友達ぶりっこ
「その場は返事しなかったのね?」
「だぁって、すぐOKしたら何かかっこ悪いじゃん。いかにも待ってましたーみたいな感じで」
「実際待ってたんだろが……それで、後で連絡すると言った、と」
「そ」
「……わかんないな、好きなんでしょ?さっさとメールとかすりゃいいじゃん」
「そぅなんだけど」
「メアドがわからない、とか?」
「冗~談。住所氏名年齢生年月日血液型家族構成ぜーんぶおさえてあるし、当然でしょ?小さいころの写真まで持ってるんだから。ほら見て、かーわいい。これを手に入れるにはあらゆるコネクションを……」
「わかったからしまえ。じゃ何で返事しないのさ?」
「ソコだ」
「は?」
「実は4か月前の話なんだ……」
「……は?」
「いざ返事しようと思ったら、急にタイミングがわかんなくなっちゃってさ。延び延びで」
「いいキッカケになる花火大会や海やプールという、夏休みイベント全部グランドスルーした、と?」
「……そ」
「返事しないでも、ほら、友達として一緒に過ごすとか遊ぶとか、そーゆーのはしなかったの?」
「一度だけ誘われたけど、断っちゃった」
「……」
「だぁって!そんな彼女でもないのに2人きりで映画なんてさ、そんな暗闇で密室でそんな」
「恋人じゃなくても映画ぐらいは行く!!」
「はい」
「マジ正気で言ってんのか?伝統的なデートコースじゃん」
「今は何を恥ずかしがってたんだろうと思います」
「はぁ……アンタそれ、相手、振られたと思ってるよ」
「だよね、だよねぇ?で、あの、それで、相談に乗って欲しかったんだ」
「……」
「……どうすればいいと思う?」
「……どうって」
「……」
「今からでも謝ってさぁ普通に返事すりゃいいじゃん」
「もーっ!それができたら苦労しないって!無理無理ムーリー!今更、言うのなんて気まずいしょや、だからいい方法考えて欲しかったのに!」
「とにかく謝罪だけはしろや」
「……」
「あのさぁ……、好きなんでしょ?」
「うん」
「いい加減、覚悟決めないと。他の誰かにとられちゃうかもよ」
「なぁいない。私の情報網によるとライバルはいないはずだもんね。部活には女の子いないしバイト先はオバサンばっかだし、何より彼の良さを知っているのは私だけであり」
「御託はいいんだよ、御託は……じゃあ、こうしよう」
「!いい考えあるの?!」
「手紙を書きなさい」
「てがみぃ?」
「そう。今ここで書け。そしたら私が代わりに渡してきてやるから」
「でも、あの、便箋ないし」
「アンタ、キャワイイノート持ってるじゃん?それに書きな。後で綺麗に切り離せばいいでしょ」
「……」
「……」
「…………あのぅ」
「何」
「手、手が震えて……」
「お前、おちょくってるのか純情ぶってるのかどっちだ」
この2人のやり取りはまだまだ続きそうだったが、私はいい加減に席を立った。これ以上教室に居座るのも限界だ。
『ずっとシカトされている。本当の所どう思われているのか、さりげなく聞いてみてほしい』なーんて泣きついてくるんだもん、そんな頼りない幼馴染のため、悪役覚悟でガッツリ問いただしてやろうと思っていたのに。
両想いかよ、つまらん。
個人的には、返事を何か月も放置するような奴はどうなのよと思わんでもないが、それを何か月も待つような男だ。つり合いは取れてるんだろうな。
この話は教えないでおこう。そのうち、あの子の友達が手紙を持って現れるだろうし。
そのくらいの嫌がらせは許されるでしょう。
……。
まったく、いい友人ぶるのも楽じゃないなぁ。
お読みくださりありがとうございます。
この話はこれでお終いです。
結論:恋愛話は全く向かない