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猫守紀行  作者: ミスター
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宿屋とAランク

これからも、こんな感じでのんびり進む物語ですがよろしく。

いつになったらシェルパ以外の都市に向かうかは、作者も分かりません。

アリーナンを警戒する白をなだめながら俺達は宿に到着した。


「『ホテルロイヤルジャッジ』ね、すごい名前だな、コレは……」

名前とは裏腹に2階建ての小さな宿屋だった。


「名前は年に1回は変わるわ。何でも税金対策らしいけど、向こうも分かってるから対策になってないのよね。前は『女将の拳亭』だったかしら?」


なんだかなぁ…

微妙な気分になりながらも宿に入る。


「いらっしゃいませ!!……?あ!アリーちゃんとソルファお姉ちゃん!それに、えーと…そのお供たちだ!」


出迎えてくれたのは10歳くらいの小さな女の子だった。

栗毛の髪を短く頭の後ろで2つ縛っている。

瞳は茶色でソバカスがある元気な子だ。

エプロンをつけているところを見るとお手伝いの最中か?


後ろでハーネとリンマードが「お供……」と呟いているが気にしないでおこう。


「やほーマルニ!旦那か女将さん居るかな?」

呼んでくるね!と走って行ってしまった。

転ばなければいいが。


「お供…まだ、私の名前覚えてないんですね。マルニちゃん…」

リンマードが悲しそうに呟く。

ハーネも似たような物である。


しばらくして女将が出てきた。

「あらあら、皆お帰り。今回は長かったね?おや?そっちの色男は誰の恋人だい?」

全員が一斉に女将の言葉をを否定する。

まぁ、分かってはいたがチョッピリ傷つく。


アリーナンは多少なりと顔を赤らめてはいたが…

ソルファはフルフェイスで表情が見えず。

リンマードは笑顔で即答。

ハーネよ、無表情での否定はやめてください。


「あ~……宿を取りたいんだ。それと動物?も一緒なんだが大丈夫か?」

多少ダメージを引きずりながらも女将に問いかける。


「おや、そうだったのかい?私はまた恋人を紹介しに来たんだと思ったよ」

あっはっはっ!と笑う女将。


栗毛の髪で恰幅の良い体をしている。

三角巾にエプロンといい、給食のおばちゃんみたいだ…


それと、もうその話題は勘弁してください…


「部屋は空いてるよ、ここは食事客の方が多いからね!動物ってのはテイムモンスターかい?何匹居るのかね?何日泊まる予定何だい?」


「取りあえず1週間ほど、俺の連れはコイツを入れて3匹居るが2匹は今馬車の中だ。いくらになる?」

そう言って白の入った袋を見せる。

どれ、と覗き込む女将さんに合わせるように、白が穴から顔を出した。


「み?」

「これは、可愛いねぇ…」

顔を出した白を笑みを浮かべながら、指でコショコショとなでる女将さん。

子猫の魅力は異世界に来ても健在だ。


「そうさね、1日丸銅貨1枚。他の子も連れて来たら割高になるけどいいどろう?」

それが安いのか高いのか俺には判断できないのだか?


「丸銅貨1枚は流石に安すぎませんか?僕たちで一人10枚ですよ?」

そう言ったソルファの声は不満げだ。


ふむ、四角銅貨1枚を1円と考えても丸銅貨1枚100円…いや安すぎるだろ。

ソルファの10枚も千円な訳で安いと思うがね。

しかし、銀行とか無いもんかね金が貯まると硬貨で動けなくなりそうなんだが。


そう思うとソルファたちの報酬がえらく安く感じてきたな。


「もちろん、条件はあるよ。泊まってる間、その子を食堂に放して欲しいんだよ。きっと客寄せになる!」

拳を握り力説する女将さん。


「まあ、俺と一緒の時なら構わないが…」

そう返事をするとホクホク顔で「そうかい、ありがとうね!」とお礼を言ってきた。

しかし、なるほど「招き猫か」。


「マネキネコ?なんだいそれは?」

口に出していたか…俺は白と招き猫について女将さんに説明した。


「この子は白って名前で猫って種族なんだね。客を招くか、ぴったりじゃないか!どうだい?家の子にならないかい?」


そう聞かれた白は「み!」と短く鳴いて頭を引込め袋の中に戻ってしまった。

女将さんは「ありゃ、振られちまったよ!」と笑いながら宿の帳簿を取りに行く。


「ほい、ここに名前をお願いね。字が書けないなら代筆するから言ってちょうだい。あと料金は先払いでお願いね。後払いにすると踏み倒して逃げる奴らがいるからね」

そう言って食堂の方へ眼を奔らせる。


「四角銀貨でいいか?細かいのは無いんだ」

あいよと腰に下がった小さな巾着から丸銅貨93枚を取り出す…

いや、入らないだろうソレ?


