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猫守紀行  作者: ミスター
106/141

チーターと理不尽の大鬼(弱)

ぬるりと投稿。

バルクside


「イチナが来る」

ファルナークはそう言った。

はっはっは、冗談だよね?


止めてよね、せっかくバトルホースに仕込んだ探査術式を辿って隠れ家まで特定して。

足止めに兵まで向けたのに全部無駄なの?


…マジかー…。


「まっさかー。そこまで頭悪くないよ彼。ただの賞金首ですら討伐対象になるのが

王都だよ?

それなのに自分が最上級の『魔王扱い』されてるのに王都になんか近づかないよ普通さ。

もう、一般人にすら情報は行き届いているしね。それに、実際の『魔角』を持つ魔王じゃなく人間なんだ、来たら1対国になる事くらい分かるでしょ?勝ち目なんてないよ」

そう、世界の敵は魔族や魔王だけのものだ。

だが、個人で受けているのは『魔王』のみ。


なにより、来ない。そう思わないと出費が痛過ぎる!


「…ねぇ、ファルナーク。なんでイチナくんを相手に、あそこまで余裕なのかな?僕様がバルクならもう逃げてると思うけど…」

ミアガットから目を放さずにファルナークに声を掛ける『武神』


「そうじゃの、我でもそうするのう。少なくとも我等を巻き込んだ時点で終わっとる。…我等をどうにかしてイチナすらも凌駕するような手札を持っているのなら話は別じゃがの」

鋭いねー。

うちの『手』の気配には気づいたみたいだし、今だって二人とも警戒は怠ってない。


「余裕の理由?それはね…」

では、ご登場いただきましょう!

僕の誇る最強の戦力。

異世界人にして勇者、猿飛君の登場だ!


「拙者がいるからでござるよ」

カートスの背後から霞のように現れて、カートスの肩を一度ポンッと叩いた。


「なっ!?」

武神はその場から弾かれるように距離を取る。流石、猿飛君。

本当、こっちの残しておいてよかった…。


見た目は『手』と変わらない黒装束。

しかし、格が違うのだよ!


「おっ!いっただきー!」

その隙を狙ってミアガットが動こうとするが…。


「たわけが!我を忘れるでないぞ!」

ファルナークの投げナイフが眼前を横切り阻まれた。

……投擲の瞬間が見えなかったよ、流石ランクA。

よく避けたね、ミアガット。


でもね、猿飛君とミアガットだけが相手じゃないんだよ?


「さあ、賞金首の鎮圧を始めよう……やれ」

おもに僕の為に。

イチナくんが来る前にカートス・マリゲーラとファルナーク・サリスを無力化するんだ!


その一言で、謁見の間にいた黒装束たちが『賞金首』に殺到した。


「ファルナーク様!」

フリーナ女王陛下が声を上げる。

駄目だよ?女王陛下は僕の道具になってもらうんだから。

余計なことしちゃ、メッですよー。


「さーて、おねむの時間ですよー、女王陛下?」

僕は近衛を斬り倒し、女王陛下の前に出る。


「バルク・ガンズィーナ…!貴方は本当にこんな事がまかり通ると思っているのですか!!こんな形で国を取る者を民は認めないでしょう!」


…あはっ!


「僕をどう思おうがどうでもいいね!だって、この国を治めるのは女王陛下だもの」

「あなたの言いなりになるくらいなら死を持って民を救います!」

わぁお、ご立派ー。

でも、女王陛下は薬を打ち込んで洗脳して、操り人形とするのだー。


教会から危険すぎるって理由で製造方法すらなくなった薬。

『洗脳薬』…。

これは井戸とかにいれて村を丸ごと洗脳するのに使うらしいけど、原液でいいよね?

人形にする分には問題ないしー。


そんなの有るなら早く使えって?


流石の僕でもこんな物が残ってるなんて思ってなかったからね!

まあ、残ってた物じゃなくて『新しく作った物』になるのかなこの場合は。

作った人は5秒かからず作ってたから有難みがないけどね!


