大鬼と鬼の前哨戦
なんとか、今月中に書き上がった…。
次回の話は来月になります。
byミスター
一南side
ちいとこの面子で乗り込むのは過剰戦力かと思っていたが……。
何故か、爺さんがいる。
この時点で過剰戦力なんて言葉は掻き消える。
むしろ逃げて欲しい、全員に。
「爺さん、なんでいるんだよ。あれか?遂に元の世界から弾かれる程の理不尽でも起こしたのか?殺気で活火山を噴火させたとかよ」
なんでいるとか、いろいろ疑問は尽きないが、爺さんだし有りえそうで怖い。
驚き?勿論あるが、顔には出さん!負けた気になる。
「クカカカッ!ワシはそこの小童に『再現』された偽物よ。いわば、意志無き人形!小童に顎で使かわれる程度に劣化したジジイじゃよ」
爺さんの台詞に突っ込みどころが多すぎるが、置いておく。
再現の意味が分からんが…。
小童ってのが、あの隅で遠い目をしてる黒装束の事なら、アイツがやったと見て間違いないだろう。
爺さんの武力を使おうとする奴が、ああいう感じになるのはよく見てるからな。
《ふむ、再現か。創造の加護に似ているが非なるものだな。少なくともこの世界の神では無いな…。一南の世界の神か?しかし、一南の世界の神は死後の世界に引っ込んでいると聞くが…?》
ガトゥーネでも分からんか…。
しかし、いたんだな俺の世界にも神が。
死んでいった一族は今頃楽しんでるんだろうか?
「偽物ねぇ…。しかし、相変わらずだな。孫に殺気向ける爺さんがどこにいるよ」
見た目は変わってないが、確かに『偽物』だ。
『本物』の殺気はこれの比じゃねぇ、それを間近で受けて来た身としては、今の爺さんの殺気はぬるいとしか言えねぇな。
それに、二の腕に一太刀貰ってやがる…、太刀筋的にカートスかねぇ?
だが、カートスの腕をもってしても『本物』なら絶対に有りえん。
俺の居合抜刀を見てから躱すような爺さんだったからな。
身体能力が落ちている?それとも遊びに走ったか?
「イチナさん…。この方はもしかしなくてもご親族ですか?ご挨拶をした方が…、い、いいのでしょうか?」
お?ソルファはこの殺気の中で普通に喋れるのか?つうか顔赤いな。
…もしかして爺さん、俺にしか殺気を向けてねぇな?
というか、もしかしなくてもってなんだ…?
似てるか?俺はあそこまで殺人的に眼つきは悪くねぇだろ?
「ん、まあ…、うちの爺さんだが…「あ、あの!イチナさんを僕に下さい!」おいバカ。挨拶するような雰囲気じゃねぇだろ!?しかもそれは俺の台詞だ!落ち着けアホウ!白、すまねぇがちょっと降りてくれ。テンとチビスラもな」
爺さんの剣気に呑まれてテンパったな!?
「…み~」
「ぴ」
「…」
「うぅ、すいません…」
ソルファはその場で顔を真っ赤にし何度か深呼吸をしていた。
白は何度か心配そうに振り返りながら黄助の元へと向かう。
テンは胸ポケットから豆白を咥え飛び出し、先に肩から地面に落下しベッチャッと広がったチビスラに追撃をしかける。
あれ?なんであの豆白だけ取り残されてんの?
他の豆白達はみんな消えたぞ?
あ、今消えた。咥えていたテンが混乱してる。
なんともどんくさい豆白だったな…。
爺さんを警戒しながら、ルナとカートスも下がってくる。
「イチナくん…。有難う、来てくれて」
「カートス、下がれ。浅いとはいえ傷を負っておるのじゃぞ?イチナ、いいタイミングじゃ、惚れなおしたぞ!…とんでもないおじい様じゃ。ご挨拶も一杯一杯で出来んかったし……危うく真っ二つにされる処じゃったわ」
胸の傷を押さえるカートスと、そう言いながら苦笑しているルナ。
「…下がってろ爺さんの相手は俺がするからよ」
カートスの傷は、爺さんがやったんだろうなぁ…。
それにルナを真っ二つにねぇ……よし、報復は俺が承ろう。
「…うむ、活き活きしとるのぅ。分かった、我等はあっちをどうにかしよう」
「あっちはあっちで厄介だけどね」
そう言ってカートスとルナは足元で未だにもちゃもちゃ蠢くチビスラと混乱するテンを回収していく。
「なんとも、寂しい紹介じゃのう…。まあ、今は貴様の敵として立っておる。それで充分か?」
「待っててくれてありがとよ。俺の紹介にしちゃ上等だろ?」
確かにの。そう言って、互いにイイ笑顔を浮かべ、自然体で構える俺と爺さんだった。
Sideout
ソルファside
ああ、恥ずかしい…。
イチナさんのご親族への挨拶ということで出て来た言葉があれでした…。
突然の事でかなり緊張し頭の中が真っ白になったのは自覚しています。
……剣気に呑まれたという事にしておかないと。
でも、俺の台詞って事は何時か、その、僕にも…ッ!。
よし、深呼吸だ。
一回落ち着こう!
