猿飛、キセキへの軌跡
猿飛side
「ワシの勝負の邪魔をするとは、どういうつもりじゃぁ……小童ぁあ!!!」
怒声を聞き、殺気を受け、死を感じ……脳のブレーカーがとんだ。
「……ダチに手ぇ出しやがって、殺すぞ猿が!!!」
そして、膝が折れる前に、冷水を頭から被ったように冷や汗が吹き出し、殺気に貫かれ意識が回復したんでござ…。
拙者には、この二人が地球の住人ではなく、別の星からきた異星人に見えてきたでござる。
痛い程、そんな表現では生温い…!
そんな殺気と怒気が拙者に向かって飛んでくる。
何度死を幻視したかも分からなような殺気の中、拙者は思う。
拙者より、コイツ等の方がチート臭い。と。
回らない頭で、チーター・アーカイバーの中のパッシブスキルを検索する。
これも違う、これも違う!…ない。ないないない!
『殺気無効』がない!
体は殺気によって棒立ち状態で硬直。
口を開けば歯の根が鳴る。
…これだ!『気配感知』!
これなら、デリートするだけキャパも空くし、今の恐慌状態から抜け出せる!
暗殺者ロールプレイに必須と思って最大レベルで再現していた昔の拙者が恨めしい!
…まて、本当に良いのでござるか?気配察知は剣閃を読むのにも使える。
コイツ等の相手をこれ無しでやるでござるか?
幸い、ジジイを警戒して若い異星人はまだ動いてない……あ、拙者何のためにジジイを再現したんでござるか!!
ジジイにやらせればいいのでござる!
頼む!口よ動け!
「け、けは……気配かん、ち、再現……デリート!」
拙者は言い切った!
転生特典を得てからこんなに頑張ったのは初めてだった。
「ふ、ふひ。よ、よし!喋れる!これで勝った!…でござる!」
でも、おかしい。体の震えが止まらない。
口の中が粘つく。喉が渇く。
まるで体中を斬られ、刺され、捥がれる……死の幻視。
あれ?さっきとまでとあんまり変わってない?
いや、喋れるようになったんでござるから大分違う筈でござる!
「…ああ?なにもしてねぇのに何を勝った気でいるんだテメェ…」
一言一言に怒気が乗り、喋るたびに殺気が増す……ある種の言霊でござるな!?
「まあ、落ち着け一南よ。この体にはさほど時間が残っておらん。…落ち着いて、斬り散らすのみじゃ」
……ジジイ、お前は拙者の駒でござるからな?
だから、どんなに殺気を向けても駄目でござるからな!?
くそう、なんなんでござるかこいつ等、怖すぎるでござぁ…。
だが…!
「『命令』でござる!「ああ?」お前じゃないでござる!異星人め!「んだと、テメェ…」…甘坂五一!今出せる『全力』を持って敵を排除しろ!それと、拙者の攻撃は『避けるな』!」
再現した人形は、拙者には逆らえない!
「カハハッ!敵、か。仕方ないのぅ…。分かったわい!『今出せる全力』を持って『敵』を排除しよう」
五一はその場で刀を一度……振ったのだろう。触れてもいない床石が綺麗に斬れていた。
剣閃が見えないのはもう驚く事じゃないでござるが、一瞬肩から先すら見えなかったでござるよ?
……弱体化、しているんでござるよね?
これより強いとか想像できないんでござるが…。
そして、気づいたら目の前にジジイがいる不思議。
ヤバい!前の攻撃はHPを持っていかれる前でござるから、当っても多少のダメージは通ったでござるが。
これだけの戦闘力、今の拙者なら余裕で死ねる!
しかし、造られた者は、造った者を殺せない。
恐らく寸止めになるはずでござる!
むしろそうなってもらわないと困る!!
「ひっ!!」
剣はすでに振られ、首筋で止まっていた。
拙者の願いは遅かったが、考察は間違っていなかったようでござる!
剣が触れてもいないのに首の皮一枚が薄く切れていた…。
まさか、剣圧でござるか…?