「貴様!フリーナに何をする気じゃ!」

おっと、気づかれた。

まるで嵐のように大剣を振り回し、『手』を紙屑のように千切り飛ばしながら、こちらに向かってくるファルナーク。


ミアガットは…、駄目だね。


「ちょっ!?強っよ!…ハァハァ、ああ、良い!濡れるわぁ…!」

恍惚とした表情でカートスと鍔迫り合いをしているミアガット。


「君、死臭が濃すぎるね。…まるで死体でも漁ったみたいだ」

一方そのまま押し切ろうとするカートスは、呆れた表情をしている。


剣を抜いたカートスに押されっぱなしだね…。

カートスは『手』の相手もしながらミアガットをあしらってる……ランクAって凄いわ。

ミアガットも強いんだけどね、最近は雑魚の相手ばかりしてたから勘を取り戻すまでに時間が掛かるかな。


「バルク!!フリーナから離れんか!」

おっと、こっちは…。


「頼んだよ」

「御意に、とでも言えばいいでござるか?追加料金をお願いするでござるよ」

僕はその言葉に素直に頷いた。

追加料金がいくらかなんて考えないよ?言い値で払うさ。

だってそれだけの価値があるからね。


「貴様!邪魔をするでないわ!」

猿飛君目掛けて大剣を振り下ろすファルナーク。


「そうもいかんでござる。こっちは仕事でござるからな」

しかし、猿飛君が逆手で持つ短刀サイズの聖剣『フラスエンニル』に受け止められる。


「なっ!?…貴様、何者じゃ?その剣まさか…。いや、それよりもそこをどかんか!!相手なら後でいくらでもしてやる!」

あっは!ウケる!あのファルナークが焦り過ぎて『時の加護』すら忘れてるよ!

それほどに大事な友達なんだねー(笑)。


「猿飛くーん、そのまま押さえててねー」

「逃げるんじゃ!フリーナ!!」

ファルナークの懇願にも似た叫びが響く。

その声を聴いた女王陛下の答えは自分の背中に手を回し短剣を取り出す事だった。


あ、死ぬ気だ。

でも、僕の踏込の方が速いもんね!

一足飛びで踏み込んで短剣を弾き飛ばした時の王女陛下の絶望。

素敵です。


そのまま、女王陛下を捕まえて、僕は懐から『洗脳薬』を取り出した。


「残念でした!…さあ、おやすみ女王陛下。コンニチハお人形さん「避けて!バルク様!!」…へ?」

久しぶりに聞いたミアガットの必死な声。


「やりなさい!私ごと!」

今なんて言ったこの女王…?むしろ誰に言ってるの?気でも狂って見えないなにかに喋りかけたとか?


おふざけはこの位にして、ちょっぴり後ろを振り返ってみようかなー…。


視界の端に映ったのは吹き飛ばされるミアガットとこちらに向かって大上段に剣を構えるカートスの姿だった。


……あ、ヤバい。あの構えは見たことあるよ?


「バルク、お前は生かしておいちゃ駄目な奴だ。低出力ファスト・ザンバー!!」

とっさに女王陛下を盾にする……あれ?止まらない?女王陛下ごと殺る気!!?

カートス・マリゲーラ…、正直甘い奴と思ってたけど。

女王陛下ごと斬りに来るとか正気じゃない!


「ちぃ!」

一時、洗脳薬を飲ませる事を断念し、女王陛下を突き飛ばし……掴んでないで放せババア!

女王陛下に蹴りを入れて、転がるようにその場を離れる。

うっわ!空中で軌道を変えて来た!どうしても殺りたいんだね!?


「僕が死んだら、お金払えなくなるよ!」

助けて、猿飛くーん!


「それは困るでござるな」

いつの間にか、僕の目の前。

そう、カートスの技から僕を庇うように立っていた猿飛君…。

ファルナークはどうしたのさ?


