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猫守紀行  作者: ミスター
100/141

模倣の仮面

一南side


「…自分に酔ってるなありゃ」

演説するガイナスを見て一番に思った事がそれだった。


「そうですね…。でも、どうします?流石にこの人数で仕掛けるのは無茶が過ぎると思うのですが…?」

ソルファの言う事ももっともだ、一度ホームに戻って…。


「ん…?チッ、下種が…!」

モンスターが檻を引いて来た、その中には人族。

檻の中には女性のみ、その目は死んでいる。

顔ははれ上がり、衣服は破けている。

何をされたかなんて問うまでも無い。


「あれは…、ウォルガイの巫女装束ですね。むごい事を…。『隷属の首輪』をしていますから、命じられれば王真を帰す事も出来るでしょうが…。すでに心は壊れているかもしれませんね」

自国の巫女を見て、静かな怒りを燃やすばあさん。


逆に言えば王真くんが帰るにはガイナスを生かしたまま捕らえなければならないって事か。


成程、これは保険だな、そのまま助け出しても意味は無い。

ガイナスを生かす事で、王真くんは帰れる訳だ。

…どうすんのかね、この甘ちゃんは。


「…イチナさん。無謀ですが、やりましょう。僕は、あの人たちを開放してあげたいです!」

「同じ女として、許せないね…。あいつ等にも蹂躙されるって事がどういう事か教えてやる!」

捕まったら同じ目に合うかもしれんのだがね…。

あと、腐敗。お前は張り切るな。


「チナさん、白達は俺が預かるっす。チナさんはいつもみたいに問答無用で突っ込んで、理不尽に斬りに行けばいいっす!」

「み!」

「ぴ!」

「…!」


…ああ、そうかい。マキサックは後でオハナシだな。


サウスと黄助も戦闘態勢をとっている。

逃げも一つの手だと思ったんだがね…。


……やるか。



俺は王真くんを蹴り起こした。


「起きろ、王真くん。まずは一発かまして道を作ってくれ。俺も一緒に放つから」

「痛っ!?…なにを言ってるんだ?鬼いさん。行き成り意味が分からないよ」


後頭部を思い切り殴打されたからか、さっきまでの険がすっかり抜け落ちていた。

…記憶飛んだんじゃないだろうな?


「なら、アレを見ろ。そして分かれ」

倒れている王真くんの後頭部を掴んで持ち上げ強制的に『檻』を見せる。


「っ…!ああ、そうか。これは50年前の僕の甘さが産んだ結果なんだね。ザッカイスさんもあの子達も、僕のせいで…」

…ふむ。さっきの怒り狂った表情の方がまだ良いな。


「今やる事はアレを潰す事で、王真くんが潰れる事じゃない。後悔したいなら『本気』で殺った後にしろ。出してねぇだろ?本気。まあ、帰るためには生かして捕らえる必要があるが、お前はどうする?」


「本気、で?……僕は帰る事ばかり、逃げる事ばかり考えていた。でも、逃避は止めだ。ガイナスを……殺す!」

(こっちに二度目の召喚をされたとき、創世の神に言われた。責任をとれと……異物を消せと。それを成さない限り、どちらにしろ、逃げ道なんてなかったのかもしれない)


俺を見据え、シャムシールの柄を逆手に力強く握る王真くん。

…剣に不安があるのか?

しかたねぇなぁ。


(一匁)

《ナニー?》

(今回は王真くんがお前の飯を用意してくれる。折れないように防御だけは固めとけよ?)

《…エー。ナンカヤダケドワカッタ》

よし、良い子だ。


「王真くん、貸してやる。これなら存分に振れるだろ?溜めこんだものを全部吐き出せ。ガイナスは体の良いサンドバックだ」

神気の前には、一撃で消飛ぶかもしれんがね?


