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猫守紀行  作者: ミスター
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100話記念 ~のらがたり~

書いてみました。

これは一南と出会う前、異世界に行く前のお話。

白い子猫の野良暮らしを超短編で綴ったものである。




『子猫とられる』


「み~」

とある路地をてふてふ歩く白い子猫。

よそ見でふらり、小虫を見つけてはふらり。

注意力というものがほぼゼロな子猫である。


「……み!」

突如走り出す子猫、そのまま路地から飛び出し歩道へと突入する。


この子猫、親猫からはぐれたのだ、こんな調子で。

いつもの事である。


「うわっ!?……可愛い。こっちおいでー」

「なに、どうしたの?うわ、ちっちゃ。野良?写メとろ写メ」

突如路地から飛び出してきた子猫に、通行中の女子高生の二人組が喰いついた。


パシャパシャと携帯で写真を撮られる子猫。

しかし、子猫は地面に落ちたセミの抜け殻に夢中で気づかない。


セミの抜け殻の周りをくるくる歩いてみたり、つついてみたり。

「み!?」

猫パンチでぺしゃりと潰した時は飛び上がって逃げ出した。


「ああー行っちゃた…」

「あたし、動画も撮ったよ」

その写真と動画をどこかの世界の神々がいつの間にかコピーしてバイブルにしているとは知らない女子高生だった。


End




『お昼寝』


とある高校のグラウンド


「監督ー!」

野球部員の一人が監督を呼びに走ってくる。


「どうした?また猫でも入り込んだか?」

苦笑まじりにそう言う監督に、頷く部員。


「ホームベースで寝てます」

「………そうか、今日もか」

これで4日連続だな。と心の中で溜息を付く監督。

初日は親猫キャチャー、子猫+兄弟たちはホームベースの位置だった。

親猫と兄弟たちは一度起こしたら来なくなったが。


明らかに危機感が足りていない子猫である。


起こさないと練習が出来ない。

起こすとマネージャーや部員から鬼と罵られる。

それでも行かなければならない、それが監督なのだ。


「せめて、ベンチで寝てくれないか?」

ホームベースより白いふわふわのお団子は、語りかけても返事はしない。

だって寝てるから。


End




『親猫』


「……」

雪のように白く美しい猫が獲物を狙い伏せている。

子猫の兄弟たちも親猫を真似て獲物に向かい伏せていた。


「み~」

そんな事関係無いとばかりに親猫の尻尾にじゃれ付く子猫。

反応がないと分かると、並んで伏せている兄弟たちの間にむいむいと無理やり割り込み。


「み~♪」

満足気に鳴いた。

やりたい放題である。


親猫が動く。

相手の先を読み、一撃で雀を仕留める技は見事としか言えない。

子猫に狩りの仕方を教えているのだ。


その雀を咥え、子猫と兄弟に見せようと振り返る。

しかし、子猫消失。


「……ニャ!?」

思わず咥えた獲物を落とす。

咥えるべきは獲物より子猫の方だったと後悔する親猫だった。


このやり取りも、いつもの事。

親猫は優秀だがどこか抜けていた。


End




『飼い主候補?』


とある公園を散歩中の子猫。

いつものように親猫とは、はぐれたようだ。


「あー!猫ー!」

「み?」

遊んでいた小学生の男の子が近づいてきて子猫を鷲掴む。


「み!?」

「可愛いなー!家で飼えないかな?」

そのまま乱暴に撫でまわされる子猫。

もちゃもちゃと暴れるが効果は無い。


「ちょっと!放しなさいよ!可哀想でしょ!」

同じくらいの歳の女の子が男の子から子猫を奪う。


「み!?」

「よしよし、乱暴者は嫌よね~?」

子猫からしたら、どっちもどっちである。


「み、み~」

うにうにと体を捻り、少女の手から脱出する子猫。

爪を立てれば一発なのだが、思い至らないのは、この子猫だからだろう。

そのまま地面に着地して、公園の茂みへと走り込んだ。


「ほら見ろ!お前だって嫌われてるじゃないか!」

「違うもん!バカ!」

少年少女の言い争う声はしばらく続いていたのだった。


End




『木陰の激闘』


とある公園の外れの茂みの中、その木陰である親子が休んでいた。

親猫と共に木陰でのんびりと過ごしていると、突如子猫を衝撃が襲った。


「み?…み~!!?」

揺らぐ体、背中に蠢く異様な感覚。

慌てて親猫を振り返ると。

一早く察した親猫の神速の猫パンチが子猫の背中を掠め蠢くなにかを弾き飛ばした。


転がるなにか、それは昆虫王『兜蟲』であった。

どうやら親子の休んでいた木陰の主から落ちて来たようである。


子猫は親猫の神速猫パンチを受けてなお、平然と佇む異形に驚きを隠せない。


「み?み!?」

子猫にとっては初見の相手、初手で背中をとられた事で多少混乱しているようだ。

何度も親猫と『兜蟲』の間を視線が行き来する。


「クァ~…。ニャア」

親猫は好きにしろと言わんばかりにあくびをしてまったりと子猫を眺める。

兄弟たちもお昼寝タイムだ。

『兜蟲』の異形にも動じない親猫をちょっぴり尊敬した子猫だった。


子猫の混乱はすぐに収まる。

そして、持前の好奇心がうずきだす。


取り敢えず警戒しながら前足でへちょりとタッチしてみる。

硬い。そして動じない。だが体のつくりはいつも追う小虫とよく似ていた。


だからといって子猫がなにかを思う訳でもない。

なにしろ小虫を追っても捕まえたことは無いのだから。

集中力の問題である。


ただ気の向くまま兜蟲にぺちぺちと攻撃?をしかける。

その時、昆虫王が角を振り上げた。


「み!?」

前足を引っかけ転ぶ子猫。

一緒に兜蟲も転がり、今度は腹にとりつかれた。


ひっくり返って、わたわたともがく子猫に見かねた親猫が神速猫パンチで兜蟲を弾き飛ばす。


吹き飛ばされ転がる兜蟲をよそに、もぞもぞと起き上がる子猫。

さあ、リベンジだ子猫!頑張れ子猫!


「!…ニャ!」

なにかに気づいた親猫が子猫を咥えその場から跳びのく。

次の瞬間、子猫の居た場所にサッカーボールが飛んできた。


「み~?」

親猫に咥えられながら子猫はわちゃわちゃと手足を動かす。

サッカーボールに興味があるようだ。すでに昆虫王は目に入っていない。


「……」

険しい表情でボールが飛んできた方向を見つめる親猫。

そう、ボールが飛んできたという事は……人が来る。


親猫はすぐさまその場を離れる事を決断。

子供たちを起こして、子猫を咥えたまま。

その美しい白い体を奔らせた。


「おーい!ボールあったかー!」

「ちょっと待って…。有った、ボール!うわっ!カブトムシだ。デカいな……皆に見せてやろう!」

遠くでそんな声が聞こえた。


それが昆虫王『兜蟲』をみた最後となった。


End




『夜の散歩』


「み~♪」

いつも以上にご機嫌な子猫。

それには理由がある。

今日は初めて小虫を捕まえられたのだ。


ご機嫌ついでに夜の散歩を決行。

親猫とはいつも通りである。

というより、夜の方がはぐれやすい。


ご機嫌な子猫はいつもの散歩道を外れ、気の向くままに歩き出す。


茂みを越え、歩道を越え、運命の出会いの待つ車道へと。


「ああ!アホウ!コッチくんな!」


End


これが本編に続く子猫の『おーぷにんぐ』である。

作者だったら間違いなく持ち帰る。


byミスター

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