「『能力再現・スキルメニュー』発動。眼前の武技に対しての耐性をMAXで取得。…無効化処置完了、でござる」

猿飛君に『ファスト・ザンバー』が直撃、霧散したのだった。

カートス呆然、ざまあ!


「流石!相変わらずとんでもないね!……ファルナークの相手は分身かい?」

「『質量を持つ分身』の『再現』でござるよ。さあ、さっさと仕事をすますでござ…ほう、流石はランクAでござるか」

パンッ!と何かが破裂する軽い音と、その直後に轟音。

ファルナークの方を見てみれば、力技で猿飛君の分身を叩き斬り、謁見の間の床を砕き潰していた。

…謁見の間の強固な床を砕くとか、どんなバカ力ですかー?


「謁見の間を壊さないように威力を抑えたのが拙かったかな…。それでもワクじい直伝のファスト・ザンバーだよ?それが霧散した?なんだアイツは」

「…厄介、というだけは収まらんの。今一度聞こうか、おぬし、何者じゃ?」

…まあ、いいか。女王陛下は僕の蹴りで気を失ってるから、後はこいつ等だけ処理すればいいし。

僕は猿飛君に自己紹介を許可したのだった。


Sideout





猿飛side


うむ、雇い主からも許可が出たことだし拙者も名乗りを上げておくでござるか。


「聞かれたならば、答えてやるのが世の情けでござるな。ファグスの勇者にして異世界人!生まれは日本の平行世界!ここでは無い世界の神に転生させられ十数年、何でもござれの転生者!『チーター・アーカイバー』猿飛空也ここに推参!」

マイナーなゲームのキャラの決めポーズを使ってちょっと転生者アピールをしてみる拙者。


「へ、へぇ…?」

「む、むぅ。凄いのう…?」

分かってないでござるな?そして、引いてるでござるな?


「ま、この世界の人間に理解は求めてないでござる。ただ、おぬし等が束になっても勝てない。とだけ記憶しておくといいでござるよ」

拙者が名乗った『チーター・アーカイバー』は拙者が得た知識ならたとえ『間違っていても』再現できる『転生特典』でござる。

理論も完全無視して再現できるから使い勝手がいいでござるよ!


「我とカートスで勝てぬ、と?」

「流石にファスト・ザンバーを消されたのは驚いたけどね。…あまり舐めないで欲しいかな?」

…凄い殺気と闘気でござる。

正面からやり合いたくはないでござるな。

『パラメーター再現』を使えばどうとでもなるでござるが。


あ、そうそう、実は洗脳薬を再現したのも拙者でござる。

これは『アイテム再現』で、再現したでござる本当に便利でござるよ。


「まあ、口で言っても理解は出来ぬでござろうし。一つ力を見せるでござるよ。『記憶検索・人物再現』を発動。

…拙者がこの世界に召喚される前に、偶然見かけた『雷を斬る』『化け物』の記憶を再現してあげるでござる。この力を貰って俺Tueeeの時に、初めて恐怖を覚えた化け物でござる。倒せたら……拙者、マジでリスペクトするでござるよ!」


記憶や人格は再現してないでござるから、あの時見た剣技を『間違った解釈』で再現した人形でござるが…。

弱く解釈されたのではなく強く解釈され、それを扱う能力も備わった人形でござる。

人物系の再現は2時間ほどしか持たないのが問題ではござるが、十分な時間でござろう。


さあ、どうするでござるか?


Sideout




ルナside


「…拙者、マジでリスペクトするでござるよ!」

そう言い終わると、サルトビの目の前に突如として人影が現れた。


「…老、人?」

カートスの言葉尻に疑問符があるのも仕方ない事じゃった。


180cmの身長で、これでもかと鍛え上げられ、絞られた体は無駄なものが一切付いとらん、とても老人の体とは思えぬ体躯。

見たことも無い異国の装束に身を包み。

腰には…、イチナ同様の剣が二振り。


長い白髪を頭の後ろで一房に縛り、真っ白な太い眉に鋭い目つき…。

同じ白い顎髭は、短い無精髭。


…なんじゃろう、まるでイチナのような目つきなんじゃが?