ファルナークさん達と合流できたのは良いのですが、まさか、敵にイチナさんのお爺ちゃんがいるとは…。
問題は、イチナさんのお爺ちゃんに、ファルナークさん達が警戒する黒装束。
恐らくバルクの『手』であろう者達の死体?は散乱していますが、状況はよくないです。
「おやー?アイナクリン様の姿が見えないね?まさか置いて来たのかなー?…ねえ、聞いてる?え?この状況で僕を完全無視するの?ひどくねイチナくん」
バルクがイチナさんに問いかけるが完全に無視されました。
あの異常なまでの剣気を放つお爺ちゃんです、イチナさんですらこちらを気にする余裕もないのでしょう。
…ただ無視しているだけかもしれませんが。
しかし、バルクは女王陛下とは一定の距離を保っているようですね…。
どうしてでしょうか?
良い事なんですけど、バルクなら人質にする位やりそうですが…。
「クフッ、おじい様が怖くてフリーナに近寄れんか?意外と可愛いの」
「ああ、さっきの『選ばせてやる』ってやつかな?息を出来なくなるほどの殺気を当られたんだから仕方ないんじゃないかな?」
ファルナークさんとカートスさんはイチナさんのお爺ちゃんをイチナさんに任せて、僕達と一緒に女王様の救出まわるそうです。
「アイリン様がいなければどうだって言うのですか!」
まだ、落ち着けてないようです、語気が荒くなってしましました。
「…女騎士ソルファ・カンバスか、何でもないよ。ただ君たちの隠れ家に兵を送ってあるだけさ。あ、そうそう、君は殺さない。良かったねー!君は教皇様の女好きに救われた!…君はこの後、教皇様のベッドで鳴くんだ」
バルクの台詞に怖気が走った。
僕の精神は急激に冷めていきました。
あそこで気絶しているのが教皇……潰すしかないですね。
石突きを教皇に向け、無言で何度か素振りする。
隠れ家…、カートスさんのホームの事でしょうね。
そこは心配してません。
だって、あそこにはマキサックさんとオウマさん。
なにより……使徒様がおられます。
向った兵達のトラウマになるようなはっちゃけは止めてあげてほしいです。
せめて、一撃で屠ってくださいよ使徒様…。
「…ふむ、色ボケは我の事もなにかと言っておったの…。ソルファ、片方ずつじゃぞ?」
「はい」
…相手は教皇なのに、何の躊躇もなく頷いてしまった。
僕も大分イチナさんに影響されてるな。
「そもそもじゃ、貴様の送った兵士は『治癒の使徒様』と『最強の勇者』に勝てる化け物ぞろいなのかの?もしそうなら我等も急いで戻らねばならんが……ここにおるのが一番強そうじゃしの」
バルクが頬を引きつらせるのが分かる。
「拙者の事忘れてござらんか?」
僕の背後から声がした。
でも、慌てない、だって心強い味方が守ってくれているから。
「ガウッ!」
「グルガァ!」
「ぬぉ!?獣風情が、チートに勝てると…ファッ!?」
僕はその場でハルバードを一回転、当った感触は無い。
それを牽制にし、回したハルバードを腰だめに持ち、横薙ぎに薙ぎ払うように後ろを向いた。
「驚いたでござるが、当らんでござるよ!」
僕の攻撃はかわされたようだ、しかし、サウスと黄助が仕掛けている。
黄助の背中には必死にしがみついている白ちゃんがいた…。
え!?ちょっと!危ないですよ!?降ろしてから行きましょうよ!?