「鬼いさん…。ありがとう。必ず返すよ。僕は約束を果たす。フゥゥゥ…。僕は『殺す』剣だ、手加減はしない…」

王真くんは礼を言ったあと、目を閉じ、息を吐きながら何度かそう呟いた。

自己暗示か?これが王真くんの習った心を殺す術って事か。


「昔のよりも強力な自己暗示!?…本気なのね」

ばあさんが悲しそうな声をあげる。

そりゃそうだろう、相手は王真くん待望のガイナスだ。


眼を開いた王真くんは、激変といってもいい。

甘さが抜けた、殺すための貌。


成程、自分の意志で、自分に掛ける洗脳みたいなもんだな。

こっちの人間が無情になるにはいいかもしれんが、地球人にとっては心を削る荒業だ。

心を殺すというより、仮面を被るといったほうがいいな、コレは。


「……行こう。お兄さん」

「くはっ!良い殺気だ。ま、どうせ魔王(ガイナス)はついでだ、さっさと潰してアリーナンを探しに行くぞ」

王真くんと同時に構え、神気を込めた一閃。


一つは斬撃、一つは砲撃。

ソルファ達すらも唖然とする程、自然に放つ。

俺の斬撃は広範囲の敵を斬り裂き、王真くんの砲撃はガイナスをピンポイントで飲み込む。


神気の斬撃は見える範囲の魔族やモンスターを斬り裂き。

…檻の一部を斬った処でその部分を消した。

やべぇ、ウォルガイの巫女をバッサリやっちまう処だった…。


ちなみに、王真くんの神気の砲撃は、がイナスまでの直線状にいる敵を消し飛ばした。


うん、奇襲で開幕ぶっぱは効率がいいな。

対軍はこれでいこう。…人質とかが居ない限り。


「…死んだんじゃねぇか?まあ、いいか。行き当たりばったりだが、こういう奇襲も中々良いもんだな?」

「…関係無いですね。斬るだけです」

ご最もだ、斬るべきものは多いからな。

あくまで見える範囲であって、全勢力を刻んだ訳じゃない。


「途中で壊れるんじゃねぇぞ?王真くん」

「心配無用です。死ぬときはあの子に斬られて死にますよ」

「それは止めて欲しいんだがね…」


ギルドの正門はすでにない。

俺と王真くんは談笑?しながら殺気を身に纏い歩き出す。


ソルファ達?見送ってくれました。

もうしばらくしたら再起動すると思います。

流石に俺と本気の王真くんの殺気はきつかったようだ。


「…へぇ。生きてるじゃねぇか。良かったな、王真くん。八つ裂きコースだ」

「……」

王真くんも、顔は無表情だが、その殺気は静かで鋭い。

その視線はガイナスのみに注がれている。


…ふむ、邪魔だな、あの機械。

まるで宙に浮くテレビカメラみたいだ。

浮いてたから俺の斬撃から免れたみたいだし。


しかし、カメラか……どっかに映像を送ってんのかね?

まあ、邪魔だから斬るけど。


俺が構えると同時に、王真くんも構えをとった。


刹那、斬り砕ける機械。

そして爆散。


それを合図に俺と王真くんは動き出す。

ソルファやサウス達も動き出したみたいだし、おっぱじめようか。

8対軍の戦争を、な。

…チビーズは勘定に入れてないからな?


「タ、タカヒラ!?何故ここにいるのですか!それに今の攻撃は…!」

王真くんの砲撃を擦り傷程度、だと?

梟仮面も俺の斬撃を喰らってたはずだが、傷らしい傷は無い…。


《一南、神気だ。奴等は邪神の使徒と同様の神気を纏っている。厄介だぞ》

……なんでだ?死んだだろアイツは。

それ以前に神気を分け与えていた、か?


しかし、成程。

王真くんは神気を纏っていることが分かったから、初っ端からかましたのか。


「…ガイナス、お前はここで終われ」

静かで苛烈。それが王真くんの殺気だ。

それを一身に受けるガイナスが、少し羨ましかったりしなくもない。


「フ、フフフ。タカヒラ。あなたは帰りたいのでしょう?あの巫女、部下に預けたら壊されてしまったけど、命令は聞くのよ。私を殺したら、帰れなくなるわね?」

そう言って指を鳴らし、梟仮面3人衆を前に出す。


梟仮面は、どいつも同じような格好に背丈。

服装は紺色の軍服。

獲物は反りの浅いシャムシール、王真くんと同じものだな。

仮面のせいで表情が分からず、口もまるで開かない。


「模倣の仮面。タカヒラにもファグスに行く前に被って貰いましたね。剣技はタカヒラ、あなたと同等。そしてあの方から『力』を貰った新魔将です。勝てますか、あなたに」

完全に俺は眼中になしか。


「王真くん、模倣の仮面ってのはなんだ?」

「…簡単に言えば、過去に被った者の技を使える仮面。…僕の使う『神薙流』を使える仮面だよ」

……ほう。


「インスタントで勝とうなんざ片腹いてぇな…。王真くんはガイナスを狙え。あの三人は…、俺が殺る」

飽和していた殺気を三人に向けて放つ。


おい、後ずさんな。

怖くない、怖くないからね~?