こちらの方が幾分か危険度が高そうな鋭さじゃがの…。


まるでイチナが歳をとったらこうなるんじゃ!的な見本のようなじい様じゃった。


「この化け物の名前は、『甘坂五一』というでござるよ。まさか、拙者の力でも『完全再現』出来ないとか、ホントに化け物でござるか!?…これ神から貰った力なんでござるがなぁ」

(おかしいでござろう!?『間違っていても』再現できるのが売りの能力でござるよ!?しかも、上方修正が入ったはずでござるよ!?……再現時間が半分になってるでござる!?訳が分からない、この化け物を再現すること自体が間違いだとでも言うでござるか!?)



………アマサカ、じゃと!?


「…似ておる、と思ったらイチナのおじい様か。カートス、我らはここで終わるやも知れんなぁ…」

「笑えない冗談だねファルナーク。僕様が友達のお嫁さんを死なせる訳がないだろう」

そう言いながら半歩踏み出すカートス。

じゃが、そこから先へは行かなかった。否、行けなかった。


アマサカ・ゴイチがイチナと同じ神速の剣技の構えを取ったのじゃ。


「ほっ!間合いを見切れる程度には使えるか。重畳、重畳!」

そのまま踏み込んどったら斬っとったわ!と笑うおじい様。


「……喋った!?あれ、なんで!?『人格再現』までしてないのに!?」

よく分からんが、なんか驚くような事でもあったのかの?口調が崩れるほど驚き狼狽するサルトビじゃった。


「しかし、体が重い。おい小僧、再現するならちゃんとせんか!全盛期の若いころの姿で再現せい!」

「へっ?がふっ!?」

殴った。理不尽に、唐突に……信じられない速度でサルトビとの間合いを詰めて。

殴られたサルトビはその場から吹き飛び、謁見の間の壁に叩きつけられおった…。


おじい様がいた場所にはクッキリと『足跡』が残っていた。

否、足跡の形に砕けた床が見て取れたのじゃ。

…我が全力で大剣を叩きつけて砕いた謁見の間の床を、おじい様は『踏み込み』だけで砕いてしもうた…。



「…ん?なんじゃ、この程度の『ツッコミ』も避けれんのか?全く最近の若いもんは…。ワシの孫ならば反撃してくると言うに。さて、事情はわかっとる。

再現されたときに情報をぶんどったからの。じゃが、ワシはおぬし等の敵として再現された『意志無き人形』じゃ」


意志無き人形…?

え?生み出した主を何の躊躇もなく理不尽に吹き飛ばしたこのおじい様が『意志無き人形』じゃと?

…嘘じゃろ?


「このワシは、本物と違い『弱い』。要は偽物のワシじゃ。全力を出しても孫との鍛錬程度の力しか出せん。なんちゅうヘッポコな体に再現したのか…。まあいいわい。どれ、ちょっと揉んでやろうかの?」

……有りえんじゃろ。


「…勘弁して欲しいのぅ」

「…ははっ、全くだね」

殺気も闘気も放っていないおじい様が、ただ眼を細めるだけで冷や汗が噴き出した。

…これがイチナのおじい様か、ある意味納得じゃ。


「ああ、そこの若いの。気を失った、れでーに悪戯は関心せんな。それ以上動くなら『選ばせて』やろうかの?」

バルクに背を向けたまま、チラリと視線だけをバルクに向け、そう問いかけるおじい様。

バルクが顔面蒼白になり、その場から後ずさり、パクパクと口を動かしていた。

よほどのことがあったのか?


…あれは、息を吸えておらんぞ。何をしたんじゃおじい様。

そのままフラフラとバルコニーの方へと逃げるように去っていく。


「…む?……弱いのぅ。ちいと殺気をぶつけただけだというに、気当たりとは」

嘆かわしいと首を横に振り、右手で抜刀。

…殺気をぶつけたのか?こちらに余波すら感じさせずに?