「僕様たちも行こうか、クロハ!ファルナーク、ソルファ!君達はバルクを!」
「ブルル!」
更にカートスさんとクロハも参戦する。
カートスさんまで!?せめてテンちゃんとチビスラちゃんは頭から降ろしていきましょうよ…!
「っと、速いでござるなこの狼!っ!足を取られた!?『バインド無効化・再現』!」
一瞬で黄助の拘束は破られるが、正面からカートスさんの流れるような美しい剣技が迫り。
横合いからサウスが二刀二対の魔力刀での四連撃。
さらにサウスの反対側からは黄助の見切る事も難しい鞭技が。
さらには背後からクロハが走り込む。
突然の事に付いて行けないアンナさんとコウキくん。
「分かった」
「はい!」
…任せておいて大丈夫ですよね?
僕はファルナークさんと一緒に教皇とバルクを潰しに走るのだった。
Sideout
腐敗勇者side
あっれー…。
ここ魔法が使えないんですけど…。
創造魔法がないとまだ人外の戦いには参加できないんだよ私。
黒装束で顔が見えないのが残念!イケメンなら薄い本の材料になったかも知れないのに…。
ゴザル口調だし、これから黒子ゴザルと呼ぼう!
黒装束を脱げば黒子は取れるんだから早く脱がないかなー、お姉さんワクワクしちゃう!
俺様王子は来て早々、お爺ちゃんにぞっこんラブだし。
二人ともイイ笑顔だなー…、お姉さんガクガクしちゃう。
…現実逃避はこの位にして現実を見よう。
突然、ソルファちゃんの背後に現れたと思ったら、スーパー袋叩きタイムに突入した黒子ゴザル。
…駄目だ!現実に付いていけない!!
黒子ござるのスーパー袋叩きタイムかと思った瞬間、黒子ゴザルが動いた!
「……『斬撃、打撃無効化・再現』これが、初級チートの…ゴッフゥ!?」
全ての攻撃を無効化されたと思われたが、背後からのクロハの突撃にカートス君に向かって跳ね飛ばされた。
むむ、一度に2つ以上のチート付加は出来ないのかな?
でも、お爺さんがいるし…、3つ?
初級って言ってるし、もっといけるのかな?
それともやっぱり間抜けなだけ?
「…衝撃は通るのかな?ワクじい直伝『ツヴァイ・クラッシュ』」
そう呟いたカートス君の渾身の一撃。
今までの流れるような剣技ではなく、まさに剛剣といった感じの力のこもった袈裟斬り……え?
剣の先が魔力で形成されたハンマーになった!?
次いでとばかりにカートス君の頭の上で、テンを投げる体勢に入っているチビスラ。
テンちゃんもなんかやる気だし!?
カートス君の一撃を手に持つ短刀で受ける黒子ゴザル。
受けた瞬間、黒子ゴザルの額に黄色い弾丸が突き刺さった。
「痛ったぁ!?「ぴぴーー!!」ぐわっ!?うるさいでござ「ぴぴぴー!!」ええい!なんでチートを貫通して来るんでござるか!?」
(あれでござるか?拙者の能力から敵としてみなされてないでござるか?蚊とかそんな感じの扱いでござるかこのひよこ……『鑑定再現』してみたいところでござるな)
その間もカートス君のハンマーを抑えるのに両手を使っているため、テンちゃんのやりたい放題になっている。
「……」
その光景を見た黄助が無言で鞭を回す。
その先には……白ちゃん。
黄助は場所を移動して黒子ゴザルの背中に向けて射出した。
なんばしよっとか!?黄助っち!
「みー…、み゛!?」
びったん。
やわいお腹から黒子ゴザルのうなじ辺りに激突した白ちゃんはそのまま背中を滑り落ちる。
爪を立てて。
「痛だだだだっ!?「そのまま潰れて」ぐっ!押しこまれるでござ「ぴぴー!」うるさい!?集中できない!」
(斬撃無効どこ行ったでござるか!?前の世界の猫の爪くらいなら余裕で利かないんでござるが!?
『ステータス再現』!……チートを使うためのキャパシティが甘坂五一にほぼぶんどられてるでござぁ!?ヒヨコに攻撃されたときには効果が切れていたでござるか!これじゃただのバフでござる!