俺が唖然としていると。

「何だい、あんた『付加袋』知らないのかい?」


頷く俺に対して女将は説明を始めた。

「こいつには『次元の神』の加護が付加されてるんだ。商人や冒険者何かは必ず持ってるよ。ほら、聞いたことあるだろ?祭壇に武器や道具を祀って神様に付加してもらうって。そうすることで宗派が違う神の加護でも少なからず受けられるのさ。敬謙な信者はそれすらも嫌うらしいけどね」


聞いたことありません。

何でも有りだな、神様。

しかし、それは欲しいな。


そういえば白の加護リストに《『次元の加護』何でも入るんだぜ?うはっ!入れる所ないんじゃね?コレ?》とか有ったな、疑問に思ったのなら付けるなと言いたい。

実に無駄な加護である。


「お母さ~ん!パパが呼んでる~!」

そう言って先ほどの少女が戻ってきた。


「そうかい、わかったよ。あ、そうだ。この子はマルニ。私の娘だよ。マルニ、このお客様を部屋まで案内してあげな」

うん、わかった!と元気に返事をするマルニ。

女将さんは「それじゃ、ごゆっくりね」と食堂の方へ消えて行った。


「それじゃ、おじ……おに?えとコッチです!」

…俺は老けて見えるのか?

「俺の名前は甘坂一南だよ。…せめてイチナと呼んでくれ、な?あぁ、それとこっちは白だ」


そう言いながら袋から白を(猫持ちで)取り出す…コレだけ聞くと道具扱いだな白。

初めて白を見るマルニ。

「わ、わ、ちいちゃいね~!フワフワだよ!さ、触ってもいいですか?」


目をキラキラさせて聞いてくるマルニ。

流石に、断ることはできず。

白を抱かせてあげた。

まるで壊れ物を扱うように白を撫でるマルニ。

白はむず痒そうにはしているが、嫌ではないようだ。


ありがとうございました!と笑顔で白を返して来るマルニ。


これがアリーナンだと返せと言っても返さないだろう。

流石、宿屋の娘。

客の迷惑になる事はしないという事か。

女将さんの教育の賜物だな。


案内を再開したマルニは時折、白を振り返り笑顔を浮かべ歩いていく。

歩みは遅いが、そんな光景に和みながら部屋に到着する。


マルニは手に持った紙を見ながら

「ここが白ちゃんとイチナさんのお部屋になります」

「はい、どうぞ!」と部屋のカギを渡してくる。


どうやら手に持った紙はカンペのようだ…


「えっと、お出かけの際にカギは、お母さんかパパに渡してくださいね?よし!完璧!それじゃあ失礼します!」

白ちゃん、またね~!と白を見ながら手を振り、駆けて行った…転ぶなよ?


扉を開けて部屋の中に入る。

大体6畳ほどの部屋に簡易のベッドと椅子が2脚、丸いテーブルが1つ。

収納もあるようだ、これで1日丸銅貨1枚は安いな。


俺は白を部屋に放し、ベッドに腰掛ける。

固いな…畳に布団を敷いてるみたいだ。

畳派の俺としては有難いが、アリーナンとかよく耐えられるな。


「イチナ!食堂に行くわよ!出てきなさい!」

はいはい、今行きますよ。

まったく、腰を落ち着けて一服もできんのか…


足元まで来ていた白を拾い上げ食堂に向かう。

そう言えば食堂で白を放して欲しいってのが丸銅貨1枚の条件だったな。

白から目を放すのは怖いんだがな。

コイツ自由すぎるからな…


白をアリーナンから庇いながら食堂に降りてきた。

「いらっしゃいませ~!あっ!白ちゃんだっ!」

手に運ぶ最中の料理をもったまま、こっちに走り寄ってくるマルニ。

料理を待っているお客さんは苦笑していた。


白は料理の匂いに釣られたか、袋から頭を忙しなく出し入れしている。


「マルニ~!5番テーブルできましたよ!持って行ってください!」

厨房から渋い男の声が聞こえた。

マルニ「は~い!パパ!」とアワアワと大慌てで料理をお客さんに渡し次の料理を取りに行く。


大盛況じゃないか、白要らないんじゃないのか?コレ。


「空いてる席に座りましょうか?」

リンマードがそう言うと皆それぞれ動き出す。

5人席が空いていないので、俺だけカウンターに座る。

座った瞬間、何故か食堂が静まり返った。

何だ、一体?

