背後を取れるなんて、一体どんな相手だったんだ…?


いや、それよりも…!


「カ、カートスさん…。その胸の傷は…?」

僕の声は震えていないだろうか?

胸の傷の太刀筋には覚えがあった。…信じたくもないが、まさか…!?


「王真!話しは後にして頂戴!今は治療が先ですよ!」

「あ、ああ。ごめん、カートスさん、ディニア」

そのまま治癒の神気をカートスさんに当て始めるディニア。


「はは、そこまで慌てなくても…「馬鹿おっしゃい!その子に引きずられてくるのです。足が動かないのでしょう?」…そうです。ちょっと感覚が無くなってきてるかな。ん…、呼吸もし辛くなってきたね。大した毒じゃないと思ってたんだけどね、参ったよ」


「ええ!?そうだったんですかぁ!?」

光樹君の驚愕の声を上げる。


毒…!?しかも思った以上に症状が酷い!

それでもカートスさんは驚くほど冷静だな…。

なんでそんなになるまで我慢して……そうか、安奈ちゃんと光樹君に心配を掛けたくなかったのか。

光樹君も毒を受けた事は知っていたのかもしれないけど、そこまで酷いとは思わなかったんだろうな…。


「これは…。未知の毒ですか…。王真、少々時間が掛かりそうです。話しはそちらの二人に聞いてくださいな」

そう言ってディニアは口を開こうとするカートスさんを聖母の笑みで黙らせ。

カートスさんを治癒の神気で包んだ。



「ねえ、王真ぽん。私達にできる事ってないかな?」

「何でもします!」

安奈ちゃんも光樹君もカートスさんの症状を聞いて本当に心配そうだ。

でも、王真ぽんは止めてください…。


「ディニアに任せておけば大丈夫。50年前から毒の解毒はよくしていたし、あの頃魔国のモンスターが持っていた毒はほぼ未知のものばかりだったから。でもね、ディニアの解毒は最終的には対象者に直接神気を流し込んで毒を粉砕するから、治らなかった事は無いんだ」

二人は僕の言葉を聞いて安心したようだ。

…物凄く痛いけど。その一言は止めておいた。


カートスさんを包んだ神気は防音と拘束の意味合いもある。

治療中に叫ばれ暴れられたらディニアの集中力が切れてしまうから。


「…僕、カートスさんに付いてます。安奈さんはその人に説明してあげてください!」

そう言ってカートスさんが包まれた神気のほうへと行ってしまう光樹君…。


「え?あ、ちょ!?…まあ、いっか。ディニアちゃんに任せておけば大丈夫みたいだし!んー…、じゃあどっから話そうか?」

説明してくれるみたいだし、最初からお願いしようかな…。


「安奈ちゃんの知っている限りで最初から頼むよ」

「ん、りょーかい!」

僕は安奈ちゃんの言葉に耳を傾けるのだった。





「こんな処かな?俺様王子はまだあっちにいるんだけど…。大丈夫だよね?」

…聞かなきゃよかった。

そんな力を持った奴がいるなんて……可哀想に。


五一のお爺さんがたとえ偽物でも思い通りに動くはずがない。

甘坂の鬼を二人敵にしたようなものだ。


「その黒子ゴザルくんだっけ?…間違いなく死んでるね。断言できるよ」

うん。間違いなく。

それはもう、これ以上ない程の恐怖を叩き込まれて悲惨な死を迎えた事だろう…。


「…ただ、いくら偽物といっても五一のお爺さんだし。…鬼いさんも無傷じゃすまないだろうね」

「そんな…!?」

一応ディニアには伝えておこう…。


…もしかしたら、こっちから行かなくちゃいけないかもしれないな。

ハチカファさんに連絡を取るように伝えておこうか…。


Sideout






一南side


「………ぐぬっ!…だぁっ!あのくっそジジイが!!」

見るも無残な謁見の間。

その壁際まで吹き飛ばされ、瓦礫に埋もれた俺は瓦礫をどかし立ち上がる。


「くそっ、いってぇなぁ…。天鎚での打ち合いじゃなく『派手に散りたい』ってのが本音だったのかよ!?はぁ…、爺さんは読みずれぇ…」

勝手に間違えたのは俺だけど!俺だけどさぁ!