「む、おい小童。『敵』と認識してやったのだからこの殺さずの加減を解け。おぬしが斬れんじゃろうが。斬撃というものは振り切ってなんぼなんじゃぞ?」
「なに言ってるでござるか、このジジイ!?人形への命令権すら利かないでござるか!?敵は拙者じゃなくそこの異星人…」
…異星人どこ行った!?
「無茶苦茶言ってやがんな爺さん。そんなことしたら俺が殺れねぇだろうが。……カートス、動けるか?」
「ちょっと無理かな?今は魔力で止血してるけど、それが精一杯。流石に謁見の間だね、魔力消費が半端じゃないよ。今の止血もどれくらい持つかなぁ、あはは…」
異星人はいつの間にか、カートスや勇者達のいる場所まで移動していた…。
気配感知を消したら全く分からないとかどんな悪夢でござるか!?
「チビ助、腐敗!」
「はいぃ!?何でしょうか鬼さん!」
「分かってるって、カートスさんを連れて帰ればいいんだよね?まっかせて!」
異星人は勇者達の言葉に頷くと動物共に何か指示をだしていた。
大方、カートスを逃がす算段でござろうが。
…どうやらそのようでござるな。
一番小さな勇者と一緒にカートスを馬に乗せ、女勇者は狼に。
そのまま異星人に追い立てられるように謁見の間を後にする。
異星人は……こちらを向いて恐ろしい顔で哂った。
あ、これは異星人なんかじゃない。
鬼だ。
そして、目の前にいるのも。
……悲しくもないのに涙が出て来る?
殺気で体が完全におかしくなっているでござるよこれ…。
これは、逃げた方が…。
しかし、ジジイをこの手で始末しないとジジイの再現に使ったキャパを持っていかれる気がするでござる…!
「ジジイ!避けるなでござるよ!」
「ぬ?ああ、避けはせぬよ、避けはな…」
チーター・アーカイバーから今使えるなかで高威力の物を選択。
取り敢えずジジイだけでも消して、逃げるのが最良でござる!
早く離れたい!この場を、少しでも速く!
拙者は人気ロボアニメ無双武者シリーズの敵ロボである『アーク』。
そのパイロットのダイカーン・カーネズキーが勝手に名前を付けただけのビームライフル。
『ゼロスカノン』を選択した。
それを人間サイズに再現しジジイに向けた。
「武具再現。消えろ、ジジイ!『カノンマッシャー』!」
ゼロスカノンはただのビームライフルだが、ダイカーンが『カノンマッシャー』と叫びながら撃つと戦艦砲撃を相殺する意味不明な威力を帯びる。
小さくなってもロボの武器。
ましてや威力の底上げをされた理不尽アニメ無双武者シリーズの最高傑作と呼び声高い初期の『無双武者killブレード』の味方の戦艦を苦しめた序盤のチート武器の一角でござる。
そして、ビームの速度は銃弾とは比べられない。
この世界でも、地球でも間違いなくオーバーテクノロジーでござるよ!
さあ、消えてくれ!!
「ふむ、この距離で飛び道具か…」
銃口を向けられても落ち着き払ったジジイのその一言の後に拙者は引き金を引いた。
次の瞬間、ジジイが何もせずに放ったビームに呑まれていく様を見て、確信した。
「やった…!……え?」
ビームはジジイに当った場所から最初だけ二つに裂け、また収束したかと思うと破裂。
リズミカルに、そして恐ろしく速い速度でビームが吐き終わるまで破裂し続け…。
「まさか熱線とはのぅ……得物が溶けてもうたわい。小童、神薙流に飛び道具は効かんのじゃ覚えておけ」
所々火傷を負い、血を流した『程度』の甘坂五一が姿を現した。
「………うっそぉ!?」
思わず口に出した拙者は悪くないと思うでござる。
「アホウだろ、爺さん。相手はビームライフルだぞ?つかあれゼロスカノンか?…まあ、引き金を引く前に指ごと叩き折ればいいだけじゃねぇか。態々『氣』で叩き伏せるとかイカレてんなぁ」
と言いながら近づいて来る『鬼』
軽口のようだが、その殺気と怒気は衰えてはいなかった…。
氣ってなんでござるか!?あれか、こいつ等戦闘民族なのでござるか!?