「安心せい、孫とやる鍛錬をかなり軽くしたやつじゃ。居合抜刀は使わんよ」

ビリビリと肌に刺さる殺気と剣気。

バルクが気当たりを起こすのも分かる。

我も、カートスもイチナで慣れておるというに、奥歯を噛みしめて耐えねば飲まれかねんほどだ…!


「…ファルナーク。下がって。僕様がやるよ」

「たわけ。イチナの師匠じゃぞ?お主一人で勤まるか」

我ら二人でも怪しいくらいじゃ。


「ほう、どうやら孫の事はしっとるようじゃの、あの馬鹿孫のことじゃ元気じゃろうて。しかし、『命題』を果たせる世界に来たというに全く心が動かんとは…。ワシは偽物という事じゃな…」

そう、おじい様が感慨深げに呟いた瞬間、悪寒が奔った。


我とカートスは咄嗟に剣を前にだし、迫りくる『何か』を防ぎにかかる。


我の大剣は盾とした部分に大きな斬撃の跡を受けるが、それで勢いを殺した剣をカートスが受け流し、距離をとった。


まるで呼吸するかに様に距離を詰め、挨拶でも交わすかのような気軽さで『当たれば死ぬ』一撃を放ってくるおじい様。


「…ふむ、やはり防がれるか。剣を断てぬという事はやはりワシはワシでは無いのじゃな」

おじい様が動きを止めてそう呟く。これは絶好の隙なんじゃが…。


…手がしびれて思うように動かん。

…こんな力で殴られたサルトビは生きとるんじゃろうか?


「イチナくんはいつもこんな人と鍛錬をしていたのか……強い筈だね」

「クカカカッ!一南の相手は骨が折れるぞ?何せ打ち合うたびに強くなる。まだまだ未熟じゃがな。ワシもおかげで一南を鍛え始めてから更に強くなったわ!まあ、この体では見る影もないがの…」

イチナが未熟、か。それにこの強さで見る影もないとはの…。

ならば、おじい様には我やカートスは未熟以下なのだろうな…。


「これが本物のワシなら、見逃してやるくらいは言っとるんじゃろうが…。生憎そこの小童に造りだされた人形じゃ。小手調べは終わりじゃ…。行くぞ、強者に引かぬ武士(もののふ)よ」

…っ!来る!


その時、良く知っている斬撃がバルコニーから天井へと抜けて行った。


「くっはぁ!本当にいたよ!イチナくん容赦ない!目が合ったらいきなりぶっぱしてきたよ!?」

バルコニーから転がるように出てくるバルク。


「ファルナーク!」

カートスの声で慌てておじい様に意識を戻す。

既に目の前で大上段に構えているおじい様が目に飛び込んできた。


「ほれ、当ると死ぬぞ!」

咄嗟に『時の加護』を発動させておじい様の動きを遅くする。


「ぬっ!?」

一瞬だけ、加護と驚きで動きが鈍った隙を見てカートスが横合いから流れるように斬りつけていく。

瞬間的に体を捻られ、カートスはおじい様の二の腕を浅く斬り裂いた。


なんちゅう理不尽じゃ!?加護が効くのが一瞬とは!


「浅い!合わせて、ファルナーク!」

今一度剣を振るうカートス。


「うむ!」

我は斬られる事も考えずに、腰を捻り、勢いを付け大剣を横薙ぎに振り払う。


カートスの剣は完全に見切られて躱され、反撃を喰らい鎧の胸元が裂ける。

寸前で身を引いたのか浅くて済んだようだ…。


我はその攻防の一瞬のタイムラグで大剣の間合いにおじい様を捉える。


「クカカッ!やるのう!」

我の攻撃を防ぐと思われたが全く気にせず、我に剣を振り下ろしてくるおじい様。

これはまずい、の…!

じゃが、こちらも止める訳にはいかん!


「『ストップ』でござるよ」

なん、じゃ!?