そのまま天を仰ぐように天井を見ると…、無かった。


「……空が明るいねぇ。…馬鹿か!?なんて量の氣を圧縮してやがったんだあの糞ジジイは!?」


天鎚同士がぶつかった瞬間、爺さんは圧縮させていた氣をその場で開放した。

あのしてやったりなニヤケ顔が頭をちらつく…。

会話と行動が噛みあってねぇんだよ、あの理不尽は!!


おかげで謁見の間は瓦礫の山だ!


「あー、くそっ!腹立つなぁおい。しかし、あの場面で自爆を選択するか普通…。波平の神気の膜と、この『神気の鎧』が間に合わなかったら死んでたな。助かった、ありがとな波平」

《恐悦至極》

む、パーフェクトだ波平とでも言えばよかったか…。


爆発の直前、波平の機転で神気の膜が俺を包んでから、鎧が装着された。

膜と鎧、この二つのおかげで爺さんの氣は大分軽減され、瓦礫からも身を守ることが出来た。


それでもえぐい程ダメージは受けたわけだが…。

まあ、もろにあの天鎚を喰らってたら紙みたいなもんだったろうが…。


暴れまわり上へと向かって爆発した氣。

圧縮した氣を自爆用に切り替えたことで力が分散した?

違うか、爺さんは狙って上に放ったんだろうねぇ…。


つうかあの死に体で俺の天鎚の氣まで飲み込んで爆発力に変えといてこの結果じゃ態ととしか言いようがねぇ。


生かさず、殺さず、九部殺し。

爺さんが俺を鍛える時のスタンスだ。

あれを叩き込まなかったって事は、爺さんは最初から『鍛錬』のつもりだったのかねぇ…。


おかげで死にはしなかったが、ちと悔しいものもあるな。


俺への被害はアバラ5本と両腕…、鎖骨も逝ってんな。

…爺さんの自爆にしちゃ比較的なかったと言っても良いだろうねぇ。

偽物の爺さんでこれなら、本物の爺さんの自爆は日本が無くなるんじゃねぇかな。


普通、氣は放出すると消えるんだがねぇ。

だから直接打ち込むんだが……流石は爺さんか。


氣のダメージの対処なら爺さん相手で慣れている。

神気を貫通して体に入った氣はさっき瓦礫をどかす時に使ったから問題ねぇし。


ちなみに俺は今、純白の鎧武者姿となっている。

といっても、胴部分は武者甲冑のような胴ではなくボディアーマーのようにピッタリとした物だった。

波平が俺のために動きやすさを考えてくれたためだろう。


ズタズタでボロボロの体も波平が補助してくれているのか今は動く。

なんつうか、傷に神気のパテを塗り込んで固めているだけらしい。


痛みもほとんどないってのが、ちと怖いねぇ…。

どんだけヤバいのか鎧を消すのが怖すぎる。

多分分かる部分だけじゃねぇだろうな。


一応動くが、神薙流の術理を使うなら神気を筋肉や骨と同化させる必要が有るそうな。

人でいたいなら止めておけとさっきガトゥーネに言われたとこだ。

…さっさと治療したいね神薙としては。


顔の半分を覆う面も装備され、ちょっとした武将気分だ。

ただ、兜飾りが20cmほどの鬼の角のような物なのが気に喰わん!



そんなどうでも良い事を考えていると俺から離れた場所の瓦礫が動いた。


その場所に近づくと女の手。

その手がピクリと動いた。


「へぇ、まだ生きてんのか?すげぇ生命力だな…」

あの時俺に切り掛かって来た女だろう。

殴り飛ばされるわ、瓦礫に潰されるわ散々だなコイツも。


その瓦礫を唯一無事だった下半身を使い、蹴りで雑にどかしてみた。

まあ、敵だったし死んでも問題ねぇだろう。



「…運が良いってのかねぇ?瓦礫と瓦礫の間に入って助かってやがる。…ん?この角…」

色々と体が曲がっちゃいけない方向に曲がってはいるが、生きている。


というより、俺よりも被害が少なくねぇか?…まあ、俺は爆心地にいてこの被害だしトントンか?