「分かっとらんのう。今出せる全てを出しきってこその戦いよ。……そして、それを全て潰してこそ、『ワシが』満足するんじゃ。覚えておけ」
大鬼と鬼。その二人に挟まれて拙者の心はすでに折れかけていた。
「なんだ、爺さんの自己満足かよ。…なら仕方ねぇな」
「うむ、仕方なかろう」
なにが!?どこったへんが仕方なかったでござるか!?
そう突っ込みを入れたかったが、鬼の貌を見て口を閉じたでござる。
…ヤバい。
ジジイはまだ良い。良くないけどいい。
恐怖はあるが造った者と造られた者の関係。
その為、拙者を殺すような攻撃は多分出来ないでござるし、時間が来れば消える。
…多分、キャパを持ったまま。
ゼロスカノンで消せなかった時点でジジイに関しては心が折れたでござる。
ジジイが消えてもこの鬼は消えない。
拙者がこの手で消さない限りは。
でも、あの剣速の前ではバフになり下がった斬撃無効も意味を成さない。
気配感知を消したこの状態では、ほぼ動きの掴めない化け物。
そして、ジジイとやり合っていた時の動き…。
拙者が今使えるチートを全て身体能力だけにつぎ込めばやれるでござるが、技量では敵わない。
接近戦は無意味、でござるな…。
「……何この一族。ホントになんなんでござるか!?」
くそう、逃げるにしてもコイツをどうにかしないと無理でござるな…。
「む?猿飛を冠する忍の癖に甘坂を知らんのか?」
「あ?忍?……ああ、爺さんに菓子箱持ってきて関わらないでくださいって素顔晒して懇願してたあれか?爺さんの前に立ったストレスで髪が散って逝った事しか覚えてねぇ。確かに忍者っぽいが、コイツは違うだろ。こんなのがいたら菓子箱なんて持って来ねぇだろうしねぇ」
…確かに拙者の猿飛はそれっぽいから名乗っているだけでござるが。
いわば、ロールプレイの一環。
というか、いたんでござるか、忍者。
拙者が転生した家はごく普通の豪邸でござったしな。
能力がちゃんと使えるかどうかのテストをしたら自然とそうなったでござる。
こっちの親は拙者を神かと言わんばかりに崇めるからウザイのでござるが。
…まあ、少なくとも息子を見る眼では無かったでござるな…。
欲に溺れた者ほど怖いものは無いでござるよ。
さて、現実逃避はこのくらいにしてこの状況をどうするか考えねば…。
…チートを持つ拙者が何でこんなにピンチになってるんでござろうか。
ふと、こちらに向かって走り寄って来る影が入った。
……やっとお目覚めでござるか。
「愛し合いましょうー!」
眼にハートを宿し、そう言いながら鬼に手に持つ剣で切りかかる。
ミアガット、奇襲は声を上げてするものじゃないとあれほど…。
「あ?…お呼びじゃねぇよ」
鬼は刀を抜く訳でもなく、振り返りその拳でミアガットの顔面を撃ち抜いた。
ミアガットは縦に回転し3メートルほど飛んで動かなくなったでござる。
…死んだ!?
あ、まだ生きてるでござるな。
しかし、女の顔面を躊躇なく……鬼か!?
…鬼でござったな。
だが、これで拙者から意識は反れた!
「『斬撃無効再現』!」
斬撃無効を発動しながらバックステップで距離を取った…。
取ったはずだが…。
「まあ待て、小童。そう急くな。多少距離をとった処で神薙流からは逃げれんぞ?」
なんで背後にいるでござるかジジイ!?
どこぞのRPGの魔王でござるかこいつ等は!?
「チッ…、当る瞬間跳ばれて力が逃げた。まだ爺さんの首捥ぎパンチには届かねぇなぁ。首の骨くらいは逝ったと思うんだがねぇ…」
大した距離も取れないまま、前後を鬼に挟まれる。
あんなパンチ、今のHPで喰らったら…。
間違いなく死ぬ……というかミアガットの首を捥ぐつもりだったでござるか!?
「ぬ、そろそろワシも時間が無いか…」
背後からそんな呟きが聞こえた。
ぃよっし!!時間切れでござるな!
ジジイは拙者に手を出せない!今の内に!