我の大剣はおじさまに届かず、残り一センチの処で『停止』

おじい様の剣も我の脳天一ミリの処で止まった。

カートスは突きの姿勢のまま踏込み、『地面から片足が離れていた』

カートスの顔には、このままじゃ守れないという焦りが浮かんでいる。


…任意の物体指定での時間停止じゃと?

思考が出来るという事は肉体のみでの時間停止か?

時の加護の力では無い、これは奴の…『サルトビ』の力か!


「…変な処で止めるな、小童。貴様の半端な『再現』のせいで体が今一付いてこん。邪魔するなら、刻んで団子にするぞ?」

剣を我の頭からどかし、サルトビに向けるおじい様。


…というかサルトビ、生きとったんじゃな。


「……なんで動けるんでござるか?『個別の時間停止』でござるよ?そもそも、なんで意志があるでござるか?理不尽も大概にして欲しいでござるよ…。依頼者からファルナーク・サリスは殺すなとのお達しでござる。殺すなら男の方を殺すでござるよ」

我が短角種だからか?…殺されぬと言うのなら精々カートスの盾にでもなろうかの。


「そう言う事はもっと早くに言わんか!だからお前は小童(アホウ)なんじゃ」

「言う前に殴られたんでござるが!?」

あの程度を避けれんお前が悪いんじゃ。と我等から距離を取る。


「おい小童。さっさとお前の術を解け。動きにくくてかなわん。仕切り直しじゃ!」

「時間を止めているのに動きにくいだけでござるか……もういいでござる『個別時間停止』再現停止」

ぬぐ、やっと体に自由が戻ったか…。


「ッと…。ごめんファルナーク。まさかあの状況で防御も回避もせずに攻めに回るとは思わなかった…」

片足が地面から離れていたカートスは多少バランスを崩しかけたが、きっちりと持ち直す。


確かに、サルトビの横やりがもう少し遅ければ我は両断されていたじゃろうな。


「気にするでない。あのイチナのおじい様じゃぞ?読みが当るとは思わん方がいいじゃろ。まだ二人とも五体満足なのが不思議なくらいじゃ」

「……確かにね」

そう言って自分の胸元をなぞるカートス、一瞬でも身を引くのが遅かったら我を心配する事も出来んだじゃろうな。


全く、これで弱いと嘆くのだからとんでもないの、おじい様は…。


改めて剣を構え直す我とカートスを見て、満足そうなおじい様。


「うむうむ!そうで無くては……む、なんじゃ?雪?」

イチナがの斬撃が通った天井の隙間からふわりふわりと『何か』が落ちてくる。


次の瞬間、バルコニーからとてつもない量の生暖かい何かが吹き込んで来た。

その中心には白い球体が幾つか見える…。

バルコニーから謁見の間に入って来た球体は解けるように崩れ落ち、人の姿を映し出す。


…クフフッ。


「これ、魔法だよね?なんで謁見の間で作動してんの!?教皇様、…ちっ、三人の殺気や剣気に当てられて気絶してるしー…」

バルクが一人で騒いどるが、気にせぬぞ。

我、大丈夫かの?汗臭くないかの?…まあ、それは仕方ないか。

球の肌に傷がつく前でよかったかの?


でも、ピンチに来るとは流石我が婿じゃよ。

のう?


「イチナ!」

「おう、無事で何よりだ」

白い何かはまるで幻のように消えていく。

イチナの頭の上で白がやり切った表情で満足気なのが見て取れた。


「あの、僕達もいるんですけど…」

わかっとるわい。


ソルファも、アンナも黄助にサウスも。

テンや、チビスラ、チビ勇者。

…クロハまで『あれ』に乗って来とったんか。


「形勢逆転じゃな」

おじい様とサルトビをどうにかせんといかんが何とかなるじゃろ。

…イチナが来ただけで元気が出るとは、我も中々現金な女じゃな。クフッ!


Sideout

出しちゃった…。


我慢できなくて出しちゃった。


後悔はしてないだが読み返して、やっちゃた感はある!


作者の暴走だと思ってください。


byミスター

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