しかし、ルナと同じ短角種、か?殴った時は一瞬で確認もしなかったが…。


ふむ…。

教会の方は教皇を潰したからしばらくは大丈夫だと思うが…。

もし後任が決まってルナを狙って来たら殺る以外にねぇ。

だが、神の召喚ってのもやって欲しい。


俺の知ってる短角種はルナのばあさんであるサリューナ。

それに、アリーナンのパーティーにいたハーネ・クロス。こっちは多分だけどな。


「……まあ、知り合いより敵だな。教会の前にでも置いときゃいいだろ」

軽く外道な事を呟いて、筋肉質の女に軽い応急処置をする。


「…あっはぁ、愛し(殺し)合いましょうダーリン…」

満身創痍でそんな寝言を呟く女。


「……やべぇ、この場に捨てて行きてぇ…」

心底そう思ったが、リフティングのように女を蹴り上げ、波平に神気で肩に固定して貰う。

放りだしたいのを我慢してその場を後にする俺だった。





俺が王城から出ると、待っていたのは剣や弓を構えた城の兵達。

王城に突入する前に全裸になった貴族様方もおらっしゃられるようで…。


「…着替えてきたのか。良かったよ、流石に忍びなかったからねぇ」

さて、どうするか。

今は足技しか使えないんだよねぇ…。


「その声!?貴様、世界の敵か!?」

あれ?気づいてなかった?…ああ、鎧のせいか。

あーと…、コイツの名前は確か…。

そう、マックス・厚田・オイネだったか?確実に違うが、まあいいか。


「違うに決まってんだろうがアホウ。俺はセカイノ・テーキなんて名前じゃねぇし?厚田程度が声掛けんじゃねぇよ。俺はさっさと帰って寝てぇんだ。もう動きたくねぇからさっさと道を開けるか自害するか選べ」

取り敢えず、軽い殺気を振り撒きながらそう言ってみた。


《アホウはお前だ一南…。お前の体はボロボロなのだぞ?なぜケンカを売っている!人を止めたいというのならば止めないが、人の身で神を斬るのだろう?今は無茶をするな…》

(お、おう。すまん)


ガトゥーネのお説教をくらい、ちと反省。


…ん?そういや、俺の言葉に対するリアクションがねぇな。


ざっと兵士達を見渡すと、貴族の隊長格と目が合った。

引き攣る隊長格の顔。

そして間髪入れずにその隊長格の貴族がこう言い放つ。


「…ア、アツタール。私には世界の敵などは見えませんな。彼は、彼は…。そう!『使徒』様なのです!見なさい、あの鎧を!白き力で編まれた鎧、まさに神気の鎧!あれほどの物は見たことがありません!さあ、皆さん!使徒様に道をお開けしろ!」


そう一息で言い切った貴族のやり切った表情と言ったらもう、ね。

見事なまでに蒼白で、顔中に恐怖が浮かび、腰が引け、足が笑う。

下半身はどこからか漏れ出した液体によって濡れそぼっていた…。


「えー…」

《…貴族の心とはここまで弱いのか。結果戦わずに済んだからよかったものの、今は控えてくれ…。私は人を止めて半神として狂気に狂うお前を見たくない》


…今、ガトゥーネが重要な事を言わなかったか?


人を止めて半神になる?しかも狂う事が確定しているような物言いだ。

人から神になる方法、その方法は知らねぇが近い状態にいるってのは分かった。


体に神気を宿してるからか?…ちげぇな、それなら使徒でも半神になってるはずだ。


だが、バアサンを見ても狂っているようには……うん、多分見えない。

…あれは生粋のどSだから参考にならねぇな。


そもそも、狂う理由が分からねぇ。


「おい、ガトゥーネ…ッ!?」

《ッ!?一南!上だ!》

分からねぇから聞いてみようと声を上げた瞬間だった。

覚えのある気配を感じ、ガトゥーネの言葉で空を見上げる。




「なんで、テメェが生きてやがる…!」

そこにいたのは太陽を背にした『四本角の竜』と…。


「その『純血種』は貰い受けるぞ神気使い」

その背に乗るエギュニートの姿だった。


Sideout

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