「『スキル再現・飛行』!」
鬼の手の出せない場所に上がって範囲攻撃でジジイと鬼、両方吹き飛ばすでござる!!
拙者は空へと、ではなく天井目指して飛び立った。
その間、ジジイが何発も拳を繰り出してきたが全て拙者の命を奪う威力があったのか、寸止めに終わる。
唯々恐怖しかない時間でござった…!
ジジイの事だから、いつ人形としての境界を越えてくるか分かったものじゃないでござ!
なにより怖かったのが、鬼の斬撃。
奴が踏み込んでから、拙者が舞い上がるまでに一体何発入れられたのか!
斬撃無効が切れて、拙者の両足に骨まで達するほどの一撃をくらわしてくれたでござる!!
「やっばい!?HPが!!くっそ!『止血道具再現』…こんなチート初めて使ったでござるよ」
治癒再現や回復系はキャパの圧迫が激しい。
せめて、ジジイを消すまでは!!
拙者は痛みを堪え、謁見の間の天井すれすれまで舞い上がる。
「『ゼロスカノン』デリート!『武具再現』クラスターバルカン!!」
「げ、マジかよ!?」
鬼の方は知っているようでござるな。
無双武者の主人公機に付いた無差別殲滅兵器『クラスターバルカン』
手持ち銃から放たれる銃弾はマシンガンのように吐き出され、その一発一発が途中で弾け爆雷となって降り注ぐ。
原作でコレをコロニーで使い、そのコロニーを粉々にした後の主人公の台詞「…ま、いっか」が印象的でござった。
「終わるでござぁ!!!」
拙者は引き金を引いた。
降り注ぐ爆雷、最後に見たのはその中を走る鬼と笑いながら構えを取るジジイでござった。
視界が粉塵に塞がれる。
それを払い、最初に見たのは、血の海。
千切れた腕。
……勝った!
「ふ、ふふひ。やった……やったでござる!!拙者は生き残った!!」
確認のために地面に降りる。
といっても足を斬られているためホバー状態でござるが。
ん?……キャパが戻ってない?
それに千切れたこの腕……『太い』?筋肉で、ではなく脂肪で……まさか!
「おおぅ、ひでぇひでぇ。なんて奴だ、教皇様が粉微塵だぞ?可哀想になぁ……いやぁ良い盾があったわ」
あ、ああ…。
鬼め!教皇を盾にして生き残りやがった!!
教皇は生まれながらに5つの加護を持つ…。
…どんな加護かは知らないでござるが、それが裏目に出たでござる!
唯一被害を与えられたのはジジイのみだが…。
「己の仲間を犠牲にしてまで仕留めにかかる威勢は良し!じゃが、おなごは大事にせねばならんぞ?…まあ、後ろにおったのはすぐ気づいたのでな『受ける』次いでに縛りも掛けてみたんじゃ。中々すりりんぐじゃったぞ?」
ジジイの背後には、完全に気まぐれで守られた瀕死のミアガット…。
…アイツがいなければジジイの左腕を抉り取り心臓部分に穴を開けるという被害も怪しかったのかもしれない。
…いや、なんでそれで消えてないでござるか!?
「ば、化け物共め!!」
そう罵ると鬼共は嗤った。
「カハハハッ!小童、神薙流拳刀術とは『人の身』で神と戦う為の流派じゃ。それを修めとるワシ等が化け物のはずがあるまい?…今は人形じゃったな」
「クハハハッ!本物の爺さんはともかく俺は人間をやめた覚えはねぇなぁ」
嘘だ!絶対に同じ人間じゃない!
拙者は再び舞い上がる。
次は盾も無い、ジジイも時間切れで消える!
後一撃、それだけでいい!!
ジジイが拙者に背を向ける。
…何をする気でござるか?
「…クハハッ!左腕が見事に消えてんじゃねぇか。風通しも随分良くなった見てぇだしなぁ?」
「カハハッ!まだ、貴様を『投げる』くらいは出来るわ!さあ、一南ぁ!!練り上げぃ!」
「わりぃな爺さん、止めは貰うぜ?」
投げる?止め?何を言っているでござるか?
そう思っている内にジジイと握手でもするかのように左腕を差し出す鬼。
…何をしようと関係ないでござる!