大丈夫、痛みすら感じないように、お兄さん頑張るからさぁ…。


「お、お任せします」

何故か、心を殺し無表情の王真くんの貌が引き攣っているのが見えた。


「あいよ、任されました、よっと!」

そのまま踏み込み居合抜刀で一人の首を狙い…落と、した?



…あれ?


「……王真くん。コイツ等は本当に使えるのか?全く反応すらしなかったんだが?」

折角、期待して『本気』で踏み込んだのに。

もっとこう、居合で防ぐとか、避けるとか、さ…。

…まあ、ほら、痛くは無かっただろ?


梟仮面その一は、何もせずに終了となった。

その二、その三がようやく居合の構えをとる。


「……………ガイナス、お前はここで終われ」

「…カロ。ジャツリ。『ソレ』は任せたわ!」

「スルーか、王真くん」

そして、その台詞は二度目だ。


俺をソレ扱いしたガイナスは空へと舞う。

王真くんもそれを追うように宙を走る…。

…え?そんな事できたのか!?王真くん、流石、ファンタジーの勇者だな…。


《ほう、魔力を足場にしているのか。芸達者だな》

魔力、か。俺には届かない領域だな。羨ましいぞ王真くん…。

しかし、何故かこの場から逃げて行くように見えるのは、気のせいだろうか?



…まあいい、後二人だ。


あ、そうだ。

腐敗勇者から加護の力を上げる腕輪を貰ってたんだった。

2ランク上がるんだったか……慣れるまでちいと頑張って貰おうか。


「さあ、インスタント共……死にたくなけりゃ足掻いてみせろ…!」

王真くんと同じ構えなんだ、半端な事はしないよなぁ?


俺は次に放つ剣閃と同じ軌道で殺気を放つ。

次は反応してください。と願いを込めて。


殺気に反応し抜刀する梟仮面の二人。


王真くんをコピーしたのは間違いないだろう。

『高平』の真面目な剣閃がよく出てる。


キィン…。

二本のシャムシールを刻波で弾き返す。

すぐに次が飛んできた。


弾く、弾く、弾く。


俺も梟仮面達も徐々に剣速を上げていく。


「…くくく、くはははははっ!」

成程!ちいとばかし打ち込みが軽いが、確かに神薙流だ!二人相手じゃ大変だわ。


いかん、楽しい。

さあ、俺はまだ上げれるぞ?お前等は…、もちろん付いてくるよな?


「…まずは十六夜からいってみようかねぇ?」

「「!?」」

そう呟いた瞬間、二人が下がった。

二人はシャムシールを収め『力』を纏う。


お、これはやべぇかもしれんな。

《やはり、コイツ等も邪神の神気を使えるか!波平!鎧だ!一南に纏わせろ!》

《しかし、形状がですな…》

《お前は鎧姿だろう!それを思い描け!一南、少しの間だ、死ぬなよ!》


「「!」」

動き出すその2とその3。

喋れ、お前等。


「くははっ!」

さっきより断然動きが良い!剣速も速い!


「「イザヨイ」」

十六夜の同時抜刀。

動かぬ神気の三十二連撃、躱す?何処に?どうやって?

神気を纏った剣撃だ、その力はよく知ってる。


世界がゆっくりと回る。

これはなんども感じたことがある。

死を直接的に感じたから、走馬灯というか、ゾーンというか…。


間違いない。これは爺さんと真剣で鍛錬した時に、しょっちゅうなるやつだ。


爺さん相手に一太刀浴びせられるか?!という惜しい処までいった思い出がある。

爺さんの時もそうだったが、コレになった後は剣速が上がるんだよねぇ…。


それでも、一太刀も浴びせられない爺さんは、まさに化け物だ。

いつか、また相手をしてもらいたねぇ……次はあの世になるだろうがな。

爺さんも歳だし。


この死の時間のおかげで、相手の剣もよく見える。

…波平への指示は間に合わんな。

魔力、氣ともにだ。


だが、俺は構えを解いてない。

柄も握ったままだ。


一歩踏み込み、相手の斬撃に身を晒し、抜刀。

やる事は最初と同じ。


己が能力だけで弾き、潰す!


