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猫守紀行  作者: ミスター
108/141

鬼二匹が笑うとこうなる

遅れてすいません!


書き上がったので投稿します。


byミスター

光樹キュンside


「はふぅ…」

僕は思わず倒れそうになる。

体の震えが止まらない。

こんなの風邪を引いても中々ならないですよ!?


これが一南さんとお爺さんのイイ笑顔の結果。


カートスさんも、ファルナークさんも、黒装束さんもバルク?さんも皆が動かなくなってしまう程の……殺気。


そう、ただ二人は殺気を放っているだけなんです。

気絶している教皇様や小さな角の付いた女の人が痙攣して泡を吹くくらいの殺気を謁見の間に充満させているだけなんですよぅ。


どうしよう、すごい逃げたいよぅ…。

駄目なのに、足が震えて動かない…。


「はっ!?女王陛下は!?」

安奈さんの言葉に我に返る。


鬼二匹に囚われていた視線を慌てて女王様に向ける。


「……ちょい、やー」

誰もが動けない中…。

パー子ちゃんだけがモゾモゾとサウスから降りて、気の抜けた掛け声と共に女王陛下にビンタした。


パー子ちゃん凄い…。


Sideout




女王陛下side


何故か頬がジンジンと痛む。

そして、思考が纏まらない程の悪寒。

これは…、殺気ですか!?

まるで、恐ろしく研がれた刃が全身を這って行くよう…!

殺気の元凶へは目も向けられない。


それでも私に向けられたものではないと分かる。

謁見の間を埋め尽くし、なおそれは余波だと。


常人が受ければ嫌でも『死』を感じるソレ。

それですら自分に向けられた殺気ではないと思うと怖気が奔る…。


その中心がこの部屋にいる…、しかも二人も。

…これが個人で『世界の敵』となった男の力だとでもいうの?


こんなモノ、人の出せる領域じゃない…!


「……じー。…起きた?」

そしてこの殺気の中、いえ、この状況の中平然と私を覗きこんでくる無表情な子供。

返事を返してあげたいが、歯の根が鳴って声にならない。

彼女の背後には私の可愛い小さな勇者と一緒に来たウルフ系のモンスターと…バルクに黒装束!


「に、げ…」

逃げなさい。その一言も充満する殺気への恐怖で詰まる。


「……のん。…大丈夫、皆慣れてる」

…皆?


Sideout




ファルナークside


馬鹿かあの二人は!とんでもない殺気を振り撒きよって!!一瞬、泣きかけたわ!!

まさかランクAの我が殺気で動けんくなるとは思わなんだわ!?

…おじい様が目を細めただけで身がすくんだ我が言っても説得力皆無じゃが…。


「…ソルファ、動けるかの?」

「ハハ…、冷や汗が止まりません。ちょっと泣きそうです。…でも、大分慣れてきました、行きましょう。イチナさん達が本格的に動き出したらこの比じゃない気がします…」

きつそうじゃのソルファ、我もじゃが。

まあ、我もソルファもイチナの殺気の余波をよう受け取るからの。

殺気への慣れは人十倍じゃ。


我とソルファは呆然と立ち尽くすバルクと若干苦しそうな黒装束の前へと歩みを進めた。



「ようもまあ、やってくれたもんじゃ。おかげでイチナが手をつけれん状態になってもうたわ」

…元々如何にか出来る男ではないがの。

バルクの足元では教皇が痙攣しとるが……まあ、放置でええじゃろ。

そのまま死んでくれると、なお有難いの。


そう思いながら、呆然とするバルクに警戒しながら声を掛ける。

コヤツにはどんな状況じゃろうと、警戒は解けんからな。


「ハハハ…、なにこの殺気…、馬鹿なの?死ぬの?もう人じゃないよねこれ…。君達のせいで…。違うか、君達を巻き込んだ結果か、これは…。足止め用の隠れ家強襲部隊も連絡がつかないし、踏んだり蹴ったりだね…」

強襲部隊は全滅かなー。そう力なく笑うバルク。

そして呟くようにこう言った。


「でもさ、流石にコレ(肌の色)は許容できないよ…。単色にしようよ!せめて、種族として見られる青で止めておこうよ!!…もういいや。猿飛君オーダーだよ、…殺せ」

そのオーダーに、黒装束サルトビは…。


「……おーい、猿飛くーん?……やっべ、まさかこの殺気で壊れた?」

雇い主のバルクの言葉も聞こえていないのか、よく分からぬ事をブツブツ呟き、俯いて頭を抱え、我らなど眼中に無いようじゃった。

よう聞きとれん…、詠唱ではないようじゃがな。


「あの、ファルナークさん…」

先程まで氷のような冷たい目で教皇を睨んでおったソルファが、動揺しながら我に問いかけてくる。


「何故か頭の中に『避難しろ』って声が響いて来るんですけど…。これって『神託』じゃないですよね?イチナさんとお爺ちゃんの戦闘ってそこまで吹っ飛んだものじゃないですよね?幻聴ですよねこれ、そうだと言ってください」

はぁ?神託?そんな訳なかろう。


所詮個人の戦いじゃぞ?神が介入してくる筈もなか《避難せよ。白たんを連れて。絶対白たんを連れて!》…ろう。

……マジかの?