これで…「死ねぇい!!!」っ!?
ジジイが『なにか』を投げた、アンダースローモーションで。
それがなにかは、すぐに分かった。
「潰えろ猿!!」
右の拳を振りかぶる鬼が眼前に!?捨て身の特攻でござるか!!
「ッ!『斬撃・打撃無効再現』!!」
咄嗟にしては上出来だった。
避けきれないと判断してからほぼノータイムで無効再現をした拙者にダメージの通らない拳が当る。
鬼はそのまま拙者にぶつかりながら、なおも右の拳を6発当てて来た。
「ふひ!無駄でござ「『天鎚』ってんだ。天を落とす鎚。おまけもしといてやったぜ?」…がっ!?」
なんだ……こ、れ!?
「ああそうだ。天鎚はカートスの分だ」
異常を感じてからは一瞬。
最後に拙者の眼球が写したのは鬼と共に落下する己の血肉だった。
Sideout
一南side
空中で体を捻り、体勢を整え膝を使い着地する。
「…きったねぇなぁ」
爆散した猿の色んな部位が落ちてくる。
持って帰ってサウスとかに喰わせたらなんか覚えるだろうか……止めとこう、汚ねぇし。
体に付いた『なにか』を右手で払い落とす。
「さて、爺さん。左腕やってくれたなぁ」
氣と魔力で防御してたはずなのにボロボロを通り越してズタズタな俺の左手。
ばあさんに見て貰わなきゃ使いもんになりゃしねぇな…。
「カハハッ!言ったじゃろ?練り上げいとな。守りきれなんだお前が悪い!…どれ、最後の稽古と行こうかの」
爺さんは未だ形を残す凶悪な拳を構え、膨大な氣を練り始める。
…天鎚の打ち合いがしたいんだなこのジジイ…!
「そんなになってんだから、遠慮せず消えろよ……ったく」
爺さんに左腕は無い、そして心臓も。
改めて人形だと実感する。
《一南…。ここは応じてやるのが男だろう?》
《主殿、流石にあの状態の五一殿を無碍になさるのはどうかと…》
《アレハイラナイー、オイシクナサソウ》
俺に手負いの爺さんと天鎚の打ち合いをしろと?
勝った事にゃならねぇが、ほっといても消えるからスルーしたいくらいなんだがねぇ…。
「小童からの『力』の供給も断たれた。もう長くは持たん。…じゃったら派手に散りたいではないか!ほれ、拳を構えぃ一南。氣を巡らせ圧縮しろ。一撃で貴様の10発分の天鎚……超えてみせい!」
かっこよく言ってはいるが、超えれなきゃ死ねって事だろ?
なにより目が語ってやがる。ワシ、満足してないんじゃよ?と。
そりゃ体も偽物。氣も借り物。
敵すら斬れず、止めまで俺に譲った訳だ。
爺さんの『満足』には程遠いだろうし、ストレスも有るだろう。
しかし、しかしだ…!
「孫で発散しようとすんじゃねぇよ…!」
「なんじゃ、消えかけのジジイが怖いんか?」
安い挑発だな…。
「…怖いに決まってんだろうが!ガキの頃、爺さんに天鎚を見せて貰ったあの山、見事な禿山と化したんだぞ?なにが後始末は任せた。だ!紙坂の奴らが来なかったら、今頃天変地異の生き残りとしてニュースに乗ってたわ!」
紙坂や御三家の連中には世話になったなぁ……主に爺さん関係で。
「カハハッ!そう言いながら、氣を練っておるではないか。さて…」
「やらねぇと、満足しねぇだろうが。さっさと消えろ、トラウマ製造機が。たかが、消えかけの偽物。引導渡してやんよ…」
あの時の事を思い出し、その怒りで氣をいつも以上に引き出せた気がする。
…あくまでも気がするだけだがな!
「…砕けぇい!一南ァ!!」
「…潰えろや!ジジイィ!!」
傍から見れば決して祖父と孫の関係には見えないような咆哮を上げ。
俺と爺さんの『天鎚』は正面から轟音を立ててぶつかり合ったのだった。
Sideout
サブタイの「キセキへの軌跡」は、「鬼籍への軌跡」と書きます。
byミスター