「「!!」」

最初の一刀、その二の斬撃を弾き、神気で鞘を持つ左腕を抉られた。

二刀目、その三の斬撃とその二の斬撃を躱し、神気にアタック、逸らす事に成功。


流石に『応路』じゃない分軽いか…?

アルスとの時は、一匁だったし。

抜刀時の剣術の方が威力は高いからなぁ。


…十、十一、十二………。


まだ遅い、まだ足りない。

足も、腕も、体も、結構な数を斬りつけられているが、浅い。


まだ動く…が。


くそっ、このシャツどうしてくれんだ…。

…ぼろにするしかねぇな、チクショウめ!こっちじゃ買えねぇんだぞ!?

……カートスなら、直せるか?

合流したら聞いてみよう。


「「な、に!?剣が速くなっているだと!!」」


…もっとだ。

これじゃ、居合で神気は斬れない。

この死を感じる、ゆっくりとした世界の中で普通の俺と同じ剣速を出す。

その為に、この世界に『慣れ』ろ、加護に『慣れ』ろ。

ここでの感覚を体に刻め。


これは、刹那で終わらせるには惜しい『鍛錬』なんだから。


……二十二回目でようやく、居合で神気を『斬れる』ようになってきた。


俺の中で危機感が減っていく。

ああ、そろそろこの時間も終わりか…。


三十二回目の斬撃を叩き潰して鍛錬は終了となった。


「限無あたりをチョイスしてくれれば、もっと登れたかも知れないが…。ああ、クソ。体がイテェ。さっさとばあさんと合流しなきゃねぇ」

あと、シャツを弁償しろ。


「「なめ、るな!!」」

居合抜刀『二奥』かね?だが…。

剣筋は綺麗だが、二奥までいくと体が付いていってねぇな…。

それでも神薙の剣を振れるんだから、大したもんだよ。


「溜めがなげぇ。今の俺の間合いの中でそれは悪手だ」

そう言って、二人後から放った『二奥』で二人の剣ごと首を『同時』に落とす。

まあ、僅かな差はあるから、同時に見えるって処だな。


上がった剣速に満足しているとガトゥーネから呆れたような声が掛かる。


《……一南、少しの間とはいったが。せめて、波平の成果くらいの確かめる時間をだな…》

「アホウ。十六夜が終わる前に出来ないんじゃ、しょうがねぇだろうが」


《…む、そうだな。波平、鍛錬のしなおしだ》

《…ぐぬぅ》


さて、ソルファ達と合流しようか。ばあさんに治してもらわにゃいかんしな

首の無い魔族の死体を一瞥して、どっちがカロでジャツリなのか聞くのを忘れた事を思い出す。


「…まあ、どうでもいいか。貰ってくぞ?」

斬られて、ボロボロになったシャツの代わりに、軍服を拝借。

ついでに仮面を二つの首から毟り取り、シャツと一緒に次元袋に詰め込む俺だった。


Sideout





マキサックside


「ちょ、勝手にいっちゃ駄目っすよ!?」

「み~!」

「ぴぴー!!」

「……!?」

モンスターとの戦闘中に背負ってたリュックが破けたっす。

元々背負うのもきつかったっす。

それが猪系のモンスターである、アーマードボアの突進を正面から受け止めたら…。


肩掛けのベルト部分が逝ったっす。


そして、地面に落ちたリュックから……弾けたっす。

チビーズが。


今は邪魔する魔族兵とモンスターを蹴散らしながら、それを追ってる最中っす!

まるでチビーズの元に行かせないようにモンスターが集って来る。


ああっ!?白達の前にいつも俺達の飯になるオオトカゲが!?

このままじゃ、白達が飯になっちゃうっす!!