あのジジイ、強制消滅も受け付けないし、時間切れかやられるのを待つしかないでござるが……戻って来るでござるよな?キャパ…)
黒子ゴザルの背後では全体重をかけた踏みつぶしの為のアップをクロハがはじめていた。
サウスは黒子ゴザルを警戒しながらもバルクの動向を気にしているようだった。
「ぐぐぐっ…!『転移再現』!」
「離れて!」
私の声が届いたのか、黒子ゴザルの肩の上で耳をつつき、髪を千切り、けたたましく鳴いていたテンちゃんは宙返りしながらその場を離れる。
背中を登っては爪を立てて降りるを繰りかえしていた白ちゃんも背中を蹴り、羽を生やして飛び去る。
その場から消える黒子ゴザル。
次に現れた時はバルクの隣だった。
カートス君の一撃は空を切り床に大きなクレーターを作るだけに終わった。
…お城だし、床抜けないよね?
「…ふぅ、本当に厄介だ。やっぱりファルナークもいた方がよかったかな?」
血の滲む胸を抑えながらそう呟くカートス君。
…そう言えば、光樹君はどうしたのかな?
あ、聖剣を鞘から抜こうとしてるけど…。
「ぇふあ…、アンナさーん、皆早くてついていけませんよぅ…」
凄く悔しそうに、泣きが入った声でそう言って来た。
…光樹君の場合は、人に剣を向けたくないっていうのもあるかも知れないな。
「大丈夫、私もだから……悔しい事にね。だから見よう。どうなっても対処できるように。これからの為に」
私は、その隣に移動して、肩を叩くくらいしか出来なかった。
離れて『見る』事も大事。そう自分に言い聞かせ、私は全てを注視する。
強くなる。少なくとも魔法無しで『並べる』くらいに。
……無理かもしれないけどね!
Sideout
一南side
ピリピリとした懐かしい剣気が肌に刺さる…。
これで偽物だってんだから、たまらないねぇ、全く。
「ふむ…、一南よ」
「あん?なんだ…っ!」
問いかけからの、突然の踏み込み。
「相変わらず唐突だな、おいぃ!?」
そして、首を狙った突きが放たれる。
爺さんの突きは避けるに限るんだよ!
おう、平突きじゃねぇか!それは胴体を狙うもんだ馬鹿!
…ほれ、来た、お得意の平突きからの首狩り。
おいおい、殺す気満々だな、爺さん…。
神薙流刺突武技『刺刀』である。
本来は突きさし掻っ捌くだけの技だ。
「ひぃ!?」
特に関係の無いチビ勇者から悲鳴が漏れる……見えてんのか?意外と優秀だな。
「そんな物騒な技、孫に使うんじゃねぇよ!」
俺は、頭を下げてやり過ごす。
髪の毛が何本か散ったが気にしない。
そして、刀を振って体が開いた処に居合抜刀『六銭』を叩き込む。
当然だが、殺す気で。
「死ねや」
「…物騒はどっちじゃ!」
爺さんが振り切った刀を空中で手放し、一瞬で腰に帯びた二振りのうちの一刀である居合刀に手を掛けた。
鍔鳴りと共に、ギシリと六銭が止められ、互いにその場から後ろに飛び退く。
その際、爺さんは先ほど空中で手放した刀を、落下前に回収していく曲芸も見せてくれた。
「抜刀の鍔鳴りがしてんじゃねぇか…。本当に偽物みたいだなぁ、体だけ」
今の打ち合いで、悲しいかな俺よりも『強い』と教えてくれる。
ああ、懐かしい。
爺さんとの鍛錬を思い出す…。
決して本物みたいに『理不尽なほど強い』訳じゃねぇのが救いだな。
鍛錬の時ですら鳴らなかった鍔鳴りが鳴ったのは、手抜きではないと思いたい。
…おかしい、考えれば考える程にうちの爺さんの存在がイカレてるのがわかる。
「たわけ。体も心も偽物じゃ。この世界で昂ぶらぬワシは小童の道具にすぎん。先ほど奴を殴ってみたが、どうも無意識に加減させられておるようでな、殺せなんだわ!クカカカ!」
本物なら殴って首だけ消し飛ばせるからの!と笑い飛ばす爺さん。
「…なるほどねぇ。オレの鍛錬してた頃の能力が今の爺さんの上限って感じか?」
「そうじゃな、そんなもんじゃろ。あの小童がワシの全力を見ておれば、『たとえ間違っても』弱くする事はなかったじゃろうがな」
爺さんの全力なんぞ俺だって見たことねぇよ…。
中学生の時に、爺さんのとっておきの饅頭を喰って本気の殺気と怒気なら受けたことは有るがな!