そんな時、隣の知らない冒険者が声を掛けてきた。


「あんた、そこは『時姫(ときひめ)』の『決闘席(けっとうせき)』なんだよ。ま、諦めろや?」

は?時姫?諦める?

何の事だ?


アリーナン達を振り返ると大げさなジェスチャーで退け!とやってる。

ココをどいたら座るとこ無いんだが…

仕方ないと思い立ち上がろうとすると食堂がザワザワと騒がしくなった。

「あちゃー、お出ましだ」


「ほう、まだこの我に挑む男が居るとはのう?よろしい、受けて立つぞ?」


そこに居たのは前髪パッツンのロングヘアに灰色の髪と金色の瞳。

額に2本の短い角を持った美女だった。


腕や脚はガントレットやアイアングリープと言った重装備なのに対し。

兜の類は無く体も胸当てのみと言った軽装備。

ガンホルダーのようなベルトにビッシリと投げナイフを着けている。

背中に大剣を背負っている処を見ると、パワータイプなのかもしれないな。

へそ出しの服にホットパンツと動きやすさを重視した恰好であった。


これが『時姫』なのか?

姫と言うには少々お転婆な格好である。


というか挑んだ覚えは無いんだが?


「その席は『時姫』に挑む奴だけ座る『決闘席』なんだよ。知らなかったのか?」

そう言う冒険者に対し反射的に「知る訳ねぇだろうが」と返してしまった。


「あ~勘違いだ。この席がそんな物だとは知らなかったからな?席が無くて仕方なく座ったのがココだっただけで…」


「むだむだ、この『決闘席』は付加アイテムなんだよ。『契約と執行』のな。知らなかったのは不幸だがお前は『時姫』と戦わなくちゃならねぇの。いつもならマスターが注意するから初見の客は座らねぇんだけど。今日は特に忙しかったからな……マスター!ビール!」


そんな付加アイテムを食堂になんか置いておくな!

後、貴様この現状を酒の肴にするんじゃない!


「とりあえず、わかった。納得は出来んがな。今日はもう飯食って寝たい。明日は用事があるしな。明後日でいいか?」


「ふむ、かまわんよ。見たところ武器も持ってないようじゃし、防具も付けておらん。せめてそれぐらいは揃えてもらわんとな?」

俺の格好をみてクフフッと笑う時姫。


もう面倒臭くなったきた、ここで伸して終わりにしようか?


そんな事を考えていると女将さんがやって来て。

「何やってんだいあんた達!食い終わったらさっさと行きな!席が空かないだろう!」

その一喝で食べ終わっていた人たちはお金を置いて散って行く。


「では、明後日来るからの?しっかり準備しとくんじゃぞ?」

時姫もそう言って去って行った。


俺達は空いた席で飯を食いながらさっきの話をしていた。

「イチナ、あんた何で座ってんのよ!『時姫』ファルナーク・サリスって言えばAランクの冒険者じゃない!『時の加護』を持ってるって言うし。気まぐれでランクテスト受けて無いらしいじゃないの!」


椅子の事知ってたんなら教えてくれよ……


しかしAランクねぇ、イカン楽しみになってきたな。

闘技都市の前に腕試しか。

ココで躓くようならガトゥーネには勝てんな。

しかし、『時の加護』ねぇ。

白の『時の加護』は『成長しなくなる』だが、時姫は違うのか?


問題は明日、城で刀がどうなるかだな。


ギャーギャー!と騒ぐアリーナンを無視して俺は明日の事に思いを馳せるのだった。


あぁ、食堂で白を放す事だが、女将さんから食堂に『白スペース』を作って貰うことになった。

流石に人のごった返す食堂に放すと白が危険とマルニが主張したためだ。

出来上がるまで、白は『白専用皮袋』に入って食事の時のみ出す。


という事になりそうだ…


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