Sideout



紙side(誤字に非ず)


「ちょっと!見識の!すぐに白様の守護達に避難するよう送りなさい!」

見識の神の仕事場の扉を蹴破りながらそう叫ぶのは創造の神だ。


「!?…また許可なく覗いてたんですか?それに駄目ですよ。世界への、むしろ個人への介入は『創世の神』より一切認められていませんから。白たんになら送ってもいいですが」

突然の乱入に驚くも、冷静に対処する見識の神。

その見た目は、白いローブにより隠されているが声からして女性のようだ。


「相変わらず白様の事以外には事務的な奴…。いい?もうすぐ『イレギュラー』と私達神ですら、なんでああなったのか分からない『人形』がぶつかるのよ?しかも本気で。それであそこにいる『ストッパー』達が巻き込まれでもしたら…『介入』でもしないと止まらないわよ?正直、戦の神。しかもガトゥーネクラスの戦好きじゃなきゃ死ぬわ。殺気で」


元々、甘坂の血筋は(神薙流に非ず、甘坂のみ)暴走したら止まるような可愛いモノではない。

それで止まるようなら神薙御三家……甘坂を除く三家などできなかっただろう。

個々の自制心、または良心や道徳心などに賭けるほかないのだ。


「はあ、だから何ですか?たかが個人の…、しかも人族の力なんて知れてますよ。神域に来れる訳でもないですし。白たんさえ守ってくれれば文句はないです」


「あの場にいる事で白様も被害を被る可能性があるのよ?あの場に『白様の伝道師(アリーナン)』がいたら、間違いなく白様を連れて逃げているはずよ」

アリーナンが神と契約した時。彼女に二つ名を与えた。それが『伝道師』

勿論『使徒』としての契約ではない。白様に幸せを!という契約だ。


『世界を白で平和にする』という建前の元、神々がアリーナンに与えた力は『信仰破壊』

自分達への信仰も破壊する力を白狂いに授けてやったのだ。

神よ、もっとよく考えてから力を与えて欲しい。


元々白への愛だけで魔族を改宗させられるアリーナンには無用の長物であるが。


そして、契約した神が神気を込めて付けた『二つ名』伝道師。

伝道師が白様の可愛さを人々に説く事で、白が幸せになれるという力を皆で付けた。

白の幸せとは何なのか。実に抽象的である。


そして、いつまでも白を見ていたいというアリーナンの熱い思いに打たれ、神々は不老もおまけした。


神々、自重しろ。


「…伝道師。分かりました。ですが、イレギュラーには送りませんよ?白たんを盾に私達を脅すような粗暴な男に神気での通信が送れるとも思いませんし、戦闘停止を聞く様な殊勝な男でもないでしょう…」

この見識の神は、二度と教会に連れてこない。という一南の発言で渋々帰らされたことをまだ根に持っている。

教会に行けば次に白と会うのは見識の神の番だったのも大きく関係している。


「では、仕事にかかります」

「ええ、お願いね」

創造の神は満足気にその場を後にした。


そして目指すは創造魔法で創った白達がいる自分の部屋。

こんな事でも無ければ絶対に部屋から出てこないニート神が此処にいた。


Sideout




猿飛side


拙者、自分のステータスを確認して驚愕したでござる…!


「…HPの最大値が減っていく?この世界にHPの概念は無いはずでござるが…?どういう事でござるか?まさか、あのジジイを早々に返さねば、死…?」

HPは生命力の強さでござる。

ゲームではないこの世界でのしぶとさという曖昧なものを表したものがHPでござる。

高ければ高い程、生き汚く生にしがみ付き。

低ければ……体の抵抗力も下がり、多少の傷が死に直結する。


そんな拙者の生命力、それの最大値が減っていく。

見えるがゆえの恐怖。


まて、あのジジイが原因と決めつけるのは速いでござる!

あれは魔力のラインが繋がっているとしても単なる人形……のはずでござる。


ジジイがもう一匹の化物と睨みあい始めてからHPがガリガリ削れ始めた。

まさか、もう一匹の化物に原因があるでござるか…?