あの時は流石に「あ、俺死んだ」と思った。
あの時程、唯一爺さんを笑顔で止められるばあさんの存在を恋しく思った事は無い。
「そうかい、鍛錬時の爺さんくらいか。なら、今回は超えて見せましょうかねぇ」
「ホッ!一度も勝ったことが無い癖に、よう言いよる。どのみち敵じゃ、どうすればいいか教えたじゃろ?」
俺に向かって殺気を放つ爺さん、止めろ楽しくてニヤけちまうだろ。
「ああ、ちゃんと覚えてるよ…」
「なら問題ないの…」
ああ、準備運動も終わったしねぇ?
「「…斬り散らす!」」
互いに踏み込み激突する。
踏み込みからの一閃。
互いに同時に放ち、刀同士がぶつかり…。
…多少、多少だ。
力負けした俺は、爺さんの剣の力を利用し後ろに飛んで、距離を取る。
…予想より、飛ばされた事は秘密だ。
なんか悔しいので魔力と氣を足に回す。
こっちで思いついた『空転び』通用するか?
…おいジジイ、真似すんな。
待てよ、爺さんのあの体で『氣』が使えるのか?
皆はそんな俺と爺さんのやり取りを見て、ポカーンと口を開けて固まっていた。
おい、ルナ、ソルファ。今がチャンスなんだからこっち見ってんな、走れよ。
「バルク殿、なんでござるか『アレ』は…?あんな化け物が敵にもいるとか聞いてないでござるよ…。!?何でござるか…?体から力が抜ける?…気のせいでござるか?」
爺さんの言う小童がなんか喚いてる。
力が抜ける?……爺さん、アイツから氣を奪って使ってんのか!?
方法が全く分からねぇが、爺さんだから。で納得しそうな俺が嫌だ。
「やっばいかな…。取り敢えず目的を果たして…。その前に女王陛下を人質にとった方が良いか」
(たかが人形の言う事、僕が『選ぶ』事は無い!怖くない、怖くない、怖くない!)
顔に脂汗を滲ませながら、バルクが動こうとする。
「サウスっち!」
「ガウッ!!」
爺さんから目を放せない俺の代わりに、腐敗勇者の声が飛ぶ。
サウスは最速でバルクの前まで駆け込み、小瓶を持ったバルクに魔力刀を突きつけた。
隣にいたはずの黒装束は、爺さんから氣を奪われ動きが鈍り、サウスに反応出来なかったようだ。
おいサウス、俺に遠慮せずに殺っちゃっていいんだぞ?
そう思っていたらサウスの背中に乗ったパー子が吹き矢で動けないバルクを撃っていた。
「痛った!?ぐっ!何これ毒!?猿飛君!」
「拙者、今あんまりチート使いたくないんでござるが…『アイテム再現』万能薬。ほれ飲むでござる」
猿飛?日本人か?まさか勇者とかじゃねぇだろうな…。
猿飛はバルクの裏膝を蹴りその場に倒しながら、魔力刀とバルクの間に入り。
右手でサウスの魔力刀を弾いて、左手に持つ万能薬のビンをバルクの口に突っ込んだ。
万能薬を猿飛に飲まされたバルクに体に異変が起きる。
「っがあぁああぁ……あれ?なんともな…え?」
自分の手を見て驚愕に目を見開くバルク。
その肌は、ショッキングピンクと濃紺のマーブル模様に染まっていた。
「……?…おかしい。…あ、配合、…テヘペロ」
完全なる無表情でそんな事をのたまうパー子。
「万能薬でござるよ!?どんな化学反応でござるか!?どうするでござるかバルク殿。もう女王陛下を洗脳しても、その肌の色ではここに居場所はないでござるよ?」
ショッキングすぎる出来事に反応しなくなるバルク。
取り敢えず、バルクの野望はパー子の吹き矢一発で潰えた事だけは確からしい。
よくやったとパー子を褒めてやりたい処だが…。
目の前には凄惨な笑顔を浮かべる爺さん。
「楽しそうなお仲間じゃのう、一南よ?」
お互いに我慢していた殺気が漏れ出す。
…まあ、あっちは任せておいて問題ねぇだろ。
「そうだろ?後は、爺さんを片付けてバルクと『教皇』を仕留めるだけで終わる簡単なお仕事だ」
「ホッ…!やってみせい、馬鹿孫!!」
互いの殺気が謁見の間を埋め尽くした。
Sideout