「邪魔っす!戻ってくるっす!白!テン!チビスラ!」

目の前のモンスターを力いっぱい殴り飛ばしながら叫んだ。


大きな口を開けて、チビーズを食べようとするオオトカゲ。

威嚇するテン。

よく分かってないチビスラ。

不思議そうに、開いた口に向かって進む白。

なんで行くっすか?!止めるっす、止まるっすよ!?警戒心を持って欲しいっす!!


「チナさんから預かったっす!俺の初弟子っす!!大事な大事な命っす!!!食わせる訳には……いかないっす!!!!」

ピンチに覚醒なんて出来ないっすけど、例素羅のバカ力なめたら駄目っす!


「魔力全開!必殺の魔力ブースト・Wラリアットからのフライングボディアタックっす!!」

ラリアットで群がる敵を吹き飛ばす。

その最中に、剣とか角とか色々刺さったけど気にしないっす!

そして、正面の魔族兵をポールに見立てて駆け上がり、大口を開けたオオトカゲへとダイブした。




「…ごばふっ!?」

真下いたはずのオオトカゲが消えたっす!?したたかに全身を打ちつけたっす!


オオトカゲをかっ攫ったのは、銀色二尾の狼サウスだったっす。

ヒーローになり損ねたっす…。


あれ?さっきまで群がっていた敵の姿が見えない?

…なんでサウスはいきなり俺の隣に来てるんすか?

チビーズはサウスを確認して群がり始めているし、今までオオトカゲを仕留めてたっすよね?


それに魔力刀が一対から二対になってるっす。

四刀流すね、カッコいいっす。

赤く染まってなければ、憧れてたっす。


……敵の姿が見えないっていうのは嘘っす。

死体だけごろごろ転がってるっす。

なんすかその速さ、目にもとまらぬを素でやらないで欲しいっす…。

チナさんなら見えるかも知れないっすけど。


「ガウ?」

「ああ、うん。理不尽を噛みしめてたとこっす。助かったっす、有難うサウス……黄助はどうしたっすか?」

サウスの四本の剣が同じ方向を向く、そちらを見ると、いた。


大型のモンスターと対峙している黄助が……拙いっす!

黄助はチナさんに大きくしてもらってないっす!

いくら邪竜を喰って大きくなったからって、流石に無理っす!


「今行くっす!」

走り出そうとした瞬間、黄助が一瞬で大型モンスターの間合いに入り、軽く鞭を心臓辺りにいれ離脱。

そのままこちらに向かって歩いて来た。


「黄助!後ろ、後ろっす!まだ…」

生きてる、そう言おうとしたらモンスターが倒れた……まさか、氣っすか?

鞭で心臓に叩き込んだんすか?

使い方がチナさんそっくりっすよ!?流石に爆散はしないすけど…。


俺まだ全然使えないのに……とんでもないっすね。


「がぅ」

サウスに群がるチビーズを鞭で一纏めにして自分の背中に乗せる黄助。

「み!」

「ぴ!」

「…!」

チビーズはなにを言ってるかは、わかんないけど取り敢えず反省はして無さそうっす。

…でも、助かって良かったっす。


「さあ、皆の処に戻るっすよ!」

そうチビーズとサウス、黄助に声を掛け、来た道を戻る……来た道?


「あ、慌てすぎてて、来た道が分からないっす…!」

サウス、黄助、そんなダメな子を見る目で見ないで欲しいっす…。


「…がぅ」

「?…ガウッ!」

黄助がサウスに向かって囁くように吠えた。

それにサウスが応えた瞬間。サウスが消えたっす。

…呆れて先に行ったっすか?


「あいたぁっ!?なんすか黄助!?いきなり叩かないで欲しいっす!」

「がぅ」

「み~」

「ぴー」

「……」

黄助がモチャモチャと団子状になっているチビーズを鞭で支えて落ちないようにしながら、のんびり歩き出す。

あ、ついて来いって事っすか?

援護はサウスに任せたんすね、きっと。


「うっす。案内お願いします」

黄助の背中にそう声を掛けると、無言で右肩の鞭を上げたっす。


この状態で襲われると拙いっすね…。

帰りの護衛はきっちり務めるっす!


サウスが帰り道の掃討をしてくれているとも知らずに一人警戒する俺だったっす。

死体を辿れば皆の処に着くとか、どんだけすか…。


Sideout

次回 「100話記念」



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