「…大丈夫、まだ慌てる時間じゃないでござる。拙者のHPはチートで上げて40万。無くなる道理はござらん」

拙者はそこで初めて頭を上げた。

……いつの間にこんなに近くに来ていたでござるか、ファルナーク・サリスにソルファ・カンバス。


カンバスの方はなにやら困惑した様子でサリスに話しかけているでござる。

というかこの女達、この殺気の渦の中で割と平気なようでござるな…。


だが、拙者を前に油断しすぎではござらんか?

さっき雇い主から殺せとか言われていたようだし、ここは仕事するでござるか。


拙者がソルファ・カンバスに近づこうとした瞬間にソレは起こった。


「かひゅっ…!?」

一瞬息が止まった。

全身を切り刻まれたかのような錯覚が拙者を襲う。

ジジイから目を放したもう一匹の化け物が拙者を殺気で貫いていた。

こちらを見る化け物の目は「手ぇ出したら殺す」と雄弁に語っていたでござる。


…ナニコレ、怖い。


「一南ぁ!敵から目を逸らすとは何事じゃぁ!!!」

「くはっ!手癖の悪い猿に警告しただけじぇねぇか。そう殺気をばら撒くなよ、爺さん!」

化け物同士の一瞬の交差。

両者の一撃は拙者には、ほぼ見えない。

若い方の化け物、先ほどより剣速が上がってるでござるか…?


「…ふむ、相変わらずか。先ほどよりは力を込めたんじゃがな、もう慣れよったか。ワシの若いころにそっくりじゃ」

「はぁ?なに言ってやがる。俺はそんなに順応性は高くねぇ。それに軽くいなしといて、説得力の欠片もねぇな」

何この化け物共……出鱈目すぎるでござる!


…あ?拙者の体から力が抜けていく!?

違う、これは…奪われている!魔力ラインから尋常じゃない量の拙者の生命力がジジイに流れ込んでいるでござる!!


「ぐぅっ!…馬鹿な、一気にHPを1000以下に!?拙者を殺す気でござるか…!」

普通は最大値は減らないんでござるよ!?

この数値だと、普通に切り傷が致命傷になりかねないレベルでござるよ!?


…生命力を奪ったからといって人形の発現時間が伸びるわけではないのでござるが、そんなモノお構いなしにゴリゴリと奪っていく。

回復する訳でもないし、そんな意味のないものを奪ってジジイはなにをする積りでござるか?


というより、一体どうやって!?

このままでは、ジジイがいるだけでHPが無くなる!!


「拙者、チートなのにこんな事で…!!」

思わずその場で叫んでしまった。

サリスやカンバスが突然の慟哭にビクついたでござるが、気にしてられないでござる。


ジジイが消えるまで残り30分。

このままじゃ、拙者死ぬでござる…!

もう、暗殺者プレイとか言ってられないでござぁ!


今使えるチートを使って、化け物二匹…。

拙者、真の勇者になるでござる!!


というより、これ以上奪われると動けなくなるでござぁ!!


Sideout




カートスside


うん、チャンスだね。

なんでか知らないけど黒装束の彼は衰弱し始めてるし。

ただ…。


「み~?」

「ぴ?」

「…?」

この仔達をバルクの処まで連れて行っていいものだろうか?

白ちゃんが飛んでる処を捕まえたのはよかったんだけどね…。


今は黄助の上でクロハに監視されながら大人しくしてる。


「拙者、チートなのにこんな事で…!」

厄介な黒装束の突然の慟哭。

そして意を決したように猛然とイチナくんとお爺さんの元へと向かう。


「グルガァ?」

「ブルル?」

「み?」

「…?」

「ぴぴー?」

アニマルズは皆揃って「何でそっちに行くの?」と首を捻っている。


「…自殺しに行ったのかな?」

まあ、そんな訳ないだろうけど…。

お爺さんの相手をしながらアイツの相手はイチナくんでも厳しいだろうな。


「クロハ、黄助。君達はファルナーク達と合流してバルクを。その後は脱出してね」

僕様は黄助達の返事を聞かないまま走り出す。


さっきから頭の中で避難しろってうるさいのは多分神託。

安奈ちゃんや光樹くんも動き出したし、皆に聞こえているんだろう。


でも、イチナくんには聞こえてないようだ。

僕様がイチナくんに伝えて止められればいいんだけど、それでお爺さんが止まるかといったら…。


「一番いいのは黒装束に丸投げする事だけど…。駄目ならなんとかするしかないね」

そう呟いて、僕様は人外な殺気の渦巻く中心へとこの身を躍らせるのだった。


Sideout

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